勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「「「かんぱーい!!」」」
ギルド本部に併設されている冒険者用の酒場。
そこの円卓の一つに俺達パーティは陣取って、高らかに乾杯の音頭を上げてジョッキをぶつけ合った。
「今日はノックスさんのおごりだぜェ! 何でも頼んでいいからなぁリン!!」
「おごり……!! ごはん!!! ぜんぶ!!!! それもいちだいやにだいではない……ぜんぶだ!!!!」
「落ち着いてくださいリン。食べ物は逃げませんから」
「リンちゃんに負けてらんないっ! 私チーズポークソテー大盛りー!! ポテトいっぱいでー!!」
「俺はステーキ頼もうかな。悪いねノックスさん、俺らもついでに奢ってもらっちゃってさ」
「構わねぇよ、お前らが死地を潜り抜けて貴重な情報持ち帰ったことは間違いねぇし……ガキは一杯食ってんのが健全さ。懐に余裕はあるしな」
「だが果たしてリンの胃袋に勝てるかな……こいつの胃袋は宇宙だぜ!! 泣いて謝ってももう遅いからなノックスさん!!」
『みゃあみゃあ!!』
「大袈裟な……ガキ数人の胃袋満パンに出来ねぇ程度の稼ぎじゃねえんだよオッサンはよ」
「おねーさんおねーさん、この、ここから、ここまで、3つ! 3つずつ……!!」
「ハーイ全メニューオーダー×3入りましたー!!」
「……まぁ? ちょっとは手加減してくれてもいいんだぜリンちゃん??」
騒がしく宴会が始まった。
俺とイレヴンでリンを孤児院に迎えに行った後、ギルドでカトルとティオと合流して。
んで話聞いたらもう報告自体は済ませたらしく。魔族が出たから気を付けろって情報はバッチリギルドに伝わってた。
他のダンジョンでもそこまで深い階層に潜ったパーティの報告はまだ上がってきていないようだが、すぐにギルドカードに通知を飛ばしてギルドから注意喚起の連絡は入れるらしい。
俺らが行ったダンジョンだけがたまたま……とはこの状況では考えにくいもんな。当たり前の配慮だと思いますね。被害に遭ってる冒険者がいないことを切に願うのみである。
今後は調査隊なども組まれて、近隣のダンジョンだけではなく他の遠方の国などにも問い合わせて魔族が復活していないか確認などもしていくそうだ。
で、俺もイレヴンも改めて状況は説明して、そもそもダンジョン攻略初日でそんな深くまで潜ってるのはウチくらいのもんだとも言われて、でもセーフハウスの情報なんかはかなり重宝されて。
俺がマッピングした最短経路及び宝箱への経路もかなり報酬が出た。相当の臨時収入ですわよこれは。
「ま、今回の冒険の儲けは当然にして三分割になるんだが。それだってそうっとうな儲けだぜウッヒャ!」
「金に目がくらんでゲスロック出てる……っていうかロック、今回の冒険の儲けは四分割でいいんじゃない? イレヴンさんすごい頑張ってくれてたじゃん!」
「俺も同意だね。イルゼみたいなインテリジェンスソードとは違う……戦闘も索敵も支援も一人のメンバーとして働いてくれてたし。イレヴンさんのあの働きに報いないのは申し訳ないぜ」
「私からは何とも言えませんが……マスターの判断に任せます」
「んー……何気に際どい問題だと思うのよこれ。カトルとティオはまぁ気心知れた仲だからこうして遠慮してくれてるけどさ。他の冒険者と組んだら冒険者登録してないイレヴンに対してどーなん? って意見も出るかもだし……でも確かにイレヴンも頑張ってたもんな。1.5人前くらいにしとくか? 今後別パ組むときは事前に申告する形で」
報酬については明日トゥレスおじさんの所で換金した上での分配になるが、ここをきっちりしてないと冒険者としての信頼が失われるので結構シビアな所だ。
基本はきっちり山分け。事前に配分を設定してない以上3等分だとは思ってたが、しかしティオとカトルはそこを遠慮してくる。
確かにイレヴンは一人前以上の働きはしてくれてたし報いたい気持ちもあるが、ギルド的な扱いだと俺の所有してるインテリジェンスアイテム扱いだしな……際どい所だなコレ。
とりまその場では1.5:1:1くらいの分配にしとこっか、って感じで落ち着いた。後でこれもうちょっと詰めるか。
まぁ飯がまずくなる話はこれくらいにしといたろ!!
今は飯だぜ!! 疲れ切った身体にスパークリングオレンジが染み渡る……!!
「うっめ……!! 肉うっめ!! 五臓六腑しみっしみよ……!!」
「ここのチーズソテー好きなんだよねー! タレの酸味がおいしー!! おかわりお願いしまーす!!」
「んめー! ステーキにワインが合う……俺もワインお代わり!」
『あまり飲みすぎないようにしなさいねカトル』
「はむっ……はぐっ! ん!! まい!! はぐはぐ……!! がつがつ……!! もう3つ……!! ばいぷっしゅ……!!」
「みんなよい食べっぷりですね。ミャウもお肉もっと食べますか?」
『みゃあ!』
「待てよリンちゃんの食欲ヤバくねぇか? どこに入ってんだそんなに」
そしてこの肉よ!! やはり肉……肉は全てを解決する……!!
実際ここの酒場も長く切り盛りして冒険者の胃袋を埋めてるだけあって量も味も満足の一品だ。ちょっと値は張るけどそれこそメイン層が冒険者なわけで、冒険に成功して帰って来た時に俺たちの財布の紐は極めて緩くなるからついつい注文しすぎちまうのだ。
今日はその辺心配ないけどね。イレヴンは食事を必須としていないことから自分の分は少なめの肉料理にして、膝の上に座るミャウに分け与えてくれている。アイツもふともも気に入ったのかな。俺もそこに顔埋めたい(欲望)。
「……ってかあれな、ロックは酒飲まねぇんだな。俺と同い年なのに。試したことねぇの? 美味いぜ?」
「ん。酒で一度痛い目を見てな……それ以来俺は二度と酒を口にするまいと誓ったんだ……!!」
「ああ……あの一日中愚痴に付き合わされたアレね……アホロック」
「マスターになにかあったのですか? 気になりますね」
「コイツ冒険者になって初日に娼婦町に繰り出したら美人局喰らってな。酒になんか混ぜられて寝て起きたら身ぐるみ剝がされてたらしいぜイレヴン」
「あんまり語るなよノックスさん……メシが涙の味に変わっちまうだろ……?」
「ウケるわ」
「騙しやすいガキだと思われたのでしょうねマスターの外見だと」
『どうして普段の勘が女性関係だと全く機能しなくなるのでしょうねロックは』
「うるへー!! 世の中は全て騙した方が悪いんじゃい!! ぐぬぬ……あの女いつか見つけたらひぃひぃ言わせてやるわよちくしょー!!」
『みゃあ……』
「んまんま……はぐはぐ……!!」
ふとカトルが俺が酒飲んでないことにツッコミを入れ、そのまま話の流れが俺の黒歴史に舵を切ってしまった。
いつぞやの夜のおねーさんに酒になんか混ぜて飲まされて美人局喰らった事件のせいで俺はお酒に忌避感を覚えるようになってしまったのだ。
だからこそこのスパークリングオレンジなんだけどぶっちゃけ酒無しでも美味しければええやんけ!! 酔っぱらったら隙が生まれるし勘が鈍るし周りに迷惑かけるかもしれんやんけ!!
とちゃんと反省できてるんだから冒険者の中でも俺のモラルは高い方だと思う。だからそんな俺に惚れる女の一人や二人や100人くらいはいてもいいと思うんだけどなぁ……!!
「どうしてこんなに誠実な俺がモテないのだろうか」
「酒飲んでねぇのに酔っ払ったのか?」
「……マスターは口さえ開かなければワンチャンスはあると私は思いますよ。まだ短い付き合いですが……貴方の良い所も見えてきました。女性の前で口さえ開かなければ希望はあるかと」
「俺に女を口説くなっていうのか……?」
「女の人口説く時になんで口調がカスみたいになるのか私本気で分からないよ……なんでそんな風になっちゃったのロックは? どこでそんな性の目覚め方したの……?」
「ガキの頃に俺らで遊んでた時はそんな……そこまで女に傾倒してなかったよな? スケベだったけど。あの頃からスラムのガキみてぇな雰囲気はあったけど」
「どうして二重にブッ刺した今??」
「そう言えばカトルとティオはマスターの幼馴染でしたか……マスターの昔の話なんかも色々お伺いしてみたいですね。子供の頃のマスターはどんな少年だったのですか?」
「む。わたしもききたい! おかわり!!!」
『子供のころから大変やんちゃだったとはカトルから聞いたことがありますね』
『みゃあ』
「俺の過去を酒の肴にしないでもろて」
愚痴ったらみんなが俺をアホを見る目で見てくるしさぁ……涙で炭酸が薄まっちまうわ。
その後はティオとカトルが鬼の首でも取ったかのように俺の面白恥ずかしエピソードを大公開しまくるし。イレヴンもリンもそれ聞いてめっちゃ笑うし。
俺も反撃としてカトルはガキの頃は一人称が私で女みてーな口調だったこととかティオが8歳まで一人で寝れなくて俺の布団に潜り込んできてた事とか色々言ってやった。照れ隠しの拳が飛んできたんでそれは避けた。
結局腐れ縁の二人だからお互いの事なんてどんな時でも分かるんだよな。二人とも俺なんかと違って才能あふれる冒険者だからすぐに置いてかれそうだけど。
ま……俺はハーレム作るって夢があるからそっちに全力なんで。二人が立派な冒険者になるのを見守っておるよ。
「おかわり!!!」
「メニューが少ねぇとはいえリンちゃんもう10周はしてるぞ……え、マジでこれ手持ちの金足りるか俺?」
「日々の食事を10人前で納得してもらうのにどれだけ俺が頑張ったかって話ね」
その後はまぁなんやかんやワイワイと盛り上がって、騒がしい夕食は終わりを迎えた。
※ ※ ※
そして帰り道。
俺の背中に酔っ払ったカトルを背負って、自宅への帰路をみんな出歩いていた。
「お前マジ……酒飲むなら限界把握しとけよな」
「ごみぇん……」
「私が背負ってもよいですよ。マスターの身長だと背の高いカトルは背負うのが大変でしょう」
「イレヴンの背中に抱かせてたまるかよ男をよ……!! お前の体は俺しか触れちゃいけねぇんだよ!」
「イレヴンさん的には今のロックの発言どう思う?」
「ときめき1割キモい9割でしょうか。大切にされてるのは分かるのですがキモいですね」
「ロックはきもい……」
『みゃあ』
話が盛り上がり過ぎた結果カトルがワイン飲みすぎて見事に酔っぱらってへべれけになったので、こうして俺が背負って運んでやっているというわけだ。イルゼは背負うのに邪魔なのでカトルのアイテムボックスに仕舞ってある。
なお俺が身長160cm、カトルが身長168cmなので背負うのがだいぶしんどい。イレヴンは170cm以上あるし力持ちだから確かに背負うのに苦労しないだろうけど俺以外の男を背負わせてたまるかよクソがよ(豹変)。
カトルだけこのまま宿屋に運んでもあとが大変だろうから今日はティオも一緒に俺んちに泊めることにした。まぁ日頃からよく泊まっていくからなこいつら。風呂目当てで。
その代わりに魔導タンクに魔力籠めさせて家賃代わりにしている。なので俺んちはいつでも火もお湯も使えるというわけだ。
明日には儲けの分配もしなきゃならんので一石二鳥。
「ロックの背中なんかあったかい……」
「やめろ耳元で囁くな!! お前の顔と声で囁かれると変な世界に目覚めそうになるだろこの女顔ー!!」
「性別の枠を超えてあらゆる人に性欲向け始めたら人として終わりだよロック……いや女性に向けてる今も終わってるけど」
「逆にこの綺麗なお顔の友人を持って女性にのみ欲を向け続けるマスターはある意味求道者なのでは」
「んー? カトルはおとこ……ロックもおとこ。んん? つがいー……?」
「リンちゃんはまだ知らなくていい話かなぁ! もっと大人になってから嗜もうね!」
「ウチのリンに変なモン嗜ませようとするんじゃねぇよ」
「ふみゅー……」
「変なため息を漏らすなァ!! やめろォ!!」
『うみゃあ』
夜の帰り道を謎の自制心を試されながら歩いて、そして自宅に到着した。
明かりをつけてとりあえずカトルはソファに雑に投げておく。
あとは水を準備して毛布かけとけばええやろ。男だし。
「ただいま。さて……メシで盛り上がったから随分遅くなっちまったな……どーする? 風呂今から入るか?」
「んー……もう明日の朝でいいかな私は。お腹もいっぱいだしすっごい眠いの」
「わたしもねむい。おふとんにとびこんで、びょうでねむれる」
「お二人に合わせますよ。体だけは拭いて、ちゃんと歯を磨いてから眠りましょうね」
飲み会の途中でティオが3人で一緒に寝よーね! って言ってたのでなんか今夜は女子会が開かれる……と思ってたけど流石に冒険の疲れと満腹感で年下二人がだいぶおねむのようだ。
何故かイレヴンとリンのたわわに挟まれて息苦しそうにしているティオの姿が脳裏に浮かぶが口には出さないでやろう。持たざる者の苦しみよ。
3人が眠そうにしながら洗面所に向かったのを見て俺も軽く荷物等を整理する。
アイテムボックスは無事だがあのクソ魔族とやった時に脚をやられたせいでズボンがだいぶほつれちまってんな。後で直しておかんとな。
カトルの装備も外してやって、息苦しくないように胸元のボタンも外してやり、毛布を持ってきて被せてやる。気持ちよさそうに寝てるわコイツ。
……今ならイルゼを取り出して二人きりで口説いても許されるんじゃないか?(名案)
それくらいの役得は俺にあってもよいのでは……!?
「……いいや。俺も眠くなってきたし寝よ寝よ」
カトルのアイテムボックスに手を伸ばしかけたけどめんどくさくなったのでキャンセル。
イルゼを口説いてカトルから寝取るのはいずれもっとしっかりとしたときにやったろ。早く人間形態にならないかなイルゼも。なれるかどうか知らないけど。
「……ふわあ」
『みゃあ』
大きくあくびを一つ。
改めて今日は疲れた。思えば2連続の冒険でどっちもかなり際どいイベント尽くしだったし、疲れがたまってんのかもな。
明日換金した後は今度こそしっかり休もう。無理はあかん。
女性陣が部屋に入ったのを確認してから俺も流し台で歯を磨いて顔を洗って、自室に戻って寝ることにした。
シコリストの日課だけは欠かさずに行い、賢者タイムの心地よいけだるさに包まれてそのままベッドの中で瞳を閉じた。
~設定紹介~
■お酒飲める年齢
この世界だと15歳から飲酒解禁。
ティオは14歳なのでまだ吞めません。