勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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11 殺してやる……殺してやるぞノックス

 

【side バアル】

 

 

 ゆっくりと瞼を開ける。

 先程まで同期していたドッペルゲンガーが冒険者共に討ち果たされたため、意識が肉体に戻って来た。

 新しく出来たダンジョンの偵察として深い階層に召喚した魔物であり、ダンジョンの規模を把握した時点で使い捨てるつもりではあったが……しかし、思わぬ収穫があった。

 

「……面白い」

 

 我が心を躍らせる、未来の強敵を予感させる出会い。

 魔剣の主。対魔獣用の人形。魔族への攻撃手段こそ持たぬものの人外の魔力をその身に宿す少女。

 それぞれが将来的にはさらに強くなるだろう。あの場を切り抜けたことで一層の強さを求めるだろう。

 いずれまた相対したときに、歓喜の闘争を期待させる強者が3人。

 

 だが、その3人よりも随分と面白い男がいた。

 それはただの人間であった。少年であった。口の軽い軽薄な空気を纏う男だった。

 防具をつけずにダンジョンに潜るという自殺行為とも思える様な愚かさを見せていたその少年は───しかして、魔装具なしで我が体に深手を負わせたのだ。

 

「あの時何をされた? 魔装具を隠し持っていたのか? 人形が主と呼んでいた……『命無き者』のくせに人形の主になるだけの才があったということか……?」

 

 何度あの瞬間を振り返っても理解が及ばない。

 全霊の攻撃の最も勢いが乗った瞬間に、それを片手間に捌いたうえでその威力をすべて刃に乗せるという神業。

 あんなことはたとえ『命在る者』であっても不可能であろう。それを成した男。

 随分と心を躍らされる。あの場にいた4人の内、誰と再び戦いたいかと言われれば、いの一番にあの男の名前を挙げるであろう。

 

 逃がさない。

 貴様だけは必ず我が手で殺す。

 

 

「その名、覚えたぞ…………ロック=イーリーアウス」

 

 

 未知の宿敵が更なる成長を果たし再びその前に立ちはだかる未来を想像し、くっと喉を鳴らした。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side ロック】

 

 

 帰って来たわよ王都!!

 王都周りをぐるーっと囲ってる城壁に連なる正門前にイレヴンバイクで辿り着いた俺たちはそこで変形を解除し、4人で正門で受付して王都に帰還した。

 

「じゃあとりま俺たちはリンを迎えに行くわ」

「俺とティオは先にギルドに行ってるぜ。報告急がないとだしよ」

「ロックはリンちゃん連れて後で合流してね! シスターにもよろしく言っといて!」

『みゃあ』

「マスターとティオが生まれ育った孤児院ですか……どのような所か興味がありますね」

 

 帰ってきてから色々やることが多いのだが、俺はとりあえずリンを迎えに行くことにした。

 一日半くらい顔見てねぇからな。リンも寂しがってるだろう。寂しがると周りにわがままを言うようになるのでまずリンを回収だ。

 その後はギルドに一足先に向かったカトルとティオと合流。冒険の報告をして魔族の存在をギルドに伝える。

 んでノックスさんがいればおごりの約束を果たしてもらう。リンと先に合流するのはこのためでもある。

 ダンジョンで見つけて来たお宝の換金は明日でええやろ。かなり量も多いしトゥレスおじさんもダンジョン出てきて忙しいやろしな。

 そんな風に今後の予定を決めて俺とイレヴンは孤児院に向かったのだった。

 

「しかしイレヴンに乗るの最高だったな……めっちゃ気持ちよかった……」

「誤解を招く表現はやめてくださいクソマスター」

「事実しか言っとらんやろがい! でも俺単独で動かせないのもわかったからそれも近いうちに何とかしないとなー。魔法かぁ……まったく触れてこなかったんだよな」

「魔力のない人間はいませんからマスターの努力次第だと思いますよ。こうして仮とはいえマスター契約ができているのですから、マスターの魔力もゼロではないはずです」

「そんなもんかね」

 

 向かいながらも話はさっきのイレヴンバイクの件。

 運転するのめっちゃ楽しかったんだけどやっぱりある程度魔力操作ができないと動かせないらしい。さっきは三人乗りでカトルもティオも魔力めちゃんこ使いこなせてるからその二人のそれで動いてたんだって。二人がバイク降りたら動かせなくなったもんね。

 今後いつでもあの二人がいるわけじゃねーからな。明日は図書館行って勉強するか、魔法の。

 

 さてしばらく歩けばつきましたわよミル孤児院。

 ここで俺とティオは生まれ育ち、12歳で卒院した。

 ミルさん……俺達がシスターと呼ぶその人が14年前に立ち上げた孤児院だ。つまり俺とティオはほぼ最初期組である。

 

「おじゃましまーす、シスターいますかー! リンを引き取りに来ましたー!」

「お邪魔いたします。ふむ……綺麗な所ですね」

「シスターがいつも掃除には口煩いからね。子供たちも早くから家事は教えられんのよ」

 

 見慣れた門をくぐって中に入る。裕福な感じではまったくないが、それでもしっかりとした造りの修道院にも似た建物がそこにはあった。

 今は10人くらい孤児がここで生活している。みんなまだガキなのでリンが来たら外見的にはリンが一番お姉さんかな。頭のほうは知らんけど。

 

「あー!! ロック兄ちゃんだ!!」

「ロック兄ちゃんが来たぞー!!」

「ロックお兄ちゃんだー!! おかえりー!! 今日はどうしたのー?」

「相変らずやっかましいわねお前らー! リンを迎えに来たんだよ。シスターは?」

「リンおねーちゃんなら、中でシスターとべんきょー、してる……」

「ねー兄ちゃん、このおねーさん誰?」

「わー、きれーな人ー!」

「まさか兄ちゃんとうとう女出来たのか!?」

「ウソだー! にーちゃんが女にモテるわけないじゃーん!!」

「ロック兄ちゃんに彼女が出来たら王都が爆発するんだぜ! 俺知ってんだ!」

「失礼なガキどもめ」

「マス……いえ、ロックとは冒険で縁があり同行しているのです。皆さま初めまして、私はイレヴンと申します」

「イレヴンさん! お名前かっこいー!! 髪もきれー!!」

「はじめましてー!! 私アイリっていうの!」

「ぼく、ノッチ……」

「俺はギガスです! 初めまして!」

 

 さてそして早速庭で遊んでたガキどもに見つかった。

 相変らず元気いっぱいだ。健康的で何よりだとは思いますね。俺に飛び込んで来たり引っ付いて来たりするのさえなければ。

 今も俺の腹目掛けてロケット頭突きを繰り出してきたゼノ(7歳・女)を受け止めて頭の上でぐるぐる回してやる。

 ミャウもここでは引っ張りだこだ。猫好きなカシム(8歳・女)が俺のフードにいるミャウをぴょんぴょんして奪おうとするが既にミャウは冒険疲れでぐっすりである。コイツいつも寝てんな。

 そして年長の男子女子はイレヴンに挨拶していた。イレヴンもガキの相手は嫌いじゃないようで笑顔で返している。

 俺をマスターって呼ばないのは青少年の育成に悪いからとか考えてくれたんやろな。あったけぇ。

 

「なんですか騒がしい……と、あらロック……来てたのね、お帰りなさい。もう冒険は終わったの?」

「ん、シスター。うん、ちょうど今帰ってきた」

「ロック、おかえり」

「ただいま、リン。ちゃんと大人しくできてたかー? みんなと喧嘩しなかったかー?」

「ぶい。みんなでなかよし。きょうもいっぱいことばおぼえた……!!」

「リンちゃんは貴方みたいに手間のかかる子じゃあないの。勉強も真剣に聞いて学んでくれているわ」

「耳が痛いデス」

 

 そうして騒いでたらシスターがリンを連れてやってきた。うん、相変らずどこ見てるかわからないなこの人。

 

 シスター=ミル。

 実年齢は秘密と常に言ってるけど最低でも30代中盤だろう。俺が赤ん坊のころから15歳になるまで外見まったく変わってなくて今も美しいお体だけどシスターの前で年齢の話はタブーDeath。

 緑色のふわりとまとまった長髪に修道服を身にまとっており、スタイルはすごいこう……むっちむちな感じ。顔もお綺麗だけどいつも目を閉じてるのか開けてるのかわからない糸目です。怒るとかっぴらくよ。超怖いよ。

 そして元冒険者でもある。本人はあまり語りたがらないけどギルドで聞いたら元々金級だったとか。この人にティオは魔法を教わっている。俺はその時の勉強中寝てたんでまったく聞いてなかった。

 

 この人から俺が教わったことと言えば気配の消し方とか開錠とかの腕前かな。

 性に目覚めた10歳の頃になんとしてもシスターの風呂を覗きたくてその辺を磨きに磨き、キレたシスターが俺をロープで縛ったりとか部屋に閉じ込めたりとかで一か月ほどの闘争の日々が続き、最終的に俺の気配遮断と縄抜け開錠の腕前が勝利したのだが、どれだけ言ってもめげなかった俺にシスターが初めてガチで泣いてるのを見て俺も大反省してそれ以来風呂は覗かなくなった。あん時はマジでごめんなさい。

 

 はい紹介おしまい。

 ゼノを降ろしてリンを迎えに来たことをシスターに説明し、今度はリンを持ち上げて肩車する。

 こいつ肩車好きなんだ。胸とか尻尾とか色々ついてるんで重いけどね。お兄ちゃんリンの為なら頑張るから……!!

 

「わーいわーい! かたぐるまー!」

「太もものむっちりさがティオに負けるな。もっと食べて健やかに育つんだぞリン……!!」

「馬鹿なことを言ってないのロック。……で、あちらの方がリンちゃんが言っていた、イレヴンさんかしら?」

「あ、そっか紹介しないとね。イレヴンー! こちらこの孤児院を経営してるシスターさんだから挨拶してー!」

 

 そういや初対面だったわと思い、子供たちと遊んでいるイレヴンを呼んで挨拶させる。

 

「お初にお目にかかります。私はイレヴンと申します。マスターとは奇妙な縁から主従契約を結ばせていただいております」

「これはどうもご丁寧に。わたくしはミル。この孤児院を経営している修道女です。……主従契約。いわゆるアンドロイドで間違いないかしら?」

「……ご存じなのですか。トゥレスといいこの街では私のような存在は一般的な知識なのでしょうか?」

「いいえ。たまたま私はそのトゥレスと昔一緒に冒険をしていた時期があったの。その時に聞きかじった程度の知識ね。リンちゃんのお話と、ロックをマスターと呼ぶ姿で……あとは気配かしら。人間でないことくらいはわかるわ」

「そういやシスターはトゥレスおじさんと旧知の仲だったっけ。あんま話してるところ見ないけど」

「気配で察されるとは……もしかしてマスターの周りの大人はとんでもない人ばかりなのではないですか?」

「んなこたないやろ」

 

 イレヴンが変なものを見る目で俺を見てくるがシスターは昔は知らんけど今は普通の一般人だよ。俺に覗きで負けるくらいだし。ティオだって回復魔法はシスター超えたって自慢してたし。ふつーふつー。

 まぁイレヴンの正体まで分かってもらえてりゃ逆に話が楽だ。ガキどもに俺に女が出来たことで脳破壊が起きないように口裏を合わせてもらいましょう。

 

「じゃあシスター、リンがお世話になりました。この後もギルド行ったり用事があるんで早いけど今日はこれで。あと……」

 

 さてじゃあリンを無事迎えられたところでこの後はギルドに向かうのだが、その前にやること一つ。

 いったんリンを肩車から降ろして、子供たちに挨拶するように言いつけて俺から距離を取らせる。

 そして子供たちに見られないようにシスターに体を寄せて、そっとアイテムボックスから手持ちの金のほぼ全部を差し出した。いわゆるお布施である。

 リンの食費って言うにはあんまりにも多い金額だけどこれは孤児院への寄付金なのだ。冒険での儲けの3割はお布施に回している。

 

「あら、この間も貰ったばかりなのに……良いのよロック? 無理しなくても。ティオもよく廻してくれるのだけれど……そこまで経営に苦労しているわけじゃないわ、嘘じゃなくてね。もっと使いたいものに使いなさい? 冒険者なのだから武器や防具も新調しないとでしょう?」

「新ダンジョンでそうっとう儲けたんでむしろ少ないくらいだから遠慮なく受け取ってよシスター。ガキたちが腹いっぱい飯食べて元気に育ってもらいたいって想って渡してるんだから。これでいいもん食べさせたげて」

「…………分かったわ、返そうとしても貴方たちは受け取らないものね。いつもありがとう……その慈愛の心に神のご加護があらんことを」

「女神様ってバストサイズどんくらいかな? やっぱデカパイ?」

「はぁ。もう、相変らずおバカね貴方は」

 

 袖の下にお布施を仕舞い、祈りを捧げてくれるシスター。

 俺らがガキの頃は結構大変だったもんね孤児院の経営も。今は人数も増えてるし、良質な引き取り手とかちゃんと選ぶためにも先立つものは必要だし。シスターなら使い道は間違えないと確信できる。

 そもそも生まれ育った恩を返すのは当たり前ってやつ。ハーレム目指してはいるが人の道を外れるつもりは……ない!! はず。

 

「さっ、んじゃギルド行くか。リン、行くよー! 今日はごちそういっぱい食べられるぜ!!」

「おー……おお!! ごはん! いっぱいたべていいの!?」

「おかわりもいいぞ!! 全部ノックスさんが奢ってくれるからよォ!! そんじゃ行くぞー!! お前らまたなー!!」

「またなー!」

「また来てねおにーちゃん!」

「今度はミャウとあそばせてねー!!」

「では私も失礼いたします。……ロックとティオが伸び伸びと育った理由がこの孤児院の子供たちを見ていると分かる気がします。ミル、いつか貴女ともお話がしてみたいです」

「ええ、こちらこそ。またいつでも訪ねてきてねイレヴンさん。ロックも体を大事になさい。気を付けてね」

「うん! そんじゃお邪魔しました!」

 

 そして改めてリンを肩車して、みんなに挨拶して俺たちは孤児院を後にした。

 この後はギルドで奢りだからな……待ってろよノックスさん(財布)

 






~登場人物紹介~

■ミル
ロックとティオが育った孤児院の院長。糸目デカパイシスター。
どうしてロックがこんな性格に育ってしまったのか本気で分からなくて嘆いている。

■孤児院のガキたち
かわいい。
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