勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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138 奇跡も魔法もあるんだよ。俺がそうする。

 

 

 

 適切な順番でサブ魔力炉心に繋がってる謎の管を一本一本、再接続が出来るように速やかに切り離していく。

 ここもあんまり時間をかけられねぇからな。イレヴンにも負担がかかるし……アンドロイドの体内から取り除いた魔力炉心もそのままだとすぐに機能停止しちまうから。

 そうしないように丁寧に取り出しているけど、ここからは時間との勝負でもある。

 躊躇ったら終わる。

 

「……うっし!! 取り出せた!! トゥレスおじさん!!」

「ああ……こっちもワンをカプセルから出した。……お前の勘に全部託した。やってくれ!」

「了の解すよぉ!! サザンカさん!! さっきイレヴンが開けたようにワンさんの体を開いてくれ!!」

「承知。そう言われると思い、観察しており申した。正中線上、注視すれば……節を捉えられました。トゥレス殿、(きずあと)は誓って残しませぬ。そのままワン殿の体を支えていてくだされ」

「ああ……!」

 

 取り出せた魔力炉心がまだ息をしているうちに、続いてワンさんの体を開ける。

 これはイレヴンのように内部から取り出せないから、外科的に開く必要がある。

 通常の手術のイメージのように、何度もメスを……刃を入れるならば安定して開けるだろうがその時間が惜しい。サザンカさんの手でスパッと開いてもらうのだ。

 トゥレスおじさんにとっては嫁さんの体が切り裂かれるのだ。それに忌避感も間違いなくあるだろうが……俺の事を信頼してくれて、支える手に力を込めてくれていた。

 応えたい、その期待!

 

「静剣────『破目外し』ッ!!」

 

 スンッ、と。

 刀を振るう音、というよりはまるで布か何かを擦る様な静かな音が生まれ、サザンカさんが魔刀……ノワールさんの意思が籠ってる黒刀を鞘に納めた。

 瞬きの間に振るわれた剣技。

 それは先ほどイレヴンが自ら開いたように、ワンさんの肉体の正中線上に一筋の道筋を生み……出血はなく、きぃ、ときしむ様な音を立てて蓋を開いた。

 

「ナイスですサザンカさんっ!! よっし開く!! 体を横たえて……!!」

「ワン……っ!」

「……むぅ。確かにこの位置にあったであろう魔力炉心が……ごっそりと無くなっておりますな。しかしこの管をどこからどこへと繋げば……!」

「大丈夫もう全部分かってる!! また順番に言うからルドルフさん手伝って!! これをここに、これはこっち……あっクソー! 規格合わねぇでやんの! 仕方ねぇプラグ弄るか! ルドルフさんこっちとこっち繋いどいて! これはこちょこちょして……っとよしOK!! 次はっ……ってこっち回路開いてないんかい! 穴開けよ。ぐりぐりっ、と……!!」

 

 開いたそこ、明らかにメインの魔力炉心があっただろう場所がただの空洞になっていた。

 さらにカトルを産むときに生成されたのであろう、有機物的な……何か肉片みたいなのも残ってて。それらを除去して管の挿入口を探しながら、時々管の太さが合わないのは()()()()()()()()()()()()()()()()接続する。

 一つ一つの管を繋ぐ先の一つでもミスったら終わる。

 つまり、一つもミスらなければいけるということだ。

 瞬きすら忘れ、気付けば汗が頬を幾筋も伝うほどの集中……だが、これは既に答え合わせだ。

 

 俺がこんな美人を助けるのにミスするはずがないし。

 ルドルフさんが友人を助けるのにミスするはずがないんだ。

 

「…………う、っし!! できたァ!!」

「……は、ぁぁーっ……これほど繊細な作業を求められるとは。寿命が10年縮みましたぞ……!」

 

 繋いだ。

 イレヴンから預かった命の元を、まちがいなくワンさんの体内につなぎ切った。

 だからここからは物量で押し流す。

 起動スイッチを、勢いでONに叩き込む。

 

「よし!! カトル! ティオ!! 火属性と水属性の魔力を全力で放ちあってバランスとって相殺してワンさんの体の周囲に満たせ!!」

「んだァ!? なんつった今!?」

「無茶振りにもほどがあるよぉ!? ……やるけど!! そうしないとカトルのお母さん助からないんでしょ!?」

「ああ、濃密な魔素をまず周辺に満たす必要がある……けど、アンドロイドってやつは光も含めた全属性を扱えるようにならないと駄目なんだ! 多分!! んでそのためにはまず無属性の……つまり、火と水の相反する……なんだっけ、マルカートさんが言ってたな、えっと……」

属性反発作用(レジスティクス)を起こして魔素だけ貯めようって話であってるよね!? お兄ちゃん勘で結果先行しすぎて理論覚えないからなぁ! カトル!!」

「ああ、分かった!! 全力でやるしかなさそうだな……!!」

 

 まずこの空間に、無属性の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()純粋な魔素を集める必要がある。

 無属性ってのはどんな人が放とうとしても基本的に生み出せない。それが生み出される条件は、相反する属性の魔法がぶつかり合って打ち消しあった時だけだ。

 恐らくはワンさんが、アンドロイドが保管の為に満たされている液体はその理屈で生み出されていたはず。

 そして、今ここにいるこの二人なら。

 

「闘技大会決勝を思い出すね……セントクレア様!!」

『分かってるわ。本気で行くわよ』

「あん時ロックにぶつけた威力……いやッ!! レベル200を超えた今の全力全開で行く!! ついて来いよティオ!! イルゼッ!!」

『全力で。ロックを……いえ、ロック=()()()()()()()を信じましょう』

 

 魔剣を手にした二人が、床に横たわるワンさんの左右に立ち、全身全霊の魔力放出を行う。

 こいつらが最も得意とする火と水の魔力を、二人とも加減なしの全力でぶっ放して。

 魔力炉心を受け継いだ超常の存在と、エルフ種の天才児が放つレベル200超の躊躇い無しの魔力放出は……しかし、天秤で計られたかのように等量の奔流を見せて。

 ワンさんの周囲に、無属性の濃密な魔素空間が生成された。

 

 よしよし。完璧だ。

 後はここに……アンドロイドの魔力パターンを刻んで!

 

「イレヴン! メインの魔力炉心フルブースト!!」

了解(ラジャー)!!」

 

 胸を閉じ、この瞬間に備えていたイレヴンがアンドロイドの持つ魔力を放つ。

 全属性混合の魔力。

 この比率はどの世代のアンドロイドも共通だ。全ての属性を含有するからこそ光属性を扱う事が出来る。

 無属性の魔素に、アンドロイドにとって常態となる魔力が組みあがり、ワンさんの全身を包む。

 

「よっし……じゃあ後は最後の仕上げ!! ノインさん!! 蘇生魔法を!!」

「了解です~。よく見ててくださいねトゥレスさん……蘇生魔法『レイズデッド』は本来は命無き者には扱えない奇跡の魔法。ですが私が習得できています……今の私が使えるのならば……」

「俺も使えるはず……!!」

「ええ。既にトゥレスさんはワンさんと魂の(エンゲージ)リンクを結んだと聞きました。魂の(エンゲージ)リンクを結んだアンドロイドとマスターは、絶対に死別はしないのです。どちらかが死んだとき、それはもう一人の死を意味する。つまりトゥレスさんが死んでいないのだから、ワンさんが完全な死を迎えているはずはない。……魔力炉心を移植し、活性化するための魔素も十分。ここまで条件がそろっていれば……あとは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 そうなんだ……。(素)

 いや俺よりもノインさん詳しくてビビるけど! 俺じゃなくてノインさんに任せてれば何とかなった説ありよりのありだけど!!

 でも神の知識を持つノインさんが太鼓判を押すほどの状態までは持ってこられたわけで! だから後は何とか蘇生魔法をこの場でトゥレスおじさんが覚えられれば……!!

 

「極めて特殊な術式を編みます。知識だけでは絶対に使えない魔法……でも、ロックくんが出来るというならば。やって見せなさい、『万極』のトゥレス!」

「やってみせるさ!! 頼む!!」

「────では行きます!! 魔素同調……魔力リンク充填、拡散!! 蘇生魔法──『レイズデッド』!!」

 

 ノインさんが組んだ手から、祈りより生まれる奇跡の御業、蘇生魔法がワンさんに向けて放たれる。

 だがこれだけでは効果がない。ノインさん自身が言ったように……アンドロイドをよみがえらせるためには、魔力同調を果たしたマスターからの蘇生魔法が必要なのだ。

 トゥレスおじさんが、ノインさんの紡ぐ魔法の一挙手一投足を見落とすまいと全霊で読み取って。

 

 そして、至近距離での観察を終えた、天才が。

 悲劇のヒロインを蘇らせることを夢見続けていた一人の男が。

 この機会(チャンス)を逃すはずがなかった。

 

 

「────魔素覚醒。魔力リンク同調、共有、追従、乗算。術式再構築、全魔力抽出(フルドライヴ)────『レイズデッド』ッッ!!」

 

 

 二重蘇生魔法(ダブレスレイズ)

 

 蘇生魔法をただの一度目の当たりにすることで習得したトゥレスおじさんが、さらにノインさんが使役する蘇生魔法の力も乗せた上で、己の放つ蘇生魔法をワンさんに捧げる。

 二人の魔力が……いや、カトルやティオ、イレヴンの魔力も含めて、十色に光る魔力が螺旋を描き、かつて戦争の場で見たような復活の奇跡を果たそうと輝いて。

 

 

「────────ッ!?」

 

 

 ()()が起きたのは、唐突だった。

 俺とルドルフさんとサザンカさんが、全員の蘇生魔法の魔力行使を見届けていたところで……不意に、体に違和感を覚えたものが一人。

 それは気のせいではなく、次第にそいつの胸が緑色に輝き始めた。

 イレヴンの、アンドロイドの魔力炉心が放つ光と同じ色だ。

 

「なっ……、んだ、これ……!? ……温かい……?」

 

 ()()()

 俺の幼馴染のメス顔童貞少年の心臓が、唐突に緑色の魔力光を産みながら新たな脈動を覚醒()みはじめる。

 

 それを見て、俺はへっ、と鼻を鳴らした。

 

 俺の勘が掴んでいた結果にようやくたどり着いたのだ。

 答え合わせは終わった。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()ことで、俺達が求めていたハッピーエンドにたどり着いたのだ。

 

 そう、カトルに受け継がれていた魔力炉心は、これまで動いていなかった。

 当然だ。それは元々ワンさんの心臓であって、ワンさんが生きてないと動くはずがない。

 母親から受け継いだ力を、カトルはこれまでまったく使っていなかったのだ。

 アイツの才能、天賦の才は父親から受け継いだものだった。魔力炉心が動くために必要なスイッチはOFFになったままだった。

 

 だが今。

 そのスイッチは、全員の頑張りでONに切り替わった。

 他人の魔力炉心を移植して、コードは形を整えて、魔力の奔流で無理矢理起こした雑な処置と言えばその通りだが……それでも、果たした。

 その結果、カトルの体内の魔力炉心も再起動した。

 

 ─────『Ⅰ』・再起動(Re:boot)

 

 

「ワン…………?」

 

 

 奥さんを見下ろすトゥレスおじさんが、茫然とした声色で言葉を零した。

 見れば、ワンさんの整った顔の、固く閉じられていた瞳が……ゆっくりと、ひとりでに開いて行って。

 16年ぶりに、トゥレスおじさんとワンさんの、夫婦の視線が交錯する。

 

 

「…………あ、れ? マスター?」

「ワン…………っっ!!」

 

 

 

 

「……ってぇ!? 私の赤ちゃんどうなり痛ったぁーっ!?!?!」

「んがっ!?」

 

 

 しかしそこで慌てて思いっきり体を起こしたワンさんが、トゥレスおじさんと顔面同士をしこたまぶつけてた。

 この夫婦おもしれ。ウケる。

 

 





~登場人物紹介~

■ワン
150年前の冒険者飽和時代に魔王を討伐した英雄の相棒だった過去を持つ初期型のアンドロイド。
その当時に一言もマスターと喋れなかったため、会話による性格成長が生まれずに、情緒がだいぶユニークになってしまった。
157cm 83 60 83 D
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