勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
王都で起きた大戦争が終結して5時間ほどが経過した。
「おに゛いちゃぁぁん゛……!! いぎててよ゛がっだよぉぉぉ……!!」
「だからごめんて」
『みゃ……』
そして今、酔いどれになった愛する妹ティオにずーーーっと抱きしめられて泣かれまくって涙で服がびしょびしょで辟易し始めたのが俺とミャウです。
やめろよこの服『リーゼ』で作ってもらったかなりいい素材のやつなんだから! 皺だらけだわンモー!!
随分と泣き虫な頃に戻っちまって。まぁ心配かけたの俺の方だし何も言い返さんけどね。
ノインさんからお帰りのキスを捧げられて、その後の話。
俺が生きてたことに対してなぜか王都のみんながびっくりしてた。
ホエール山脈で偽装死亡したのは別に見られてないのになんでやって思ったんだけど、どうやら俺が突き刺してきたギルドカードが生存通知の信号を送れなくなってたようだったのだ。
持ち主である俺とのリンクが切れて死亡したって通知が王都に送られちゃったらしくて、しかもそれが魔王軍発見のタイミングと重なって、ティオやらカトルやらノインさんやらがそうっとう落ち込んでたんだって。
なんかごめんな。いや俺別にわざとやったわけじゃないんだけどさ。
しかし無事に俺は生きてたわけで、とにかくなんかみんなからめっちゃ歓声を浴びて困ったのが戦争が終わった直後の話。
熱烈なキスをしてくれたノインさんは、しかし色々と申し訳ない事をしてしまったー、って言ってすぐに王族の皆さまとの打ち合わせの方に入ってしまった。
戦争で死んだ人たちを生き返らせたんだからそれこそ偉業だと思うんだけどな。
まぁ詳しい話は後日でいいか。急がないし。
で、その後は戦後処理。
グランガッチに避難してた王都民を王都に戻して、守護結界を通常の状態に戻して……ほぼ壊滅させた魔王軍が勿論素材ドロップとか色々してたから回収して……残党の調査とか……なんかまぁ、やっぱり色々ギルドのみんなも冒険者のみんなも忙しそうにしてた。
俺らホエール山脈からの帰還組についても報告を求められたんだけど、その辺はヒルデガルドさんが一手に担って王族やギルドへの報告をしてくれた。力になれなかったお詫びなんて言われたけどそんなお詫びの仕方よりお体を用いたお詫びを求めたいところありましたね俺ね。助かったけどさ。
で、最前線で獅子奮迅の活躍をしていたイレヴン、サザンカさんは流石にあれ程の戦いを見せたせいもあって疲労も相当なもので、万が一の再襲撃に備えて正門前で警護しつつ体を休めて。
リンはここに来た魔族の軍勢を滅ぼして、そこから闇の魔素を吸収したことで体力は全く問題ないようだった。
あとちゃんとドラゴニュート形態に戻れてた。そこちょっと安心したよ俺は。俺の娘兼嫁が50mの体躯だとどうやって愛を交わすか悩むところだったし。
そんなこんなで俺もリンもなんか若干手持無沙汰になったので、イレヴンとサザンカさんと、あとこの戦争で俺らが来るまでめっちゃ頑張って持ちこたえてたって話のカトルとティオ、ケンタウリスの皆さまと共に正門前で羽を休めてた。
その頃からずーーーーっとティオが泣いてて、俺は子供の頃のようによしよしと頭撫でてあやしてたんだけど泣き止まず、ある程度調査も終わって戦争のそれも落ち着いたころで他の冒険者が正門前の広場で酒盛り始めやがって、まぁ勝利の宴って感じで盛り上がり始めて、そしたらティオももう15歳なんだもん!! ってお酒飲み始めちゃって、初めてのお酒で完全にペースをミスりよって。
そうして今のこれである。
「わだし……もうお兄ちゃんと離れたくないよぉぉ……!! 死んじゃやだぁぁ……!!」
「いや死なないし生きてるし。お前と離れるつもりもないし」
「ばかぁぁ~~!! お兄ちゃんのバカーーーー!!!」
「耳元で怒鳴るなンモー! さっきからお前昔みたいにお兄ちゃん呼びに戻ってんぞ!」
『みゃあ!』
「完全に絡み酒になってるわねティオ……ま、心配させたアンタが悪いわ。アタシだってかなり心配したんだからね! 二度と気を揉ませるんじゃないわよ!」
「すんませんアルトさん」
「…………15になったとはいえ、まだ子供だな、ティオは。……しかし、お前は本当に何をしでかすか分からんな。まさか、死んでも戻ってくるとは」
「不死身の男ロックと呼んでくださいよシミレさん」
俺もサザンカさんが作ってくれた手料理で腹を満たしながら、しかししがみついて離れないティオの愚痴を耳元で聞き続けるのもしんどくなってきたところだ。
そんなティオを心配してアルトさんとシミレさんがやってきてくれたが助け舟はくれなかった。
二人とも戦争中はカトルとティオをずっと援護してたんだって。お疲れさまでした。
「もぐもぐ……ん。わたしもティオのきもちわかるよロック。ロックがしんだとおもったとき……もぐもぐ。ごくん……わたしも、いっしょにしんじゃおうっておもってたから」
「待ってリンちょっと想いが重いが? えっゴメン……俺が落ちた時そんなに心配かけてたんか。なんかスマン……」
「拙者はヒルデガルド殿が止めてくれなければ腹を斬っていたでござろうな間違いなく」
「私もマスターの反応を探知出来ていなかったら自ら
『みゃ』
「待って待ってゴメン!? なんかゴメンね俺そんなに心配かけててねェ!?」
したらリンがめっちゃ肉食べながら話に混ざってきて、リンに料理を提供するサザンカさんも俺の横でリンの涙を拭ってくれてるイレヴンも話に混ざって来たんだけどなんか……なんかみんな急に激重感情零してくるじゃん!?
いや!! みんなが俺の事を好きでいてくれてたのは理解したけど! してるけど!!
あっぱらぱーで何も考えずに日々を過ごす俺がなんか物凄い申し訳なくなってきた。ノインさんも同じような気持ちだったのかな……ううん。反省しよ。
反省したところで何ができるってんでもないけど。とりあえずティオの頭は撫でとこ。
「反省しろよロックマジでお前……まぁ俺はお前が死ぬわけねぇと思ってたけど」
「私もまぁ殺しても死なぬ少年だし、無事かもしれないとは考えていたさ!! 流石にここまで常識外れなことをやるとは思っていなかったけどね!!」
「ギルドで最初にお前の死亡通知を見つけたのは俺なんだけどよ、ぶっちゃけ全く信じてなかったわ。ずっと装置の誤作動疑ってたし、お前が来た時の感想『やっぱな』だったわ」
「男性陣のこの信頼の厚さよ」
そして一応警備中という建前で装備はそのままで食事だけとっているカトル、ヴァリスタさん、ノックスさんが逆の意味で俺を信頼してくれててちょっとウケた。
男は俺の事正しく理解してて女性の皆さまは信頼してくれてなかったのだろうか。なんかそれとも違うような気がする。よくわからん。
「ま……こうして無事に戻って来たしさ。魔族の命の源である闇の魔素も止めて来たし、これ以上悪い事にはなら───」
しかし、こうして無事に戦争は終わった。人類が勝利したのだ。
そして俺が闇のマナの根源も止めて来たから、これから先の魔族との、魔王との争いだって人類側の不利は相当薄れているから前向きに頑張りましょうよって感じの話をしようとしたところで。
事件は唐突に起きた。
「───お兄ちゃんもぉー!! のめぇーーーーー!!!!」
「グゲゴボーッ!!」
『みゃ!?』
「あら」
「ティオは泣き上古なうえに絡み酒のタイプでしたか……マスター、大丈夫ですか?」
ティオが手に持ち煽るように飲んでいた酒瓶を、会話の隙をついて俺の口にぶち込んできたのだ。
一気に流し込まれる酒にビックリして思わずごくりと呑み込んでしまって。
「もっと呑めぇーーーー!! おバカぁーーー!! うわぁぁーーーーん!!」
「こーらティオ……そこまで。アンタのお兄ちゃんお酒弱いんでしょ。ロック、大丈夫?」
「……」
『みゃ……』
「…………ちなみにコイツは酔うとどうなるんだ」
「さぁ……私が出会ってから、マスターがお酒を飲まれた姿を見たことはありませんので」
「わたしもみたことない!! おさけ!!」
「実は俺も見たことないんだよね。冒険初日で美人局されたので凝りて飲んでないしガキの頃は当然縁が無かったし」
「流石にこの程度じゃ酔わねぇんじゃねぇか?」
「主殿……?」
駄目なんだって。
お酒は、もう、飲まないって誓ってたのに。
じーさんのような吞兵衛になりたくないからさぁ……おさけのむと、かんも、なんにも……。
「…………」
「マスターが目を閉じて深い呼吸をし始めました」
「これダメじゃない?」
「すぐ寝るタイプだったかロックお前」
「成程、これは美人局を狙った女狐には格好の獲物と思われただろうな!!」
…………ねむい。
「マスターも疲れていましたでしょうし……夜も更けてきました。ノックス、この後の王都の警備はきちんとローテーションを組んでいるのでしょう?」
「ああ。騎士団と冒険者で交代交代でな。万が一の襲撃があったらまた王都全体に放送流れるからそん時はケアヒールでもかけて酔い覚まして駆けつけてくれると頼む」
「まぁワイバーン便による直近の偵察ではギルド本部の観測機器でも周辺で魔族の出現はないようだからな、何事も起こらぬことを祈ろう。リン殿が闇の魔素を祓ったおかげだな!! 素晴らしい権能だ!!」
「ふふーん!」
「であれば、私たちは一度マスターの自宅に戻り休もうと思います。今日は本当に色々とあり過ぎましたから……休める時に休みたい。明日の午前中にはギルドに顔を出すようにマスターには伝えますので」
「ああ、それでいいよ。俺も言いだそうと思ってた事だ。……お前らには本当に助けられた。この国を代表してなんてのは国王様から直々に話が行くだろうが……ギルドを代表して言わせてくれ。助けてくれてありがとうな」
「当然のことをしたまでです。マスターがそれを望まれましたから」
「左様。拙者らも不甲斐なさを感じた一日でござった。礼を言うならば主殿へ」
「ロックはわたしのつがいなのでわたしにはなしをもちかけるときはロックをとおしてね」
「おお、了解だ。……はっ、つい最近銀級試験受けてた勘がいいだけのガキが……アンドロイド従えて、最強の武士を部下にして、伝説のドラゴンまで嫁にしてんだもんなぁ。まったく世の中何が起きるかわからなくて面白れぇぜ」
スヤァ( ˘ω˘ )……。
「では……ティオ、マスターを持って帰りますので。そろそろ離れてください」
「やらぁ~……!! わたしもおにいちゃんといっしょにねるぅ~……!!」
「割と
「まぁティオはホントにロックの事心配してたからさ……イレヴンさん、よければティオも一緒に連れてって寝かせてやってよ。どーせこいつら孤児院時代はずっと同じベッドだったし……ロックも抱き枕になるの慣れてるよ」
「はぁ……まぁ構いませんが。ではサザンカ、二人の運搬を任せてよいですか?」
「うむ。一緒に抱えて運ぶとしよう」
「イレヴンたちもホントにお疲れ様。また明日ね」
「…………お休み」
「ええ。では皆さま、失礼します」
_(¦3 」∠ )_ スヤァ……。
※ ※ ※
【side ティオ】
やだ。
お兄ちゃんと、別れるの、やだ。
「…………」
「スヤァ( ˘ω˘ )」
『フニャ……スピニャァー……』
ロックの家まで運ばれて、しがみついたままベッドに運ばれて、ロックとミャウと一緒に横になって。
本当は、今日一日の疲れと、お酒の酔いで、すぐに眠くなるはずなのに。
静かになった部屋の中で……私の意識は、まだ堕ちていなかった。
「…………」
眠れない。
眠りたくない。
もしかして、今ここで抱きしめているお兄ちゃんが夢で、死に際の走馬灯か幻想か……なんて、ふと思ってしまったから。
目が覚めたら、お兄ちゃんがいなくなってしまうかもしれない、なんて考えてしまったから。
怖くて、一気に眠気が覚めた。
一度失って……失ったと実感したことで、ようやく私は自分の想いを自覚した。
お兄ちゃんが好きだ。
ロックという、赤ちゃんの頃からずっと一緒に育ってきたこの男の子が、好きなんだって。
失ったら生きていけない。
今日のように、戦争という突然の危機が目の前に迫っていないと、もう立ち上がれない。
二度はない。二度と失いたくない。
「…………」
ぎゅう、と強くお兄ちゃんの体を抱きしめる。
くふ、と苦しそうに少し息を漏らしたお兄ちゃんは、でも、無意識で私に腕枕してくれているその腕で、子どもの頃のようにそっと優しく頭を撫でてくれた。
泣き虫だったころの私を……いや、今も泣き虫な私を、よくそうしてくれていたように。
優しい掌の感覚を、想い返すように反芻してしまう。
駄目だ。
別れを考えたくない。
今は、生きている。
生き延びた。
今後もまだ続く魔族との戦争でも……お兄ちゃんなら生き延びられるだろう。
そうなるように私も頑張るし、イレヴンさんたちもすっごく強くなっていたから。
きっとみんなに守られて、みんなを護って、お兄ちゃんなら生き延びるだろう。
でも、その後。
もっとずっと後。
私は必ず、お兄ちゃんと死別する。
寿命の問題が私たちの間には存在している。
エルフである私が、人間であるお兄ちゃんと同じ時を歩むことは出来なくて。
「…………」
別れたくない。
お兄ちゃんと……ずっとずっと、私が死ぬまで一緒にいてほしい。
弱虫で泣き虫な私は、お兄ちゃんがいないと前に進めない。
「…………」
どうしよう。
酔いがまだ残る頭で、どうすればいいか考える。
考えて。
考えて。
考えて─────ひらめいた。
「そっか」
私と一緒に永い時を歩んでくれる、ロックと同じくらい大切な
「────
「────
「────
「────
「────
「────
「────
「───────痛……っ」
「────
「────
「────
「……子供のころ、結婚してくれるって約束したもんね……」
「……おやすみ、おにいちゃん……」
これにて第五章終了。
これで終了でいいのか? いいかぁ!
第六章、第七章でこの物語は完結の見込みです。
最近仕事がヤババで中々執筆時間が取れず、毎週更新がしばらくは続きそうですが完結にだけは絶対にたどり着きたいところです。
よければ今後もお付き合いいただけますと幸いです。
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