勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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107 優柔不断のトロイメライ

 

【side ノイン】

 

 ────私は、自分勝手なのだと思う。

 

(……ロック、くん……)

 

 魔王軍襲来の報告と、ロックくんの訃報を聞いた私は、後者の絶望で心を満たすことを選んだ。

 王族としての使命ではなく、一人の女として嘆くことを選んだ。

 お父様、兄様、姉様方が王都の民を守るために絶望に抗おうとする中で、己の絶望を否定するために己を使った。

 

 王族としては失格だろう。咎められる理由は或る。

 でも、そんな私に一言も怒りはしなかった。みんな、優しく慰める声をかけてくれて、そっとしてくれた。

 優しい家族、だったのだろうと思う。こんな時にそれに気づくのだから、本当に度し難い。

 

(ロックくん……騎士が約束破っちゃ駄目なんだよ……? キスまでしか、まだしてないよ……)

 

 そして、私はその上でやっぱり自分勝手だった。

 自分本位で卑怯な女だった。自分の事しか考えていなかった。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()、それしか考えていなかったのだ。

 

「……姫様。王都軍と魔王軍の戦闘が始まったようでございます」

「…………」

 

 王城の自室で、モノクル型の魔導器を弄って前線と対策本部の様子を確認してくれるルドルフが声をかけるが、一心不乱に作業をする私は返事を返さなかった。

 部屋に隠して保管していた、私の魔力を籠めた宝石たち。この部屋の中にあるそれだけで、冒険者全員と魔力比べできるだろう圧倒的な魔素の量。

 これまで蓄えてきたらこれらを使って……私は、一つの奇跡を為そうと考えていた。

 

 ロックくんの蘇生。

 

 命在る者にのみ……プレイヤーのみ使用することを許された蘇生魔法。

 この魔法は莫大な魔力を用いることを条件に、奇跡を起こす。

 人類側の、死を覆す唯一の手段。魔族や魔獣は魔素が溜まる事で自然復活するが、人類は死んだら終わりだ。この魔法を使わない限り生き返らない。

 

 ただし蘇生魔法は条件が多い。

 基本的に、死亡後に蘇生するにあたっては、プレイヤーならば復活に関する制限は緩い。死んでから何日経ってもシステム上問題なく復活する。

 しかしAINPCはその条件に当てはまらない。NPCは死亡後に時間が経過し、亡骸が埋葬されてしまえば、そこから復活をさせることはできないのだ。

 かつて私がプレイヤーとしてこの世界でゲームをしていた時はそのような縛りがあった。NPCの命が軽んじられていた。

 普通に蘇生魔法を使うだけではロックくんは復活させられない。

 

 それでも。

 

(蘇生魔法に通常使用する魔力の数十倍の魔力を注ぎ込む。魔法の威力を高めるブースト系の魔法を併用して、出来ればホエール山脈に向かって亡骸を見つけてその目の前で。そこで魔法が上手くいかなければ蘇生ではなく再構築を試みる。それでも駄目なら賢者の石をもう一度掘り起こしてでも奇跡を願う。絶対に諦めてあげない。もう一度キスしてくれるまで私は君を忘れない)

 

 今は、こうせずにはいられない。

 別れのキスで物語を終わらせたくない。

 もう一度君に会いたい。

 

「……魔王軍は押し留められているようですな。カトル様とティオ様が獅子奮迅の活躍をなさっているようで……このまま耐えきることができれば、もしかすれば魔王軍が撤退出来る所まで消耗戦が展開できるかもしれません。尤も人類軍側の被害も……小さくはないようですが」

「っ…………」

 

 ルドルフの言葉の、その意味を咀嚼して、僅かに思考してしまう。

 王城にまで僅かに届く、戦争の喧騒。

 今、ロックくんの事しか考えていない私の耳に届く、命懸けで戦っている冒険者や家族である王族の鬨の声。

 こんな、自分勝手な事しか考えていない私に比べて……今を必死に生きているAINPC(みんな)の命の音。

 

 ……自分の矮小さが嫌になる。

 

 みんなを助けたい。その気持ちも確かにある。

 けれど、時間がない。ロックくんの死亡通知が届いてからもう3時間は経過している。

 半日を過ぎて、一日を過ぎてしまっては……蘇生確率は絶望的に下がる。

 グランガッチに転移して、そこからホエール山脈に飛んだとして、私の最高速でも6時間はかかるだろう。その上で新エリアの魔獣と戦いながら登山しなければならない。

 私のレベルは限界突破後の再上限である200。このレベルがホエール山脈を攻略するにあたって適正レベルなのか分からない。私も知らないエリアだからだ。

 そのために全力を注ぎこまなければならない一方で、王都襲撃のイベントも同時に始まってしまっている。

 これが以前の時代、150年前のプレイヤーが雨後の筍のように存在する時代であれば、レベル上げのよいイベントだと何人でもプレイヤーが戦争に参加して絶対に止めてくれるだろうに。

 

 助ける暇はない。助けたい。

 でもロックくんが一番大切。でも。

 だけど。

 それでも。

 

 私の悩みは一層深まり、片手を額に当てて目を閉じて悩む。

 

 転生者として生まれた私の拠り所。

 王族として育った私の責務。

 

 両方に手を伸ばすことは叶わない。

 どちらも零したくないと思ってしまう。

 

(ロックくん……!! みんな……!!)

 

 頭を抱えて膝をつきそうになって、思い出したように涙が零れそうな、そんな時だ。

 

「───むっ……闇の魔素が世界中に満ち始めたようですぞ! まもなく王都にたどり着いて!! これは大変宜しくありませぬ……!!」

「な─────っ!!」

 

 ルドルフの慌てた声を切り口に、世界中に闇が広がって。

 間違いない。これは何度も見たことがある。闇の魔素が大気中に溢れている現象だ。

 この世界に転移してからは闘技場やグランガッチで見た。生前のゲームの中では、第三部の最終決戦の時に魔王軍と戦った魔族領の荒野でこれが発生した。

 経験があるからこそ、これが引き起こす惨事が理解できてしまう。

 魔王軍が、魔族が活性化して人類軍が押し返される。

 全滅する。

 

「……………………ッ!!!」

 

 悩んで、考えて。

 この世界に生を受けてからの19年を想い返して、ロックくんと出会ってからの4年間も脳裏によぎって、私の出した結論は──────

 

「────ルドルフ! 王城の最上層、鐘楼の間に向かいます!!」

「御意」

 

 ()()()()()()()()

 

 ロックくんの蘇生は諦めきれない。

 けれど、さらに戦争が人類側にとって危機的状況になってしまったこの闇の魔素が広がる状況において、どうしても彼らを、家族を、王都を見捨てる選択が取れなかった。

 まずはこの場を収める。人々を支援する。

 準備した全ての魔石を手に取って部屋を飛び出して、私はこの王都オーディンの王城の最上層、大鐘楼が設置されている天辺までルドルフと共に走る。

 

 そこには、この国の守護結界の管理装置があるのだ。

 

 グランガッチでもやったように、この国の守護結界に私の光の魔力を注ぎ込む。

 それで一時的に範囲を拡大させて、闇の魔素からこの国を守る。戦場に満ちる闇を祓う。

 その間に魔族の進軍を抑えられれば。少しでも撤退できる人が増えれば。

 もう手遅れなのかもしれないけれど、それでも……もう、私は選んだ。

 

 ごめんなさい、ロックくん。

 優柔不断な私でごめんなさい。今更なんだと呆れないでください。

 この世界と天秤にかけられるくらい、貴方の存在は私にとって大きかったの。

 君が約束を守ってくれなかったこと、きっとずっと恨むから。

 

「はぁっ、はぁ……!!」

 

 加速魔法や身体強化魔法に余計な魔力は廻していられない。運動不足な体を廻して最上階まで駆け上がる。

 闇の魔素が広がって数分。とうとうそこにたどり着いた私は、この国の一番高い所で遠くの戦場を見渡した。

 黒き空の下、未だに人類軍は魔族の猛攻をしのいでいる。炎と水の柱が上がり、最前線を維持している様にも見える。

 だが魔王軍側の活性魔力が凄まじい事になっているのはこの遠方からでも見渡せた。一刻の猶予もない。

 

「ノルン様!? なぜここに……!?」

「守護結界を強化します!! 下がって!!」

 

 この戦争に於いてこの国の心臓とも言えるここを守るべく配置されてた兵士たちを下がらせ、操作を始める。

 世界中が闇の魔素に満ちてしまっているこれを弄るにせよ準備が必要だ。時間はかかってしまう。

 それまで何とか粘っていてほしい。全滅してしまっては結界を広げる意味がなくなるから。

 

「───むっ。…………おお、なんと!?」

「どうしましたルドルフ!?」

 

 しかしそこでルドルフが再びモノクル型の魔導器を操作して、急な大声を上げた。

 何か戦場で起きた? でも今はそれを気にしている暇はない。

 早口で問い返す私の声に、しかしルドルフから帰って来た言葉は。

 

「魔素が広がった方角から、超高速で飛来する魔獣……黒いドラゴンが接近しているとの報です!! 超巨大なブラックドラゴンが、闇の魔素を切り裂きながら王都に向かって来ているようですぞ!!」

「えッ─────」

 

 唐突な黒竜の襲来。

 私達にはその存在に猛烈な心当たりがあった。つい先日まで共に旅をしていたロックくんの愛娘、リンちゃんがその子供で。親御さんのドラゴンの元へ向かっていた筈で。

 そのブラックドラゴンはこの世界の闇の魔素を管理していた筈で。きっとそこで、ロックくんが斃れたはずで。

 

 でも。

 そんな。

 まさか──────

 

「──────あ」

 

 最高レベルの遠視魔法をかけて、遠くの空にそれを見つけた。

 身長が50mはありそうなほどの巨躯のブラックドラゴン。

 一直線に王都に向かって来ている彼女の、その背中に。

 

「あ─────」

 

 赤い鱗を纏うドラゴニュート、ヒルデガルドの姿と。

 

「あ─────」

 

 深紅の鎧に身を包むヒノクニの武士サザンカの姿と。

 

「あ─────」

 

 彼の従者にして対魔獣用決戦兵器、イレヴンの姿と。

 

「ああ……!!」

 

 フードに猫を携え、にやけた顔で真っすぐにこちらを見据える、ロックくんの姿があった。

 

 

※    ※    ※

 

 

「……ほほ。()()()()()()、この戦」

「っ~~~!!」

 

 私と同じように遠視魔法を使ったのだろう、ルドルフも黒龍の背に誰がいるのかを察して確信をもって笑みを深めた。

 私はぶわっと零れる涙を拭い、それに同意するように頷く。

 

 喜びが全身を満たして、世界に色が戻った。

 無限に活力が復活するような感覚を味わいながら私は一つの決断を果たす。

 

「作業を継続します!! 守護結界に回復属性を付与して王都周辺2キロまで拡大させる!! ルドルフには即座に手配してもらいたいことがあります!!」

「如何様にもお使いくだされ。どうなさいますかな」

「王都軍に伝令を! 前線で命を落とした冒険者や兵士の亡骸を大至急正門前の広間に集めさせて!!」

「ふむ。どのようになさるので」

()()()()()()()!!」

「なんと」

 

 今この場に集めている魔石をすべて使い、犠牲となった人々を生き返らせることに決めた。

 指示を受けたルドルフは驚きに声を上げながらも、シュバッと姿を消して戦場に向かってくれた。きっと最速で私の命令を遂行してくれるだろう。

 

 生き返らせようとしていたロックくんは生きていた。

 ちゃんと、グランガッチで果たしたキスの約束通り、私の元に戻ってきてくれた。

 私は彼を信じきれなかった。

 あの子が、女との約束を守らないはずがないのに。

 

 その罪を償う……というわけではないけれど、この戦争に於いて何もできなかった私の、せめてもの罪滅ぼしをする。

 死んでしまった人々を蘇生する。

 幸いにして戦場はすぐそこで、守護結界による光の魔力を維持してそれを蘇生魔法に廻せる。

 広範囲に一度に蘇生魔法を掛けられる。

 

 障害になる懸念のある闇の魔素は、今まさしくブラックドラゴンがすべて吸収し、浄化してくれている。

 ちらりと戦場の方を見れば、とてつもない熱量の、ジブリ映画で見たような熱線が魔族に放たれて、魔王軍が壊滅している。

 行ける。ロックくんがここに間に合ったならば、ここから負けることはないはず。それくらいは信じられる。

 

「術式再構成完了……! 私が守護結界を拡大展開した後、誰もここに近寄らせないでください!」

「ははっ!!」

「では行きます……守護結界、最大拡張展開(フルワイドクリエイション)────!!!」

 

 守護結界の装置への術式入力を終えて、私は手持ちの魔石の半分を用いて魔力を注ぎ込み結界を拡大展開する。

 戦場となっていたその全域に、回復属性を付与された守護結界を広げきった。

 これで下準備はOK。

 あとは現場に赴いて蘇生魔法を放つのみ。

 現場の保持は兵士に任せて、私は最上階から飛び出して飛行魔法で戦場に向かった。

 

「……おお!? ノルンか!? この守護結界の拡大はお前の仕業か!?」

「そうです、ウィリアム兄様!! その節は色々と申し訳ありませんでした……でも、今は!!」

「ああ、ルドルフから聞いている!! 戦死者の体は順次集めさせている!! 前線はロックらが既に壊滅させ、大将首も討ち取ったという話だ!! そちらは心配しなくていい!」

「分かりました! ですが急いで……!!」

 

 到着した正門前の広場には、既に数百を超える死者の体が集められていた。

 改めてその躯に向き合い、自分がどれほど軽薄な考えでいたのかを突き付けられるようだ。

 心底から申し訳ないという気持ちが沸き上がる。ロックくんを優先するあまり、こうなる事から目を逸らしていたなんて。

 ごめんなさい。でも、責務は果たすから。

 

「しかし……ノルンよ、本当にできるのか? 蘇生魔法は150年前の冒険者飽和時代、限られた冒険者しか会得しなかった奇跡の魔術。文献によればエルフですらその魔法は扱えなかったと聞く……いくら天才のお前であっても……」

「大丈夫です。それを果たさなければならない責任が私にはありますから……!」

 

 次々と運ばれてくる戦死者たちの前で、ウィリアム兄様に問われた疑問については意志を籠めた瞳で返事を返した。

 やらなければならない。ロックくんが、この国に住む冒険者たちが命懸けで掴み取ったこの戦争の勝利に、暗い影を残してはならない。

 自分が想像していた以上に死者が多く、蘇生魔法が十分に広がるか不安もあるが……やり遂げる。この身に備えた魔力をすべて使い果たしたとしても、必ず。

 

 そして数分の後に、確認できる限り全ての死者が集められた。

 

「では、やります!! 結界同調……魔力リンク、発動! 蘇生魔法──『リコンストラクト・フルオーバー』!!」

 

 全身の魔力を守護結界と連携させ、最大出力で蘇生魔法を広場に安置されている死体へ放つ。

 因果の逆転を、輪廻の否定を司る術式が広範囲に放たれる。

 欠損した死体はその肉体を徐々に再生させていき、命無き肉体たちに再び魂が形成されて行く。

 

 だが、しかし。

 

「くっ……う、う……!?」

「ノルン……!?」

 

 想像以上に、魔力の消費が激しい。

 持ってきた残る半分の魔石ももちろん順次消費して、全力で蘇生魔法を掛け続けているが、流石に1000人を超える人間を蘇生させるのは守護結界の支援を伴っても難しいものがあったのかもしれない。

 この魔法は最終工程である魂の定着までかけ続けなければ失敗となってしまう。

 それだけは絶対に避けなければいけないが、しかし、私の体内リソースの魔力はどんどん消費されてしまい、次第に底が見え始めて来た。

 

(そう、か……!! 私の意識はプレイヤーでも、この体がNPCだから……!!)

 

 そこで私は原因に思い至る。

 今ここにいる私は転生を果たしたそれであり、プレイヤーとして覚えているチート知識で色んな魔法を覚えたりはしていても、体自体はAINPCと変わらないもの。

 限界突破が出来ているのは私がプレイヤーだから、ではなく……恐らく、150年前にサービスが終了してログアウトしたプレイヤーたちが乗っ取りAIでNPC落ちした、その血縁であるからなのだろう。

 だからこそ私だけではなく、王族のみんなやカトルくんとか、通常の冒険者も本来AINPCではできないはずの限界突破を果たしている。

 プレイヤーの能力を血縁という形で継承しているのが今の世界なのだ。

 だからこの私の体も純粋なプレイヤーではなくNPCの体であることは間違いなくて。そして、だからこそ本来NPCには扱えないはずの蘇生魔法を使う私に、尋常ではない負担がかかってしまっているのだ。

 

(ま、ずっ……!!)

 

 限界がすぐ間近に迫っている。

 魔力が枯渇してしまえば、残るは私自身の生命を……HPを魔力に変換して絞り出す必要がある。

 大至急魔力を補給しなければならないが、この魔法にかかる魔力放出量は甚大。並大抵の冒険者では、私に魔力を供給しようとした瞬間に魔力切れになるだろう。

 王族の兄姉たちでも同様だ。

 ()()()()()()()()魔力を借り受けなければならなくて。

 

 でも、そんなとき。

 私が困っている時は、いつだってきっと。

 

 

「────うおおーっ!? なにこれ何が起きてんのォ!? ノインさんっ!?」

 

 

 彼が助けに来てくれるから。

 

 

『蘇生魔法を試みているようです! まさかこの時代にまだこの魔法の使い手が……!? しかしセンサーではノインの魔力は枯渇寸前です! マスター!!』

『みゃあ!!』

「なるほど完全に理解したわ!! ノインさんお手伝いしますね答えは聞いてないけど一応ハグOKっすか!?」

 

 イレヴンバイクで駆けつけてくれたロックくん。

 蘇生魔法の光で気付いてくれたのか、それとも彼の勘が囁いてくれたのか。

 分からないけれど、これ以上ないタイミングだった。

 心に再び希望が満ちる。

 キミがいてくれるなら、私はきっと何でもできる。

 

「……おねっ、がい……しますっ……!!」

「よっしゃー!! 本日二度目のいくらでも魔力持ってけ合法ハグ行きますッ!! 性欲ッッ!!!」

 

 彼の言葉に頷くと、満面の笑顔になってバイクから飛び降りて、私の背中からぎゅうっと私を抱きしめてくれるロックくん。

 彼の手は全く躊躇い無く私の胸に伸び、形が変わりそうなほど熱烈にかき抱いてきたけれど……同時に、その手から、全身から溢れるほどの魔力が生成されて私に注ぎ込まれて行く。

 その感覚に小さくない情欲も芽生えつつ、しかし私はこれで無限の外付け魔力生成マシンを手に入れた。

 光が弱くなっていた蘇生魔法が、再び輝きを取り戻し、更にまばゆく天にまで光の柱が広がって。

 

 そして、1分ほどの魔力使役の後に。

 

「……あ……?」

「……ぐ、なに……?」

「あれ……俺は、やられて……?」

 

「─────ふぅっ……!!!」

「おおっ!! やったぜノインさんすっげぇ!!」

 

 死者が、次々と蘇り始めて。

 蘇生魔法は、成功した。 

 

「─────奇跡だ……」

 

 ウィリアム兄様の呟きは、その場にいた兵士たち、冒険者たちに広がって。

 戦場を見渡せば、守護結界が広がった先、既に生存している魔族はいないようで。

 ブラックドラゴンとサザンカと、他の冒険者たちによって見事に壊滅させられていて。

 

 そして、次の瞬間に。

 

「──ウオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

 

 勝利の鬨の声が、王都に木霊した。

 

 

 

 そして、私は。

 

「ロックくん」

 

「ん」

 

「──おかえりなさい」

 

「んっ!?」

 

 約束を果たしてくれた愛する人に、再びのキスを交わしたのだった。

 





■時系列整理


今朝
ロック側:ホエール山脈登頂開始
人類側 :まだ平和

10:00ごろ
ロック側:ノワールと出会う
人類側 :まだ平和

10:10ごろ
ロック側:魔王が攻めてきてロックが奈落に堕ちる 闇の魔素が世界に広がる
人類側 :魔族の軍勢を発見した上にロック死亡の訃報

10:25ごろ
ロック側:闇の魔素の広がりを止めてリンが権能を継承して飛び立つ 片道3時間の空の旅路
人類側 :やべーぞ! ってなってる ティオとノインが意気消沈

12:20ごろ
ロック側:闇の魔素を吸いながらあと1時間くらいで王都到着
人類側 :戦闘開始 カトルとティオがめっちゃ粘る

13:20ごろ
ロック側:もうちょい!
人類側 :1時間は粘ってたが闇の魔素が王都に届いてさらにやべーぞ!ってなった
ノイン :ここで決意して守護結界を操作しに向かう

13:30ごろ
ロック側:王都に到着! おぬしこそ真の三国無双よ!
人類側 :少なくない犠牲は出たが何とか堪え切った
ノイン :愛しの彼が生きてたのでプラン変更で死亡者蘇生に

13:40ごろ
ロック側:ベルゼビュートも殺して魔王軍ほぼ全滅 結界が広がった後にロックの勘が響いたので正門前に移動
人類側 :ノインの指示で戦死者の亡骸を広場に集めた
ノイン :守護結界を広げて正門へ飛翔

13:50ごろ
蘇生魔法→ロック合流→蘇生成功→キス


1時間30分で戦争終わってる!
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