勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「────まず、どうやら私の説明不足があったようだ。謝罪させてもらいたい。反省している」
「大変失礼ですがウォーレンさんって割とこう……いつも説明が最低限ですよね。もしかして昔からそういう所あったんですか?」
「昔か……いや、冒険者時代はディセットさんに鍛えられていたが特に問題はなかったはずだ」
「あの偏屈じーさんに育てられてその認識は絶対問題あるやつ」
ギルドにあるウォーレンさんの部屋。いわゆるギルドマスター室に俺たち一行は案内されていた。
事の経緯はこうだ。
先程ギルドフロアでウォーレンさんから唐突に爆弾発言を受けて、俺は聞き覚えのある台詞に追放から始まる更なるハーレム展開あるか!? と追放系物語に脳を焼かれた活字中毒者特有の歓喜を味わっていたのだが、しかしその言葉に剣呑な反応を見せたのが俺の女たちだ。
「詳しく……」
「せつめいをしてくれる……?」
「拙者たちは今冷静さを欠こうとしており申す……」
『みゃ』
イレヴンが、リンが、サザンカさんが……あとティオとかケンタウリスのみんなとかヴァリスタさんとかカトルとかが……こう……「は??????」ってリアクションだった。
イレヴンはツインドライヴ起動して駆動音を大きくさせるしリンはすぅー……とブレスに備えるための深呼吸し始めるしサザンカさんは鯉口を切ってチャキチャキし始めたしりして。
まぁその、みんな俺の為に怒ってくれたんだろうなってのは分かる。
普通に聞けば確かに今回の戦争のなんだか功労者みたいな雰囲気になってる俺が『ギルドから追放』とか言われたら怒る理由にもなるだろう。
俺は中々味わえないシチュエーションにワクワクしてたけどみんなはそうではなかったと。
そしてそんなヤバい雰囲気がジワリと滲み出したところで慌ててノックスさんがフォローに回った。この人いつも苦労してんな。
まぁ俺も一旦みんなに怒りを治めてもらって、あれれおかしいなって顔をしているウォーレンさんに詳しい説明を求めて、こうしてギルドマスター室に移動させてもらって最初のやり取りがさっきの会話というわけである。
結論から言おう。
この人ド天然だったわ!!!!
昔からこう……お顔の渋さとか雰囲気でみんな気付いてなかったけど肝心な所説明せずに結論から述べる上に肝心な所説明し忘れるタイプのコミュ障だったわこのオッサン!!
そういやディセットじーさんもそんな感じだったな!! 説明最低限で自分で納得したら他人に説明しねぇのなこういうタイプな!!
闘技大会優勝した時も何の事前相談もなく奢りの話されたし!! 俺の為を想っての事だってのはわかったけど説明不足の鬼なんなこの人な!! だいぶ敬意が吹っ飛びましたわ。
じーさん……この人アンタと同じでまるでダメなオッサンだよ……!!
ちゃんと教育しとけよマジでよクソじじぃがよぉ!!
「とりあえず……俺がギルドから追放になるっていう話ですけど。その辺の経緯を全部説明してもらっていいですか?」
「それは君なら既にわかっているはずだ、ロック。ディセットさんが見い出した勘に秀でる英雄たる君ならば……」
「自分の中の納得で完結しないでもろて。俺だけじゃなくて後ろのみんなにも理解できるように説明してもろてェ!」
「そうか? ……ふむ。しかしどこから説明したものか……」
「どうしてマスターの知人というのは皆どこかしらトンチキなのか」
「それは拙者らも含まれているでござるか?」
「るいともというやつ」
『みゃ』
そして説明を求めたらもうすでに君もわかっているだろう? っていう分かり手ムーブをされたけど当然にして俺だってみんなだってわかってねぇから!!
俺の勘だって万能じゃないんよね! 急に響くタイプのそれが主だし!
たまに俺の方から求めて勘を働かせる時もあるけどそういう時はなんか効果薄れてる感じがするし!
もちろん今回の件も正直何故俺が追放という扱いになったかは分かっていないのだ。多分ギルドカード関係なんかなっていう推理はあるけど。
「あー……じゃあ俺から説明させてもらっていいすかギルド長。俺の方で確認した内容でもありますから」
「む、そうか。……では任せた、ノックス」
「うす。……ってなわけでロック、お前さんたちのことだがよ。俺らもお前らがホエール山脈で何してきたのか、ってところの事情はヒルデガルド様にお伺いして把握はしてるんだわ」
「あ、そうだったんすね。そこを一から報告は面倒だったんで助かりますね。後でヒルデガルドさんにお礼しなきゃなぁ……体でなァ!! 熱い一夜を約束したからなぁニョホヒホ!!」
「器がでっけぇよお前さんは。……で、だ。勿論俺らギルド側も、今回の戦争で救国の活躍を果たしたお前さんたちの報酬を用意しねぇと、とまず考えたわけだ」
そこで説明をノックスさんが引き継いでくれて、改めて最初から話を進めてくれる。
俺らがこの王都を救った昨日の件。そこに至るまでのホエール山脈での死闘(俺目線)はヒルデガルドさんから全部説明してくれてたという話で。
ふむ、助かる。報酬も気になる所だったしな。
他にも魔王軍の残党とかどうなってるのかとか、今後王都はどのように動いていくのかとかもわかれば教えてほしい所だけど。一先ず今はノックスさんの話を聞こう。
「そんで、当然だがギルドから冒険者に報酬を与えるってなると、ギルドカードを通じて内容を管理してるわけで。冒険者登録してるロックと、あとヒノクニの手形でギルドカードの権能を代行してるサザンカはそれを通して。イレヴンはアンドロイドだからロックへの報酬にお前の分も含むことにして、リンちゃんは……あ、今もリンちゃんって呼んでいいのか? その、ブラックドラゴンになったんだろ? 敬語のほうがいいか?」
「いままでのままでいいよ! ごはんさんにはごはんをおごってもらったというたいへんおおきなおんもあるし!!」
「ノックスな。んじゃリンちゃん……は、冒険者登録してなかったから特別報酬として報酬を出すか、これを期に冒険者登録だけしてもらってギルドカード発行するか……なんて話をしてたわけだが。────しかし、ここで一つ問題が起きた」
「……なるほど。話が見えて来た」
「ですね」
『みゃあ』
ノックスさんが順番に話してくれたおかげで、話の先の流れも読めてきた。
俺らに報酬を準備してくれていて、それぞれのギルドカードの登録を介して報酬内容の入力を行おうとしたところで、しかし。
「ロック、お前さんのギルドカードがとんでぇもねぇことになってるせいで……冒険者としてお前さんを扱えなくなっちまったんだ」
「なんてこっただよ」
『みゃ!』
やはり、問題の根幹は俺のギルドカードだった。
ホエール山脈の頂上、闇のマナの噴出の根源に突き刺してきて取り出せなくなった俺のカードがとんでもねぇことになっていると。
しかしそこでイレヴンたちが疑問を口にする。
「……ノックス、それはそこまで危惧する事態なのですか? ギルドカードは再発行手続きもできると聞きます。その手続きをすればマスターは冒険者として再登録できるのでは?」
「再発行もできるさ。それが
「それならロックもさいはっこーできるんじゃないの?」
「と思うよなリンちゃん。ところが……ちっとイメージしてほしいんだけどな、通常の紛失再発行はどうやるかって。当然にしてカード紛失した当人は生きてるから、ギルドカードの情報は生存判定の状態なんだ。その判定を再発行した新たなギルドカードに移して、そうすると元の紛失したギルドカードは自動で消えて、新しいギルドカードが本人のものになる……って流れなんだが……」
「……主殿のギルドカードの反応は現在、生存の通知を送っていない。死亡状態の通知になってしまっているということでござったな」
「それだ。ギルド本部で管理しているギルドカードの情報では死亡と同様の表示になっていて、しかしロック本人はこうして生きている。こんな状況はギルドでも初めてなんだよ。軽く試したが再発行用の
ノックス先生の分かりやすい説明のお陰でまぁだいたい理解できた。
俺が突き刺してきたギルドカードは、謎の力により俺の生存信号を確認できなくなって、ギルド本部に死亡通知を送っている。
しかし俺は生きている。そんな俺がギルドカードを再発行手続きするとして……普通に生きてる冒険者として前のギルドカードの記録を引き継げるのか? という話で。
もちろん二重登録は弾くシステムだから、新規の登録もNGだったって話で。
「ってかそれ、もしかして無理矢理カードの再発行手続き踏もうとしたら……俺が突き刺してきた前のギルドカードが消える可能性ありません??」
「お前さんの言う通りだよロック。ヒルデガルド様が言うにはお前さんのカードが世界中の闇のマナの生成止めてんだろ? 万が一があったらヤベぇじゃねぇか。……ってかそのへんはリンちゃんが今は管理してんだったよな? どーなん? 刺さってるギルドカードがもし消えちまったら───」
「───ぜったいだめ。ロックのギルドカードがことわりをこえてマナのこんかんをつらぬいてるから、いまあれがきえたらふたたびやみがあふれだす」
「お、おぅ。難しい言葉話せるようになったなリンちゃん」
「えっへん!」
さらに俺はその可能性に考えが至る。
通常の紛失再発行手続きでは、再発行後に紛失した方のカードが消えるってことで。
どのように消えるのかはわからないけど、フッと世界から来ちまったりするようであれば下手すると突き刺してきた楔が抜けちまう可能性すらある。
そしたら管理権継承したリンがいるとしても再び人類の未来に影が差しちまう。それだけは絶対にあってはならない。
「……いまはかんりにんのわたしがとおくにいるから、もしまたやみのマナがあふれだしたら、とめにいくまでにじかんがかかるの。そのうえ、まおうがふたたびほえーるさんみゃくのちょうじょうやにんげんかいにてんいしてくるかもしれない。だからぜったいぬいちゃだめ。ぜんぶおわったらわたしがせきにんをもってとりのぞくから」
「想像以上に俺のギルドカードが重い役割を果たしていた」
「マスターは今や世界の英雄であり一番魔族から狙われる存在だと思いますよ」
「うむ。ギルドカードも所有する冒険者が死亡すればそこに留まる様に浮遊を始めまする。それで抜けてしまう可能性も無きにしも非ずでございますし、死亡後1カ月が経過してしまえばギルドカード自体がやはり消失する。主殿の命が万が一にも亡くなれば魔族共が再び人類を侵し始める事でしょう」
「責任重大っ!!」
イレヴンとサザンカさんに言われて俺もようやく俺の命の価値がなんだかとんでもねぇことになっていることに気が付かされた。
そっかー。確かにそうだ。俺が死んだら突き刺してきたギルドカードがグッバイしちまうからそれこそ魔族が喜んじまうだろう。
えっ。なんで急に俺全人類の運命を背負うようなことになってんの??
これがハーレムを築いた反動なんか?? 重すぎない???
「……まぁそんなわけで。悪いがロック、お前さんのギルドカードの再発行については無理に触れない方がいい、ってことでギルドのほうでも王族のほうでも判断が一致した。理由は分かってもらえたと思うが……」
「うっす。その判断自体は頷ける所ばかりだったんで俺も了解っす」
「すまねぇな。で、つまりはお前さんはギルドのシステムの管理上は死亡してるって扱いになって、再度冒険者登録もできねぇって話になっちまったから……ギルドとしては『ロック=イーリーアウス』っていう個人を『冒険者』として扱う立場じゃなくなっちまったってわけだ。けどお前さんを放っておくわけにはいかねぇ、さっきの話の通りお前さんは今誰よりも特別な存在になっちまった。全力で守らなきゃならねぇ」
「そう、すなわち他の冒険者とは一線を画す対応を必要とされる。つまりギルドの管理する冒険者ではなく、国の……王族の方々の庇護、管理下に君は今後置かれることになる。だからロック、君はギルドから追放だ」
「そういうことかいっ!!!」
そしてウォーレンさんがここぞとばかりに結論を述べて、ようやく全ての理解が及んだ。
俺は今、冒険者としての登録上は死亡という扱いになってて、ギルドカードの再発行や冒険者の再登録も出来ない状態だと。
しかし俺個人は絶対に死なせてはいけない冒険者になったから保護とかそういうのはきっちりやってくれる。しかしそれはギルドが通常の冒険者への管理、支援を行うそれとはまったく違う方法で、王都というこの国自体が俺を庇護してくれることになって。
だからこそギルドという立場では俺は管理しないことになったから、追放という単語が適切な存在になっちまったと。
違うじゃん!?(逆ギレ)
いやさぁ確かにさぁ!! 追放という扱いでも間違ってはいないけどさぁ!!
みんな俺の事守ろうとしてくれてるしちゃんと想ってくれてるじゃん!? 王族から支援を受けられる男になるなんて思ってなかったじゃんさぁ!? 嬉しいけどさぁ!!
俺の想像してた追放モノとは全く違う状況じゃんねぇ!?
まぁでもこれはこれでなんか面白そうだしノインさんをハーレム入りするいい口実になりそうだからヨシとしたろ!! ヨシ!!
「……そういった事情で、ロック。君は今、王城に召集するようディストール王から王命が出ている。落ち着いたら速やかに王城に向かってほしい」
「王命て。マジすか……いや、まぁ行きますけど。ノインさんやヒルデガルドさんと会いたいし。アンナ様やアンドレ様とも話したいし」
そして更に話は進み、俺はなんか王族の皆さまにお呼ばれされているらしい。
わーお。また王城に行くのか……前はノインさんの騎士としてお邪魔したけど、逆に指名して呼ばれる立場になるとは。
人生って何が起きる分からないわね。怖。
「話が大きくなってきましたね……しかし、先程話した通りマスターの存在は今や王都でも最も重要な命です。護衛などは付けないのですか?」
「そこは俺らギルドも王族も昨日の打ち合わせの時点で相談したんだけどな。まずロック自身が勘で自分の危機は感じ取るだろ?」
「そりゃまあ」
「重ねて王都最強のアンドロイドとヒノクニ最強の武士と世界最強のドラゴンがいつも傍にいてやれるだろ?」
「当然です。マスターを護るのは私の仕事です」
「うむ。主殿を今度こそお護りするが武士の誉なり」
「つがい!!」
「だろ? ……いや待て今リンちゃんつがいって言ったか? ロックお前……お前さん……」
「いや一応今のリンはドラゴンとしては大人らしくてェ……ヒルデガルドさん情報でェ……」
「そうかよ……人の道は踏み外すなよ? まぁいいや、とにかくそういった理由でその辺の冒険者や騎士団に護衛させても意味がねぇわけだ。さらに言えば新しくつけた護衛が魔族に操られてたりしたら最悪だろ。その辺もお前らなら分かっちまうかもしれねぇが」
「ぐぬ……
「あっスマン、サザンカの件を問い詰めたいわけじゃなかった。まぁ……こんだけ理由がありゃ、改めて護衛つける意味もないってわかるだろ? お前らに並ぶ冒険者なんてそうそういねぇしな」
「なるほどなー」
ついでにちょっと話が膨らんで、VIPな存在になった俺に護衛とかつけないのか、という話になる。
だがまぁノックスさんが話した通り、既に俺のまわりには俺を護ってくれるハーレムが形成されてるしな。幸せ者だよ俺は。
そもそも────俺は『イーリーアウス』だ。
己と、己のまわりの危機は全て俺の勘が察知する。護れる。
そうあるようにじーさんが鍛えてくれた。
今んところ危機が迫ってる感じの勘も一切響いていないし……大丈夫やろ。
いつも通り何とかなるやろ!
「うむ。では改めて……ロック=イーリーアウス。王命に従い、この後すぐに王城へ向かいたまえ。今後の君の扱いについてや、国全体、ギルド全体の動きなどの詳しい話はディストール王から下達されるだろう。ギルドから君たちへの報酬についても後日打合せの上で受け渡しとしたい」
「了解です。……えーと、今までお世話になりました……って認識でいた方がいいスか?」
「馬鹿を言うな。君は確かに冒険者という扱いではなくなり、追放という形にはなったが……それでも君との縁を大切にする冒険者は多い。無論、私も含めてな。システム的な支援は出来なくとも、それ以外の部分ではこれまで通り存分にギルドに頼ってくれていい。君をディセットさんから託された者として、そんな寂しい事を言われるのは堪えるぞ」
「……うっす!! んじゃ今後も世話んなります!!」
『みゃ!!』
ウォーレンさんから言われた通り、俺たちは王城に向かうことになった。