勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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127 主人公なのに一番働いてないまである

 

 そんなわけで俺は今、リンの背中に乗って高高度の空をマッハで移動していた。

 

『ロックー、ロックー。つぎはどっちにとべばいい?』

「うむ。とりあえず魔族がいそうな所は勘に引っかかってないから……次の街かな。このあたりからだと……どこやろ」

「大きな所で近いのは鍛冶の街ガルドスミスですね~。北北西の方角に200キロくらいのところです~」

「流石ノインさん! 世界地理にもお詳しいっすね!」

「えへへ、なんてったって王都一の本の虫ですから~」

『それじゃそっちにとぶね』

 

 50m近い大きさのドラゴン形態になったリンの背中、魔法で風圧から守られている背中辺りでのんびりと胡坐をかいて、隣に寄り添うようにノインさんがいて。

 俺とリンとノインさん、この3人で世界中を飛び回っている所である。

 

 

 このような人選になる際に、一悶着があった。

 

 闘技場でヒルデガルドさんから俺とリンを遠征調査を依頼されたが、そこでまぁ、勿論というべきか、イレヴンとサザンカさんから自分達も同行するべきでは、という話が出たのだ。

 理由はもちろん俺。

 俺の命がどう考えても魔族に狙われていること、リンの力を疑う所はないがそれでも護衛は必要だろうということ、その他もろもろで人員配置に意見があった。

 その場にいるメンバーからも、今ロックを失うわけにはいかない、という意見などもあったのだが、しかしだ。

 

 その時の俺の勘が、まったくもって危機を感じ取っていなかったのである。

 何の危険もない、という感じしかしていなかったのだ。

 

 そもそもほとんどの道中をリンの背中に乗っていくから悠々と空の旅。

 魔族の生き残りがいたとして、リン一人の力で討伐できないような魔族がそこかしこにいるはずもなく。

 万が一闇の魔素が広がってるから幹部級、将軍級の魔族が転移してきたとしても……リンの全速力に追いつけるヤツはいない。世界最速最強のドラゴンなのだうちのリンは。

 レベルだって、聞けば将軍格ですらレベル200ちょうどで限界になっているらしいが、リンはそれを超えている。

 勿論特殊能力などを将軍格はそれぞれ持ってるから油断って話じゃないが、まずやられることはないし、そもそも勘が無事だって言ってるし。

 ってなわけでそんな心配しなくてもなんとかなるわい! と俺の方で押し切ってぱっぱと闇の魔素の回収と魔族残党の討伐に出かけるかって所で。

 

「その~……私、同行させてもらっていいでしょうか~」

「え。でもノインさんは限界突破がまだですし、王都に残ってくれていても……」

「私はいつでも家で皆さん相手に模擬戦出来るから急ぐ話でもありませんし~。万が一にも結婚して一日で未亡人になりたくないですしね~」

「結婚!? え、お兄ちゃんいつの間に姫様と結婚したんだよぉ!?」

「昨日」

「うふふ。あとそれ以外にも理由があるんです~。今朝話したと思うんですけど、今は世界中のマナが活性化している状態なんですよね~。150年前の頃に近いマナの量になってますから、各地の街に設置されている旧い転移陣を再起動できると思うんですよ~。王都でもできてますし。だからリンちゃんがちょうどよく闇の魔素だけ吸収するために世界を飛び回るなら、それに私も一緒について行って、転移陣を起動して来ちゃいましょう。魔族には使えないように工夫しますし、今は人類全体の力を集中させたいですから~。どこでも行き来できるようになれば便利ですし~」

「なるほど?」

 

 ノインさんからそんな話があって。

 世界を回る理由が魔族残党討伐及び闇の魔素の回収なわけだから、当然にして基本は人々を守るために街や街道沿いに回る必要があるから、そこで一緒に転移陣起動してまわるというのは実に効率的だ。

 俺の護衛がもう一人増えるしそれが蘇生魔法も修めてる魔法の天才ノインさんとなれば、イレヴンたちからもそれ以上の文句は出なかった。

 

 何より、転移陣が起動できればこの仕事を無理に一日で終える必要がなくなる。いつでも帰れるわけだ。

 遠方の街で転移陣が使えるようになれば、翌日以降からその先の調査に向かえばいい。

 魔族の残党だって既に戦争から2日経過しているとはいえ、リンよりも素早く移動することなどできるはずもない。

 ここ数日の調査が上手くいけば残党殲滅も捗るし、人類圏の連携と結束が強まって魔族領侵攻に向けた人類全体の体制を整えることができるだろう。

 

 

 そんなわけで冒頭の通り、俺ら3人でぶいぶい世界を回っているわけである。

 

「……ん、向こうのほうになんかいる感じする」

「はい──────広域探査魔法で感知しました~。魔族ですね、中級クラスが数匹……リンちゃん、見えますか~?」

『うん、わたしもみつけた。ころすね』

 

 空の旅の途中、まず俺の勘に引っかかるモノがあればそれをノインさんが広域に広げる探知の魔法で調べてくれて、それが魔族だとわかればリンもドラゴンの視力で位置を確認する。

 そしてわざわざ降りていって直接わーわーするのは非効率の極みなので。

 

『─────コォォォォォーーーーーッッ!!!』

 

 リンが一息で灰にしちゃうんだよね。

 王都……というか魔王を除いて恐らく世界最高レベルの体長50mのドラゴンの口から放たれる火球が、魔族の闇の魔力に反応して追尾するようにうねりながら地上に向かい、魔族を灰燼へと変えた。

 強い(確信)。

 

「ドラゴン形態だとブレスの形が随分変わるんだなぁ……不思議なもんで」

「ドラゴンの中でも最強と言われるブラックドラゴンの放つ咆哮ですからね~。自動で敵を追尾して、燃やし尽くすまで火が消えない……咆哮誘導殲滅火球(ドラゴンブレス・サーチナパーム)ってところでしょうか~」

「ふむ……個人的には殲滅砲(ナパームキャノン)とか一息で言いきれる技名でも好みだったりしますね」

「わかる~、シンプルな技名もよきですよね~。でもあえて真ん中に区切ることで必殺の大技感出てるのも私好きなんですよ~」

「そっちもわかりみ深いっすわ……ゼロシフト・グランドライブとかゴッドブレス・タービュランスとかそういう技名めっちゃ好きでェ……!!」

「あのあたり大技にルビ振るの多かったですよね~。作者のブームだったんでしょうね~」

 

 なんで俺らもまぁ呑気なものですわ。

 闇の魔素を回収するのと飛び回るのと魔族残党を殺すのはリンがやってくれる。

 街の位置を案内するのと転移陣を起動するのはノインさんがやってくれる。

 魔族を勘で探すのが唯一の俺の仕事なのだが、それだって別にノインさんがいれば調べられるのでは……? 数秒速いかどうかくらいなのでは……?

 あれ? 俺いらなくね??

 

『ロック、まぞくをやっつけたわたしになにかいうことないの?』

「ん、すまんすまん。本当に強くなったなリンは。えらい!! 次の街で昼飯にするけどそこでいっくらでも食べてよし!! おかわりもいいぞ!!」

『えへへ、やったー!』

「只今より毒ガス訓練を開始する!!……ってなるんですねわかります~」

「おいばかやめろ」

 

 まぁある程度気楽な遠征になってもええやろ。ここ数日マジで忙しかったし。

 イレヴンとサザンカさんには悪いけど空の旅でちょっと息抜きさせてもらお。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side イレヴン】

 

 昼休憩を終えて、改めて訓練に戻る。

 午後からは、私の組手の相手はカトルとティオの二人だった。

 サザンカはヴァリスタと再び剣を交え、メルセデスらケンタウリスの3人はヒルデガルドが揉んでいる。

 リンの背に乗るのは死にそうで怖いという理由でミャウは王都に残っていた。

 かなり離れたところでのんびり昼寝をキメている。あの女。

 

「────エクスアームズ12『ガードビット』、並びに15『ビットルミナスラプチャー』!!」

「なッ、ビットから攻撃!? んだらァッ!! 『灼炎円旋舞(しゃくえんえんせんぶ)』ッ!!」

「術式入力! 出力抑制、貫通連鎖属性付与(バンカーチェインエンチャント)、優先対象『空を飛ぶモノ』、セット! アクトアナイアレイション────『ヴォーパルカノン』ッ!!」

 

 数度のドリルブラスターと二人の魔剣との剣戟を終えて一旦距離を取ったところで、私は背中からガードビットを展開し、空中で自由に飛行させられるそれから、新たに解放したスキルであるレーザーキャノンの射出で二人を攻め立てた。

 それに驚く二人だが対応は早かった。

 致命傷を浴びる前にお互いにビット攻撃に対する対抗策を繰り出してくる。

 

「成程、カトルは全体攻撃スキルで弾いて、ティオは低出力の水魔法に術式を入力して連発してビットを貫通……見事なものですが、しかし本体である私を止められていませんよ! エクスアームズ07『カーニバルミサイル』、重ねて『ドリルスティンガーキャノン』ッ!!」

 

 ビットを捌かせることで作った隙を逃さない。

 更なる面制圧のためのカーニバルミサイルに、一撃のドリルスティンガーキャノンを片腕で放ち、グランドスピナーで接近も仕掛ける。

 二人の処理能力では追いつかない怒濤の攻勢。午前中の様子を見ていれば、これで制圧しきれる計算だった。

 

「イレヴンさん引き出し多すぎだよ!! くッ……()()()!!」

「ッ、展開!! 『守護防壁(インターラプト)絶対領域(リフレーション)』ッ!!」

 

 だが、そこで二人が阿吽の呼吸を見せる。

 守勢を保つことが決定的な敗北のトリガーとなりうることを察したカトルが守りを捨て、ミサイルとドリルスティンガーキャノンに飛び込む様にバーストダッシュを放った。

 名前を呼ばれたティオがそれだけで全てを察し、完全に守護に回る。

 彼女の放った魔法は見覚えがある。

 かつて、闘技場の魔族襲撃の時にミルがリンの魔力を借りて放った防護魔法の最上位。

 展開範囲はあの時のミルのそれに及ばないものの、二人分を守るには十分な守護防壁が広がって。

 なるほど、流石はマスターと共にミルが育てただけはある。恐らくは彼女から直接教わったのだろう。

 守護防壁にミサイルとドリルスティンガーキャノンが直撃し、しかし貫通すること能わず爆発が広がって、その爆発煙の向こうから飛び出してくるカトル。

 

「片腕のイレヴンさんなら圧し通すッ!! 煌け灼剣!! 『絶・剛魔炎斬破』ッ!!」

「エクスアームズ17『イジェクトガード』!!」

 

 彼の振るう魔剣『イルゼ』が朱く輝き、かつて最初に共にバアルの分身体と戦った時の輝きのそれを数段上回る、目潰しにも効果が出そうなほどの猛烈な輝きの一閃が放たれた。

 新たな防御用スキル『イジェクトガード』により、全身から魔力を放出してバリアーを展開してそれに対抗する。

 マスターの全力の『魔法防壁(バリアー)』に近い防御力を、魔力放出量に応じた時間だけ展開することができる。

 今の私は炉心を二つ搭載しており、マスターからも無限に近い魔力供給を得ているため、これ一つで先の戦争の魔王軍に単騎で突撃してもそうそうやられることはない防御力なのだが──────

 

「─────ぜえぇぁいッッ!!!」

「ぐぁ……っ!! 見事です、カトル……!」

 

 破られた。

 カトルの渾身の一閃は、確かに私のバリアーを切り裂き、その先にいる私の体に剣先が届いた。

 威力を減衰は出来ていたため、飛ばしていない片腕を剣とカチ当てて身体は守ったが、それでも少なくないダメージが私の身に刻まれた。

 

 これは、間違いない。

 明らかに、これまでのカトルと比べても一段上の攻撃力。

 つまりは。

 

「……はぁっ、はぁっ……これ、来ッたァ……!!」

「どうやら……超えたようですね、限界を」

「ええ、レベル上がった感じしますわ……うん、力みなぎってる!! 魔力スゲー廻ってる!!」

 

 限界突破を果たしたのだ。

 その一合のやりあいを最後のきっかけとして、カトルがレベル200の限界を超えた。

 この場にいる訓練候補者の中でも、師匠であるヴァリスタを差し置いてかれが一番最初に己の限界を超えたことになる。

 凄まじい才能。

 エルフであるティオ、ケンタウリスであるメルセデスも種族的な優位があったが……それらを差し置いて、この少年は強くなった。

 

「わー、カトルずるーい!! 私まだなのにー!!」

「へへへ、お先だぜティオ!! よっし、これであとはさらに経験積んでもっとレベル上げるだけだ!! 鍛えねぇとな!!」

 

 一緒に戦っていた幼馴染に先を越されたティオがぶーたれて怒っている。

 でも誰よりも速く大人の階段を登ったのは貴女ですけどねティオ……とふと考えてから、なんでそんなくだらないことをこの高性能アンドロイドである私が考えたのか分からなくて、いやこれマスターの影響だな、と即認識を新たにした。

 

「む、カトル殿がまず限界を超えられたか……お見事也。先を越されてしまったな、ヴァリスタ殿」

「ハッハッハ!! なぁに、私よりも才のある戦士などいくらでもいるさ! カトルを筆頭に、今この場を見渡しても私以上の冒険者ばかり。そして、ああ、だからこそ面白いのだろうっ!! この鍛錬方法が誤っていないこともカトルにより証明された!! さぁさぁサザンカ殿!! 再び一手御指南を!! 弟子に続かなければっ!!」

「無論。ではお互いに一線を越えず、しかし極限まで近づく様な、楽しい楽しい殺陣を繰り広げようぞ────いざ」

「やるな、カトル少年……うむ、我々も負けていられんな」

「団長、そうは言っても……私とシミレなんてまだレベル200にもなってませんし!?」

「…………まぁ、午前中だけで1レベルあがったからな。もう少しで限界には辿り着くはずだ……そこから限界突破までも、長そうだがな」

「ふ……150年前から色んな種族、色んな存在を見ているが……やはり一番訳が分からなくて面白いのが人間だな。ロック=イーリーアウスがその筆頭だが」

 

 限界突破訓練の成果が一つ出たところで参加していた皆もそれに気づいて各々が感想を零す。

 アルトとシミレはまだ200に達していないので時間はかかりそうだが……戦争でカトルと共に最前線を務めていたティオはきっと彼に次いで限界を超えてくるであろう。

 マスターの幼馴染であるならば、それくらいはやってきそうなものだ。

 次々と限界突破を果たす者が増えてくれば、今度はそちらが教導役になってヒルデガルドと共に国全体の冒険者のレベルアップを捗らせてくれるだろう。

 そうすれば私がこうして慣れぬ指導をする必要もなくなり、マスターの隣にいられるというものだ。

 

「さて……では次は私とカトルで組んで、ティオに捌いてもらいましょうか」

「お、了解っす!! よっしゃ遠慮なしで行くぜティオ!!」

「ちょっとぉー!? イレヴンさん私にスパルタ過ぎないかなぁ!? さっきもミサイルの弾幕私に濃くなかった!?」

「私情込みですね」

「ごめんなさい頑張ります!!!!」

「何やらかしたんだお前」

 

 その後はカトルと二人でティオを虐め抜いて、結局ティオもその日のうちに限界突破を果たしたのだった。

 

 

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