勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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120 たまにはいろんな人の視点も見ないとね

 

【side 幻魔将アイム】

 

 

 いい贄を選べた、と思う。

 

(……まさか私の本気の隠密を察するほどの実力者だとは思わなかったがな……)

 

 ベルゼビュートが仕掛けた戦争の混乱に乗じて、私はとある冒険者の意識に忍び込んだ。

 正直に言えば、王都に潜り込むのが主目的である今回の潜入においては、憑依する対象はだれでもよかった。

 我が幻魔部隊の上級魔族であり、先日フォルクルスの作戦で討ち死にしたゼパルが持つスキル『憑依』。

 もちろんの事私も習得している。ゼパルが用いるものよりもより深く人間の意識に潜り込むことができる。憑依した本人に気付かれることなく思考すら捻じ曲げられる。

 これを用いて王都に潜入。情報を集めつつもかき乱して、最低でも王を誅殺。

 出来れば強力な力を持つ冒険者を抹殺する────そんな予定を考えていた。

 

(戦争に備えた王都は守護結界を強力に展開していたため、隠密状態では潜入できない。故に、グランガッチに避難した人間の誰かに憑依し、王都に転移しての誅殺……これが最も効率が良い。人間どもは愚かにも王都のど真ん中に転移陣を設置したからな)

 

 王都はベルゼビュートが攻めていたため、逆に直通の転移陣が開かれているグランガッチへの注意が散漫になる。

 その混乱に乗じた。フォルクルスが使っていたグランガッチへの潜入ルートは潰し切れていなかったため、その一つを使って無事に潜入。

 誰にも気づかれぬように隠密スキルを発揮して気配を消し、王都から避難してきた人間どもの群れを観察。

 私が潜り込んでも問題ない、強い精神の持ち主を探した。

 

 その時に出会った、一人の男。

 

(恐ろしい男だった……はるか遠方から私が目を向けただけで、その気配を察するほどの)

 

 その男は、余りに性急な魔王軍の襲撃の中にあっても、どこまでも冷静であった。

 周囲への注意を切らす事なく、避難した民や子供らを見守っているように見えた。

 観察し、避難してきた人間どもの中でも一番レベルが高い事を確認した時点で、向こうはこちらの気配に気づく様なそぶりを見せていた。

 

(しかし────こうして潜り込めてしまえば子細無し。この身に宿る力、使わせてもらう!)

 

 だが奪った。

 避難中の混乱が、その男に僅かな隙を作った。

 隠密し気配を消したまま、人と人の意識を移り渡る様に急接近し───腰に佩いた剣を抜かせる間も無く、男の意識に潜り込んだ。

 抵抗すらさせない。憑依に気付かせるほど私の技は甘くはない。

 無事に私は男の精神を間借りし、肉体ごと乗り移った。

 ガス状の体をしていたゼパルと違い、私は実体を持つが……それも含めて精神に纏わりつくが我が神髄。

 これでいつでもこの男の精神を乗っ取り暴れることが可能。私の体を再構築することだってできる。

 作戦の第一段階は成功と相成った。

 

 しかし。

 

(まさか……まさかベルゼビュートが破れるとは!! あの戦局をひっくり返されると思うものかよ!!)

 

 魔王軍が戦争に敗退した。

 闇の魔素も広がり、私も本格的に王都内から混乱を拡大させようとした次の瞬間に、()()が王都に飛来したのだ。

 次代のブラックドラゴンと、その主たるロック=イーリーアウスが。

 あの二人が盤面を綺麗にひっくり返してしまった。

 

(ヴィネアの報告にあった際にはこれほど厄介な存在になるとは露とも思っていなかったが……フォルクルスが討伐されたと聞いた時点でより警戒度を上げるべきであったか? ……いや、その結果が魔王様とニーズヘッグらによるホエール山脈への襲撃だった。それすら凌いだロック=イーリーアウスが異常の極致と言わざるを得ない……)

 

 その中でも危険性が高いのはロック=イーリーアウスだ。

 ブラックドラゴンのほうは、確かに危険ではあるが……殺せば殺せる。

 ベルゼビュートが死んだ今、殺す手段が今は魔王様による一撃しかないのが歯がゆいが、それこそ私が上手く王都を乱せば光明はある。

 対してロック=イーリーアウス。こちらは何をしでかすか全く想定ができない。

 仕掛ける罠をすべて食い破られるのではないかと錯覚するほどの規格外。

 アレに仕掛けるには、細心の注意を払わねばならない。

 

(……だからこそ、この男はうってつけだった。コイツの記憶を覗き見たが、なんとロック=イーリーアウスの知己とはな……クク、実にいい()()だ)

 

 故に、今回憑依したこの男を上手く使う必要がある。

 未だに自由意思のまま動かしているが……極力、この男の力を削がぬように使い果たすための準備を行う。

 この男の精神はまるで仙人かとさえ錯覚するほどに欲が皆無ではあるが、しかし深い所まで覗き見れば、唯一の執着とも言える何かが底の方に澱んでいた。

 これを少しずつ、少しずつ本人も気づかぬように萌芽させ、ロック=イーリーアウスへの憎しみで塗り潰す。

 そして、この男がロック=イーリーアウスを殺すための最適な手段を思いつくまで……私がどこまでも追い詰めてやろう。

 未だに顔も見ていない私よりも、赤ん坊のころからロック=イーリーアウスを知っているこの男のほうがより残酷な手段を考え付くであろう。

 人間ほど愚かで凶悪な種族はいないのだから。

 

(戦争が失敗した今、私に求められるのは何よりもロック=イーリーアウスの抹殺……この任、必ず果たして見せます。魔王様……)

 

 来たるロックとの戦いに備え、私は再び男の心の奥底に沈んでいった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【sinse 半年前】

【side 第六席 全知万将アブソリュート】

 

 

 ─────()()()()

 

 なんで、という疑問しか浮かばなかった。

 僕はかつて、魔族領で起きた人類軍との戦争の中で、命在る者に討伐された。

 それは覚えていた。分かっていた。

 一度僕は討伐されて、その後に復活する未来まで見えていた。

 

 僕だけが持つ権能『未来解読(reading)』は、未来に起きる出来事を断片的に垣間見る力だ。

 全ての事象が見えるわけではないが、予期される未来の出来事、何が起きるかは極めて正確に見ることができた。

 僕が生まれてから、その先に起きることはずっと見えていた。

 

 命在る者が生まれる事( 第一部 )。人類領に侵攻させていたドッペルゲンガー部隊が討伐されること。魔装具が増える事。その後に魔族と人類の本格的な戦争が始まる事。

 魔族が滅びなかった事( 第二部 )。命在る者がドラゴニュート『ヒルデガルド』の導きにより限界突破を次々と果たす事。エルフ種を魔族側に引き込む作戦は成功する事。王都前のキュリオス平原で第一次人魔大戦が起きる事。

 その後に魔族領に人類が攻め込む事( 第三部 )。六大将軍がそれぞれ暗躍し、人類側の策をどんどん潰す事。その中でも命在る者が抵抗する事。とある魔剣が命在る者たちの中で有力な武器になる事。それを持った命在る者が、魔王軍を、将軍を、魔王様と戦う事。

 そして、魔族は一度滅ぶ定めであること。

 

 見えていた。

 僕たち魔族は、一度人類に負ける。

 負けて、しかし、それでも。

 

 必ず魔族は、再び復活することを予知していた。

 

 だからこの目覚めは予期していた。

 分かっていた。

 目覚めの後、再び円卓に戻り、魔王様と将軍格、部下の幹部らと共に命在る者どもを、人類を今度こそ討ち果たす事を誓っていた。

 

 それなのに。

 

 

 ──────未来が、全く見えなくなっていた。

 

 

 なぜ。

 権能は常時発動している。

 それなのに、何も見えない。

 情報が送られてこない。

 世界に定められたその先の未来(予定)が分からない。

 

 ()()()()

 

 これでは。

 僕は、生きている意味がない。

 

 六大将軍の中でも最も非力な存在。

 異能たるこの権能だけが僕の存在意義。

 それが、何度試しても未来が見えないとわかって。

 

 ()()()()

 

 力を失った将。

 魔王様がこんな存在(カス)を許すはずがない。

 見つかった途端に粛清されてしまうだろう。

 目覚めたことで死が確定する。

 未来の見えない僕の瞳に写る絶望がより色を深めて。

 

 ()()()()

 

 その絶望のままに己の頭に手をかざし。

 魔力砲を放って己の頭を吹き飛

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side イレヴン】

 

 

『みゃ、あ……』

()()()。─────少しでもおかしな動きをすれば殺す」

 

 私は己のベッドの上で、月明かりがカーテンより漏れ入る室内で、片手にミャウの首を掴み、一握りで縊り切れるように力を籠めていた。

 そんな殺意を私の瞳から読み取ったのだろう。

 呻くように声を上げたミャウは、しかし抵抗することなく、ベッドの上で脱力した。

 

『…………』

「……常にマスターと共にいましたからね、貴女は。だからこそマスターがノインと同衾している今がチャンスだった。こうしてベッドを共にするのは初めてですが……隙を見せましたね」

 

 マスターの愛するペットにして家族。

 無論の事、私もリンも、サザンカもノインも、カトルたちもみんな、ミャウという賢い猫を愛している。

 いや────私だけはそれは過去形になった。

 愛していた。

 だが、その愛らしさの奥に在るモノを感じ取ってしまった今、その愛はひとたび霧散した。

 

 今は、マスターの身を犯す危険性があるモノにしか見えていない。

 だからこそ、マスターがノインの部屋に行く際にミャウを預かり、私が一緒に眠ると嘘をつき、自室で問い詰めることにした。

 

「恐ろしい能力です。貴女はマスターを含めたこれまでに出会った全ての人に欠片も疑問を抱かせなかった。思い返せば、そもそもフードの中で気を抜ける猫など、戦闘の場においても期を読み適切に逃げて戻って来れるような猫など……そうそういるはずがない。どれほどの隠蔽魔法を……いえ、認識障害の魔法なども併用しているのでしょうか。貴女のレベル200というそれも、誰も察することができていないのですから」

『……』

「だが唯一、魔族を滅ぼすことが存在意義であるアンドロイドの最新型の私が、貴女のレベルを超えることでようやく感じ取れた。マスターの危機を察することができた。……尤も、それが喜ばしいと思える気持ちのほか、残念に思う気持ちも確かにあるのですが」

『…………みゃ……』

 

 今私が行っていることをマスターが見れば、血相を変えて何してんじゃー、と止めに来ることだろう。

 いや、それは他の誰でも同じだ。だからこそ誰にも気づかれないように二人きりになる必要があった。

 この猫……いや、()()

 他の誰にも悟らせなかった魔族の気配を、私がレベル200の上限を突破することで察することができてしまった。

 そこまで誰にも悟らせなかったその所業。余りにも高レベルな隠蔽スキルと考えられる。

 

 間違いなく()()()であろう。

 

「……私の知識の限りでは、第一席のベルゼビュートはマスターが討伐。第二席のアイムはヴィネアを私が殺しかけた際に転移魔法で呼び戻された事を鑑みれば魔族領にいるのでしょう。第三席のニーズヘッグは先日出会った。第五席のフォルクルスも討伐した」

『…………』

「であれば残るは第四席と第六席。しかし第六席アブソリュートは少年であったと記録にあります。ならばメスである貴女と性別が合わない」

『…………』

「つまり、貴女は──────」

 

 将軍格であれば誰なのか。

 第一席と第五席は殺した。第三席は先日目の当たりにした。第二席の幻魔将アイムは性別も被るし匂うが、ヴィネアが転移魔法を使い撤退したという事実と、マスターがミャウを見つけた時期が4年前であった事実から否定される。第六席は男だった。

 

 ならば、この猫は。

 

 

 

 

「────第四席、『吸血姫』ベルベッド。それが貴女の正体です」

 

 

 

 

 

 

『………………流石はご主人様のアンドロイドね』

 

 私の推理に、哀しみの声色で猫が言葉を返してきた。

 

 

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