勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

122 / 218
122 敵軍幹部に悲しい過去……いや悲しい過去かコレ?

 

 ……話を続けるわね。

 

 人類との争いが激化した150年前、冒険者飽和時代と言われた時代。

 私は……たとえ将軍の座に就いたとしても。

 あらゆる存在に疎まれるほどの力を手に入れていたとしても。

 心の恩寧は訪れなかったわ。

 

 魔王ダブレス。

 アレの考えが私には理解できなかったから。

 唐突に人間界に単独で繰り出すこともあれば、力に劣る魔族を粛清として殺すこともある。

 気紛れな女だったのよ。

 子どものような一面……どんなことも己の判断なら躊躇わず実行する、というか……どこに癇癪があるのかがわからない、というのかしら。

 

 他の将軍は知らないけれど、少なくとも私には忠誠心はなかったわ。

 あったのはただ、死への恐怖。

 彼女の命令に逆らえば、魔王軍の利にならなければいつ殺されるかわからないという恐怖。

 そんなものを抱えながら、それを振り払うためだけに魔王の手足として働いていたわ。

 

 とはいえ、私はベルゼビュートやフォルクルスらと比べても、あまり表立って人類の前に姿を現さなかったのだけれど。

 裏から手を回した。

 霧化のスキルがあるから、バレないように策を弄するのが得意だったの。

 エルフの件もそれ、ね。

 魔法に長けた種族ではあれど、彼らは純粋過ぎた。

 仲間を救おうとして、私の罠に堕ちた。

 一晩で、私はエルフの集落に住む全てのエルフを眷属と変えたわ。

 その後に転移陣で魔族領に運び、ダブレスの魔法でダークエルフに姿を変え、人類への尖兵とした。

 

 ……後悔は、しているのよ?

 エルフの件だけではなくて、私がダブレスに心を折られてからずぅっと。

 私が自分の命を捨てられる勇気があれば。

 あの場で魔王に抵抗して、同胞の後を追っていれば。

 少なくとも私が起こした惨劇は生まれていないのだから。

 申し訳ないとも思っているのよ?

 

 でも。

 死にたくないの。

 死にたくなかったの。

 私の中で一番強い感情がそれなのよ。

 

 貴女が魔族を滅ぼすことを己の使命としているように。

 ご主人様がハーレムを作って女に囲まれることを己の夢としているように。

 私は、私が死なないことが他の何よりも大切なの。

 

 それってそんなにおかしな事かしら?

 誰だって、死にたくないでしょう?

 私もそうだった。

 ただ、魔王に力を狙われて、脅されて、使われた。

 それだけで────ああ、ごめんなさいね。

 言い訳になるわね。

 今はこれ以上、言い訳を広げるのはやめておくわね。

 

 続けるわ。

 私がなぜ今ここにいるのか。

 

 歴史を紐解いた貴女なら知っていると思うのだけれど、魔王軍と人類は150年前の人魔大戦で大きな争いを何度か繰り広げたわ。

 第二次人魔大戦……って、人類は呼称してるのかしらね。

 キュリオス平原で行われた最初の戦争の後、人類は魔族領に乗り込んだ。

 魔族領で魔王軍と再び会敵した。

 

 総力戦だったわ。

 私は他の将軍らと共に前線を務めた。

 その時に初めて人類の前に現したのよ、私は。

 それまでは存在を匂わせる程度だったけれど、本拠点が攻め込まれて、ダブレスも全ての戦力を注ぎ込むことにしたのね。

 

 当時は、命在る者が凄まじい数存在したものね。

 魔王軍は劣勢だったわ。

 因みに人類軍の侵攻を抑える将軍らの中でも、私はとびきりに嫌われていたわね、人類に。

 

 なんで、って?

 だって私はレベルを吸えるのだもの。

 特に命在る者の精は……限界突破した者のレベルは吸収効率がよかったからね。

 彼らが必死に鍛え上げた己のレベルが、ほんの数秒戦うだけでみるみる吸い取られて行くのだから。

 それはもう嫌われていたわよ。

 

 明らかに私に挑んでくる冒険者が少なかったものね。

 使い捨ての使い魔を使ったり、希少な状態異常無効の装備を整えたり……といった対策ができない命在る者は私の前に姿を現さなくてね。

 当時は命無き者は限界突破も出来ず弱い冒険者ばかり。

 

 だからあの戦争で……私だけが、生き延びられる道を探る事が出来た。

 人類軍の勢いで、ダブレスすら討ち取られる可能性が見えたから。

 

 もちろん表立って魔王軍を裏切るのは、ダブレスに何をされるかわからなくて怖くてできなかったのだけれど……逃げ落ちる、という選択肢が当時の私に生まれていたのよ。

 忍び、潜み、隠れ、(のが)れる。

 戦争の混乱に乗じて、それが出来るのではないか、ってね。

 今、貴女だけにしか私の存在が感知できていない通り、隠れ潜むスキルはとにかく磨いていたのだから。

 生き延びる道筋を考えていたわ。

 

 私は誰も信じられなかったから、眷属にした配下以外は持っていなかったからそれもちょうどよかった。

 眷属は私の命令一つで操れるし命も奪える。

 私の軍が全滅したと見せかけて、私だけどこかに落ちのびて、ダブレスの目が届かないところに……いえ、誰の目も届かないところで静かに生きられないか、なんて。

 そう画策したわ。

 

 ────そうよね。

 そう、考えるわよね。

 戦争で己の痕跡を消して落ち延びて、今の今まで生きていたのか、って。

 そう考える気持ちはわかるのだけれど。

 私も本当はそうしたかったのだけれど。

 でも違うのよ。

 

 そもそも、私はエルフとかと違って、長寿な亜人種ではないのよ。

 寿命は人類と同じかそれより短いくらい。

 150年も生きる事が出来ないの。

 まずそれが当時からずっと生き延びていないという根拠の一つね。

 

 ────ならば他の将軍や魔王と同じく、最近になって復活したのか、って?

 うぅん……それはまた、微妙ね。

 もし一度死を経験してしまったならば、もう二度と死の恐怖を味わいたくないのだけれど。

 一度死んでから、他の将軍みたいに復活することを、はたして私が選ぶかしらね?

 ごめんなさいね、本当にその時に私がどうするのかはわからないの。

 なぜなら、そうはならなかったのだから。

 

 種明かしをするわね。

 私は、負けた。

 負けて、封印されていたのよ。

 人類に。

 

 それも─────()()()()に、ね。

 

 驚いた?

 150年前の、限界突破もしていない、魔装具すら満足に扱えない当時の命無き者に私は破れた。

 笑っていいのよ?

 先程話した通り、かの戦争で私に襲撃してくる命在る者はごく少数。

 それも問題なく捌ける程度の力が私にはあって。

 魔族領全体で起きた戦争に、その間を縫って隠れて動いていた私は……勝負を挑んできた命無き者に、()()()()()()()()()()()()

 

 魔王軍の将軍だった私が。

 霧化のスキルを持ち、物理攻撃を無効化できる私が。

 吸血のスキルを持ち、あらゆる生物からレベルを奪える私が。

 たったの一撃で死にかけた。

 魔王ダブレスに出会った時に感じた、二度目の死の恐怖を味わわされた。

 

 ……勘づいた?

 そうよね。

 心当たりがあり過ぎるわよね、()()()()()ができる存在に。

 

 

 ─────()()()()()()()

 

 

 その()に、私は破れたの。

 

 ……唐突だったわ。

 他の将軍格が当時の人類軍に次々と屠られて、魔王軍全体が敗色濃厚になってきたころね。

 私は画策してた通り、自分の死を偽装して逃走を始めたの。

 率いていた軍の眷属たちを操り、あえて命在る者たちの主力部隊がいる方向に進軍させて、潰し合わせて。

 そこには私のドッペルゲンガーも作って、討伐されたように偽装して。

 私は単独で霧化してその場を逃れて、魔族領の戦火が及んでいない隅の方に逃れようと思っていたのよ。

 

 作戦はそれなりに上手くいったわ。

 人類軍の主力部隊に突っ込んだ私の軍は、傍目には魔王軍本隊への侵攻を食い留める玉砕戦法に見られたでしょうね。

 次々と討伐される私の眷属を尻目に、私は逃走を開始した。

 

 ……だからそんな顔しないでと言っているでしょう。

 貴女は魔族を滅ぼす存在でしょう?

 魔族である当時の私が、魔族である私の部下を使い捨てることに忌避感を覚えなくてもいいじゃない。

 お優しい事なのだから。

 

 ……ごめんなさいね。

 生き延びるためには仕方なかったのよ。

 

 そうして逃げのびて……けれど、霧化のスキルは永遠に姿を変えられるわけじゃないわ。

 今みたいな、猫の姿に変化するのと違って、霧になるのは視覚からも逃れられるし物理に無敵にもなれるのだけれど、維持するのが難しいのよね。

 適宜元の姿に戻って、また霧化して……ってしながら逃げていたのよ。

 

 でも、そこでたまたま、人の姿に戻った私を発見したパーティがいた。

 それは大してレベルも高くない、命無き者の冒険者のパーティだった。

 戦闘を終えて撤退の最中だったのか、野営をしていて装備も外している状態だった。

 障害にもならない。

 その時の私はそう思ったわ。

 わずかではあれど、これから先の逃亡生活の為にレベルを吸って、殺して逃げればいい。

 そう考えたの。

 

 だからまず、レベルを吸収した。

 既にどこかで戦闘をしていたのか、4人ほどいたそのパーティの全員がどこかから出血していたから、それを使ってね。

 レベル100を超える命在る者とは違って……レベル1にまで戻すのは一瞬だったわ。

 吸い尽くして、私は魔力砲を放って殺そうとした。

 慣れたものだったからね。

 流れ作業で一人、二人と貫いて。

 三人目に、魔力砲を放った瞬間よ。

 

 ()()()()わ。

 ご存じの『捌き斬り』ね。

 

 あれね、受けたことのない貴女にはわからないでしょうけれど……本当に驚くのよ?

 武器による反撃でも防具による押し返しでもない、理外のスキルによるカウンター。

 レベル1の相手に魔力砲を遠距離から放った瞬間に、全身が爆発するかのようなダメージが返ってくるの。

 ありえないじゃない?

 こっちは魔王軍の将軍なのよ?

 当然魔力障壁だって最上級のものを展開していた。

 命在る者だって、私に一撃でそんなダメージを与えた者はいないのだから。

 

 驚愕と、死の恐怖。

 それを抱えて私は倒れた。

 ギリギリ、本当にギリギリで……私は命を永らえたわ。

 ただ運が良かっただけだとは思うのだけれど。

 私の命はごくわずかになった。

 

 そこですぐに回復魔法でも唱えられればよかったのだけれどね。

 とにかく驚いていたから……何が起きたのか把握するのに時間がかかったのよ。

 ……なんて言うけど、単にパニックになっていただけね。

 唐突な激痛。魔力障壁を超えて穿たれた不意の死の気配。

 10年ぶりに味わう死の恐怖に、叫びながらもだえ苦しむしかできなかったわ。

 

 そんな私に、捌き斬りをしたイーリーアウスのほかにもう一人生き延びていた、レベル1の冒険者……魔法使いだったのかしらね。

 それが咄嗟に封印術を放った。

 当然、当たり前だけれど通常の状態ならば効くはずもないもの。

 レベル1の使う魔法なんて、大した威力じゃあない。

 

 けれど、極限まで命が削られた私はそれへの抵抗が急には出来なかった。

 封印されたわ。

 彼が所有していた、小さな魔封じの瓶に吸われて……出られないようにされた。

 道具だけは中々のものを持っていたようね。

 瓶に閉じ込められた私は、魔法を使う事も出来ず、回復することも出来ず、ただ考える事しかできなくなって。

 そんな……余りにもあっけない、将軍サマの最後だった、ってわけ。

 

 封印されたら外界の情報は分からなくなるから、ここからは私の想像なのだけれど。

 きっと、その封印術を放った時点で術者は死亡したのだと思うの。

 大した魔法ではなかったとはいえ、レベル1の魔力で扱える魔法ではなかった。

 己の生命力を魔力に変換して放ったのでしょうね。

 そうでなければ、術者が封印した私をそのまま150年も放置するはずがないもの。

 

 だから、残ったのはイーリーアウスだけになった。

 イーリーアウスは……そうね、ご主人様が教えを受けたお爺様も私は知っているけれど、まぁ、偏屈で少々学が足りない感じではあるから。

 きっと私が封印された瓶をどうすればいいかわからなかったんじゃあないかしら。

 でも当然にして魔族領にそのまま放置も出来なくて。

 多分、本当に多分なのだけれど……人類領に持って帰ったのでしょうね。

 持って帰って、ベルベッドがこれに封印されてる、ってギルドに持ち帰ればなんとかなったと考えたのだと思うの。

 

 けれど、ほら。

 私が策を弄して、私のドッペルゲンガーと共にベルベッド軍を人類軍に差し向けて玉砕させていたじゃない?

 だから、ここも想像の産物なのだけれど……当代のイーリーアウスが魔王軍との戦争に勝利して王都に戻ったころには、戦勝の報告が挙がっているはずなのよ。

 魔王と、全ての将軍を討ち果たした、って。

 当然そこには私の討伐記録もあって。

 じゃあこの瓶に封じられているベルベッドは何なのか、って考えて……いえ、本当にこの辺りは想像でしかないのだけれど。

 一撃でやられるような私が余りに弱すぎたから偽物だったのか、って思ったのか……それともレベル1になってしまった自分が言い出せないような雰囲気で一人封印を護ることを決意したのか。

 分からないのだけれど、とにかく……イーリーアウスは、私を封印した魔封瓶を王都の外れの裏山に安置した。

 誰にも語らず、壊さず、封印を開くこともせず……それを隠した。

 多分、祭壇なんかも作ったのかしらね?

 いえ、もう150年前の話で分からないのだけれど、本当に。

 

 ……そして、ここから150年の時が流れるのだけれど。

 その間、私がどれだけ絶望と恐怖を味わっていたかだけは言葉にさせてもらうわね。

 

 わかるでしょう?

 外界の事は全く分からない。

 回復魔法も使えない。

 脱出も出来ない。

 瀕死の状態で、ずっと、暗闇の中で150年を過ごしたのよ。

 いつこの封印が解かれて、討伐されるのかという恐怖を味わいながらね。

 

 正直、狂わなかったのが奇跡だと思うわ。

 ……いえ、狂ってしまっていたのかもしれないわね?

 何度か発狂して、己を取り戻して……だったの、かも。

 

 ここまで説明すれば、今のこの私がここにいる、その理由は分かってくれたわよね。

 

 ええ、そう。

 

 私の封印を解いたのは、とある少年。

 

 赤毛の丸い頭と、くりっとした瞳がとてもチャーミングな、私達の御主人様。

 

 

 ────ロック。

 

 

 当時はまだイーリーアウスの姓を継いでいない彼が、私を目覚めさせた。

 

 





~設定紹介~

主要キャラクターの身長と女性キャラ3サイズを今更ながらまとめたので雑に紹介。
齟齬があっても気にするな。


ロック   160cm
イレヴン  173cm 99 60 99 I
リン    137cm 89 49 72 J
カトル   168cm 75 57 89
ティオ   149cm 69 51 83 B
サザンカ  198cm 124 72 119 M

トゥレス  175cm
ミル    168cm 94 63 99 F
ノックス  177cm
ウォーレン 184cm

ノイン   169cm 104 63 98 J
ルドルフ  182cm
アンナ   158cm 86 55 91 F
アンドレ  194cm
ヒルデガルド 170cm 98 58 100 I

メルセデス 262cm(地面~頭頂まで) 94 61(人間部分の腰) 206(馬尻) G
アルト   168cm 86 63 104 C
ソプラノ  152cm 72 56 80 A
シミレ   162cm 104 60 91 K
マルカート 170cm 100 61 92 I

ヴァリスタ 180cm
カプチーノ 151cm 70 50 72 C
カノン   168cm 92 64 101 E

ベルゼビュート 212cm
バアル   201cm
アイム   172cm 100 60 102 I
ヴィネア  169cm 98 59 104 I
ニーズヘッグ 164cm 90 58 91 G
ジェミニ  158cm 88 58 88 F
ポルックス 158cm 88 58 88 F
ベルベッド 155cm 92 53 87 I
フォルクルス 225cm
カリーナ  172cm 97 66 112 F

ダブレス  159cm 79 54 80 D
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。