勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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130 不確かなものに頼ることほど愚かなモノはないって誰かが言ってた

 

 爛焰(らんも)山脈。

 大陸の南東に位置する活火山の、その頂上にて。

 

「ヒルデガルドさんから……私は元気でやっていると、そしてニーズヘッグとの件は自分でケジメをつけると……そう、伝言でした」

『そう……あの子が。うぅん、心配はあるけれど、あの子ももう大人だものねぇ……わかりました。言伝有難う、ロックくん』

「どういたしまして。つっても大したこともしてないすけどね」

 

 ヒルデガルドさんのお姉さんである今代のレッドドラゴン、サラマンダーさんと謁見しているのが今の俺たちです。

 うん。めっちゃドラゴンでしたわサラマンダーさん。

 身体のサイズはリンのドラゴン形態と同じくらいで、全身が赤の竜鱗で覆われている。火山にいそうなドラゴンだわ! って一目でなった。

 そして姉上とヒルデガルドさんが言ってたから想像していた通りの美人声。清楚デカパイ感あるよね声の響きが。

 来る前までは火属性のドラゴンだからゴワーッガオーッて感じなのかなと思ったら物凄く落ち着いた性格だった。

 ノワールさんもすごい大人だったしもしかしてマナを管理するドラゴンってみんな落ち着いてんのかな。

 こりゃドラゴニュート形態になった時が楽しみだぜウヘヒョ!! と頂上に到着してファーストコンタクトの挨拶を交わしてからドラゴニュートに変化できませんかグヘヘ! ってお願いしてみたけどマナ管理が大変になるからって変身してくれなかった。悲しい。

 

 まぁそんな挨拶を終えて。

 リンも次代のブラックドラゴンである事を明かして挨拶をして。

 その後……俺の口から、ヒルデガルドさんより授かった言伝もきちんとお伝えした。

 

「お返しで何かヒルデガルドさんにサラマンダーさんからのご伝言あります? ……あと、敵同士って立場ではありますが、ニーズヘッグにもあれば」

『あら、いいの? 有難う。 ……そうねぇ、それじゃあ親愛なる妹には、「管理人の使命は私が護るから、貴女は貴女の征く道を」って伝えてくれるかしら?』

「了の解です!」

『よろしくねぇ。……そして、不束な姉には……そうね─────」

 

 そのまま話の流れでお返事どうすか? と聞いたところでやはりサラマンダーさんも家族の事は気にしてたようで、妹のヒルデガルドさんへの伝言を賜り、続けて姉のニーズヘッグへのそれを。

 この三姉妹が、どのような経緯を経て……姉が魔族側につくことになり、次女が管理人を継承し、末妹がドラゴニュートとして人の世に落ち着いたのかはわからない。

 聞くつもりももちろんないけれど。

 けど、そこに当事者にしか分からない並々ならぬ想いがあれば、次にニーズヘッグに出会った時に伝えてやりたかった。

 

『───────「いつかまた、一度だけでもいいから顔を見せてほしい」……と。伝えて、くれるかしら』

「……了解、です!! 俺がバッチリ伝えますよォ!! なんなら首根っこ捕まえて連れてきますよ俺の方でェ!!」

「調子()~。そんな約束して大丈夫ですかロックくん~? ……いつか、殺し合う相手ですよ?」

「ロック……」

 

 その万感の想いが籠った伝言に、しかし俺はそれをしっかりと受け止めた。

 いずれ相対する敵ではあるが、少なくともこれでサラマンダーさんとニーズヘッグを出会わせるまで俺はあいつを殺せなくなった。

 なんなら連れてくるって約束までしてやった。

 ノインさんがその約束に当然の疑義を訴えるが……でもすみません、俺ここで(NO)と言えるはずがないんですよ。

 

 サラマンダーさんの言葉は、想いは、きっと家族愛から生まれたものだと思うから。

 俺はそれを肯定したい。

 そう在りたい。

 

 シスターが俺に言ってくれた、『愛から起きた行動であるならば、何があってもそれを許せるような広い心を持ちなさい』って言葉の意味は、そういうものだと思うから。

 俺だってガキの頃と比べればちっとは掬える範囲が広がったんだ。

 だったら俺は、その想いを掬いあげてやりたい。

 

「まぁ言っちまえば俺の我儘ですね。やっぱ……家族って仲良くないと嘘だと思ってるんで俺。なのでニーズヘッグをボコして無力化して連れてきて!! んでサラマンダーさんとヒルデガルドさんとじっくり話してもろて!! その結果三姉妹が仲直りするの見たいという我儘ッ!! そうなれるように出来る限り頑張りたいところありますッ!!」

『……ああ、そうねぇ。そうなれば本当に……嬉しいわね』

「……ロックくんの、本当にこういうとこなんですよね~……好き~……」

「ほんとにね」

「そして家族仲を取り持った俺に3人とも惚れてレッドドラゴンハーレムを形成するッ!! 世界でただ一人のドラゴンに愛された男に俺はなるッ!! なんなら全属性コンプリートまで目指してるからなぁニョホヘ!!!」

「こういうとこなんですよね~」

「ほんとにね」

『面白い子ねぇ君は』

 

 最後にちょっくら性欲が暴走しかけたけどまぁ何も変な事言ってない。

 ニーズヘッグを倒す! 無力化して連れてくる! 三姉妹で再会する! なんかいい感じになって仲直りする!

 その結果俺に恩を感じて少なくともヒルデガルドさんは堕ちる!!(願望)

 なんか世間慣れしてない雰囲気のサラマンダーさんもワンチャン堕ちる!!(欲望)

 そして俺の強さに酔いしれたニーズヘッグも最終的に堕ちる!!(希望)

 レッドドラゴン三姉妹コンプリート。

 デカパイのマグマに溺れて幸せな夢を見るんだ俺。

 

「ドラゴンにあいされるだけならもうわたしがいるでしょ、ロック」

「アッうん……それは間違いないんだけどォ……でもやっぱり俺ヒルデガルドさんのデカパイ捨てがたくてェ……!! 実は俺に惚れてる可能性も50%くらいはあると思っててェ……!!」

「お姉さんの前で口に出す内容ではないのでは~?」

『あら……ヒルデはこういう子が好みだったのかしらね? あの子、とっても寂しがり屋だから仲良くしてあげてほしいわ。……よかったらあの子の普段の様子とか、貴方たちの事とか教えてくれない? 火山にずっといるだけだと外の情報が分からなくて退屈なのよ』

「任せてくださいよォ無限に仲良くしますよォ!! そんじゃサラマンダーさんにヒルデガルドさんの普段の様子を……と言っても俺らも普段の様子は余り分からないから、こないだヒルデガルドさんと一緒にやった冒険の話でも語らせてもらいましょうかね」

『わぁ楽しみ。ワクワクするお話になりそう?』

「そりゃもう自信ありっすよォ!」

「まぁ物凄い英雄譚であったことは間違いないですね~。ロックくんの冒険語りってこれまでも聞いてましたけど、中々聞かせるんですよね~。意外に読み聞かせとか得意そう」

「ロックはこじいんでもたまにほらばなしきかせてるからね」

「ホラ話とはなんじゃい」

 

 そんなこんなでサラマンダーさんとも仲良くなり、軽く冒険のお話なんかもして。

 これにてサラマンダーさんと仲良くなるという最大の目的と、ついでに火山の麓にある村の転移陣も起動できたので今日やることは全てコンプリート。

 リンのお腹が悲鳴を上げ始めるころに、俺たちはサラマンダーさんと別れて転移陣にて王都に帰還することになった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 そして帰ってきた我が家にて。

 

「迷子マジか」

「迷子マジです」

『みゃあ……』

「ごはんが……ない……!?」

「リンちゃんのお腹の音すっごいぞ~」

 

 先に戻っていたイレヴンから衝撃の事実を聞かされる俺たち。

 いや何やってんの!? っていう感想もゼロではないけど。

 ただまぁなんて言うか……これはどちらかと言えば俺が悪いところあるな。

 サザンカさんの方向音痴は最早神に定められた運命とも言えるだろう。しかし俺の勘はその運命に逆らうことができる唯一無二のものだった。

 今まで特にアピールもしてなかったけどサザンカさんと一緒にどこか歩いてる時は俺がさりげなく迷子にならないように意識してたし。立ち位置調整してたし。

 だからこそイレヴンもそこまで注意をしてなかったのだと思うが、あの人少しでも目を離すとすぐにいなくなるからなマジで。

 そういうスキルとか持っていらっしゃる??

 

「そっかぁ……じゃあ探しにいくかぁ。闘技場から直接俺んちに来るのは前に道順覚えてくれたけど、中央通りを経由したルートだと二度と帰路に戻れないだろうしサザンカさんだと」

「すみません、私が目を離したばかりに……一応はぐれた地点から周囲を探しては見たのですがあの鎧でも見つけることができず……」

「いやまぁやむなしってもんよ。次からは俺抜きでサザンカさんと歩く時は誰かがより気をつけておけばええ」

「今後は私が追跡魔法(サーチ)かけておきましょうかね~、それならどこにいても場所が分かるようになります~」

「そっすね。俺の勘にもサザンカさんがヤバい事に巻き込まれてるとかとかそういう感じは()()()()()。早く連れ帰って夕飯作ってもらいましょ。今後もよくある話だと思うのであんまりみんな気にしない方向で」

『みゃ』

「わたしはきにする!! ごはん……ごはんが!!!」

「リンお前お昼あんなに食ってたでしょー! 前菜としてこのパンにジャム塗って食べてていいからオラッ!」

「もご!! ……もぐもぐ。うまい」

 

 リンの口にフランスパンを突っ込んでジャムを渡すと、それが見る見るうちに食われていき10秒ほどで命を落とした。

 それを見届けてもう一本パンを突っ込んでから、俺たちはサザンカさんを探しに行くことにする。

 フランスパン一本で10秒かぁ。

 30分で探して戻ってくれば180本の犠牲で済むな。いやその前に夕飯に備えて止まるだろうけど。

 

「あ、ロックくん。私はお留守番でもいいですか? ちょっとやることありまして~」

「ん。まぁサザンカさん探しに行くだけだし全然構わないですけど、やることって?」

「報告です~。今日どこまで転移陣を広げて、各国とどんな話をしたのか……ルドルフに伝えないといけないので~。夕飯が作り終わるころには終わると思うので~」

「なるほど。了解です」

 

 サザンカさん探索隊にはノインさんはついてこないようだ。

 まぁ……王族だからな。間違いなく俺ら一般庶民とは異なる仕事が多く存在することは俺でも察せる。

 ルドルフさんと色々打合せしてたり、あと部屋にこもって何か報告書? みたいなのを書いてたりもするらしい。

 まぁそれはそれで全然やってもらってかまわないというか。

 各々が己のやるべきことを気兼ねなくやれて、困っていれば手助けしあえるのが健全な家族関係だと考えてるので全く問題ないですわね。

 なんか手伝えることがあれば言ってくださいね。

 

「んじゃ出発しますか」

「ええ。マスターには既にサザンカの位置は分かっているのですか?」

「そりゃあね、イーリーアウスの勘を舐めないでもろて。探そうと思えば何となく方角は分かる…………うん、そんなに遠くはないな、王都からは出てなさそう」

「王都から出てる可能性を懸念されるほどなんですね~サザンカさんの方向音痴」

「もぐもぐ……わたしもいく。そらとんでさがせるかもだし……サザンカのごはんたべたい……もぐもぐ」

『みゃ!』

「行ってらっしゃい~」

 

 そんなわけで出発!

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 太陽がお休みになられた後の時間、夜の王都を3人と猫一匹で歩く。

 夜だからって真っ暗な道のり……とは当然ならない。

 小型魔導タンクを備えた街燈が町の各所に点在しているし、今日は2つほど月が出ていて雲に隠れてもいない。

 そもそも俺シーフだしな。灯りの無いダンジョン内に比べりゃ全然遠くまで見えるレベルよ。

 

「本当にこっちなのですか? 私たちは中央通りを経由して家に向かっていた筈なのですが……」

「間違いなくこっちだね。なんでこっちなのかはきっと永遠に理解が及ばないんだろうけど」

「サザンカ、ヒノクニでどうしてたんだろ……」

『みゃ』

 

 中央通りから大きく離れた方角へ俺たちは向かっていた。

 俺んちから直通で中央通りに行くにせよそんなに複雑な道じゃないのに。伊達に闘技大会開催前の一週間毎日迎えに行ってただけはないな。すごいぜサザンカさん。

 まぁサザンカさんドスケベデカパイボディな上に戦闘も出来て料理も出来てと完璧超人だからな。一つくらい抜けたところがあったほうが可愛いもんよ。

 可愛いで済まされるレベルに俺がする。(決意)

 

「……ん、あれ」

「おや」

「お? ロックじゃねぇか……みんなも」

「こんな時間にどうしたのお兄ちゃん? サザンカさんが料理作ってくれてるんじゃないの?」

 

 しかしその道中で顔見知りと出会った。

 カトルとティオだ。幼馴染の二人。

 闘技場でイレヴンたちに揉まれてた姿は見たが……帰り道か?

 でも今はカトルはヴァリスタさん宅に居候みたいな感じだしティオはケンタウリスのクランハウスで寝泊まりしてなかったっけ? なんで一緒に?

 

「こっちは色々事情があってな」

「サザンカが帰り道で迷子になってしまって……探しに出た所なのです」

「ああ……サザンカさん方向音痴だって前に聞いたな」

「探しに行くほどなんだね……」

「可愛いもんよ。……で、そっちはどした? 飯でも食いに? なんならウチくる?」

「あ、いや飯は確かにさっきまで食ってたんだけど……そん時に俺とティオで装備を見直そうかって話になって」

「お互いにこの間の戦争で防具が摩耗してたし、限界突破もしていい機会だからもっと自分に合う装備にしよっかってね。私はもっと軽装にしてスピード上げるつもりなの!」

「ってわけで、()()んとこに相談に行くところだったんだ。親父なら伝手で装備取り寄せられるかもしれねーしさ、今日言っとけば明日には準備してくれるだろ親父なら」

「なるへそ。確かにトゥレスおじさん仕事早いしな」

 

 聞けばなるほど、装備の更新を考えていたと。

 それでカトルの親父のトゥレスおじさんに相談に行こうと考えたらしい。妥当な判断。

 夜と言ってもまだ7時前ってくらいだしな。店自体は閉まってるだろうけど、この二人なら話くらいは聞いてくれるだろう。

 俺も挨拶したいけど、装備の相談っていう意味じゃどうやっても俺らは話に絡めないし。

 何より俺らはサザンカさんを探さなきゃならない。付き合えはしないな。

 

「サザンカさんが王都迷ってるなら俺らも探すか?」

「や、勘がもう大体の場所は捕らえてるから大丈夫。でももしサザンカさん見つけたら悪いけど俺んちまで連れて来てくれると助かる」

「わかった! それじゃー…………」

「…………」

「…………」

「……いや、お兄ちゃんなんでついてくるの?」

「こっちなんだよサザンカさんがいるの」

 

 なんて思ってたら俺らの行く先とカトルたちの行く先が被ってるっていうね。

 しばらくは同行かな……と思ったけど、歩いて行けばいくほどトゥレスおじさんの店がある方角とサザンカさんがいると感じる方角が一致してるのが分かってくる。

 え、なんで?

 

「もしかしてサザンカさん、トゥレスおじさんとこにいるのか?」

「……その可能性もあるか? たまたま親父が見つけて保護してるとか……」

「うーん……カトルのお父さんに対してごめんって前置きするけど、トゥレスおじさんそこまで世話焼くかなぁ? 私達ならまだしも……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()?」

「あー……そうだな、確かに。闘技大会で同じ場にはいたけど、あんときサザンカさん気絶してからトゥレスおじさんが活躍してたし、少なくともサザンカさんはトゥレスおじさんの顔も知らないはずだわ」

 

 カトルが予想される展開として口に出したそれだが、ティオが言うようにサザンカさんとトゥレスおじさんはまだお互いを知らない。

 いや、トゥレスおじさんは闘技大会を見てたし俺の傍にサザンカさんがいることも知ってるが、サザンカさんは少なくともトゥレスおじさんの事はカトルの親父さんの名前だって事しか知らないはずだ。会ったことない。

 そしてそんな程度の関係のサザンカさんを、トゥレスおじさんがたまたま街中で見かけたくらいで声をかけて保護するだろうか。

 しないわ。(確信)

 

 え、でもじゃあ逆になんで……?

 まさかとは思うけどトゥレスおじさんサザンカさんの体を狙って……サザンカさんも実はイケおじに弱くて浮気を……!?

 なんてするわけねーわな。トゥレスおじさんは亡き奥さん一筋だし、サザンカさんも一本気だから浮気なんてするはずがない。

 じゃあなんでやっていう理由は分からないままなんだけど、まぁそれは行ってみりゃわかるか。たまたま同じ方角なだけかもしれんしね。

 俺の勘にもサザンカさんがNTRされててヤバい!! とか叫んでるわけでもないし。

 ()()()()()()()()()()()()()()()

 問題ないやろ。

 

 そんなわけで俺、イレヴン、リン、ミャウ、カトル、ティオでトゥレスおじさんの店に向かうことになったのだった。

 

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