勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「……なるほど、アンドロイドの蘇生ですか~。ゲームが稼働してた当時なら……アンドロイドが死亡した時は所有者であるマスターが蘇生魔法を覚えてたら復活させられたんですよね。もし魔法を覚えてないプレイヤーだった場合は当時王都に店を出していたアンドロイド専門の研究者に蘇生をお願いする必要があって……まぁかなりお金取られちゃうんですけど。愛をお金で買わせるなんてがめついですよね運営ども~」
「ノインさんがいつもの如く何言ってっか分かんない」
「あ、ごめんなさいね~。……ううん、私の知識だけで言えば、絶対蘇生できます……とは約束はできませんね。魔力炉心が体内から失われているアンドロイドの蘇生なんて聞いた事がありません。再起動できるのかな……イレヴンさんから魔力炉心を移植するとして、正常に繋がる……?」
「あ、そこは大丈夫です。俺の勘が絶対に成功するって叫んでるんで」
「コワ~。ロックくんの勘相変らずコワ~」
リンが呼んできてくれたノインさんに事情を説明し、蘇生魔法の準備をしてもらう。
またワケわからない発言が零れたが、やはり本の虫ノインさんだ。アンドロイドの蘇生についても多少の知識があったようで。
その知識では魔力炉心がないアンドロイドの蘇生なんて出来るのか、と疑問もあるようだったが……そこは問題ない。俺が保証する。
まぁそもそもノインさんにお願いするのは蘇生魔法を見せてもらう事だしな。実際にやるのはトゥレスおじさんよ。
どんな技も見ただけで覚えるというトゥレスおじさんだ。蘇生魔法も見れば覚えられるだろ多分……。
なんて気楽に考えていたところに、そそっと俺に近づいてきた俺の女がもう一人。
「主殿……拙者は何か出来ることはござろうか。事情はお伺いいたしました。トゥレス殿に遅れを取ったことは主殿の懐刀として不所存なれども、今は彼の者の悲哀を救い上げたく……」
「ん、そうすね」
サザンカさんだ。
トゥレスおじさんの奇襲に破れ、睡眠魔法で意識を奪われて隣室に囚われていたが、もう諍いは終わったしいつまでも捕まえておいてもらう理由もない。
カトルが拘束から解放して、トゥレスおじさんが丁寧に頭を下げて謝罪してから事情を説明して、サザンカさんも一先ず留飲を下げて協力してくれることになった。
もちろんサザンカさんにもやってもらう事がある。何気に一番心苦しいお願いになるかもしれないが、彼女ならきっとやり遂げられるだろう。
「サザンカさんってさ、人を斬り慣れてるよね?」
「いきなり
「うん……アッ別にサザンカさんがそういう経験が深い事についてはなーんも思ってないからね!? ヒノクニの文化怖ってだけで。大切な俺の嫁の一人です!」
「そう言っていただけてほっといたしました。……それで、拙者の人斬りの経験が活きる様な何かを?」
「うん。具体的には魔力炉心の移植の時にね……イレヴンは稼働してるから自分で多分体内オープン出来ると思うんだけど、ワンさんはそのままじゃ体が開けないからさ。こう……血管も臓器も傷つけずに痛みすら感じさせずに傷跡すら残さずに……シュッ! と斬って胸元を観音開きにしてもらえないかなと」
「無茶振りにも程があるでござるな!?」
サザンカさんには患部にアタックするための切開を担当してもらう予定だ。ワンさんの体に出来る限り傷跡を残したくないしね。
そんな無茶な、と驚くサザンカさんだが、しかし俺の勘は彼女ならできると叫んでいる。
「でも出来るよね?」
「いや……まぁ、出来なくもないとは思いまするが! 痛みも苦しみも与えずに刃のみを通す技『破目外し』を応用すれば或いは……」
「よかったー! そんじゃそんな感じでお願いしますね!」
「う、うむ……承りました」
言質も取った。信じてますからねサザンカさん。
さて。
これでおおよそ俺の求めるメンバーは揃った……が、そこで唐突に鈍い音が響く。
「ッ……!!」
「きゃあっ!?」
「えっ、ルドルフ!? 何をしているのです!?」
『みゃ!?』
「…………姫様、失礼を。しかし、どうしようもなく我慢できない事は誰にもございます。勿論この私めも」
ルドルフさんがトゥレスおじさんの顔をブン殴ったのだ。
全く手加減の無い本気の一撃のようだった。
それを甘んじて受けたトゥレスおじさんが床に叩きつけられて、口の端からは血がにじんでいる。
「……トゥレス殿。私の言いたい事は察されておりますかな」
「…………すまない」
「謝罪の言葉など欲しくはありませぬ。なぜ言ってくれなかったのか……いや、当然か。
「……」
「ワン殿を失い……己の無力さに嘆いたのは貴方だけではありません。私めも、ミル殿も……どれほど己の無力さを恨んだことでしょうか。ワン殿の遺体は荼毘に伏したと貴方から聞き、夫婦であるお二人の迎えた結末だと無理矢理に納得していたというのに……これは裏切りですぞ。この場に姫様とロック様がいらっしゃらなければ、殴り殺しております」
「…………すまない……」
「……感情のままに殴りつけたことは、私も謝罪いたしましょう。お互いに随分と情けない……ワン殿が見たら、笑われてしまう事でしょうな。ならば、まずはそれを第一の目標といたしましょう。私も尽力いたします」
「ああ……本当に、すまん」
「それ以上はよろしい。全てが終わったら、ミル殿とワン殿に頭を下げなさるがよい」
ちょっと緊張した空気が流れたが……しかし、言葉の内容とは裏腹に、殴られたトゥレスおじさんは救われたような表情の色が見えたし、ルドルフさんも本気で怒っている感じではなかった。
かつてパーティを組んでいたという事だが……深い付き合いだからこそ分かるものがあるのかもな。
陰険な空気になってる感じでもないし。ワンさんを助けるためならルドルフさんも全力でお手伝いしてくれるやろ。
「さて。ロック様、私めは何をすればよろしいですかな」
「うん、ルドルフさんは……あれだよね? 医学知識とかバッチリなんだよね?」
「ええ、かつてワン殿がご出産為される際に一通りは修めていますので」
「だよね。……もしかして、ティオをシスターが拾った時に耳を形成手術してくれたのって……」
「私です」
「やっぱり。……その件は、ありがとね」
「なんのなんの。それに今はもうエルフへの差別も杞憂となりましたからな、ロック様のお陰で。文字通り、無用の
さてそれじゃあルドルフさんにお願いすることだけど。
この人は……さっきトゥレスおじさんの過去の話を聞いてる中で、出産に臨むにあたって医学知識を学んだという話があったのを覚えている。
それで俺の中では繋がった。ティオの耳を人間のそれと見紛うほどの形に形成できるほどの外科医療技術をこの人は持っているんだ。
ならばそれを使わない理由はない。
「俺と一緒に、イレヴンの体から魔力炉心を摘出するのと、ワンさんの体に移植するのを手伝ってほしいんだよね。俺だけだとスムーズに行くか不安でさ」
「成程。畏まりました、老当益壮の精神で張り切らせていただきましょう」
「お願いね。どこをどうするかとかは適宜指示するから」
「ええ。……しかし、人間ならば兎も角、アンドロイドの体内の機構は私めも存じ上げませぬ。ロック様はそうした知見をお持ちなので?」
「いんや? 全部勘でやる」
「ほっほ。随分とスリリングなオペになりそうですな」
この魔力炉心の移植については、完全に手さぐりになる。
11番目のアンドロイドの魔力炉心を初期型である一番目のアンドロイドに移植……なんて、この世界でやった奴は誰もいないだろう。そもそもイレヴンが最初に目覚めた11号機の可能性大。
イレヴンに聞いても、ほいっと移植できるような物でもないとは聞いてるし。なんか……良い感じにイレヴンの体から魔力炉心を摘出して!! ワンさんの体掻っ捌いて!! いい感じに接続する必要がある!! はず!!
まぁ─────俺の勘が成功を確約しているんだ。
ならそれに導く道筋を俺が勘で辿ればいい。
準備は出来た。
答え合わせを始める。
「よし!! んじゃトゥレスおじさん、ワンさんが眠ってる地下室に行こう!! 絶対に助けるぞ!!」
「ああ、頼む。……こっちだ」
隠された地下室への扉をトゥレスおじさんが開き、雁字搦めに捕らえられた幻魔将アイムとそれの見張りでリンが残り、他のメンバーはそこに踏み込んでいった。
※ ※ ※
「わぁお」
『みゃ』
地下室に降りて、そこに安置されたものをみて俺は声を上げてしまう。
かつて見たような光景だ。
恐らくはトゥレスおじさんのお手製のものであろう、カプセル状の機械がそこに鎮座しており……その中に満ちる液体に、ワンさんが瞳を閉じて漂っていた。
少し前の事を思い出す。
俺がイレヴンを見つけた時のことを。
あの時も俺の肩にミャウがいて、二人で謎のカプセルを見上げていた。
「……お見事です、トゥレス。起動前のアンドロイドの保管に必要な魔素を含んだ液体に満たして……これならば劣化はないでしょう。よくぞ一人でこれだけのものを……」
「生き返らせるために出来る事、調べられることは全て調べた。魔力炉心の再生成だけはどれだけ知識をかき集めても見つからなかったが……保管については、俺もこのカプセルも液体も見ていたからな。ここまでは出来た……だが、ここから先に踏み込むことはできなかった。救えず……だが、ロック」
「うん。俺を信じて」
勘の冴えは最高潮。
助けるべき人を目の前にして、この先にどうすればどうなるかも完全に
助けられる。
「よし……じゃあイレヴン、まずはお前の魔力炉心を摘出する必要がある。体開けてみせてくれる?」
「ええ……もちろん、そうさせていただきますが……」
まずイレヴンの体から魔力炉心を貰う必要があって、そうお願いしたところ……イレヴンにしては本当に珍しく、頬を染めて俯き始めた。
あらやだ何?
「……テレてる?」
「いえ、その……アンドロイドにとって、体表面を見られる分には全く構わないのですが、内部構造を見られるというのは……物凄く、こう、特別な行為と言いますか」
「やだ可愛い。……つってもま、誰かを助けるためだからな。頼むよイレヴン」
「分かってます。……マスターとルドルフ以外はあまり見ないでくださいね……」
なんだよここで急にあざとい出してきやがってンモー!
まぁ……乙女心だよなここは。
普通の女の子だっておっぱい魅せたりするのはセーフだけど内臓見せたいなんて人はいないだろうし。
でもまぁ真剣な医療行為だからねこれ。お願いして体を開けてもらう。
ワンさんの形見の服を脱ぎ、いつものぴっちりインナーになったイレヴンが、俺とルドルフさんが構える方に向き直り……そして、中指をおへそに当てる。
「んっ………」
息を漏らし、おへそからまっすぐ鎖骨のあたりまでなぞるように指を這わせると、そこから亀裂が入り……出血はなく、そこからぱっかりとイレヴンの両胸が大きく開かれた。
完全に人間の人体とは違う機構だ。
イレヴンが危惧してるのは多分ここだろうな。
生理的嫌悪……人とは違う存在であることを俺には見せたくはないだろう。
でも大丈夫。照れて目を伏せてるお前の顔が可愛すぎて全然俺気にならないし。
見れば胸の中央部、おそらく心臓の位置にある大きな部品がイレヴンのメインの魔力炉心なのだろう。
淡く緑色の光を発している箱みたいなのがあって……そしてその右下の当たりに、明らかに同じタイプの光り方をしている小さな箱があって。
これがサブのほうの魔力炉心だ。これを摘出する必要がある。
「……うし、やろうか。トゥレスおじさんはワンさんをカプセルから取り出しておいて。すぐに摘出は終わるからさ」
「わかった」
「ルドルフさん、いくよ。まず……この魔力炉心を外すために近くの繋がってる管を適切な順番で外そう」
「承知しました。順番は指示してもらえますな?」
「うん、30本くらい繋がってるけど……一気に言うね、これ、これ、次はこれでこれ、これ、ここのこれで……」
「……マスター、よくそこまではっきりと指示できますね。私でもどのように自分が動いているかは中々説明が難しいというのに」
「勘でね。でもはっきり答え出てる……一気に行こう。管を抜く時は絶対に傷つけたり潰したりしちゃ駄目ね、こうして……こうすると、根っこから抜けるから。抜いた後はイレヴンが胸を閉じれば自動で後処置してくれるから血管みたいに結ばなくてOK。抜いて取り出すことを優先しよう」
「畏まりました………ふむ、こちらとこちらとこちら、と」
「次。右の奥の……そう、それ……よっほっほっほっと」
「くすぐったい……」
「お兄ちゃんが過去一ワケわからないことしてるぅ……」
「これがロック以外の誰がやってても絶対止めただろうけど。でも、ロックだ。……なんとかしちまうんだろうな、いつもみてぇに」
『みゃあ』
「主殿の直感が人知を超えた代物であることは百も承知……しかし、イレヴン殿の体内を開いて、命の元を受け渡すなどできるものでござろうか……? 頭がおかしいのではないか拙者の主は……??」
「ロックくん
五月蠅いわねそっちの方ー!
こちとらマジで真剣だからね。ミリ単位でもミスったら許されない作業の途中なんだからちょっとお静かにしていてくださいませ!!