勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
『……ふぅー! ただいまー!』
「吐息熱っつ!」
50m級ドラゴンが王都周辺の空を飛びまわり一般都民たちがなんだなんだと騒ぎが大きくなり出したころに遊泳を終えてグラウンドに戻ってくるリン。とその背中にのったみんな。
ノワールさんと初めて出会った時も思ったけどドラゴン形態だとただのため息でも熱いな!
俺防御力ないから護りの指輪にバリアー張ってもらってなかったら割とリアルに焼け死ぬまであるわ! ガキ共くらいまでレベル高けりゃ問題ないだろうけど!
「ちょー楽しかったー!! めちゃくちゃはえーなリンねーちゃん!!」
「すごかったねー!! 地面がぎゅーんって遠く小さくなって!!」
「私絶対飛行魔法極めるんだー! リンおねえちゃんと一緒に空飛べるようにするの!」
「びゅんびゅん風を切るの楽しかったねーミャウ!」
『みゃぁ……みぃ……』
そして遊覧飛行でご満悦のガキ共がリンの背中からぴょんぴょん飛び降りてくる。リンが地に伏せても高さ10mくらいはあるんだけどな。身軽だなコイツら。
猫好きのカシム(9歳・女)に捕まってげっっっそりしてたミャウは俺が盗んで回収しておいた。いつものフードに戻り一息ついている。
大人しい子たちはイレヴンとサザンカさんが運んで下ろしてくれていた。監督役助かる。
「ただいま戻りましたマスター」
「うむ。速度も全速力の5分の1程にリン殿が抑えられていた故、危うきことは特に何事もなく」
「それでも時速200キロ近い。まぁ二人ともお疲れ様、監督ありがとね」
二人に聞けばリンも手加減して飛んでたらしい。まぁ全力で飛んだら音速越えるからソニックブームで王都壊れるしな。手加減できたリンえらい。
リンもずももももっと体を小さくして元の姿に戻った。
戦争終わらせて体戻してた時も思ったんだけどなんでドラゴン形態からドラゴニュート形態に戻った後も服が破れてねぇんだろうな。普通にいつものゴスロリ風ドレス着てるわ。謎だ。
「……あら、リンちゃんも戻ってきたのね」
「お、シスター……えっと、なんか……落ち着いた?」
「ええ。一周回って血の気が引くくらいには落ち着いたわ」
「何があったの」
そうしたらシスターもティオと一緒に戻ってきて。
でもなんか……シスターの顔が青ざめているというか、怒りと焦りと哀しみと諦めがスクランブルエッグになったかのような味わい深い表情を浮かべていた。
えっどういう感情その顔? 自分で言うのもなんだけど俺が伝えた話は朗報だったよね??
聖堂でティオと何してたの……? ティオはなんかまた俺から目を逸らすようになってるし。
聞くのすら怖いわ何話してたんだよ二人で。
「ロック」
「うん?」
「愛から起きた行動であるならば、何があってもそれを許せるような広い心を持ちなさい」
「禅問答的なやつ??」
そして俺の両肩に手を置いてぐるぐる目で謎の叡智を俺に授けてくるシスター。錯乱してない?
え、何? 愛は世界を救うとかそういう話? 急に何??
まぁ……言いたいことは分かるけどさ。つまり魔王ダブレスちゃんと愛をはぐくんで平和が訪れるならそれが一番って事だろ?
わかるわかる。完全に理解したわ。俺の魅力で魔王だって堕として見せろと。やってみるさ。
最終的に愛で世界を救えればそれに越したことはないよね。任せとけって。
「マスター。名残惜しくはありますが、そろそろギルドに向かわねば……」
「ん、そーだな。午前中が終わっちまうし……んじゃそろそろ行くか」
そこでイレヴンが声をかけてきて、確かに孤児院の庭にある時計を見ればもう10時を過ぎていた。
ここでのんびりガキ共の相手してやるのも楽しいのだが、ギルドに午前中には顔を出すと伝えていた手前、そろそろ向かわなければならないだろう。
シスターにその旨を伝えて、さてそんじゃお暇すっかねとなったところで、最後に。
「シスター。しょうかいするね……これ、おとうさんです」
「え……ええっ?」
『このような形で紹介されるとは』
「喋った!? え、ええと……お母様の間違いではありませんか?」
リンがサザンカさんから魔刀【
妙にシュールな光景である。そして刀から響くノワールさんの声が女性のそれな所にシスターも突っ込んでいた。やっぱりどう考えてもママだよねノワールさん。
『初めまして……私はノワール。リンの親である先代ブラックドラゴンの意思が乗り移った魔剣です。我が子が大変お世話になったようで、心より感謝を申し上げます』
「あ、これはどうもご丁寧に。孤児院を経営しておりますミルと申します。こちらこそ、ロックがきっととてもご迷惑をおかけしておりまして……」
『ふふ……いいえ、貴女の教えはきっと間違えておりません。ロックという少年の在り方に、私は人類の希望を見ました。彼の事を誇ってあげてください。リンの事も本当によく育ててくれました。貴女が回復魔法を教えていなければ、私は今こうして話すこともできず、力を継承することも出来なかった』
「うん! シスターがおしえてくれたまほうで、おとうさんをたすけられたの! ありがとうシスター!」
「まぁ、そんな……私のしていることが少しでも誰かの為になっていれば、これほど嬉しい話はございません」
お互いにお礼を述べながらぺこぺこ頭を下げるという不思議な光景が生まれている。
まぁノワールさんは刀なので頭は下げられてないけど。リンとシスターがお互いにお辞儀し続けるのでデカパイが揺れて俺に眼福。
「それにしても……その、ノワール様は性別という区別はないのかしら? リンちゃんは完全に女性としての意識であるようですけれど。お声もですし、リンちゃんを生んだとなれば……その、やはりお母様とお呼びするのが正しいのでは……」
『確かに私は雌雄の区別はありません。父と呼ばれているのはリンがそうしているからなのですが……』
やはりシスターもリンがずっとノワールさんの事をパパと呼んでいることが気になってしまったらしい。
そりゃそうよな。その辺の社会常識を教えたのもシスターだ。もし父さん母さんの区別がついてないようなら教えないと、と思うのは教育者だからなのだろう。
しかし、そこでリンが俺も思いもよらなかったノワールさんパパ呼びの真実を伝えてくれる。
「ううん、おとうさんはおとうさんなの! だって、わたしのおかあさんはシスターだから!!」
「えっ……!?」
『……成程』
「おかあさんって、そだててくれるおんなのひとのことをいうんでしょ!! わたしをそだててくれたのはシスターだから、シスターがおかあさん! だからしょうきょほうでおとうさんはおとうさん!!」
「……っ! この子は、もう……!」
『本当に……我が子はよい出会いに恵まれましたね』
なるほど納得。理由を聞いて完全に腑に落ちたわ。
リンはまず母親に出会ったのだ。人の言葉も介さず、俺以外の誰にも懐いていなかった頃に連れてきたこの孤児院で、シスター・ミルに出会い、それを母親だと認識した。
だからリンの中では生みの親であるノワールさんは父親の枠に収まったと。声が女性的であろうとドラゴンの見た目じゃ逆にリンは性別を判断できないから完全に父親として刷り込まれたと。
なるほどなー。うわー納得。みんなのママなんだよねシスターは。
この孤児院にいるみんながそう思ってるよ。偉大なる母性も持ってるしな。わかるよ。
「……胸が温かくなりますね」
「うむ。主殿が生んだ
「お兄ちゃんがいたからリンちゃんもノワールさんも助けられて……だもんね」
感動で再びほろりと涙をこぼしてしまうシスターを見ながら俺の女たちと妹が分かりみの深い顔で頷いている。
わかる。親子の絆っていいよね。血が繋がってなくても家族になれるってのは俺が常に感じてるところだからね。血の繋がらないママがいて妹がいて、苗字で繋がった爺さんがいてとそういう関係の人が多いからだろうな。
「……うし!! んじゃギルド行くか! 俺ら帰るからな! 元気してろよガキ共ー!」
「ロックにーちゃんこそ元気してろよー!」
「もう死なないでねー!」
「また遊び来てねー!」
「リンねーちゃんまた乗せてくれよなー!!」
「いいよ! またいつでもくるから!」
「イレヴンさんたちも、またね」
「ええ。また遊びに来ますね」
「健やかに育つのでござるよ」
「ちゃんとシスターの言う事聞くんだよみんな! それじゃあまたねー!!」
「ティオお姉ちゃんも気を付けてねー!」
「皆さん、また遊びに来てくださいね」
別れの挨拶を交わして、俺たちは孤児院を後にした。
※ ※ ※
さてギルドに行こうという所で再び俺たちは空を飛んで移動しようとしたのだが、先程50m級の謎のドラゴンが王都上空を飛びまわっていたという通報が多発したことで何故かワイバーン騎士団の警備隊が上空を警戒してしまっていたので、ギルドまでは歩いて行かざるを得なくなった。
どうしてだろうなぁ(遠い目)。
「俺の必殺の隠密移動が火を噴くぜ」
「エクスアームズ10『スティルステルス』───」
「そこまでやるの!? イレヴンさんも付き合うの!?」
「確かに一時的な対処にはなり申すが……今後街中を歩くたびに気配を消すのでござるかお二方」
「そもそもおっきいサザンカとわたしだけでもめだってるからいみなくない?」
しかし孤児院からギルドまで徒歩で移動となるとどうしても大きな通りを歩かねばならなくなり、そうなると先程のような声かけがさらに多発するだろうことは余りにも容易に想像ができる。
なのでせめてもの抵抗として俺は闘技大会やグランガッチでも見せた隠密モードに入り気配を0にした。イレヴンも
こうなると目に見えるのは3名だけだ。
赤カブトという代名詞となった深紅の鎧を身に纏う身長198cmのサザンカさん。
黒い竜翼とデカい尻尾を持つ傍目には特別な種族に見えるリン。
そしてアイドル冒険者の一人であるティオ。
なので一般人はうかつに声をかけられなくなるのだ。これが俺の逃走経路だ。
後でロックくんファンクラブ(女性限定)を作ってその子達にイチャイチャしてもらうんだ。平和になったらそうしよ。
まぁそんなこんなで声かけ事案を回避しながらギルドにようやくたどり着いた。
流石にギルドは見知った顔の冒険者だらけだからな。流石にここでも声かけNGとは言わないよ。男冒険者から声かけられてもシカトすればいいし。
それでは扉を開けておっじゃまー。
「おっじゃまー」
「おお、来たかロック少年。みんなも」
「やあロックくん!! 待っていたよ君の事を!!」
「おっす。昨日の酒大丈夫だったか? ティオも」
「うん。大丈夫。ダメだったけど大丈夫」
「ティオの顔それどういう感情??」
扉の先に広がるフリースペースですぐに声をかけてきた二人。ケンタウリスを率いるメルセデスさんと、カトルと一緒にいるヴァリスタさんだ。
この二人も昨日は戦線を維持するためにめっちゃ頑張ってたと聞く。お疲れさんでしたね。
しかしギルド内を見渡してみても……なんか……冒険者少なくない?
「俺の奇跡の生還と大活躍に惚れたデカパイ冒険者はどこ? それ期待して来たところあるってのによォ!! ンモー!!」
「……ねぇ、そろそろアンタもそういうの卒業していいんじゃない?」
「…………オレたち相手には気を遣わなくてもいいぞ」
「昨日は本当に大変だったでしょうからね。せめて過度な声掛けをしないようにギルド内にはクランで周知しておきましたよ」
「ロック様やイレヴン様、リン様、サザンカ様は今や王都でも救世主として有名になってしまわれましたからね。目立つのを好まれないのは普段の雰囲気でもわかっておりましたから先に手を打たせてもらいました」
「ケンタウリスの皆さんが無限の分かり手」
そんな人の少なさにいつものノリで嘆きを叫んでいたらメルセデスさんの傍にいたケンタウリスのみんながなんか妙に優しく接してくれていた。
えっ急に何。いや確かに俺もずいぶんケンタウリスのみんなとは打ち解けたけどなんか親密度のランクがまた一段上がってない?
既に俺が声かけ事案に辟易していることまで察してくれて、冒険者たちに余計な声掛けはしないように働きかけてくれていたということで。お心遣い無限にあったけぇ……。
これはもう逆説的にケンタウリスが俺のハーレムと言っても過言ではないのでは? そろそろクランハウスで宿泊を許される唯一の男性になれる頃では?
いつもティオを俺んちに泊めてるんだから俺がクランハウスで泊めてもらってもいいと思う。なんかしらの事情で自宅にいられない時に相談してみよ。
「来たか、ロック」
「お……っと。ウォーレンさん……とノックスさん」
「おう。昨日はホントにお疲れさんなお前ら」
そうして更なるハーレム拡大に気持ちをトバしていたらギルドマスターのウォーレンさんと最近中間管理職代表みたいな風情を醸し出したノックスさんがやって来た。
ギルドマスターからわざわざ声をかけられるとかなんやろ。ギルドから特別報酬……はまぁ流石にあれだけの働きをすれば出ると思うのだが。
俺は殆ど仕事してないからあれだけどイレヴンやサザンカさんやリンにはちゃんと報酬出ますよね? イレヴンとリンは冒険者登録してないとはいえ。
「ロック。まず早急に君に伝えなければならないことがあるんだ」
「え? ……えっ? 急になんです??」
しかし話は俺の事らしい。
え、何? ウォーレンさんなんかお顔が申し訳ない感じですわよ??
「ロック───────君はギルドから追放だ」
これ異世界転生チートさんの本で見たことあるやつだ!!!!(歓喜)