勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
アンドレ様に案内されて到着した部屋に入ると、なんとも厳かな感じの部屋であった。
こう……イメージする戴冠式とかやりそうな大広間ではないが、ステンドグラスとかも部屋の高い所にあって、なんていうんだろうか……こう、式場のような雰囲気の所で。
しっかりした感じにしなくていいからねって言ったじゃないか!! 言ったじゃないか!!
「これは……間違いなさそうですね」
「うむ。まぁ王族の考えも手繰れば理解が及ぶところでござる」
「おなかいっぱいでねむくなってきた」
『みゃ』
身の丈に合わない綺麗な部屋の内装にビクビクしてしまう俺だがイレヴンたちはそんなに緊張していないようだ。なんでや。
闘技大会優勝した時もアレだったけど俺はただの一般市民だからね! こんな厳かな雰囲気の所で王から下賜されるような人間じゃないんよね!!
アンドレ様とアンナ様の妙な態度も気になるし何よりノインさんがどうなったかめっちゃ気になるし……なんか今ふわふわしてるわね俺ね!!
「うむ……来たな、ロック=イーリーアウス。そしてその仲間たちよ」
「はいぃ……」
そうして広間の奥、この国の王様であるディストール王が威厳たっぷりに俺を待っていて。
そしてその両翼には……多分王族の皆さまだろう。アンドレ様とアンナ様もそこに合流して、男4人女4人で合計で8人の男女が左右に分かれて俺らを迎えるように待っていた。
8人て。ねぇノインさんいないんだけど! どうなってんすか!?
……と、うかつにツッコむのも躊躇われるくらいの荘厳な雰囲気でちょっと口には出せなかった。
すごい圧を感じています。なんか怒られそうな雰囲気すらある!!
とにかく俺はシスターに教わった王都の礼儀作法に乗っ取り、左膝をついて右膝を立てる形にしゃがみ込み、右手を左胸、心臓のある位置に掲げて首を垂れる。
この構えが王様とか偉い人に謁見する時の作法らしいよ。闘技大会の時もちゃんとやったよ俺。
で、それに続いてイレヴンが同様に構えを取り、サザンカさんはヒノクニ式の作法で正座して俺の後ろに控えてくれて。
しかし……リンが仁王立ちのままだ。
えっちょっとリンちゃん。目の前にいるのこの国で一番偉い人たちぞ??
「リン……王様の前だからさ。ほら、俺らの真似して……」
「やだ!」
「ヤダってお前」
「ロック……わたしはおとうさんからけんのうをうけついだ、じだいのブラックドラゴンなんだよ? せかいのことわりをまもるそんざいなの。にんげんのおうさまに、じぶんからへいふくするりゆうがないの」
「難しい言葉いっぱい話せるようになってるぅ! でも確かに……そういうモンなのか?」
俺の慌てた言葉に対し、リンは毅然とデカパイな胸を張って直立不動をキープしたまま、しっかりとした理由で反抗する。
その言葉で俺も思い直したが、確かにリンは今や世界のマナを管理する管理人の権能を受け継いだ伝説のドラゴンだ。人間の王様に遜るのもおかしい……ような気がする。
……今更だけど俺の愛娘にして嫁であるリンの立場ってすっげぇ偉いんだな??(学び)
「黒竜様の仰る通りだ。本来は我々王族より丁重にもてなさねばならぬ立場の御方……そのままで構いませぬ。ロックらも
「へへぇ……そう言われると恐縮しちまいまして……うへへへ……」
「マスターが意外と権力に弱い」
「メンタルが小市民なのでござる」
「わたしのつがいならもっとむねをはって!!」
「ごめんて」
ディストール王の言葉に恐縮しながらも頭を上げて立ち上がり、出来る限り愛想をよくするためにニコニコと笑顔で手もみしながら王様を見る。
後ろのみんなにツッコまれたけど俺ただの孤児上がりの冒険者なの! 王様の前でこんなことになるなんて数カ月前まで全く考えてなかったの!
ただハーレムを作りたかっただけなのになんでこうなっちまったんだ。助けてノインさん。
「……改めて。闘技大会の覇者であるロック=イーリーアウス、およびその付き人であるアンドロイドのイレヴン。並びにロックの配下である鬼龍山茶花、ブラックドラゴンであるリン様。先の戦争に於いては貴公らの活躍により王都は滅びの運命を回避することができた。……我ら王族一同、心より御礼を申し上げる!!」
さてそうして俺たちが立ち上がったところで、ディストール王のイケおじボイスで高らかに俺らの名前を呼ばれた後に……昨日の活躍のお礼、と言われて、なんと、王様ご本人と傍にいる8人の王族の全員が俺に向けてビシッ!! と頭を下げてきた。
うっわぁ(ドン引き)。
なんだこれ!? いや待ってこんなの聞いてない!! もっとこう「褒美として何かあげるよ~」くらいの話で終わるもんかと思ってたら王様に頭下げられたよ!?
すごい。ただの一市民にお礼としてちゃんと頭を下げられる王家の皆様に逆に敬意すら覚えてしまいます。
「そっ、ちょ、えっ!? 待ってください俺そんな大したことしてないっすし! 後ろのみんなは頑張ってくれたけど!!」
「マスター、何度も言うようですが己を卑下するのはやめてください。マスターがいなければ私たち全員があの場に間に合わなかったのですから」
「うむ。我らの扇の要は主殿なり。王族より礼を言われるほどの
「ロックはえらい!!」
『みゃ!!』
「消えてしまいたいッ!!」
俺はそんなにたいそうなヤツじゃないんだよぉ!!
嬉しい気持ちももちろんあるけど恐縮とか恥ずかしさとかそういう感情の方が強いわ!! やめて頭上げてもろていいですよ王様ァ!!
そんな逆針の筵のような状況にあってくねくねと体動かして何かから逃れるように軟体動物になっていると、長い長いお辞儀を終えて頭を上げたディストール王が続けて言葉を紡ぐ。
「……貴公らがあの場に、闇の魔素が広がった戦場に間に合っていなければ……間違いなく王都は滅び、数十万からの王都の民に死者が出ていたであろう。それを貴公は救ったのだ。無論、それまで堪えてくれていた冒険者たちにも相応の褒賞は何としても準備させてもらうが……まずはロック、英雄たる其方を讃えさせてほしい」
「恐縮の極みでェ……あとさっきから気になってるんですけど、その、ノ─────」
「では褒賞の話に移るとしよう」
「急」
このままお礼を言われ続けると文字通り褒め殺される気がしたので、強引に話を変えるために、今この場に何故かいないノインさんの件を聞こうとしたら急に王様がスンッってなって俺の話を遮って褒賞の話になった。
具体的に何を貰うかってのは決まってないんだよな確か。アンナ様からも好きなものを頼めって言われたし。
エルフの歴史の是正の件についてはアンドレ様に一任したし、改めてお願いするのは違う気がする。
っていうかアレだ。ノインさんだよ。
この場にいないノインさん。改めて思い返すと、戦争が終わり俺にキスしてくれた後のノインさんはなんだかシリアスな雰囲気で「償わないと」とか言って別れて行った。
もしかしてこの戦争でなんかやらかしたのかノインさん? それで王様たちにその件がバレて……今この場にいないのか?
えっまさか? いやしかし待て……俺の、勘が。
勘が急に響き出した。
───今この場で、大至急、ノインさんの事を聞かなければいけないという強い勘。
彼女に何があった……!? オイちょっと待て王族のみんなから虐められてるとかないよな!?
アンドレ様もアンナ様もそんな雰囲気なかったし……信じたいけど!!
「其方が最も強く望むモノを述べてほしい、ロック=イーリーアウス。我ら王族に何よりも求めるモノを……」
「ディストール王。それよりまずノインさん……いや、ノルン様は───」
「──────今、ノルンと言ったな??」
褒賞の話になり、王様が俺に望む褒美を述べよと言ってくるがそれどころではなく、俺は勘が叫ぶままにノインさんの事を口に出す。
ノルン様は今どこにいて、どうなってるんですか───と聞こうとしたら、そこでまたしても王様からの強く素早いカットインが挟まってしまって。
しかもそこから、マシンガンのようにディストール王の口が回り始める。どうした急に。
「ノルンと言ったなロックよ。ふむなるほど。此度の戦争の褒賞として、これまでも交友を深めていたノルンを求めるのだな其方は。確かにあやつは器量が良い」
「えっえっ」
「執事のルドルフからもアンドレやアンナからも大変に其方とノルンが仲睦まじい様子であったとは聞いている。しかしノルンもまた我が末子にて王族の一人。目に入れても痛くない愛する娘だ。本来であればどこの馬の骨とも分からぬ者にまだ20にもなっていない娘を渡してやることは出来ぬ。我がオーディン家は家柄だけを見た縁談や婚姻の申し出はすべて断るのが常である」
「ちょっと王様??」
「だがロックよ、其方は此度の戦争における英雄であり既に国中に其方の活躍が知られている存在でもある。そしてノルンとも大変に懇意であるとも聞いている。他に何人も妻たる存在がおりハーレムを築いているのだけはなんともいただけぬが、それは逆に言えば多くの者に慕われるような人柄であることの証明でもある。闘技大会で優勝し個としての力も異質ながらずば抜けていると言えるであろう。其方ならばノルンを護り、ノルンに支えられる良き夫となれるだろう。其方ほどノルンに相応しい男はいないのかもしれぬな」
「話聞いてねぇなこの人???」
「我が王族には婚姻における風習があり、求婚した側の姓を名乗るのだ。相手からの求婚に応える場合はオーディンの姓を捨て相手方へ婿入り、嫁入りする形になる。ここにいる我が子らはたまたま全員が己からプロポーズしている故にオーディンの姓のままであるのだが、しかしこのケースで考えるとノルンはロックより求婚を受けたという形となるな」
「その風習意味ある??」
「ノルンは此度の戦で一つの罪と一つの功があった。戦争の当初に王族としての使命を果たさずに前線に出なかったことが罪、その後に思い直して死者蘇生という奇跡を果たしたのが功。余りにも大きい功績ではあるがノルンの父として、この都の王としてノルンには罰と褒美をそれぞれ渡さねばならなかった」
「どうしてそんなことに」
「すなわちノルンへの罰はオーディン姓の破棄、王族としての立場から追放とすること。同時に褒美としては想い人であるロックへの嫁入りを認める事。この二つを以てこの戦争のロックへの褒賞とノルンへの罰と褒美を兼ねるとスッキリするな、ウムそれがいい。勿論のこと王族でなくなっても今後も家族として愛する事は変わらないがな」
「ディストール王?」
「娘を頼んだぞ、ロックよ」
「
問答とは言えない何か凄まじいゴリ押しを見せつけられたわ。
ちょっと!! さっきのアンドレ様とアンナ様の態度完全に合点がいったわそういうことね!!
俺にこの褒賞の場で「ノインさんを俺にくれ」って言わせたかったのね!!
なんだよ普通に言えよ! とも思ったけど、そうすると王家の謎の風習である嫁入り婿入りの話になって、ノインさんから俺に結婚を迫ったことになるから、俺がイーリーアウスからオーディンになって王家に婿入りする形になっちまう……ってことなのかな。
それを避けるために何としてもここで俺の口からノインさんの、ノルン様の名前を出したかったという事、なのかもしれない。
「………ロックよ」
「アッハイ」
と、そんなことを考えて憮然とした顔をしていた俺を見て、ディストール王が心配そうに声をかけて来た。
「急に捲し立ててすまなかったな。だがこれは事前にノルンにも話をしておる。ノルンも其方の元に嫁ぐことには大変に乗り気であった。……ノルンが愛する男の元に嫁入りさせてやりたいと思っているのだ。国を守る事も出来ぬ不甲斐ない王として、あまりノルンの望む生活をさせてやれなかった不出来な父として、あえて言葉にしてしまうが────ノルンは、気に召さぬか?」
「んなことあるわけねぇですよ!? 最高の
「マスターの調子が戻ってきた途端に王への発言とは思えぬテンション」
「らしさが出てきたでござるな」
「しってた」
そして続く言葉に、親としての心配の籠った視線に、俺がNOというはずがないんだよね。
そもそもいつだってノインさんのロイヤルドスケベボディを求めていた俺だぜ!? 趣味も合うしこれからはいつでも異世界転生チートさんの作品の感想戦が出来るんだぜ!?
エルフの歴史の件が懸念無くなって普通にノインさんがこの場にいて落ち着いた雰囲気なら俺から求婚してたところだわ!!
……いや王族に囲まれた中でそれを言う度胸が俺にあったかは微妙だけど!! ノインさんを報酬として求めるって彼女に失礼じゃない? とかヘタれてた気もするけど!!
でも本人も家族もみんなOKなら躊躇う理由は欠片もない。当然にして受け入れるのだ。
ディストール王の強引な話題誘導だって、アンドレ様のさっきの話だって、全てノインさんの事を想う家族愛からのものだろう。
なら俺はそれを受け入れる。
シスターが言ってた「愛から起きた行動であるならばそれを許せるような広い心を持つ」ってのは、多分そういうことだと思うから。
「───そうか。ではこれにてロック=イーリーアウスへの報酬は我が娘ノルンの嫁入りと決まった!! 入ってくるといい!!」
そうして高らかに愛を叫んだところで王様も破顔して、ノインさんの俺への嫁入りが決定して。
続けて入ってきていいという言葉に、俺らの背後の大扉がバン! と音を立てて開いて、その先には。
「……ロックくん……っ!!」
「おお、ノインさん……超美麗ッ!!」
ウェディングドレスを身に纏ったノインさんが笑顔を浮かべて立っていた。
彼女の傍にはドレスを着つけていたのだろうメイドの姿と満面の笑顔のルドルフさんもいて。
完全にここまでシナリオ通りだったのだろう。俺らが来る前からずっと準備してた説ありますね。
美しさに目を焼かれていると、めっちゃくちゃ高級感に溢れる純白のヒラヒラマシマシの美しいウェディングドレスをはためかせて、ノインさんがぱたぱたとこちらに駆け寄ってきた。
それに対して俺は両手を広げて彼女が飛び込んでくるのを待つことを選択。
ここまでお膳立てされちゃあ受け止めるしかねぇよなぁ!?
「愛してますっ……!! 私の
「俺も愛してますよノインさnグワーッ!!」
『ふみゃっ!?』
「耐えろよそこは」
涙目の笑顔で飛び込んでくるノインさんを思いっきり受け止めて……いやごめん受け止められなかったわ(沈痛)。
レベル差とあと普通に体格差もあって飛び込んできた勢いを受け止めきれなかった。
捌き斬りなんて当然出来るわけねぇしそのまま見事に押し倒されたわ。シュポーンとフードからミャウが飛び出してったわ。
そんな姿にイレヴンたちと王族のみんなからも失笑が漏れる中で。
「────ちゅっ♡」
熱の籠った誓いのキスが、俺の唇に捧げられた。