勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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103 最終的にハッピーエンドにすればよいのだ!!

 

 衝撃的な発言が零れたのち、一度闇のマナの状況を確認したいとのことでのっそりと首を伸ばして噴火口をのぞき込むノワールさん。

 

『……やはり。闇のマナの噴出……いえ、()()()()()()()()()()()()()。凄まじい事を為しましたね、ロック=イーリーアウス』

「俺も自分が何したのかよくわかってなくてェ……ってかもしかしてアレです!? 闇のマナの噴出が止まったからノワールさんが完全回復できてなかったり……!?」

『いいえ、それとは関係がありません。元々私は死に向かう運命……ですが、貴方のお陰で死ぬ前に己が使命を果たすことはできそうです』

「おとうさん……」

 

 ノワールさんが調べた結果、俺のギルドカードが刺さったままの闇のマナの噴出口だが、なんかマナの噴出が止まってしまったらしい。

 いやまぁ……そうしないと俺が死んでしまったので必死こいて何とかした結果そうなったってだけで別にこうしてやるわと思ってやったわけじゃないんだけど。

 冷静に考えるととんでもないことをしてしまったな。これは危機的状況だ。

 何故なら─────

 

 ────俺のギルドカード回収できないジャンッッ!!

 

「とうとう冒険者廃業か……?」

「もう一度発行してもらえばよいではないですかマスター」

「ギルドカードは紛失しても再発行手続きには時間がかかる上にランクとか引き継がれないからまた俺銅級冒険者から始まることになるん? 泣けるぞ?」

「今はそんな話をしている場合ではないのでは主殿」

「そうでした」

『みゃあ』

 

 まぁ俺の事は一先ず置いておこう。問題はまだ山積みだ。

 まず、ノワールさんの寿命問題。もう間もなく命を途絶えてしまうと自分で言うくらいだ。残された時間は少ないのだろう。

 その上、今まさしく王都が魔族に襲撃されているとのことで。みんながヤバイ。

 そっちの方はマジで俺の勘にも響いてなかった。遠すぎると駄目なのか?

 

「ノワールが言っていた王都襲撃の件は我が姉ニーズヘッグが撤退する前に零していたから間違いはない。恐らくは既に戦争が始まってしまっているか……」

「マジすかヒルデガルドさん」

「二面攻勢……だったのだろうな。魔王が復活したタイミングで王都に襲撃をかける軍隊と、魔王によるノワールの殺害……これにより闇のマナを世界中に溢れさせ、魔族を強化し、そのまま王都を堕とそうとしたか。お互いに準備ができていない今だからこそ……いや、フォルクルスがその図面を実行すべくグランガッチを堕とそうとしていた節が強いか」

「なんてこった。んじゃすぐ向かわないと!!」

 

 先程のえっち告白で上がっていたテンションもまるっと下がってしまった。今はこれから先の事を考えなければ。

 ノワールさんの事と、戦争……何とか解決に至る道を探したい。

 しかし、疲れてるからか、それとも何もできないからなのか分からないけれど、俺の勘は今は何も答えてくれない。

 

『……では、人類の救いを為すために。私が出来る全てを果たしましょう』

 

 しかしそこでノワールさんが、何やら決意を込めた瞳で俺たちに振り返り呟いた。

 ドラゴンの顔でもこれほどまっすぐに伝えてくるのかと驚くくらいに、その瞳は強い意志を秘めていた。

 己の為せることを、為すと誓った親の顔。

 

『まず……そこの、ヒノクニの武士(もののふ)の方』

「は……い!? 拙者でござるか!? 主殿でもリン殿でもなく!?」

『ええ。名乗りなさい』

「ははっ……! 拙者、姓を鬼龍、名を山茶花と申します!」

「えっサザンカさん苗字あったんだ?」

『みゃ!』

 

 そしてノワールさんが何故か急にサザンカさんに声をかけ、名乗らせた。

 相手が伝説のドラゴンだもんでサザンカさんも礼を尽くして平伏し、丁寧に己が名を名乗る。

 しかしそこで初めて出てきたサザンカさんの苗字。えっ。初めて聞いたわ。

 サザンカさんも偉い家の出身だったのか……?

 まぁでもそんな感じはあるよな。品のあるたたずまいだし料理とかも出来て所々お嬢様な感じあったし。

 

『……姓に龍の一字が在りますか。面白い。なれば貴女に新たな力を授けましょう。サザンカ、折れてしまった貴方の刀をこちらに』

「……刀を?」

 

 ノワールさんが続ける言葉に、俺は一つのシチュエーションに思い至った。

 高位の存在に、己が武器を捧げる行為。

 これは俺にも経験がある。その瞬間は気絶していて見れなかったが、それを果たすために遠征をした近い記憶が呼び起こされる。

 

 これは─────魔装具の鋳造だ。

 

「こ、これでよろしいでしょうか?」

『ええ。ではそれを私の口の中に』

「口に!?」

 

 サザンカさんが討ち捨てられていた大太刀の、バアルにへし折られてしまった刀身と持ち手をそれぞれ拾い上げて、ノワールさんの前に持っていく。

 そこで頭だけでもサザンカさんよりも大きなノワールさんのドラゴンマウスがあんぐりと開いて、ここに置けとばかりに舌がべろんとサザンカさんの前に出された。

 恐縮しながら、おずおずと舌の上に己の折れた刀を置くサザンカさん。そのままノワールさんがごくんと刀を呑み込んでしまった。

 

『うん……良い刀です。鋼の質もよいし手入れも十分に。闇の力でブーストされた幹部が相手でなければ防具のみの魔装具を装備した状態でも刃が通ったでしょうね』

「……ノワール殿。まさか、その刀を魔装具にしていただけるので……?」

『ええ。ロック=イーリーアウスの過剰な魔力のお陰で私の体内には十分以上の活性魔力が溜まっています。寿命を延ばすことはできなくとも、死ぬ前に出来ることが増えた。リンに継承するために使う魔力以外は、この刀に全てを注いでしまいましょう。それがロック=イーリーアウスのためにもなり、連なってリンの為にもなるのであれば』

「なんと……!? そのような厚遇、拙者には……!」

『力があっても武具がなければ果たせぬ契りもあるでしょう。私も此度の魔王の襲撃で完全に魔族側と袂を別ちました。闇のマナが枯れた以上、それを復活させる権利は管理人にしかない。魔族はもう次代の闇の管理人(リン)に手出しはできないのです』

 

 雑談をしながらも、もごもごと口を動かしてノワールさんがサザンカさんの刀を何やらいい感じにしている。

 魔装具の鋳造……精霊に依頼してやる手段しか俺は知らなかったが、まさかマナを護るドラゴンも同じようなことができるとは。びっくり。

 

『……完成しました。受け取りなさいサザンカ。貴方の闇を祓う新たなる剣です』

「ははっ! ……確かに、受け賜りました!! 不躾ながらノワール殿、この刀に銘を頂きたく……」

『ふむ。そうですね……闇の竜の魂を注いだ逸品。名付けるならば……魔刀【黒鴉(くろがらす)】でどうでしょうか』

「黒鴉……」

『私の写し身たるその刀で、必ずや魔族を打ち滅ぼしてくださいね』

「承知! 今度こそ拙者は主殿を護り、魔族を悉く鏖殺しようぞ!!」

 

 鋳造を終えた大太刀がノワールさんの口からサザンカさんへ下賜される。

 銀色だった元の大太刀から一変、刀身も鍔も握り手も漆黒に染まっている。おどろおどろしいオーラを纏うその魔装具がサザンカさんの新たな武器となった。

 これならばたとえ闇のマナで強化された魔族幹部だろうと一刀両断されるであろうと思えるほどの殺意が刀に籠められていた。

 もしかしなくてもノワールさん割とブチキレだった説あり寄りのありか?

 まぁ久方ぶりの娘との感動の再会のシーンにいきなり割り込まれて殺されかけたんだもんな。そりゃキレるか。

 

『……そして、最期にやることは……リン、貴女に私の力を受け継いでもらうことです』

「おとうさん……」

『先ほどはよく私の命を繋いでくれました。有難う、我が子よ。これで私は貴女に全てを託して逝ける』

「……しななきゃ、ダメなの? もっとおはなし、できないの……?」

『時間がありません。私の命も、襲われている王都も……時がそれを許さない。()()()()()()()も、貴女ともっと話ができないのを悲しく思います』

「おとうさん……!!」

 

 最期に、リンに力を継承することを決めたノワールさん。

 リンに向き直り、正面からリンを見据える。

 リンも名残惜しく悲しそうな表情で受け止めて、親との僅かな時間でも会話を求めるが、ノワールさんがそれを許さない。

 二人の周囲に魔力が励起する黒い光がふわりと浮かび、継承の儀式が始まった。

 

『私から注がれる力を受け入れて。そうすれば、私の知識も、マナの管理人としての権限も、私の力も……全て、貴女に受け継がれる。継承するだけの魔力は十分にありますから、リンの体内にある魔力炉心が活性化されるでしょう』

「うっ……う? なにか……おとうさんが、わたしのなかにはいってくる……? あつ、い……っ!!」

「リンの台詞だけ聞くとちょっとインモラルエッチ感あるな」

「マスターもうちょっと時と場合を選んで口を開きませんか?」

『みゃあ』

 

 イレヴンに頭ひっぱたかれながらも、継承の儀式を見守る。

 闇の光に包まれたリンに、ノワールさんから光が注がれていく。

 

『……ロック=イーリーアウス。リンを任せましたよ。どうかこの子を愛してあげてください。不甲斐ない親からの最期のお願いです』

「まっかせてくださいよォ!! いつまでも笑顔でいられるくらい幸せにしてやりますよこの俺がッ!!」

「……この根拠のない前向きな笑顔が、いかにもマスターらしいというか」

『みゃあ』

『ふふ。窮地に陥っても笑って前を向ける……貴方のような人間が英雄と呼ばれるのかもしれませんね』

 

 その途中、全てを娘に託す最中のノワールさんから後を頼む的な事を言われて、俺は全力で胸を張って応えてやった。

 リンは俺の娘兼嫁だからな! そりゃもう大切にしますよそれは約束しますよ!

 ハーレムは諦めないけど! リンもそれでいいって言ってくれてるし! この場にいるメンバー全員俺の嫁だけどみんな幸せにしてやるからな俺が!! どうやるかは未定!!

 

『……ヒルデガルド。リンのことをお願いします。見守ってあげてください』

「任された。リンは私の妹のような存在だからな、一人前になるまで見守ってやるさ。お前はよく働いた……ゆっくり眠れ、ノワール」

『有難う、我が盟友』

 

 ヒルデガルドさんにも遺言のように願いを残すノワールさん。

 己の終わりを感じ取っているからだろうか。声色がとても優しくて、聞いているだけで郷愁が胸に広がる。

 

「おとうさん……!!」

『リン……我が子よ。名前はその鈴の音から取られたのでしょうか。……物心がつかない頃に、ドラゴニュートである貴方が女性として生まれたので、私が手慰みで作った鈴ですが……すっかり気に入って、あげた日にはずっと頭を振って鳴らしていましたね。今も大切にしてくれているのですね、リン……』

「うんっ……おとうさん、わたし……う、ぐ、ぐ……!!!」

『私は消えるわけではありません。私が継承してきた全ての想いは貴女に受け継ぐ。貴女の想いを私は貴方の中で感じられる。貴女のことを、私はいつまでも見守っていますからね……』

「────あ、ああ───────ッッ!!!」

 

 ノワールさんの体から注がれる魔力光が一層強い闇の輝きを放った。

 同時に、ノワールさんの全身が透明になっていく。粒子化して消える魔物の死とはまた違う変化だ。

 徐々に存在が希薄になっていき、その全てはリンの体に注がれて。

 

 そうして。

 

 

「…………おとう、さん……─────」

 

 

 光が収まり、そこには管理権を継承した次代のブラックドラゴンが。

 天を仰ぎ、涙をはらはらと流すリンが遺されたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『─────いやまぁ私の意識はこの魔刀に残っているのですが』

 

「なんとぉっ!?」

『みゃあ!?』

「おとうさん!?」

 

 そして急に喋り出すサザンカさんの魔刀。

 ええ(呆れ)。

 感動の別れのシーン台無しだよゥッ!!

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 はい。

 とりあえず現状を整理します。

 

『ロック=イーリーアウスの遺してくれた魔力のお陰で、こうして私は魔装具の鋳造に過剰魔力を注ぎ込むことが出来るようになり、意識を残せたわけですね』

「成程。しかしそれほどの力が込められているとなると……魔装具としてのランクも相当なものになっていそうですね」

『Sランクです。この大太刀よりも魔族に特効になる武器は貴方だけでしょうね、イレヴン』

「恐縮です」

「うむ……リン殿の親御殿の意思が込められた刀を扱うことになろうとは、今日の今日まで想像すらできなかったでござるな」

「おとーさん、ぶきになるのってどんなかんじなの?」

『悪くないです。大きな体を支えなくてよくなりましたから』

 

 ノワールさんが俺が注いだ魔力の全てを振り絞り、サザンカさんの折れた刀を鋳造して最高級の魔装具になり、そしてリンへも管理権を継承した。

 これでノワールさんはポータブルノワールさんになったわけだ。

 持ち運びできるドラゴンブレード。面白。

 

『さて……リン。管理権を継承した貴女なら、今の闇のマナの状況を完全に把握できているはずです。理解りますか?』

「……うん。ほんとうは、あふれでるマナをかんりにんのわたしがおさえてなきゃいけないんだけど……とまってる。ロックのギルドカードがはさまってつまってる……」

「俺のギルドカードはどうしてそんなことになっちまってんだ」

「やったのはマスター自身ですよね?」

「まぁそうなんだけどさ。ただ夢中でマナの奔流を捌き斬りして落ちてって落下頂点に突き刺しただけなんだけどなぁ……」

「お前は凄まじい事をしているんだぞロック=イーリーアウス。マナの流れに干渉できるのは管理人たるドラゴンだけなのだ。それは絶対の世界の理……それをお前は、ギルドカードなどという道具で干渉し、流れそのものを止めるなど。聞いたこともない」

「ほえー。……でもアレっすよね? 闇のマナの発生が止まってるってことは……」

 

 続いてリンが受け継いだ闇のマナの管理権を受け継ぎ、新たな管理人になったという事。

 ノワールさんの本体の寿命がもう僅かになってしまい、魔族の襲撃がまたいつ来るかもわからない現状では受け継ぐしかなかったってのは分かる。そこはリンも呑み込んでるし見た目は何も変わってないから俺もいい。

 でも話の中で俺は一つ、考え付いたことがあった。

 

「魔族にとっちゃ今の状況ってマジでキツい状況なんじゃないです? これまでノワールさんが管理してた闇のマナだって少しずつ世界に溢れて、今はさっきの大噴火で世界中に闇のマナが広がったけど……それだって魔族が消費すればもう供給が無くなるわけですよね? 魔族の活力の源が止まってるってのは人類側にとっちゃとってもナイスな状況なのでは?」

『その通りです。本来は人類と魔族、どちらにも与せずにお互いの力のバランスを取るのが闇のマナの管理人の使命なのですが……不可侵条約は向こうが破った。私の命を狙い、リンすらも狙った魔族に対して私ももう容赦はしません。滅ぼしましょう』

「おとーさんこわい」

『みゃあ』

「魔族どもは文字通り()()に触れたのだ。触れずであればノワールも人類側に与そうとは思わなかっただろうが……虎の尾を、いや、竜の尾を踏み抜いた」

 

 それは、闇のマナが全く発生していない現状は魔族にとってかなり際どい状態なのではないか、という推理。

 アイツらの力の源は全て闇のマナだ。あらゆる属性を上手く使って力に変えられる人類とは違って、魔族は闇の魔力を力の根源としている。

 その根源がたまたま俺のせいで止まっちまったなら、それは魔族にとってかなり厳しい状況のはず。

 

『再び魔族を滅ぼしてから、リンが管理人として改めてマナの源泉を再起動すればよいでしょう。それまでは枯渇させる。ロック=イーリーアウスが封じた状態を見る限り、アレは管理人でなければ弄れない状態ですから……今王都に侵略している魔族の大群を滅ぼせば、人類側に大きく戦況は傾くことでしょう』

「成程……図らずもマスターを落下死させようとしたことで、たまたまではありますが魔族にとって極めてまずい状況になってしまったのですね」

「バアルのやつざまぁ。後でダブレスちゃんに怒られちまえあの筋肉ホモ」

「拙者の刀を折った魔族でござるな。あ奴め……次は主殿に触れさせもせぬ。ノワール殿より賜ったこの刀があれば、次は必ず……!!」

 

 封じられた闇のマナは管理人であるリンじゃないと再起動できないと元管理人のノワールさんが保証してくれた。これはありがてぇ。

 なら俺たちのやることは決まった。ここでやることはもうない。

 

「じゃあとりあえず急いで王都に帰るぞ!! これ以上ここにいてもまた魔族どもが襲ってくるかもしれないし!! リンが管理権受け継いでもここにいなくてもいいってんなら一旦王都に戻って……そんでみんなを助けねぇと!!」

『みゃあ!』

 

 王都が攻め込まれているのを助けに行く。

 魔族の幹部級がこっちに襲って来てて、んで俺らを片付けたと思って転移魔法で移動していったが……あいつら全員が侵略軍に混ざってたらかなりヤバい。

 この場じゃ闇の魔素が濃すぎたことで俺らも苦戦を強いられたが、まだ王都までは闇のマナの奔流は届いてないだろう。今はまだ。でも時間が経ったら?

 空を見れば遠くの空は未だに闇に染まっている。元栓を締めても流れ出た闇のマナはしばらくは漂うだろう。

 それが王都に届いて、軍勢全体が強化されて、さらに魔王や将軍共が襲撃してたら……いくら王都には優秀な冒険者や王族の人たち、騎士団がいるとしてもかなり厳しい感じがする。

 そもそも魔装具がないと殺せない魔族の軍団だ。攻め手が足りないだろう。

 なにせここにいる俺以外の全員が王都でもベスト5に名が挙がるであろう魔族特攻戦士たちだし。

 

「ええ、主殿の言う通り……大至急王都に戻り、迎撃する必要がありましょう。しかし……」

「……遠いのです。私がバイクに変形し、全速力で走ったとしても王都まで10時間はかかってしまうでしょう……それもマスターに相当な負荷をかけることになる。グランガッチに戻りそこから転移陣で王都に向かうにしても同じくらいの時間はかかります。今まさしく攻め込まれてしまっているとなれば……」

「んなこた言われなくてもわかっとるわい! それでも行くしかないやろー!! あそこにはガキ共もシスターもいるんやぞ!! それまでみんなが粘ってくれるの祈って駆けつけるしかないやろがい!! イレヴンなんかワープ的なスキル開放できねーの!?」

「すみません、私は転移系のスキルは習得できません……あれは魔族の中でも将軍クラスと魔王しか習得できない特殊な魔法なのです。人類側であれを使うためには街かダンジョンに転移陣を組み込んで使うしかありません」

「ぐぬぬ!! じゃあ仕方ねぇなやっぱバイクで行くぞ! とりま山から降りないとだからまたダイブブースターで……」

 

 しかしイレヴンに聞けば当然にして王都まで大変距離がある現状を指摘されて。

 ワープ的な手段も今の俺らには使えない。ノインさんならその辺詳しいから、マナ溜まりであるここなら転移陣を刻んだりも出来るのかもしれないけれど。俺らにはムリだ。

 とはいえここで他をこまねいているなんて言う選択肢はない。何としても大至急王都に行かなければならないのは間違いないのだから、行くしかないのだ。

 そうしてここに登って来た時のようにイレヴンに抱えてもらって下山しようとしたところで、しかし。

 

「────だいじょうぶ。ロック……わたし、なんとかできるよ」

「え?」

『みゃ?』

 

 リンが俺の顔を見上げて、笑顔でそんなことを言ってきた。

 え、何。空飛ぶ速度が上がったとかそういう話?

 でもバイクとそんな速度変わらなかったよな? それにお前の小さな体じゃ俺らみんなを連れて行くなんてできるはずもなくて……とそんなことを考えていると。

 

「わたし、おとうさんのちからをうけついだもん。ドラゴンがせかいでいちばんはやくそらをとべるの。そしてくろをすべるわたしたちは、すべてのドラゴンのなかでもさいゆうのそんざいだから……うん。できる」

「リン……?」

 

 いつも通りの舌っ足らずな声色で、しかし少し大人びた雰囲気でリンが言葉を紡ぐ。

 少し俺たちから離れるように歩いて……そうして距離を取ったところで。

 

「うぉっ!? リン!?」

『みゃあ!?』

「これは……!?」

「……っ、なんと……!?」

 

 唐突に、リンの体が光を放つ。

 その眩さに直視すら難しくなり、そして次第にその光が大きくなっていって。

 

「……ドラゴンにおける管理権の継承とは、先代管理人の持つ全ての権能を受け継ぐことに相違ない。力に目覚めたか、リン……」

『……立派ですよ、リン』

 

 光が収まり眼を開けば、その小さな体は、見たことのない巨躯に変貌して。

 ノワールさんを思わせる漆黒のドラゴンがそこに存在していた。

 

 

『─────いこう、ロック。みんなをたすけに!!』

 

 

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