勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
孤児院に到着しました。
「────で、トゥレスおじさんがサザンカさんを襲って捕えてて。トゥレスおじさんの家に向かった俺達も奇襲されて、俺以外はみんな捕まっちゃって。カトルとティオは石化させられて、イレヴンとリンは弱点突かれて……」
「………………なるほど? ……もう少し詳しく……説明してもらっていいかしら……? 今私は冷静さを欠こうとしているの……」
「まってシスター怖い。目ぇかっ開かないでコワイ」
「一先ず誰も怪我したりやられたりしてないから大丈夫だよシスター!? むしろハッピーエンドに繋がる話だから!!」
「は……? 私の
「どうやら俺たちは説明の順番を間違えたらしいぜティオ」
「マジギレしてるぅ!!」
話の切り出し方を間違えました。
やべぇよ……ガチギレしたシスター超怖いよ……。
お風呂覗き事件の時にマジギレされた過去が蘇ってきて震えるよ。コワー。
はい。
みんなで空飛んで移動して、孤児院に到着して、ガキ共の相手をみんなに任せて、ミャウもカシム(9歳・女)に奪われて。
どうやらティオも俺と同じ、シスターに話を伝えたいって考えに至ってたらしく、ちょうど孤児院で鉢合わせして。
なんで二人で昨日の事をシスターに説明し始めて、しかし一から説明したのが大変よろしくなかったようだ。
話を切り出した時点で滅茶クソキレ散らかしてますわシスター。目ぇ開くの怖っ。
まぁ……な。結果を知らずに説明されたら、急に俺のまわりの嫁たちとティオとカトルがトゥレスおじさんに襲撃されたって話からスタートするからな。
そりゃキレるわシスターも。
だが俺たちが伝えたいのはそこではない!!
「違うのー!! シスター落ち着いて!? お兄ちゃんのおかげで
「───────え? ワン、……ちゃん、の、こと?」
「そ。トゥレスおじさんの奥さんで、カトルのお母さんのアンドロイドでしょ。シスターとルドルフさんとのパーティにいた最後の一人。事情は全部聞いて……で、みんなのおかげでワンさん再起動できたんだよ」
シスターの親友のワンさんが復活したという事実を伝えたかったのだ。
その名前が出てくれば、流石にシスターも怒りによる開眼から驚きによる開眼に変化した。
そらそうだろうな。シスターの中で乗り越えた悲しい過去の一つであって、今もずっと悔やんでいた内容のそれではなかっただろう。
俺に以前パーティについて話してた時に、なんとなくそれはわかってた。シスターはワンさんがアンドロイドだって話を俺に伝えなかったんだ。名前も言わなかった。
ワンさんだって聞けば、番号の名前だってイレヴンから連想するかもしれなかったし。
そうなればカトルがアンドロイドと人間のハーフだって話になって……まぁ俺はそれをその時に知っても何も気にしなかったとは思うけれど。
ただ、トゥレスおじさんがそれを知られることにいい顔はしなかっただろう。
奥さんの装備を俺のイレヴンに託してくれた点からも、ワンさんの事は乗り越えている……という前提があって、俺たちに詳しく話をしなかったのも分かってる。
だからこそ、この話は誰かを責めたりする話じゃないんだ。
トゥレスおじさんが俺たちを害さないように頑張ってくれて、そのお礼に俺は奥さんを生き返らせた。それだけの話だ。
「ってなわけでもう一度しっかり説明しますので、キレないでねシスター。どこまで話したっけな……」
「トゥレスおじさんのお家に行った所からだよ。最初は私とカトルは装備の更新の相談しようと思って行って、お兄ちゃんたちはサザンカさん探してだったんだけど、隙を突かれて…………」
「どうしてワンちゃんが助かる結果になるのにトゥレスが貴方たちを襲わなきゃならなかったんです……???」
「ステイ。シスターステイ!」
「操られてたんだよぉ魔族にぃ!!」
そこから二人で改めて詳しく説明していく中で、定期的にシスターがトゥレスおじさんにキレながらも……しっかりと話を聞いてくれて、最後まで経緯を伝え終えた。
「────ってなわけで、最後は目を覚ましたワンさんが赤ちゃんどこぉ!? って慌てて頭を上げたらトゥレスおじさんの顔面にヘッドバッド喰らわせてさ。ハッピーエンドだった、ってわけ」
「ルドルフさんがその後残ってくれて、私とお兄ちゃんたちはアイムを王城に引き渡して、邪魔しちゃいけないなって思ってそのまま帰ったけど……」
「──────」
伝え終えたところで……ベンチに座るシスターの、ここ最近よく見るようになった涙が零れて。
ぽたりぽたりと彼女の太ももと胸元に雫を垂らして。
ンモー。育ての親を泣かせ過ぎだろティオは。心配ばかりかけるんだからンモー!!
「……ロック。貴方は、どれだけ、っ、恩返しをしてくれるの……? 私は貴方に、何を返したらいいの……っ?」
「ここまで育ててもらった恩で差し引きまだ俺が返さなきゃいけない立場やろがい!! 大したこともしてないんだからそんな泣かないでよシスター! ンモー! そんな恐縮してるとデカパイ感謝でおっぱいに頭突っ込むわよー!!」
「むしろ抱きしめさせて……!!」
「お兄ちゃんのやってること頭おかしすぎて大したことしてないって表現はできないと思うなぁ!? 照れ隠しなんだろうけどさぁ! もー! ほんとにお兄ちゃんはなんで素直に胸張れないの……? 特にシスター相手に……」
「いやなんか……ちゃうねん。俺褒められたりするの苦手でェ……くすぐったくてェ……湿っぽい雰囲気もなんかアレでェ……!! ……ほらシスター、ハンカチ。ガキ共も見てるからさ、涙拭ってもろて……」
「うん、ごめんなさいね……っ、ぐす……」
涙が止まらないシスターにハンカチを渡しつつ、俺はベンチから立ち上がった。
この後どうせ遠慮し始めるであろうシスターに、すぐにでもトゥレスおじさんの家に向かってもらうために後顧の憂いも断っておこう。
大丈夫。この孤児院にいる子たちはシスターが立派に育て上げてるから心配いらない。
遠巻きに心配そうにシスターを眺めてたガキ共に向かって歩きつつ、声を上げる。
「おーい、ギガスとノッチ! アイリも! ちょっといいか?」
「ん、なんだよロックにーちゃん。またシスター泣かせた?」
「ロック兄ちゃん、女の人よく泣かせてる……」
「良くないと思うよロックお兄ちゃんのそういう所」
「ちゃうねん。年長組のお前らにお願いがあります」
この三人はギガスが今年で12歳、ノッチとアイリが11歳。年長組だ。
元気なギガス、気弱だが芯は強いノッチ、お淑やかなアイリの3人。家事も勉強も十分にできて、きちんと孤児院の年下のガキたちの面倒を見れるやつらだ。
なのでお願いする。
「シスターに、行方不明になってた友達が生きてたよー見つけたよーって伝えたんだよ。たまたま俺とティオが知り合ってさ。そんでその喜びで泣いちゃってたわけ」
「そーなんだ? そりゃよかったな!!」
「ウム。で……シスターとしちゃ当然、すぐにでも友達に会いに行きたいだろ? でもシスターの事だから『子供たちがいるからすぐには行けないわ、どこかで時間を作って……』とか考え始めるだろ?」
「うん、そうだね……ぼくたちに遠慮するよね、シスターなら」
「だろ? ってなわけでお前らに株を上げるチャンスをくれてやろう。シスターの所に行って、『今日は俺たちで小さい子たちの面倒を見るから、お友達の所行ってきていいよ!』って伝えてやれ。胸を張ってな」
「わかった! 任せてロックお兄ちゃん! 私達もうしっかり留守番できるから!」
「おう、任せたぜ。最近物騒だから孤児院から外に出ないようにするんやぞ。昼飯は作り置きできるものを俺とサザンカさんで作って置いてってやるよ。それが報酬な」
「おー! リンねーちゃんに聞いたぜ、サザンカねーちゃんのメシすっげぇ美味いんだろ!」
「ギブアンドテイクってやつ、だね。まぁお昼ご飯が無くても任されたけどね……」
「これまでもシスターがいない時はたまにあったし、それくらい全然大丈夫だよ! ごはん楽しみ!」
「うっし。では行くのだ我が刺客たちよ!」
「おー!!」
シスターに遠慮なくワンさんの元に向かってもらうために、俺はガキ共を刺客に仕立て上げて送り込んだ。
俺の話を聞き終えて、わーっとシスターに向かって走っていく3人。これが俺が仕向けた刺客だとは夢にも思うまい。ふはは。
これでシスターも遠慮なくワンさんの元に行けて、ガキ共には俺の嫁の特製料理を味わわせて舌を肥えさせる。完璧なプランだと思いますね。
まぁ俺にとってはシスターの作るシチューが一番美味しいのは変わんないけど。
「ふ。策士ですな主殿」
「褒めてくれるなサザンカさん」
「褒めており申すよ、心の底から。本当に主殿らしい気の回し方で……さて、では子供らの昼食を急ぎ作り置いてしまいましょうか。腕に
「お願いね。温め直して食べられるもの多めにしておこっか。それくらいならガキ共も出来るし……あ、味噌汁も作ろう。あれはガキ共にも味わってほしいわ」
「承知」
イレヴンとリンとミャウにはもう少しガキ共の面倒見てもらって、ティオと刺客3人はシスターの説得を続けてもらって、俺たちはちゃっちゃとガキ共の昼飯を作り始めることにした。
飯を作っちまえばシスターが後で何と言おうと断り切れない雰囲気を作れるからな。
サザンカさんが本気出して料理すれば10分もかからないぜ。包丁さばき神速だからこの人。
……あ、一応孤児院周りの警備も今日一日は増やしておいてもらいたいな。万が一はないだろうけど。
ノインさんにお願いして王城に駐在してる騎士団に働きかけてもらうか。飛行魔法と転移陣ですぐに伝えに行けるだろうし。
「ノインさん」
「はい、どうしました~?」
「ちょっとお願いが。かくかくのしかじかで」
「ふむふむ。分かりました~すぐ行ってきますね~」
ってなわけで事情を説明したところ快諾いただけて、すぱぱーっと飛んで行って事情を伝えに行ってくれた。
腰の軽い嫁さんたちで助かるわ。
※ ※ ※
そんなこんなでガキ共の昼食も15分で作り終わって、温めれば食えるようにしておいて、外に戻ればノインさんも戻ってきていて。
で、きちんと俺たちの刺客である3人がシスターを説得し終えたようで、子どもたちに留守番をお願いしているシーンになっていた。
「あ、ロック……」
「シスター。遠慮なく旧交を深めてきなよ、今日くらいはさ。メシも作っといたから」
「ええ、そうね……みんなに甘えさせてもらいます。……でもその前に。ちょっとこっちにいらっしゃい」
「ん」
しかし何故かそこでシスターに呼ばれる俺。
なんや怒られるんかな……確かにシスターが言いそうな反論とか全部ブッチしていたいけな子ども3人を刺客に仕立てて勝手に台所使って食材消費したからな……。
なんつってな。
わかってる。
「…………っ!」
「むぎゅ」
「……ありがとう、私の愛しい
「どういたしまして、
ぎゅっと俺を抱きしめて、身長差によってそのデカパイに頭を埋める形になり。
だがお互いの胸中に沸き上がるのは家族愛という名の温かさだけで。
シスターの頬を伝う涙をそっと指で拭ってあげて、泣き笑いの笑顔ににっかりとこちらも笑顔を返してやったのだった。
そうして、シスターは飛行魔法でトゥレスおじさんの家に向かって飛んでいった。
俺を抱きしめ終えた後に『それはそれとしてやっぱりトゥレスは許せないので殴ってきますね』って笑顔で呟いてたシスターが怖かったです。俺のママ怖い。
ガキ共も俺らの監督無しでも平和に過ごせるよー、シスターに心配かけないようにしっかり留守番するよー、って意気込んでたので、変に世話焼きすぎても何なので俺らもそこで孤児院を後にした。
その後、ティオは俺らが午後からの合流になることを闘技場にいるであろうメンバーに伝えてくれるという事で先に移動していった。
多分カトルも遅れてくるだろうからその辺もヴァリスタさんに伝えてもらうように頼んで、ようやく俺らはショッピングデートに赴くことになったのだ。
楽しみだぜェドスケベ衣装に身を纏う俺の嫁たちを見るのがよォ!!(豹変)