勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
109 血のつながらない妹っていいよね
「…………んむ……?」
随分と気怠い感覚を覚えながら目を覚ます。
微睡みながらも瞼を開けば、そこは実に見覚えのある天井で。
自宅だ。久しぶりに自分の家に戻ってきたのだ。
『ホニャー……ンピピニャスー……』
「すぅ……すぅ……」
しかしそこで違和感に気付く。
普段聞こえるミャウの寝息とは別に、誰か他の人の息遣いがすぐ傍から聞こえる。
果たして実に懐かしい腕の重みに気付いてそちらに首を向ければ、そこには。
「……なんだ、ティオか」
「すぅ……」
なんてことはない。愛する妹が昔のように俺の腕を枕にしてしがみついて寝てたってだけだった。
なんじゃい! ちょっとだけ期待したよ俺の女になった誰かが添い寝してくれたのかなーって!!
ティオじゃあなんの新鮮味もないわ。確かこうして添い寝するのは孤児院を卒院する最後の夜ぶりだから3年半ぶりくらいかな。
10歳になるころくらいまで毎晩俺の布団に潜り込んできたからなコイツ。俺の体をぎゅーっと抱きしめて寝るクセは15になっても変わんねぇな。
「ふわぁ……ってか、あー……そうか。昨日は確か……」
そこで少しずつ頭も覚醒し始めて、昨日の事を思い出し始めた。
いや、つっても記憶は酒をティオに呑まされたところまででぷっつりと切れてはいるが、その前まで。
ホエール山脈の麓の温泉を出発してから……リンの親であるブラックドラゴンのノワールさんと邂逅し。
そこに魔王ダブレスちゃん率いる魔族どもが襲撃かけてきて、死にかけて、何とか見逃されて。
んで闇のマナの世界の生成をブチ止めてきて、ノワールさんの権能を受け継いだリンがドラゴンに変身して、それに乗って魔族の軍勢に攻め込まれてる王都を助けに行って。
到着してすぐイレヴンとサザンカさんとリンの活躍で魔王軍蹴散らして、大将っぽい奴は雑魚だったので俺が殺して。
で、ノインさんが戦争で死んでしまった人たちを蘇生させて、お帰りのキスをしてもらって。
最後に戦争終わって宴会のノリになったところで泣きついてきたティオに酒を飲まされて眠っちまったのだ。
「すげぇなこれ全部一日の出来事かよ」
思わずツッコんでしまった。
どんだけ濃密な一日を過ごしてんねん俺は。英雄様でもあるまいし。
まぁ確かに俺のまわりにいる俺の女たち(もう欺瞞ではない)は英雄級の強さを持ってはいるのだが。俺は未だにレベル12のザコ冒険者やぞ。銀級ですらなくなる恐れがあるぞ。
なんでこんなことになっちまったんだろうなぁ……いやハーレムの夢はいつの間にか叶ってたっぽいからいいんだけどさ。
ってかそうじゃん。ハーレムじゃん。
恐らく多分だけど今この家には俺の女であるイレヴンとリンとサザンカさんがいるという事じゃん……!!
えっマジ? えっ。どうしよう急にどうすればいいか分かんなくなってきた。
昨日はノリと勢いと戦争後の疲れェ……で一日を乗り切ったけど今日からどんな顔してみんなに会えばいいんだろ。
えっやだ……こういう時異世界転生チートさんのハーレム主人公たちってどうしてたっけ……???
「……んん……みゅ……、……ん、お兄ちゃん……?」
「ん。起きたかティオ」
ベッドからゆっくり身を起こして頭を抱えてたところで、俺の腕枕が無くなったことでティオが目を覚まし始めた。
ぽやんと蕩けた表情から、首だけ動かして俺の方に向けて、俺の顔を見て、そしてなぜか急激にその顔が青くなっていく。
なんや。朝一にお兄様の顔見るのはそんなにショックだった?? 悲しいぞ???
「……あ……あ゛あ゛ぁ゛ぁぁ~~~~…………!!!!」
「急に何」
「やらかしたぁぁぁぁ……ッ!! お酒の勢いでやらかしたぁぁぁ……ッッ!!!」
「いや別にガキの頃みたいに一緒に寝ただけやろがい」
そして先程の俺のように頭を抱え始めるティオ。俺ら兄妹だなぁ。
いや別に……布団をひっぺがしてもお互いに服はしっかり着用してるし。
なんかそういう、万が一のアレな体液交換なんてしてないだろ。匂いもないし。
……ってか妙に身なりが綺麗だな俺もティオも。
昨日はあんだけ動き回りまくって、んで寝落ちしたからちょっとは汗臭かったり汚れてたりしてもおかしくないと思うんだけど。
あ、いや……ノインさんが前の遠征で使ってた清浄魔法をティオもかけてくれたのかな? コイツ水属性の魔法を得意としてたもんな。
酔っぱらってたであろうティオがちゃんと魔法かけられて偉い。撫でたろ。
「よしよし」
「なんで頭撫でるのぉ!? どういう感情!?」
「俺はいつでも可愛い妹の味方だからな」
「なんで今日に限ってそんな優しい言葉かけてくるのさぁお兄ちゃんはさぁ!?」
「何でキレんの……?」
なんでや。これまで俺がお前のタイラー平原をからかう以外でつっけんどんにした事ないやろがい。
赤ちゃんの頃からずっと共に育ち過ごした大切な家族やろがい。
俺の女に順位はつけないけど、俺の中ではイレヴンやリン、ノインさんやサザンカさんと同じくらい大切な女だよお前は。
「あー……どうしよ……もう
「……えっと、マジで平気か? 昨日の事まだ怒ってんのか? 大丈夫?」
「大丈夫……じゃないけど、肉体的には大丈夫……いや大丈夫じゃないんだけど!! ダメだけど大丈夫!!」
「なんなん??」
どうやらティオは急に愛する兄と同衾したことで謎に動揺してしまっているようですね。落ち着いてくれるといいのですが。
動揺しているティオを落ち着かせるにはやはり頭を撫でるのが一番だ。
昔から泣いてる時も怒ってる時も頭撫でりゃ何とかなった経験があります。
「よしよし」
「また撫でるぅ!」
「とりあえず落ち着けって。もう怖い魔族は襲ってこないからなーお兄ちゃんがやっつけたからなー」
「うぅ~……お兄ちゃんのバカぁ……倒したの殆どリンちゃんとイレヴンさんとサザンカさんでしょぉ……」
「俺も一応将軍クラス倒したらしいから実質俺のお陰である」
「絶対違うよぉ……うぅ~……もぉ……バカ。そんなんだから……私だって……」
そんなわけでぐしぐしと雑に頭を撫で続けてどうでもいい話をしてたらわりとホントにどうにかなったからコイツ昔から変わらんわ。可愛い。
ようやくティオも落ち着いてきたところで頭から手を離す。名残惜し気にふるふると軽く首を振るティオから体も離して、俺もベッドから降りて台所に向かうかって所で。
「……ねぇ、お兄ちゃん」
「なんや」
しおらしくティオが声かけて来たので背中向けたまま返事をしたところで。
ティオの口から、思いがけない言葉が零れた。
「────昔にした約束、覚えてる?」
「ああ、大きくなったら結婚するって話?」
「覚えてんのかよぉ!?!? 即答!?」
いや即答だろ。
覚えてるわ。まだ片手で歳を数えられるくらいの頃に死ぬほどおままごとやらされて正直飽き始めたころの事だ。
おままごとで俺ら何故か毎回夫婦になって、終わりって時に毎回お前から言って来てたし。忘れるわけないだろ。
約束だからね! ってめっちゃ念を押されてた記憶もしっかり残ってるわ。もうちょい大きくなってから蒸し返したら恥ずかしかったのかグーで殴られて死にかけたからそれ以降口にしなかったけど。
「覚えてるわそりゃ。俺が愛する妹との約束を忘れるわけなかろうがバカめ!」
「なんでバカにされたの私!? いやそりゃ……子供の頃の約束だし、すっかりお兄ちゃんは煩悩爆発ハーレムクソ野郎になってたから……忘れてるものだとばかり……」
「確かに俺は異世界転生チートさんの作品でハーレムを永遠に求める求道者にはなったが」
「どうしてそんなのになっちゃったの……?」
まぁな。俺があの人の作品に出会わなければもうちょっと煩悩が薄れてまともな生活を送っていたのかもしれない。
けれど今の俺に何の後悔もないからな自分の人生。
こうして元気に生きてるし、ハーレムも出来始めたし、闘技大会なんか優勝しちまったし、色んな人とのつながりとかも出来たし。
人生万事塞翁が馬。過去に起きた色んなことが積み重なって今のこのお兄ちゃんは出来ているのだ。
まぁ、つっても当時の約束を強要するようなクソ兄になった覚えもない。
俺はこの際と考えて、俺の本音をティオにぶつけることにした。
「……まぁ結婚する云々は置いといてもさ。ティオが俺にとって、共に育った大切な妹だってのはずっと変わらないし。色んな意味で愛してるわけよ、お前の事を。その想いは他の女の子たちとはまた一段違った重さでさ」
「っ……!!」
「お前がいるから俺も笑顔でいられるし、お前が俺に対して同じように思ってくれてんだったら嬉しいし。血が繋がってなくても家族だろ、俺たちは。それが兄妹だろうが結婚して夫婦になろうが、多分この距離間って変わらないもんだと思うし」
「お兄ちゃん……」
「だから……もしお前が結婚っていう繋がりを俺に求めたいってんなら全然かまわねぇよ。さっきも言ったけど俺にとってティオは家族だからな」
「……うん」
「まぁ俺はハーレムをとうとう完成させてしまったので仮に結婚したとしてお前への愛が何分割かになるのは許してほしいけどな!」
「台無し!!!!」
『みゃ!? ……ふみゃ??』
そう、俺はティオの兄で、ティオは俺の妹なんだ。
共に育った家族であって、確かに血は繋がっていないから結婚だって出来るのだが、結婚しようがしなかろうが俺たちの関係は家族のままなのである。
だから別にどうってことない。何も変わらない。
俺はこれからもずっとティオを護るし、ティオは俺を護ってくれるだろう。
ただふと思う。
じゃあ仮に、ティオもOKって話になって結婚ってなったら……俺はティオに性的な欲求を抱けるのだろうか?
この妹を? お胸ぺったんな永遠ロリエルフを? いやエルフかどうかはどうでもいいんだけど永遠のロリを?
しかしこいつは小さい体だけどお尻と太ももはそれなりにむっちりしている。そのむっちり度合いが俺とティオを兄妹にするか夫婦にするかの最大のカギな気がしてきた。
惜しいよな……エルフなんだから仮にデカパイであればリンと同じようにロリ巨乳枠で俺も躊躇い無かっただろうに……!!
「今なんか私の胸について考えてない???」
「するどい」
「おバカ! もう……お兄ちゃんの考える事なんて顔見ればわかるよ」
「だろうな。俺もだ」
「……おバカ。あーあ……もういいや、なるようになっちゃえ! 悩んでても仕方ないし! その時はその時!! お兄ちゃんが悪い!!」
「急に元気になったなお前」
「お兄ちゃんのせいだからね! その時は責任取ってよね!!」
「俺みたいな台詞回しするやん。まぁ気が晴れたんならよかったわ。降りようぜ、朝飯食べよ」
「うん!」
クッソどうでもいい思考に流れたところでティオがツッコんできて、苦笑を零して返したところでティオもようやく目が覚めたのかなんだか吹っ切れた顔をしていた。
昔から地味に思い悩む癖もあったからなコイツは。しかしお兄ちゃんはそんなお前のことなどすべてわかっているのだ。
顔を見ればお互いに考えてることなんてわかるのである。いやついさっき何考えてんだコイツってはなってたけど。様子がおかしかったから多少はね?
ようやくいつもの笑顔を見せたティオに手を差し出して、ティオもその手を取ってベッドから立ち上がる。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
「ん?」
「……大好きだよ」
「だろうな。俺もだ」
確認するまでもない当たり前のことを言われたので、先程と同じように答えてやった。
最後にまだ寝ぼけてるミャウを拾ってフードに入れて、俺たちは手をつないだままで一階のリビングに降りて行った。
※ ※ ※
「おはようございますマスター…………ほう?」
「おはようございまする主殿。今朝は随分と遅い起床で…………ふむ?」
「ん? ……すんすん……ふーん。ふーん」
「えっ何この空気」
「……あはは」
リビングに降りたらどうやら俺は随分と寝過ごしてしまったらしく、サザンカさんがバッチリ作ってくれてた朝食が広がるそこで、何故か俺の女となった3人から怪訝な目で見られてた。
やだもー! そんな目で見ないでくれる!?
確かに一緒のベッドで寝たけどコイツ妹みたいなもんだし何もしてませんわよ俺は!?