勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「はじめまして、
「…………」
「えっ無言。何この反応ー!? 私が魔王を倒したものっすごいアンドロイドだと知っての
「…………」
「……トゥレス、何か言ってあげたらどうなの?」
「婦女子には優しく接するものですぞトゥレス殿」
「……………………トゥレスだ」
「キェェェェェェアァァァァァァシャァベッタァァァァァァァ!! マスターって喋るんだ!? すげー!! でも名乗るの遅いー!! それでも私のマスターですかー!? 私のマスターなんだろうなぁいっつもこんなんだよ私のマスターは!! まったくもー! ……あれ? その、魔王が倒れてから何年くらい経ってます? 今は……えっちょっと? イルゼ?」
『……私達が眠りについてから……135年ほどが経過しています、ワン』
「えぇーーーー!? そんなにぃ!?!? そんなに誰もここ見つけられなかったのぉ!?!?」
「五月蠅い」
トゥレスが魔剣イルゼの柄に触れると、それにより自動的にマスター登録が実行され……カプセルの中から出てきた少女ワンが、元気に名乗りを上げた。
喋る魔剣『イルゼ』と共にダンジョンに眠っていた少女は、自分たちがかつて魔王を倒した冒険者の所有物であったことを語った。
驚愕の内容に、重ねてルドルフが聞き取った魔王討伐後の歴史はこうだ。
一人の無口な冒険者が、当時世界にありふれていたアンドロイドである『ワン』を相棒に、他の冒険者とは組むことなく戦績を重ねていた。
最終決戦である第三次人魔大戦を生き延び、愛剣である魔剣『イルゼ』を用いて、人知を超えた奇抜な活躍で魔王を討伐した。
それは、華々しい英雄譚。
魔族領にて魔王の討滅が果たされ、人類領に凱旋し、王都にて華々しい戦勝の宴が開かれる────はずであった。
しかし、彼女たちの主である無口な冒険者は、王都への帰還途中に奇妙な行動に出た。
王都の正門に向かわず、その近隣の……ワンがかつてその地下に保管、安置されていたダンジョンに進入。
唐突な行動に疑問を投げかける彼女たちの言葉にも耳を傾けず、ワンがかつて眠っていたカプセルのある部屋へ移動。
その地面へ愛剣であるイルゼを突き立て、ワンをスリープモードに設定して元のカプセルに状態を保管しようとした。
急な行動に戸惑う二人に、冒険者は口を開く。
それが二人に投げかけた最初で最後の、唯一の言葉になった。
『───もしも。もしも、次に君たちを目覚めさせる者がいたならば。その者の力になり、そして……どうか、幸せになってくれ』
その言葉を最後に、冒険者はイルゼを背にして座り込み沈黙。
ワンはスリープモードとなりマスター登録を解除されて眠りについた。
イルゼはしばらく己が主に言葉をかけていたが……刀身を通して伝わる熱が冷え切ったのを感じ取り、やがて沈黙した。
時折、カプセルに満たされた液体が泡立つ音が響くだけの、長く永い静寂が保管室に訪れて。
そして──────
「私を目覚めさせたのがまた無口なマスターだったわけですよ!! もう!! どうしてこうヒキが悪いかなぁ!?」
『135年経っても変わらないですね、ワンは』
「…………」
「……歴史書に記載があったわね。アンドロイド……冒険者飽和時代を終え、魔王が討伐された後に全ての個体は失われた、という話だったけれど……」
「まさか現存する個体があったとは……驚きですな」
「えっ他にアンドロイドいないんですかぁ!? 同期のワンちゃんたちも!? スリーちゃんとかセブンちゃんとか上の世代のアンドロイドたちはものっすごく希少でしたけど!! 同世代のワンちゃんたちは結構人数いたのに!? どうしてだと思いますマスター!?」
「…………」
「マスターなんか喋れよぉ!!」
『ワンがいつもこんな調子だから主が無口になるのでは?』
稀代の天才トゥレスと、遺された遺物ワンとイルゼの出会い。
運命の歯車が、噛み合った瞬間。
だが回り出した歯車が奏でる物語は、いつも幸せな結末になるとは限らない。
※ ※ ※
彼らが出会い、一年が経過した。
「ねぇーえーマスター! 私の装備もうちょっとかわいい感じにしませんかー!? 今着てるのは確かに防御力は高いんですけど!! 全然かわいくないですよー!!」
「やかましい」
「なんでーなんでー! ミルさんの修道服はあんなに可愛いのにー!!」
「修道服はそういう目で見られないための服なんだけどね? 本来は」
「ほっほっほ。まぁミル殿はとてもお美しいですからな。これは王都にもファンが出来ようというものです」
『おじさんくさいですよルドルフ』
「おじさんですので」
「むー。私だけ重騎士みたいになってて動きづらいんですー! もっと前に出てバチバチやりたいですよー私もー!! だから新しい装備買ってくださいよーマスター!!」
「…………ふぅ……」
「はー今回の冒険もつっかれたー!! いっぱいご飯食べたいです!! ごはん!! ごはんください!! 大盛りで!!」
「ふむ。今回の冒険ではワン殿は中々のご活躍でしたな」
「ワンちゃんのレベルも上がってきたわね。もうすぐ150には届きそう」
「ふっふっふ、このワンに出来ないことなどありません!! このままいつかレベルカンストの200に達してやりますよー!! レベル200に到達したワンちゃんなんて古今東西見渡しても私くらいのものでしょう!! なにせレベル上がるのおっそいので私達第一世代は!!」
「それは自慢にはならないわね?」
「現存するアンドロイドはワン殿だけですから比較対象がおりませんな。……尤も、下手な風評が流れるのを恐れて正体は隠しておりますが。ワン殿は本当に人間に変わらぬように見えますな」
「ふふーん! アンドロイドは高性能なのです!! とはいえ人前で『ドリルブラスター』が使えないのはストレスたまりますけどねー。ぎゅいんぎゅいーん」
「酒場で腕を回しちゃダメよワンちゃん」
「堪え性の無い犬ですかな」
「このパーティメンバーツッコミが辛辣ぅ!! ……ってか、あれ? マスターどこ行きました??」
「────」
「ヒッ!? 気配消して後ろに現れないでくださいよマスター!? なんばしよっと急にー……ん、あれ? その袋なんです?」
「わー!! この服おっしゃれー!! 動きやすいし腕の部分も肩で保持できるからドリル使えるー!! 武闘家の装備ですかねー、足回りもパンツタイプで動きやすいし……ヒラヒラの布可愛いー! 胸元も守れるプロテクターヤッター!!」
『似合っていますよ、ワン』
「…………」
「可愛い衣装でよかったわねワンちゃん。にしても……珍しくキザな事するじゃない、トゥレス」
「ふむ。鑑定してみても中々の高品質……品売りしている所を見たことがないのでこれはオーダーメイドですな」
「余計な事は言うな、ルドルフ」
「えっ……えっ? やだもー! マスターったら私の事好きすぎー!! やだー!! んもー!! でも今日は嬉しいからキスするくらいは許しちゃおー!! んー……♡」
「…………」
「……目を閉じて待たれてるわよ?」
「ほっほっほ。映写魔法を準備せねばなりませんな」
「…………」
『このスルーっぷりですよ』
「…………んー? こねーなー? マスターどしたのかなー照れてんのかー? しっかたねぇなーそれじゃあ僭越ながら女の方からキスしてやりますかー!! んっーっちゅモがッ!! んぎゃああああああッッ!?!?!?」
「やかましい」
「アイアンクローが決まりましたな」
『女の子の顔にもうちょっと容赦できませんか?』
「はぁ……随分と騒がしくなったわね、私達も」
※ ※ ※
出会いから、三年が経過した。
「とうとう達成しましたね、私のレベル限界!! ワンちゃんは200レベルになって強さも200倍!! 200ワンちゃんですっ!!」
「それは201になるんじゃないかしら」
「2001の可能性も捨てきれませんぞ」
『1を200倍しても200では?』
「なんでぇーもっとみんな褒めてくれてもいいじゃないですかぁー? 確かにもうこれでやる事なくなっちゃいましたけどー。このパーティで出来ない事何にもなくなっちゃいましたもんね! 魔族がいないと平和なもんですねー世間って」
「……そうだな」
『ここ最近は、ギルドから斡旋されてくる依頼も数が落ち着いて……レベルを上げるために高難易度のダンジョンに潜ってはいましたが、それらの狩場でも狩り過ぎてダンジョン自体の魔素が減少して潰れそうになるほどでしたね』
「ギルドマスターからも少々釘を刺されましたな。我々の活動が他の冒険者の仕事を食いつぶしかねない、と……」
「…………」
「……ミル」
「はい? 何かしら、トゥレス」
「孤児院を建てるという話……進んでいるんだろう。先日王都内の土地を購入していたな」
「っ……ええ、まぁ。みんなのお陰で稼ぎも十分に蓄えられて、資格も取れて……後は孤児院を建てて、国に営業権の伺いを立てて……」
「そうか。……ルドルフ」
「ほほ」
「お前は────」
「────現国王、ディストール様よりスカウトが続いておりますな。どうにもトゥレス殿やミル殿を紹介した際に
『……トゥレス。貴方は……』
「えっ何。何この雰囲気? マスターちょっと?」
「…………ワン」
「ちょっと待ってマスター!? もしかしてパーティ解散して冒険辞めるなんて言わ────」
「結婚しよう」
「────んホえェっっ!?!?」
「俺にはお前が必要だ。俺は……生きる意味を、お前に見つけた」
「まぁ……あらあらまぁ……まぁ~……!」
『トゥレスからまさかプロポーズの言葉が零れるとは』
「ほほ。若いですな……爺には眩しすぎます」
「答えを聞かせてくれ。俺は……お前のマスターというだけではなく、人生の伴侶として共に歩み、共に死にたい。前に話していた
「あっは? はい! はい?? ほんぎゃあ!?」
「お前の事を愛している」
「んぎょぺぇ!?」
「告白にそんな鳴き声で返す人いる?」
『ワン……貴女……』
「片腹が強く痛みますぞ」
「…………答えを」
「あっ、はい! その、どうしてもマスターが私の事欲しいって言うなら? 言うなら!! 大好きですから仕方ねぇといいますか!? その、何と言うか!! いえ、私もね!? マスターの事結構大好きでしたからね!? 前にちゅーしたとき魔力炉心ドキドキしすぎて死にそうになりましたしね!! でもいつも無口でムッツリスケベなマスターからこんな真面目にアイラブユーされちゃうとぉ!! 限界ですけど!! 結婚しましょう!!! しょうがねぇなぁ!? マスターには私がついていねぇとなー!! 最期まで看取ってやっかぁ!!」
「そうか。………ほっとした」
「わぁ……おめでとう、二人とも」
『ようやく鞘に収まりましたね』
「心より祝福申し上げます。…………ではこれで、
「……そうだな。二人も……これまで、世話になった」
「やだ、水臭いわ。みんなこれからも王都にいるのだから……またいつでも会えるでしょう。孤児院の設立で困ったらお手伝いしてもらいますからね。ワンちゃんも、ルドルフも」
「もっちろん任せてくださいよー!! 子どもたちと遊びまくってやりますよいつだって!! あっでもその前に主婦としてのスキルも磨かないといけないかなぁ!? ミルさん家事教えてー!?」
「ほっほ、お困りの際は王城まで足を運んでくださいませ」
「──────また、いつか」
「ええ。またいつか」
「またいつか、いつでも」
「いつでも困った時には助け合いましょうね!! それでは!!」
※ ※ ※
別れから、一年が経過して。
「マスター。……なんか私……赤ちゃん、出来ちゃったっぽい……??」
「────────」