勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「味噌汁が沁みる……」
ずずーっと下品にならない程度の啜り音を立ててサザンカさん謹製の味噌汁の熱を喉で味わう。
美ン味い。相変らずサザンカさんの作る料理はうんまいんよ。
この味が冗談でも何でもなく一生味わえる立場になったんだよなぁ……と感慨深く味噌汁の熱がこもった息を小さく零した。
まぁ何故か食卓に誰もいないんだけどね今ね!!(ため息)
「みんなだけで話し合いたいことがあったんかな……? どうしてだと思うミャウ? 実は俺嫌われてない??」
『みゃ……みゃぁ……ハグハグ』
なんかティオと一緒にリビングに降りたら急にイレヴンが「マスター先に食事していてくださいティオと話すことがありますから」って言って女性陣だけで外に出て行っちゃったんだよね。
ちらりと窓の外を見ればイレヴンとリンとサザンカさんとティオの4人で何か話してる風だった。何話してるんやろ。俺に聞かれたくないない内容なんだろうけど。
まぁ話してる雰囲気は陰険な感じはなかったから喧嘩とかではないんだろうけど。気になるわねー!
でも今後ハーレムをマジで作っていくことになる中では……あれかな? こういう女性陣だけの会話って言うかコミュニケーションはあんまり邪魔しない方がいいのかな?
あらゆる話に俺が首を突っ込んでウザがられてもアレかもしれん。気にはなるけど気にしないようにするのも男の器の大きさだったりするんじゃないだろうか。
まぁいいや。みんないい女だしヘンな事にはならんやろ。
俺は変わらずこの素晴らしい味の味噌汁を味わうだけである。うっま。
ホントはみんなを待ってから食べようとも思ったんだけどね。もう配膳されてて味噌汁冷めるのもアレだなって思って……嘘です味噌汁の匂いに負けました。ダシの香り!
熱いうちに呑む味噌汁が一番美味いよね。ずずー。
「……すみません、お待たせましましたマスター」
「お帰りー。別に大丈夫、気にしてないよ」
「うむ。話は
「ごはんたべよ、ごはん!」
「いただきます! ありがとーサザンカさん!」
そうして寂しい食卓を過ごしてたらそんな長い時間もかからず戻って来た女性陣。
俺も先ほどの思考から得た答えで気にしてないアピールで迎えて、改めて味噌汁も温め直してみんなに配って。
おにぎりとか焼き鮭とか浅漬けとかテーブルに配膳して、みんなで朝ご飯を食べ始める。
「うまい!! きょうもサザンカのごはんがうまい!!」
「ははは、黒竜の権能を受け継いでもリン殿は変わらぬな……うむ、良く噛んで食べるでござるぞ」
『……我が子があれほど美味しそうに食事をしていると興味が湧いてきますね。食事を楽しむ経験は私には無かったものですから』
「えー!? おとうさん、それはもったいない!! よのなかにはこんなにおいしいたべものがいっぱいあったのに!!」
『精霊や魔素の管理人のドラゴンとかの上位の存在は基本的に地脈と接続してるからその土地から離れられないもんねー。ブラックドラゴンはホエール山脈の頂上だったかしら、ならなおさらね。まぁ私の本体はネレイスタウンの住民から御供え物貰えてたからある程度味は知ってるけどねー!!』
『なんと羨ましい』
「セントクレア様は街に密接した形の精霊でしたもんね。でもお供え物ってイメージだと冷めた物しか出てこなさそう……出来立ての味ってわかるものなんですか?」
『私の本性知ってる人間におねだりして、作りたてを持ってきてもらったこともあるのよ。200年くらい前だったかしら、パンケーキ極めて作ってきてくれた人間がいてねー、あれは絶賛! 甘くてふわふわしててすっごい美味しかったのよ!!』
「……パンケーキ?」
「ああなるほど……あの店で出たパンケーキはそういうことか」
「メイプルシロップたっぷりのやつ!!」
「あれは美味でしたね、確かに」
『えっ知ってるの?』
「拙者は存じ上げぬ話でござるな……拙者と出会う前にネレイスタウンに遠征していたと聞き及んでおりますが、その頃のお話でござるか。ふむふむ。パンケーキか……」
『パンケーキ……どんな味なのか……』
リンを除いてみんな下品にならない程度に会話に花を咲かせながら賑やかな朝食になった。インテリジェンスな二人は近くの壁に立てかけられている。
一足お先に食べ始めたことでちょっと早く食べ終わった俺はサザンカさんが入れてくれた緑茶を飲みつつ、同じく食べ終えたミャウの毛づくろいしながらみんなが楽しそうに話してる様を見る。
平和やな……ティオも混ざって姦しくお話してらぁ。
この光景が俺らが勝ち取った景色なんだなぁとかそんな俺らしくないことも考えちまいますわよ。
改めて考えると昨日はマジで怒濤の一日だったもんなぁ。
いや怒濤だったのはおおよそ半日だけど。戦争終わってからは暇だったけど。
どこか一つでも違う結果になってたらこの平和なハーレムの光景を俺が見ることはできなかったのだ。感慨深い。
……つってもまぁ、まだ全てが終わったわけじゃない。
王都に攻め込んできた軍勢は壊滅させたが、まだ魔王軍は滅びていない。
魔王ダブレスちゃんや、ホエール山脈で俺らに襲撃してきた面子はまだ生きてるはず。
きっちりその辺も討伐してからが本当の平和なのだ。がんばろ。
「御馳走様でした。今日も大変美味でした、サザンカ」
「ごちそーさま!! このごはんがいつもたべられる!! すばらしい!!」
「ごちそうさまー! ほんっとにサザンカさんの料理美味しかったー! カトルが言ってた通りだったなー……私も料理の勉強しないと!」
「毎朝この味噌汁でお願いしますねサザンカさんマジで。ごっそさんでした」
「お粗末様でございます。では主殿とティオ殿はどうぞ湯浴みを。その間に片して整えておきます故」
「私達は昨晩入りましたから、マスター達も汗を流してきてください」
「ん」
さてそうしてみんな食べ終えてごちそうさまにお礼を籠めて、これからどうするかって話をする前に入浴を勧められた。
まぁな。俺とティオは昨日完全に酔いつぶれてそのまま寝ちまったし。
清浄魔法を掛けてくれてるから汚れてはいないけどそれはそれとして体を流してはおきたいな確かに。
「んじゃ……ティオが先に入ってきていいよ。風呂上がりに髪整える時間あるだろ」
「あ……そうだね、ありがとうお兄ちゃん。それじゃ先に借りるね?」
「おー」
「…………ねぇ、お兄ちゃん。久しぶりに一緒に入らない?」
「いつの話してんだ。もう寂しがる歳でもねぇだろ、早く入って来いって」
「むー。わかった」
しかし俺とティオなら当然にして風呂あがった後に髪を乾かして整える時間がかかるティオが先に入るべきなのでそう勧めたところ、何故か照れた感じの顔で流し目で共に入浴を求められてきたので肩を竦めて諫めた。
確かにお前とは8歳くらいの頃までずっと一緒にお風呂入ってたけどさ。今や16歳と15歳じゃん。大人じゃん。
ちなみに一昨日が俺たちの誕生日でした。シスターに拾ってもらった日が誕生日なんだよね。完全に忘れてたわ。
昨日ティオが15歳になったからお酒飲めるもんって話で思い出して俺の嫁たちにキレられそうになったわ。
……しかしあれだな。なんか昨日酔っ払ってギャン泣きされてから、こいつ昔のメンタルに戻ってないか?
ずーっとお兄ちゃん呼びに戻ってるし。今朝も混乱してからしおらしい様子を見せてたし。
ちっと心配だな。今はホントに成長したティオだけど、俺が孤児院卒院するまではかなり泣き虫でお兄ちゃんにべったりな子だった。
俺が卒院した後の一年でだいぶ成長して、今や立派に生意気になってケンタウリスのエースを務める超有名冒険者だけど……昔の姿を知ってるとなぁ。
ぷくーっと頬を膨らませながら風呂場に向かうティオの背を見送る。しばらくは気にしてやらんと。お兄ちゃんだからな。
※ ※ ※
「さてそれじゃ今日の予定ですが」
ティオに次いで俺もシャワーだけ浴びて汗流して、身支度も整えたみんなで再びリビングに集まって今後の予定を組む。
とりあえず決まっている予定から述べてもらう。イレヴンが片手を上げて切り出した。
「戦争の後始末の状態と、今後のギルドや国全体の動きを確認しなければなりません。私達パーティは今や王都内でも最強の戦力ですから、国の側からの働き掛けもあるはず。昨日の時点でノックスに午前中にはギルドに顔を出すと話もしていますし、一度ギルドには向かう事をおすすめします、マスター」
「ふむ。そりゃそうよね。オッケー、とりあえずギルドには顔出そう」
話を聞けば昨日の時点でノックスさんにそんな話をしていたということで。
まぁ俺もギルドには絶対行かないとと思ってたんでそれはOK。冒険者たちがどんな雰囲気かも知りたいし。
それに何より俺のギルドカードを再発行してもらわないとな!! 下手すると俺だけ冒険者失業とかパーティ組めないとかそんな悲しい話になりかねないからな!!
ついでにリンの冒険者登録も済ませてきちまおうかな。勿論登録だけのそれだけど、ドラゴンだから登録できないって事もないだろうし。
パーティ組めば冒険の時に経験値共有できるしギルドも嫌だとは言わないだろう。
だがしかし、俺にとってはそれより先に優先してやるべきことがあった。
「……ただギルドに行く前に孤児院には顔出しておきたいんだよね。俺の生還報告はギルドには流れてるだろうけど、シスターたちが知ってるかわからないし」
「ああ、それはそうですね。マスターの死亡通知がもし耳に入っていれば、きっと落ち着いてはいられないでしょうから」
「わたしもいきたい! シスターにもみんなにもかおださないと! ドラゴンになれるようになったし、おれいをいいたい!」
「そうだね、お兄ちゃんは顔出しておいた方がいいよ。あれだけの戦争で……シスターに連れられて転移陣でグランガッチに避難してたけど、今日はもう孤児院に戻ってきてると思うから! 勿論私も一緒に行くね! …………シスターに懺悔したいことあるし……」
まず孤児院だ。
俺の死亡通知が一度王都に流れてしまったということは、シスターの耳にも入っている可能性が高い。
ガキどもは俺ら以外の冒険者には縁がないからどうかなって感じだけど、少なくともティオとカトルが最前線で戦ってたことは聞いてるはずだ。
そもそもがあれだけの戦争が起きて、急な避難なんて非日常が襲った直後だ。安心させるためにも顔を出しておきたい。
なんか最後にティオが死ぬほど小声で何か呟いたような気がしたけど俺の耳でも聞こえなかった。なんや。
「ふむ。ではまず孤児院へ、続いてギルドへ。そこで色々と話を聞いてその先の行動を決めていく、という感じでござろうかな」
『いずれは王城にも向かわねばならないでしょう。私の闇のマナの管理人としての知識をもって、この国の王と話さねばならぬこともあるでしょう。その時はリンも同席するのですよ』
「はーい。もうわたしがつぎのかんりにんだもんね」
「拙者もやることが増えそうでござるな。なにせ装備が闇の竜が鋳造した逸品でござる。そのような場には同席せねば」
「そういう意味で言えばマスターが一番大変になるとは思いますね。なにせ救国の英雄ですから」
「俺なんもしとらん! 俺なんかよりティオやカトルやノインさんのほうが頑張って働いてたと思うんだけどなぁ」
「文字通りレベルが違うのー! 昨日の戦争で私もレベル上限に達したけどイレヴンさんたちそれを超えてるって話じゃん! 私ももっと強くならないとなぁ……」
そんなこんなで方針決定。
正直国もまだ混乱の最中だろうし、ギルドで色々話を聞いてからその後の方針も考えていくべきだろう。
魔族の残党を処理するようになったり、はたまた再び調査隊が結成されたり、もしくはリンやノワールさんが身内にいることで国のほうから何かしら話があったりノインさん絡みで何かあったりするのかもしれないけれど……まぁ何とかなるやろ!!
いや、何とかする。
なにせ俺は今やハーレムを達成したんだからな!! 無敵よ無敵!!
この国のあらゆるオスの頂点の存在なんだぜグヘヘのヘヒホヘ!!
「急にマスターが変な顔をし始めました」
「いつものロック」
「お兄ちゃんはこれさえなければなぁ……」
「これが無かったら主殿ではないのでは。うむ……では出発しましょうや。戸締りしてまいりまする」
そんなわけで俺らロックパーティ一行はまずミル孤児院へ出発するのだった。