勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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「────え!? カリーナいなくなっちまったんスか!? なんで!?」

「すまぬ!! 我ら王族の失態をさらに重なる形となってしまった……!! 平和に甘えたツケがこれだ!! 如何様にも(なじ)ってくれロックよ!!」

「いやアンドレ様のこと怒ってるわけじゃないんスけどね!?」

 

 転移陣を使って王城の広間に移動した俺らに唐突な報告が待っていた。

 

 まずは王城に出向いてご挨拶を、とルドルフさんからも出かける時に声をかけられたんで、転移陣を使って俺らが王城に姿を現したところで、そこでスタンバってくれていたアンドレ様。

 俺はいつものノリで軽く挨拶を交わしたのだが、しかしアンドレ様の顔色がなんかアレだったので何かあったんすか? と聞いてみたら、まさかの話が零れて来たのだ。

 

「今朝の時点までは……国王が放送を果たすまでは間違いなく女豹は牢屋に存在していた!! 普段の倍に警邏(けいら)を増やし、常に見張り続けてはいたのだが……」

「暴れて脱出したとかでしょうか? しかし術式をかけた上で隷属の首輪を嵌めていればたとえ将軍直属幹部と言えども力は出せないはず……」

「イレヴンの言う通りだ! 自白剤も定期的に投与はしており隷属の首輪も機能していた! しかし見張りの者の報告によれば、唐突にカリーナの足元、床に小規模の見慣れぬ魔法陣が広がったと思えば、次の瞬間にはその姿が消えていたという話だ!!」

 

 今アンドレ様が説明した通り、カリーナが逃げちまった。

 アンドレ様は確実な情報源になるであろう敵の捕虜を逃がしてしまった失態にひどく心を痛めている様だが……しかし、俺らにはその現象に心当たりがあった。

 幹部級魔族の唐突な転移と言えば。

 

「……ネレイスタウンでヴィネアが逃げた時と同じような感じじゃね? 俺は気絶してたけど、イレヴン……どう?」

「そうですね、間違いないでしょう。過去の文献にも、将軍直属の幹部は将軍の呼びかけに応じ、急に転移して姿を眩ませる現象があったと聞いている。ですが……」

「ヤツの主たるフォルクルスは拙者らがグランガッチで間違いなく討伐したはずでござる。あれこそ、パーティを組んでいた皆のギルドカードにフォルクルスの討伐記録が刻まれていたから誤りはない」

「だよなぁ」

「うむ……故に、だからこそ解せぬのだ!! カリーナを呼び戻したのはいったい誰なのか……!!」

『……みゃ……』

 

 そう、俺らがネレイスタウンでケンタウリスのみんなと一緒にいた時に襲撃しに来たヴィネアの一件とそっくりだ。

 あの時はティオとイレヴン、メルセデスさんの活躍でヴィネアをあと一歩で討伐できる所まで追い詰めたが、急な転移陣で逃れられたと聞いている。

 唐突な転移魔法は魔族の得意技だ。俺らパーティは特にそれを味わってる。ホエール山脈の頂上の件もだし。

 

 でも確かに、アイツの上司のフォルクルスは殺したんだよな間違いなく。

 だとしたら転移させたのは別の誰かって話なのか。魔王ダブレスちゃんが直接呼び戻したってことなのかな?

 確かにダブレスちゃんは他の将軍格や幹部級をホエール山脈にワープさせてるし。出来るのかな?

 

『……みゃ!!』

「んぉっと? どーしたミャウ?」

 

 しかしそんな風に首をひねっていた所、何故かミャウがフードから飛び出して人気のない方に走っていき、ちらりと振り返って来た。

 なんや急に。遊びたいんか?

 昼間はよく昼寝してんのに今日はなんか元気だなお前。

 

「おや……マスター、私が捕まえてきますね」

「おぉ、頼む」

 

 呼べば来るやろと思ったけど、イレヴンが捕まえて来てくれるというならお願いしよう。

 ミャウが逃げた方にイレヴンが駆けよれば、別にそれ以上逃げることなく素直にミャウは捕まったようだ。

 何だったんだ一体。

 

「……ロックよ、この件についてお前はどう考える? お前の勘は何かしら警鐘を果たしていないか?」

「ん。……いや、直近でヤバそうな感じはすんともしてないっすね。少なくとも俺のまわり、俺の手が届く範囲で害が及びそうとかそういうのは無いっす」

「そうか……それを吉報と受け取るべきか、原因が分からぬままであることを凶報と捉えるべきか……むぅぅ……!!」

 

 この疑問には俺の勘は何も応えてくれない。

 判らん時は本当に働かねぇからな俺の勘。不便なヤツだよ。

 まぁ言った通り、俺の勘がピンと来てないならすぐにヤバいって感じにはならんのだろう最終的に。そう言う事にしておこう。

 

「なんともキナ臭くなってきたでござるな」

「むむ。……わたし、とんでさがしてみる?」

「否! 黒竜様のお力を借りるほどではございませぬ!! 黒竜様にはこの後にまた別途ご相談がある故!! そちらにもし御助力を頂ければ……!!」

「そう? ……えっと、アンドレもけいごじゃなくていいよ? くすぐったいから。えんせいのときみたいに、リンでおねがい」

「ム!! そうおっしゃられるか……であるならばこれからはそうしよう!!」

「うん! あ、あとわたしへのおねがいはつがいであるロックにはなしてね。ろっくをとおしてのおねがいならきいてあげてもいいよ」

「そうか! そうであったな!! では闘技場へと転移した後に詳しく話すとしよう!!」

 

 この話を受けてリンがその機動力を活かしての探索を提言したが、それはアンドレ様が断った。

 何やらリンの力を期待する何かがあるってことで……まぁそれも気になる所ではあるんだけれど。

 しかしそこで、ミャウを捕まえて戻って来たイレヴンが新たに意見を述べる。

 

「……先ほどのカリーナの件ですが」

『みゃ!』

「ん。なんかある?」

「ええ。私のメモリーに関係する記録があったことを()()()()()()()。魔王の使う転移魔法は、あくまで近くにいる魔族を己と共に転移させる魔法だったはずです。であるならば、今ここでカリーナを呼び出すような転移魔法を魔王は使えない」

「へー。そうなんだ……でも確かにダブレスちゃんがホエール山脈に来た時は他の面子と一緒に帰ってったな。来た時は自分だけ噴火口に姿を隠してたけど」

「はい。さらに言えば、各将軍も己の直属の幹部しか呼び戻せないのです。だから今生き残っている他の将軍はカリーナを呼び戻せない」

「ふむ!! アンドロイドはそこまで魔族の知識を持っているのか!! 流石だなイレヴンは!!」

「今回はたまたまです」

『みゃあ……』

「そうか!! ……しかしイレヴンよ!! お前の知識を疑う所はないが、そうなると道理が合わぬ!! フォルクルスは我らが討伐したのだ!! 魔王でもなく他の将軍でもないとするならば、いったい誰がヤツを転移させたのだ!?」

「そこです。……恐らくは、フォルクルスが復活した」

「なんやてイレヴン!?」

「なんで急に方言になったので主殿?」

「四文字の名前でそのネタ使うとすっごい半端な響きになりますね~」

「それな」

 

 唐突かつ大胆な推理を始めたイレヴンに思わずツッコミを入れてしまい、ネタが分かるノインさんだけが分かりみ深く頷いてくれる。優しい。

 しかし……イレヴンの最初の説明には頷けるところだが、後半のフォルクルスの復活については大いに異を唱えたいところだ。

 嫌だよアイツなんか俺の事気に入ったとかほざいてたし。バアルと同じでああいうタイプは執拗に俺を狙ってくるんだよ。そういうの俺知ってんだ。

 

「……魔王は、将軍格を復活させる蘇生魔法を使えます」

「何だと!?」

「それは限りある闇の魔素をさらに減らす行為でもあります。しかし人類軍が先の戦乱を無傷で凌いだことで、魔王も手駒を増やすために蘇生させた……可能性は大いにあるかと。その結果カリーナも魔族領に回収できたとなればリターンは大きい。考えられない作戦ではないかと」

「……ほぉ~? あ~……そう、なんでしょうか~? 私の知識には魔王の蘇生魔法についてはないのですが~……でもカリーナが実際に転移させられているとなると~……その説はありよりのありか~?」

「ノインさんの知識にもないんスか。……でも実際カリーナが転移させられてるから信憑性ゼロってわけでもないですよねぇ」

 

 そして重ねてイレヴンの口から零れる衝撃的な話。

 マジかよ。ダブレスちゃん倒さないと将軍クラスどれだけ潰しても湧いて出てくんのかよふざけんな!

 ……という危惧もあるのだが、しかし当然蘇生魔法なら魔力を使うはず。

 闇の魔素の量が有限になった今なら、将軍格を狩りまくってジリ貧にさせる……みたいな作戦もできなくもなさそう。

 フォルクルスが復活してるとなれば他の将軍も全員揃ってんのかな。俺が殺したベルゼビュートとやらも復活してたりして。めんど。

 

「────うむ!! 有意義な情報を感謝するぞイレヴンよ!! もはやお主らの言を否定はするまい! この情報は持ちかえり、またギルドと検討を重ねさせてもらう」

「そうしてください。私もメモリーの情報が最新のそれではないので確信を持った話ではありませんから」

『みゃ』

「そうか!! ではカリーナの件は一先ず王都内の巡回をさらに増やし、戦時中の警備増強と合わせて注意喚起を行う事として当面の処置とする!!」

 

 アンドレ様が話をまとめて、情報をまとめて検討の上で、街中の警備を増やすことで対処となるようだ。

 まぁそもそも戦時中だ。騎士団の見回りは間違いなく増えるだろうし、その一環って事だろう。多分カリーナ見つからないだろうし。

 

「では改めて!! 闘技場へ転移して訓練に精を出してもらいたい!!」

「うっす! 俺の女たちが頑張ってくれますよォ!」

「なおロックとリンには別途依頼したいことがあるのでそれも向こうで打合せしてくれ!!」

「えっ」

「では征くぞ!!」

「ちょっと」

 

 さてそんじゃレベリングの為に闘技場に向かうか……って所でアンドレ様から俺も働くという話が出て来た。

 やだめんどそう。みんなが特訓してるところ眺めてデカパイ感謝な一日を過ごせると思ってたのに!!

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 俺らは闘技場のど真ん中の舞台に設置された転移陣に転移した。

 すると、そこで待っていたのは。

 

「……来たな、ロック=イーリーアウス。他の皆も」

「お! ヒルデガルドさん!!」

 

 まず目の前に赫赫たる鱗が眩しいデカパイなヒルデガルドさんがいて。

 大人な微笑みを見せて挨拶をしてくれた。やだ美しい。デカパイ感謝。

 

 そしてその向こう、今日の特訓に付き合うために集められた冒険者たちがいて。

 

「来たなロック……待ってたぜ」

「お兄ちゃんたちに並ぶチャンスだもんね! 私も負けないから!!」

「お前らもいるんかい!」

 

 まずカトルとティオだ。二人ともやる気に満ち溢れていらっしゃる。

 さらにその後ろ、やっぱりと言った感じの面子が揃っていた。

 金級冒険者の代表たる二人、ヴァリスタさんにメルセデスさん。

 そしてメルセデスさんの傍にはアルトさんとシミレさんも。

 

 ─────いつメンッ!!(渾身)

 

「随分と変わり映えしない顔ですね。……まぁもちろん、まず選ばれるだろうメンバーだとは思いましたが」

「ふむ……確か王族の方々も相当な高レベルだったと聞き及んでござるが。そちらは参加されないので? 騎士団にも代表とする者などもおられようぞ?」

「どれほどの努力で再限界突破に至るかも分かっていないからな、今日のところは現時点でレベル200に達している、もしくは限りなく近づいているメンバーを揃えた」

 

 ヒルデガルドさんが語ったように、どうやらここにいるメンバーは既に現状の限界に到達しているメンバーらしい。

 いつの間にかカトルもティオもそんなにレベル高くなってたんか。

 ……いやでもあれか。こないだの戦争で最前線を務めてたんだっけこの二人。そこにアルトさんもシミレさんもいたって話だから、それで一気にレベルが上がったんかな。なるほどなぁ。

 

「まぁそんな事よりヒルデガルドさん!! 俺との約束忘れてませんよねェ!?」

「私にいの一番に確認することがそれなのかロック=イーリーアウス」

「時と場合定期」

「主殿はこうでなくては」

『みゃ』

 

 そんなこたぁどうでもいいんだよォ!!

 ヒルデガルドさんとは戦争の後に分かれてそれっきりだったからなぁ!! まだ二日しか経ってないけどさ!!

 その間に俺も童貞を超えて大人の階段三段飛ばしで登ってますからねェ!! 今ならヒルデガルドさんのお体をさらに味わえるってもんですよォ!! フホヘホホ!!

 

「お前が相変らずで何よりだ……忘れてはおらんよ。言っただろう、姉と違って私は約束は守ると」

「そっすよねェ!! ならこれから俺と」

「──────だが、今ではない。そ・う・だ・な?」

「アッハイ」

「せめて夜の帳が降りてから、もう少しロマンチックに誘い文句を浴びせに来い。私を少しはときめかせてみろロック=イーリーアウス」

「アッハイ……なんかすんまへん……」

 

 真顔で窘められてスンッってなってへにょる俺。弱き者。

 まぁ知ってたし。流石に今ベッドにお誘いするのは空気読んでないって分かってたし!

 落ち着こう。いつでも一度だけ体を許されているというこの優越感をしばらく味わうと思えばむしろ甘露と言えるしな。

 いつだって俺は前向きだ! 怯えろ魔族!!

 

「……さて、話を戻そう。まず今日は私、イレヴン、そしてサザンカ。この3名で特訓の師範役を務め、更なる限界突破をここにいる者たちに果たす事を目標とする」

「了解です。……そういえば、150年前のレベル100を超える限界突破の試練は貴女が務めていたのでしたか、ヒルデガルド」

「ほう、詳しいなイレヴン……文献にはあまり残していなかったはずだが」

「最新型のアンドロイドなので」

「ふ。……そして残るリンとロック=イーリーアウスには別の任を依頼したいのだ」

「ん! ……わたしたち?」

「さっきアンドレ様が話してたヤツっすね。何かあったんですか? 俺らってのは」

『みゃ?』

 

 改めて、今日の特訓ではヒルデガルドさんとイレヴンとサザンカさんが教導役になり、ノインさんを含めたここにいるメンバーの限界突破を果たすことになり。

 そして俺とリンは別途仕事があるという。なんやろ。

 

「……昨日、私が回れるだけ近隣の村や町を飛び回って見て来たのだがな」

「あ、昨日いなかったのはそのためだったんスね。お疲れ様で……んで、そこで何か?」

「ああ……王都周辺はともかく、少し離れた土地にはまだ闇の魔素が薄くだが広がっていた。魔族の残党もちらほらとな。私も多少狩ってはみたものの、全てに手が回っていない。大至急闇の魔素を薄め、残党も討伐する必要がある」

「なるほど?」

「任せたいのはそこだ。リンの速度で飛び回り、ロックの勘で残党を捉え、周辺の街の安全の確保に回ってほしいのだ」

 

 なるほどなるほど。

 割と重要な仕事だなこれ??

 

 

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