勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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111 冤罪です冤罪。何も悪くありませーん!

 

 

『───がおー!! どうだー!! ドラゴンだぞー!!』

 

「うおおおおおおおおっ!?!?」

「リンねーちゃんすげー!! ホントにドラゴンだーっ!!」

「でっか!! グラウンド埋まっちゃったよー!?」

「出かける時にリンねーちゃん、『おっきくなってもどってくる』って言ってたっけ。こんなにデカくなって戻ってくるとは思わないじゃん?」

「うわー!! 乗りたい乗りたーい!! 乗せて飛んでみてー!!」

「のせてー!! リンねーちゃん背中にのせてー!!」

「ほんとにデッカいねー!! ミャウもそう思うでしょー?」

『みゃあ』

「ミャウも私と一緒に乗ろーね!」

『みゃ!?』

 

 孤児院の庭がリンのドラゴン形態に埋め尽くされて、随分とテンション上がったガキ共がきゃあきゃあと騒いでおるわ。

 マジで首先から尻尾まで50mあるからなこの形態。そこまで狭くもない孤児院のグラウンドだが、すっかりリンの全身で埋まってしまった。

 乗りたいという言葉に応えて姿勢を下げるリンに、騒ぎながら我先にとよじ登り始めるガキ共。

 平和な光景だけどもし落ちたらアレだな。こいつら俺よりレベルが高いから痛いで済むだろうけどさ。

 因みにいつもの如くフードに入ってたミャウは猫好きのカシム(9歳・女)に奪われた。ミャウ的にはリンの背中はお気に召さないらしいな。

 メルセデスさんの背中やダット君の背中は好きなのにどの辺が気に食わないのだろうか。俺が抱えて飛び降りたのが原因なんかな。

 

「……イレヴン、サザンカさん。ガキ共がケガしないように見ててもらえる? 俺とティオはちょっとシスターと話あるからさ」

「了解です」

「承りました主殿。しかしこの孤児院の子らは本当に溌剌としておられるな。うむ……皆ー! あまりはしゃいで落ちぬようにするでござるよー!」

 

 信頼できる大人な二人にガキたちの面倒をお願いして……今日俺たちがここに来た理由の消化をするために。

 改めて俺とティオは、少し離れたところでシスターと話す事とした。

 

 

 

 ここに至るまでの今朝の事。

 

 今日の予定を簡単に決めて俺らパーティはミル孤児院に向かった。

 まあ歩いている道中からもう……なんていうかアレな。俺らの姿見て声かけてくる人たちがめっちゃ多くて。

 そりゃ俺の女たちもティオも、まぁ俺も闘技大会優勝してたし、王都でも有名な冒険者グループであることは分かってたんだけどさ。

 流石にあれだけの大戦争を一日で終結させて、その翌日となるとみんなの注目もすごかったんだわ。

 

 そして俺はようやく気付く。

 これまでは有名な冒険者すげー! うらやましー! チヤホヤされやがってコノー!! って思ってた所もあるんだけど、いざ自分がなってみると知らない人からチヤホヤされてもなんも嬉しくないのだということに。

 めんどくせ……って感情が先に来るんだわな。いやまぁ美人のデカパイなファンなら別だよ? そういう子達ならいくらでもバッチコイなんだけどさ。

 その辺の男性冒険者とか、あと普通に王都に住んでる一般の方々からありがとうとかお礼言われてもいやァ……って返すしかないじゃん?

 シンプルに気を揉むわ! めんどくせ!! モブ共の相手にすんのめんどくせ!!

 

 ってなったので、途中からイレヴンとリンとティオにお願いして空飛んで移動することにしました。ティオはこれまで飛行系の魔法をメインで使ってるの見せてなかったけど、一人で短時間飛行するくらいの魔法は普通に使えてたので助かった。

 イレヴンが俺を、リンがサザンカさんを運ぶホエール山脈攻略パターンでふわふわ飛んで、そうして孤児院に到着したのだ。

 

 しかしここからがまた大変だった。

 さっきまでの大変さとはまたズレて、今度は申し訳なさが無限に広がるという意味で。

 

 ガキたちが俺の顔を見るや否や、全員がギャン泣きしちまったのだ。

 

 俺よりレベルの高いガキたちが全力でしがみついて俺の背骨をへし折ろうとしてくるのを捌き斬りなしで必死に捌きながら、同じく大粒の涙を流させてしまったシスターから、昨日の事情を涙声交じりで聞き届けた。

 

 まずやはり伝わってしまっていたのは、俺の訃報。

 ギルドへ死亡通知が流れてしまったのをガキたちもシスターも聞いて、全員でそれに涙して。

 しかしそんな時でも魔族の大群が攻め込んできているという事実は変わらず、失意と絶望の中で何とかシスターが子供たちをグランガッチまで避難させたということで。

 避難後も、俺の訃報に重ねてティオや世話になったカトルが戦争に赴くことなど、これからどうなるかが全く見えない不安に重ねて、ずっとガキたちはぐずってしまっていたらしい。

 そんな時間が3時間ほど。他に避難していた王都民の人たちとも全員で不安な想いを共有し、グランガッチの王族が派遣した護衛の兵士たちも、グランガッチの国民たちも全員でめちゃくちゃ辛い避難生活を数時間過ごしたと。

 

 もう聞いてるだけでめちゃんこ胸が痛くなったよね。

 おのれクソ魔族!! やはり滅ぼさねばならんなアイツら。

 俺の大切な人たちが涙するようなことをアイツらが俺に仕掛ける限りサーチアンドデストロイだわ! 根絶やしにしたるわクソー!

 と思うくらい急激な襲撃だったわけだけど、しかし俺らが生還して王都にたどり着いて、無事に魔族デストロイして戦争を終結させた後。

 

 グランガッチの転移陣を使って飛び込んできた第7王子のナッツ様(ノインさん曰く普段はのんびりした人らしい)が、似つかわしくない大声で避難していた全員に戦争の終結を通知。

 その中でどうやら相当詳細に戦争の様子を語っていたようで。

 ロック=イーリーアウスが奇跡の生還を果たしたーだの、その部下が獅子奮迅の活躍で一瞬で魔王軍を滅ぼした―だの、敵の大将格をロック=イーリーアウスが一撃で討ち取ったーだの、カトルとティオがロックが来るまで尋常ではない粘りを見せたーだのと……まぁ興奮しまくって戦場の様子の語り部を務めたらしい。

 そのせいかよ今朝の声かけは。

 

 しかしまぁそれを聞いた時のガキたちの喜びようったらなかったとのことで、またしても大泣きを、今度は喜びの中で大声で泣き叫んでしまったようで。

 んで避難民も無事に順次王都に帰還した。

 たった半日の急な避難活動だったがやはり混乱は大きく、その日は孤児院でみんなで落ち着いて過ごそうという話になったが、まぁ感情が揺さぶられて避難して大泣きしまくって戻ってきて……と大変な一日を過ごしたガキたちはその疲れからか夜になったらすぐにぐっすり眠って。

 

 そんな流れで今日がある、と。

 

 

 

「本当に……みんな、心から貴方たちの事を心配していたわ。やっぱり卒院するときに冒険者になる事を禁じていればよかったって……今でも後悔しているくらいよ」

「いやマジでごめんねシスター。心配かけたのはホント反省だわ」

「私も冒険者になっちゃったからあんまり人の事言えないけど! でもホントにお兄ちゃんは心配かけ過ぎなんだからね!! 自分がみんなに慕われてる存在だって自覚してる!?」

「最近ようやく。……でも俺別に死んでなかったわけでしいて言うならギルドカードの通知システムの不備に対して怒るべきでは? ノックスさんに文句言うべきでは?」

「反省していないわね?」

「お兄ちゃん??」

「ごめんて」

 

 いつもはのほほん糸目のシスターから厳しい視線を感じて俺は肩を竦めた。

 いやほんとにシスターやガキ共に心配させちまったのはごめんとしか言えないしそこは本心で申し訳ないと思ってんだけどね。でも俺の死亡通知が間違って飛んだのは俺のせいじゃないよねぇ!?

 ギルドの責任じゃない? まぁ確かに俺は闇のマナの噴出口にギルドカードをかざし続けた上にその元栓のなんかヘンな所にブチ込んできたという用途にそぐわぬ使用法をしたのかもしれないけどさ。その程度で死亡通知が誤って流れちゃうってのはあのシステムを管理しているギルドの責任では? 製造物責任法で訴えられるのでは?

 って本心をちょっと零したらさらに圧が強くなったのでへにょりとした顔になった。ティオもシスターを挟んだ俺の逆側に座って同じような圧をかけてくる。最近コイツシスターに似てきたか?

 

 まぁもう小言はいいだろう。こうして無事に全員で帰ってきたわけだし。ガキ共も安心しただろうし。

 それよりも今日は二人に伝えたかったことがあるんだよ。

 昨日は流石に忙しくてティオに話す機会はなかったけど、二人にとってのある意味で()()を伝えられるんだから。

 それを聞けたんだから、伝えない理由はない。

 

「……それで。私とティオに秘密で話したい内容、というのは何なのです?」

「お兄ちゃんから何かあったっけ? その、昨日の件……じゃないよね?」

「戦争の話じゃないよ。話したかったのは……二人の、()()の事」

「「……!」」

 

 時機を見て俺が話を切り出したことで、二人が息を呑んだ。

 シスターが隠し通していた過去。ティオも将来に渡って隠し通すつもりだった、二人がエルフだという事実。

 迫害の歴史。謂れ無き咎。その真実を掴んだことを、二人に早く伝えたかった。

 

「……俺、グランガッチに遠征に行って、実はそこでも将軍格の魔族とカチあったんだけどさ。その時に敵の部下の一人を捕虜にして────────」

 

 語り始める。

 俺がグランガッチで遭遇した魔族、そこにいた第六将フォルクルスの部下カリーナを捕らえて、そこで尋問の中で聞き出した世界の真実。

 過去のエルフの迫害の原因。エルフたちが魔王軍に加わりダークエルフになった事件の真相を。

 今回グランガッチがそうなりかけていたように、エルフを魔に落としたのは自発的な行動ではなく魔族の仕業であったこと。

 エルフたちは洗脳され操られていた。彼ら種族に咎はなく、全ては魔王軍の、魔族の仕業であったこと。

 

 その情報を、余すことなく二人に伝えた。

 

「……そんな……」

「……じゃあ、私たちエルフは…………魔族に操られて、仲良くしてた人類と無理矢理殺しあわされて、滅びかけて、冤罪まで背負ってた……って、こと、なの……?」

「聞いた限りの話じゃそうなっちまうな」

「許せない……っ!!」

 

 語り終えた後に、二人の口からは感情の色が違う言葉が漏れる。

 シスターは哀しみを、ティオは怒りを。

 これは……当然とも言えるだろうな。ティオが自分がエルフだと知ったのはつい最近の事で、それだって特に実害はなかった。シスターが隠し通してくれていたから。

 しかしシスターは文字通りの当事者だ。幼いころに、魔族による冤罪が元で余りにも悍ましい事件を受けている。母の仇のような物だろう。

 悲しい過去。悲しい歴史を積み上げてしまったエルフという種族。

 俺の育ての親と、俺の妹がそんな冤罪で胸を痛めていて。

 

 そんなの俺が許せるはずねぇよなぁ!?

 

「ってわけで、俺このあと多分だけど王様から呼び出されて、戦争勝利の立役者としてなんか報酬とか貰えると思うんだよね。そこでエルフの歴史の是正を求めるつもり」

「────えっ?」

「いやさ、この話聞いたの俺だけじゃなくて。尋問の場に一緒にアンドレ様がいたから、忘れてなければ王族にもこの話が伝わってるはずなんだよね。カリーナもまだ捕まってるだろうし。だからさ……今回のグランガッチの洗脳事件が王都民とか世間に知られるのと同時に、エルフも実はーってことでこれまでの迫害の歴史は過ちだったって王族から認めさせて世間に周知させたいなって。そうすりゃシスターだってティオだって隠さずに過ごせるようになると思うしさ。勿論すぐにとは行かないかもだけど……『きっといつか』になるまでの時間は、短くできそうだろ?」

 

 俺が本当に伝えたかったことはここだ。

 愛する二人が冤罪で胸を痛めてんなら何とかしたい。なんで何とかします。

 俺もここ最近になってノインさんの他、アンドレ様やアンナ様といった王族への顔利きもなぜか出来るようになったし。

 真実を知れたのだ。なら広めないと嘘でしょ。

 もし王様がケチでなーんも報酬くれなくても何としてもねじ込むつもりですよ俺は。

 

「……っ……ぅ……っ!!」

 

 そして、俺が話したかった事を伝え終えて……シスターの瞳から生まれる大粒の涙がぽたり、と膝元に落ちる。

 うーん。こうなるだろうなとは思ってたけどさ。俺こういう雰囲気苦手なのよね。

 

「……ロック、貴方が、そんな、私の事を、知って……立派に、なって……ぅ、ううぅ……!!」

「……あー。ティオ、あと任せたわ」

「え!? ちょっとお兄ちゃん!? もー、ホントにシリアス苦手なんだから!!」

 

 両手で顔を抑えて号泣し始めるシスターに、俺はなんと言ったらいいか言葉を探せず困ってしまったので全部ティオに任せてベンチを立った。

 伝えたいことは伝えたしな。俺がシスターを大泣きさせてるのをガキたちが見咎めたら怒られそうだし。今はドラゴン形態のリンに乗って空の旅をしてるから見てないだろうけど。ワイバーン騎士団に怒られない程度にしとけよ?

 頭をがりがりと掻きながら所在なさげにベンチに背を向けて距離を離す。

 背中から感じる気配では、シスターに肩を貸してティオが立ち上がって……聖堂の方に向かうようだな。

 そこで前の時のようにまたゆっくり二人で涙を流すようだ。それでええ。

 

「……ロック!! ありがとう、本当にっ……貴方は、私の誇りよ……!!」

「私からも! ありがとう、お兄ちゃん!!」

 

 ンモー。そういうのいいからマジで。たまたまなんだしさ。

 ひらひらと振り返らずに手を振って、俺は広場の中央でリンたちが降りてくるのを待つことにしたのだった。

 

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