勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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UA30万達成してました。有難うございます。


136 うるせ~~!! 知らね~~~!! ハッピーエンドしか興味ねえ~~!!!

 

「何故……何故だッ!!」

 

 無数の剣戟が振るわれる。

 狭い室内で、レベル200超の伝説の元冒険者がレベル12の俺に見舞う攻撃の数々。

 

「何故あいつは……!! 俺はっ……お前はっ……ッ……!!」

 

 怒りを、呪詛を、嫉妬を……言葉に表せないほどの哀しみを零しながら振るうその剣は。

 あまりにも──────精彩を欠いた攻撃となっていた。

 

『……トゥレス……!』

「親父……ッ!! ……ッもう、やめてくれよっ!! ロックは関係ねぇじゃねぇか!!」

「マスター……」

 

 こんな攻撃ならバリアを張るまでもない。見て躱せる。

 孤児院のガキ共だって対処できそうな、正確さの欠片もない攻撃。

 感情のままに振るう剣が……いや。

 

「何故……だッ!!」

「おじさん」

 

 ()()()()()()()()()()()()

 俺の体に掠る事もなく、ただただ空を切る。

 

 トゥレスおじさんは強い人だ。

 常に冷静。天才。あらゆる事を理解する。

 ()()()()()()()

 

「おじさん……」

 

 本気で……やっているつもり、なのだろう。

 本気で、愛する女が取り戻せない事実に嘆き、同じ存在を従えている俺に逆恨みし、そのままに剣を振るっているつもりなのだろう。

 だがそれは、どこまでも冷静なおじさんが我を忘れるまでには至っていない。

 本気のつもりでも性根を隠せていない。冷静に考えてしまう部分が理性という名のブレーキを掛けている。

 

 それを俺は一つの行動で示すことにした。

 トゥレスおじさんの本音を理解させてやる。

 

「っな、マスター!?」

「ロック……!?」

「お兄ちゃんっ!?」

 

 余りにも見え見えの首元を狙った薙ぎ払い。

 長剣を振るい放たれたトゥレスおじさんの攻撃を、俺はあえてその場で足を止めて両手を広げ、受け止めるように待ち構えた。

 バリアを張るつもりもない。避けるつもりもない。

 捌き斬りすら試さない。

 何もしない。

 

「────────ッ!!!」

 

 ただ、その攻撃を受け入れる。

 振るわれる剣戟が間直に、しかし俺はまっすぐにトゥレスおじさんの瞳を見つめ続けて、そして。

 

「……止め、た……?」

 

 俺の首の皮一枚だけを切り裂いて、白刃はぴたりと動きを止めていた。

 

 

 簡単な話だったんだ。

 俺の勘が、この一連の騒動に反応するのが余りにも遅れた理由。

 命の危機……それを感じ取れなかった理由。

 

 トゥレスおじさんに、()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 アイムに唆され、どれだけ俺への恨みを募らせたとしても。

 イレヴンの体内にある魔力炉心を求めたとしても……おじさんは、俺達を本気で害するつもりがなかった。

 その選択を取ることができなかった。

 

 今見せた剣閃がその答えだ。

 どんなに奥さんの事を嘆き、哀しみ、それを取り戻したいと強く想っても、トゥレスおじさんの冷静な部分が怒りに任せて俺たちを殺すという選択肢を取れなかったんだ。

 怒りに任せて剣を振るおうとしても、天才が出す答えが俺らの命を奪うという選択をできなかった。

 アイムの裏をかき、その身から逃し、捕らえる事だけを答えとして選んでいた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 悲しいよな。

 本当は取り戻したい。

 理性を無くしてでも俺を殺して、助けたかった。

 でもそんなことができないこともわかってて。

 いや、たとえそれが出来たとしても、俺を殺すなんてするはずがなくて。

 

 俺がカトルの親友で。

 カトルが愛する妻の忘れ形見なのだから。

 

 妻が悲しむであろう行いを、感情で為そうとしても、理性が止めてしまうんだ。

 

「…………俺、はっ……ぅ……っ、ぐ、ううぅ……ッ!!」

 

 剣を止めたトゥレスおじさんが、そのまま崩れるように膝をつき、首を垂れ、跪き……涙を零した。

 溢れる哀しみを、感情のままに零す事すらできなかった男が、何も出来なかった己の情けなさに零す涙を、見た。

 それを見る俺も、みんなも、何も言葉を返すことができなかった。

 

 キレ続けていた。

 俺は……ずっとキレていた。

 許せなかった。

 

 それは、こんな事態を引き起こした幻魔将アイムに対して────ではない。

 コイツは敵だ。魔族だ。

 敵が俺という存在を殺すためにクソみてぇな手段を選んだのはただのバカなのでもっと頭使えよと言いたくなるが、そもそも()()()()()()()()()()()()()()()()()だ。

 戦争中で、人類と魔族なんだからな。敵軍にいる限りこいつは許されねぇよ。

 最も魔王軍にとって目の上のタンコブであろう俺を殺すために取ったこの女の行動はどうでもいい。俺が生殺与奪を奪ったことでもうわからせてやった。

 

 ではトゥレスおじさんに対してか?

 否。

 トゥレスおじさんはたとえ操られていても俺達を殺すつもりはなかった。アイムの洗脳に抗い、隙を作り、俺を助けてくれた。

 その後、感情に任せて俺を狙おうとした……のも、結局理性が勝って殺せなかった。狂いたくて、狂えなかった。

 奥さんへの愛で起こした行動ならば、俺はそれを許すんだ。それがシスターの教えだから。

 

 ……しいて言うなら、奥さんの蘇生を諦められないことを……周りに相談しなかった点、か。

 無口で、なんでも自分で抱え込む癖のあるトゥレスおじさんの事だ。

 きっとシスターやルドルフさんにも相談してなかっただろうな。奥さんの遺体を保管し、蘇生できるチャンスを探っていたことを。

 それを知ってればもっとシスターが蘇生魔法について調べてただろうし、ルドルフさんも今黙っていなかっただろうが……まぁそんなことはぶっちゃけもうどうでもいい。

 

 

 ─────()()()

 

 

「……トゥレスおじさん」

 

 俺が。

 俺の勘が、このタイミングで囁き出したのが本気で頭に来ている。

 

 分かってるんだ。

 結果は分かってる。もう、どうすればいいかもわかってる。

 でもその過程式が……トゥレスおじさんがこれほどに苦しんで、悲しんで、嘆いて、今俺の前で膝をつき涙を流す姿になって。

 こんなものを見せつけられないと駄目だったのか?

 この涙だって、俺の勘がもっと早く答えにたどり着いてりゃ流す必要はなかったんじゃないか?

 そう思えてしまって。

 

「おじさん」

 

 無言で涙を零すおじさんに、しゃがみ込んで肩に手を置き、声をかける。

 きっと……そう、足掻くこともできないどうしようもない哀しみを、理性で止めようとして、止められていないのだろう。

 俺たち全員無事で、アイムも捕らえて、トゥレスおじさんはかつての英雄として、誰よりも尽力したというのに……何も得るものは無くて。

 得ようとしても、手を伸ばす先が分からなくて。

 ただ嘆くだけの、そんな姿にカトルもティオも悲しみに暮れているのが背後の気配で感じられて。

 

 ああ。

 クソ。

 ふざけやがって。

 

 ─────いいからッ!!(逆ギレ)

 

 こういう曇りシリアス展開いらないから!!

 俺こういうの嫌いなの!!

 紡いだ過程式がこんな暗い結果に終わるとか俺許せないから!!

 愛は報われてしかるべきだろうが!!

 

 だからここで『結果』を伝える。

 俺の勘が掴んでいた、俺の示す答えを。

 

 

「───()()()()()()()()()()()()

「…………ッッ!!!」

 

 

 その言葉を伝えた瞬間に、おじさんが俺の胸倉を掴んで睨み上げて来た。

 怒りに濡れた瞳に、しかし俺も本気(マジ)本気(マジ)だ。

 俺のその言葉に一切の気遣いも嘘偽りもない。

 

「ロックはうそついてないよ! ほんとだよ、トゥレス……!!」

「お兄ちゃん!?」

「ロック、お前……っマジか!?」

 

 これまで何度も嘘を見抜いたリンの言葉に、トゥレスおじさんの瞳が大きく開いた。

 信じられないといったその顔に、俺は改めて言葉を紡ぐ。

 

「出来るんだ。今この場にみんながいることで……俺が色んな縁を結んだことで、おじさんの想いを聞けたことで……出来るようになった。俺の勘が答えを出してる」

「…………本当、なの、か……? 出来るのか……?」

「信じてよ。長い付き合いでしょ、俺たちさ。ガキの頃に遊びに来た時にシスターに秘密でよく俺とティオにアイスくれたじゃん。そのお礼ってことで」

 

 俺の勘が遅れて叫び出して、紡いだ答え。

 多分……アイムがおじさんを狙っていなければ、時間はかかっただろうがおじさんだけでも辿り着いただろうその答え。

 俺たちが今知る情報を、技術を、能力を集めれば……トゥレスおじさんの奥さんを、ワンさんを助けることができる。

 

 だから、ここからは答え合わせだ。

 俺の勘は勝手に叫び出すことがあるが、嘘だけはつかない。

 

「……ロック……」

「うん」

「頼む……俺の、ワンを……生き返らせてくれ……っ!!!」

「任せて」

 

 再び涙を零して懇願するトゥレスさんの手を、ぐっと握り返して応えた。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 とりあえず、まずはこの場に絶対に呼ばなきゃいけない人がいる。

 

「リン、大丈夫か?」

「ん! ちからがぬけてただけだから……ケガはない! おなかはへってるけどげんき!」

「そっか、よかった。じゃあ……頼みがある。今すぐ俺んちに飛んで戻って、ノインさんとルドルフさんを連れて来てくれ。事情を説明してさ」

「わかった!!」

 

 ドラゴン特攻の武器を一つ一つ抜いてリンを救出する。

 剣とか槍とか、かなり高級そうな武器ばかりなんだけどな。抜いても出血が一つもねぇや。流石ブラックドラゴン。

 自由を取り戻したリンに依頼するのは、ノインさんとルドルフさんの招集だ。

 特にノインさんは必ずこの場に来てもらわなければならない。最後の一手を務めてもらう人だ。

 俺の願いに答え、リンが翼を広げて夜空に飛び立っていった。5分とかからず二人を連れて来てくれるだろう。

 

「ノインは蘇生魔法を扱う事が出来る。もしやそれをアテにしていますか、マスター」

「ん。まぁね、それだけじゃないけど……」

「……そのように言うということは、分かっているのですね。話を聞く限りでは今現在、アンドロイドであるワンの体内には魔力炉心がない。蘇生魔法をそのままかけたとして、心臓代わりである魔力炉心が無ければ蘇りはしません。だからそれを……」

「分かってる。……ごめんな、わがまま言うわ今から」

「…………」

 

 同じく罠から脱したイレヴンが、アイムを『ヴォルトスパイダーネット』で縛り直しながら俺に確認の言葉をかけてくる。

 この世界にいる二人目のアンドロイド。ワンと同じ存在である彼女ならば、俺やトゥレスおじさんよりもアンドロイドの仕組みについては詳しいのだろう。

 彼女が言う通り、魔力炉心がカトルに受け継がれてしまっている今、たとえ蘇生魔法をそのままかけても生き返らない。

 人間ならば心臓が貫かれてもそれが再生するが、アンドロイドは蘇生の絶対の条件は魔力炉心が無事であることだ。

 闘技大会の時に、イレヴンは言っていた。

 魔力炉心が壊れなければ、マスターの魔力で再生できる、という話。それを俺は覚えていた。

 だから……稼働している魔力炉心を、一つ準備する必要がある。

 

「イレヴン。お前の体の中にあるサブの魔力炉心、一つ分けてくれ」

「…………」

 

 俺のその言葉に、微妙な表情で己の胸に手を当ててイレヴンが押し黙った。

 分かるよ、危惧は。

 今のイレヴンは魔王軍を相手にしても軽く数万から蹴散らせるほどの火力を持っている。

 だがその火力の源泉は、先日増設したサブの魔力炉心。

 それを失うということは、火力の喪失と同義。

 素直に頷けないことは俺もわかっている……が。

 

「もう一つ積めるんだろ? 今溜まってるスキルポイント全部使えばさ」

「ッ。知っていたのですかマスター? スキルポイントの総数は言っていなかったと思いますが……」

()()()()()。もう一つ増設しようと思えばできることも、さらにイレヴンが強くなるきっかけがあるのもさ。それが何かとか、どうやるのとかは分かんないけど……出来ることは勘で分かってる。でも多分、今ここで炉心一つ使わせてもらって、ワンさんを生き返らせた方がいい結果になる……気がする! 俺の勘がそう叫んでる!」

「そう、ですか。…………マスター。私は時々、貴方が()()()()()

「あはは。前にマルカートさんにも同じようなこと言われたな。…………で、お願いしていい?」

「……分かりました。マスターがそこまで理解した上で望まれるなら、私はそれに応じましょう」

「助かる! お礼にあとで何でも言う事聞くからな! 物理的に可能な範囲ならなんでも!」

「どうしてそんな隙を見せるんですかマスター?」

 

 しかしスキルポイントはマジで余ってるみたいだからな今。

 確かにまぁ、ここで炉心を提供しなければサブ炉心が二つになってさらに強くなったりできたのだろう。

 しかしそれが俺らの今後の冒険に必須、かというとそうでもない。

 今こうしてアイムも捕まえられたし、トゥレスおじさんも奥さんが復活すれば現役復帰とかしてくれそうだし、そもそも戦力的に魔王ダブレスちゃん以外は頑張れば勝てるレベルだし。

 戦力増強という意味では個を高めるよりも数を揃える方を優先すべきだと俺の勘は言っている。

 なのでその辺イレヴンに無茶振りでお願いしたところ、最終的にはOKを頂けた。

 有難い。代わりに後で何でも言う事聞くからな。

 

「……ロック……」

「お兄ちゃん……私達に何か出来ることある? トゥレスおじさんの奥さんを……カトルのお母さんを助けられるなら何でもするよ!」

「とりあえず二人は魔力タンクとしての役割を……」

「タンク!?」

 

 そして幼馴染二人も石化を解除してもらい、何ができることないかと聞いてくるが……特段やってもらう事と言えばまぁ、魔力の譲渡かな。

 これだってとても大切な役割だ。なにせ、エルフの魔力と世界で唯一の魔力炉心を備えた人間の魔力を使わせてもらうわけだからな。

 かなり濃厚な魔素の籠った魔力を使えるはず。

 アンドロイドの蘇生なんて奇跡を果たすためには二人の力は必須だ。間違いなく。

 

 出来るさ。

 誰かを助けるために、イーリーアウスの勘は在るのだから。

 

 

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