勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
トゥレスおじさんの所で鑑定を終えて、報酬も分配した後。
俺たちは一先ずパーティを解散することとなった。
冒険も終わったしね。今からじゃ改めてもっかい他の新ダンジョンいこーぜ!! って雰囲気じゃないし。
他の二人はレベル上げも兼ねて行ってもよさそうな雰囲気だったけど俺も二連続の冒険を終えてダルいし。
適度に休むのもいい冒険者の素質だと思いますね。
「じゃあとりあえずお疲れさんで……二人はこの後どーするん?」
「俺は……鍛え直そうと思ってる。イルゼがあってもあの魔族のコピーに負けそうになった。みんながいなけりゃやられてたからな……一人でもアレくらいには勝てるようにならねぇと。指導担当してくれたヴァリスタ師匠の所にもう一回顔出して、修行つけてもらうつもりだ」
「私はさっきも話したけど、まずは魔装具を手に入れたい。一旦『ケンタウリス』に戻ってメルセデス団長や……団のみんなに相談して、酒場で情報調べてみて、って感じかな。手に入れたら自慢しに行くからね!」
「しっかりとした目標を作るのはよいことです。お二人とも頑張ってくださいね」
『みゃあ!』
ギルド前で別れ際、カトルとティオに今後について聞いてみたところそれぞれ返事が来た。
カトルは今の実力でも不足していると自覚して、さらに自分を鍛え直すそうだ。
話の中に出た指導担当の冒険者……これは冒険の経験がない新人が冒険者を目指す際に、ギルドが斡旋してくれて実力や経験のある冒険者をつけてくれて、冒険者を目指す若者が本当に冒険者になれる素質があるかを見極めてくれるという制度である。
この制度がない時代は駆けだしの冒険で死ぬ人が多かったんだって。だからある程度冒険者の下で冒険のイロハについて学んで実力をつけてから、銅級として冒険者スタートするのである。勿論見込みがなかったら冒険者になれないやつ。
カトルの指導担当者はこの王都でも超実力派の金級冒険者であるヴァリスタさんだったっけな。20代のイケメンで人格者でめっちゃ強いの。引きのいい奴め!
カトルも才能の塊だったのでかなり目にかけてもらえてるみたいだし、相談されれば嬉々として鍛え直すんやろなあの人。お尻を狙われないようにだけ祈っておるよ。
ちなみにティオの指導担当者は今のクランの団長、セントールのメルセデスさんだ。女性オンリーのクランで冒険を学んだティオだがこちらも才能を買われてそのままクランに入団、エースとして頑張って……という噂を聞いている。ホントコイツら持ってんな!
なお俺の指導担当者のじーさんは二人と比べるとまぁ外れでしたね。今は鬼籍だし恩もあるからあんま悪くは言わないけどさ。日々の介護が大変でしたわよンモー。
「ロックはどーすんだ? また冒険に行くの?」
「いや、とりあえずかなりデカく儲けられたし少し息抜き。今後イレヴンのバイク形態を一人でも使えるように魔力の使い方を覚えなきゃってのと……あと魔族の件や新ダンジョンの情報をギルドで聞いて、他はいつも通りって感じ。魔力使えるようになったらエロい女冒険者にパーティ誘われるのをギルドで待ち続ける」
「それ二度と冒険に行かないやつじゃないですかマスター。まぁ私も色々調べたいと思っておりましたしちょうどよいですが……」
「金に困ってからじゃねぇと自主的に冒険に出ねぇからなこいつ……ま、ロックらしいけどよ。しばらくは俺はヴァリスタさんの所にいるから何かあったら呼んでくれ」
「私はケンタウリスのクランハウスに来てくれれば連絡とれるから! 魔法の使い方分かんなかったら相談してもいいよ! こっちからもまたロックの家にも遊び行くねー!」
「おーサンキュ。そんじゃいったん解散!」
俺も今後の予定という名の平和な日常を謳歌する旨を伝えて、そうして俺達パーティは一度解散となった。
次に会う時はお前らが金級になってからだな……!!
ってのは冗談としてもお前らマジで早く金級に上がってほしいわ。そしたら報酬高い依頼を金級の二人が受けてそこに俺が入ることで分け前も増えるし。
そうしてギルドに入っていく二人を見送って……俺とイレヴンとミャウが残された。
ミャウはそろそろお昼寝タイムでフードの中でもぞもぞしている。平和な奴め。
「さて……マスター、今日はこれからどうなさるのですか」
「とりあえず考えてるのは図書館行って魔法の入門書読んでみようかなって。イレヴンも色々調べものしたいって話だし」
「おや、もしや私にお気遣いを頂いていますか? 場所さえ教えてくれれば一人でも行ってきますよ?」
「いや俺も他にも読みたい本があるから一緒に行くよ。イレヴンを一人にしてその美貌で血迷ってゲス乱暴するクソ野郎がいたら大変だしなァ! この女は俺のもんやぞクソッ!! 男は誰一人としてイレヴンに触れさせねぇわ!!」
「急に血迷い始めないでください。大切に想われてるのは分かるので決して不快ではないのですが表現なんとかなりませんか」
俺はイレヴンと共に王都の中心部にある文化施設が集まる地区の、王立図書館に向かって歩き始める。
イレヴンの調べものしたいって言う希望を満たすのと同時に、俺は俺で魔法の教本以外にも読みたい本があるのだ。
何を隠そう、俺は意外と文学少年なのだ。本を読むの大好き。
孤児院にいるころからその図書館には足繁く通っている。司書さんとも顔見知りだ。30代のお姉さんなんだけどおっとりした美人さんで胸も大きいから目の保養。既婚者だけど。
そして愛読している本は全て純文学という名のエロ本である。
「そろそろ新刊が出るころなんだよなー……入荷されてるかな『エロスキルで異世界学園無双!? チートスキルでクラスの美少女全員俺の嫁!』の新刊」
「タイトルだけで察しましたよマスターがこんな欲望マンになってしまった原因を。もしや子供のころからそういう本ばかり読んでいたのですかマスター」
「そうだよ」
「恥じろよ」
孤児院の授業の一環で図書館で本を読んでみましょうという試みがあり、本なんてつまらね! と思いながら行ってみてこのジャンルの本に出会った瞬間に俺は天啓を得た。
それ以来ドはまりしてその作者さんの書いてる本全部図書館で読み込んだ結果に今の俺がある。
感謝してもしきれねぇぜ……『異世界転生チート』さん!!
「濡れ場の表現がいいんだよね……淫語多めでさ。ハートもいっぱいあってこう……ドスケベ全開IQゼロって感じでェ……!!」
「女と街中を歩いている最中に出す話題でないことは確かですね口閉じろこのクソマスター」
その本がどんなに素晴らしいかをイレヴンに説いてたらめちゃくちゃ蔑みの視線で見られた。なんで。
※ ※ ※
はい。図書館に到着しました。
「あら、いらっしゃいロックくん……今日は別の女の人なのね」
「おっじゃまー。どうもー。今日も綺麗ですねビブリオティックさん!」
「別の女という言葉でマスターの周囲の女性関係がめちゃくちゃ気になる所なのですが」
入り口の受付でさっき話した司書さん、ビブリオティックさんに挨拶する。
流石にここでドスケベボディがよ! と興奮するほど俺も人でなしではない。既婚者だし。既婚者にコナかけるのは人間としてNGよ。目の保養だけにするのです。
入館証代わりにギルドカードを見せつつ、イレヴンは人間ではなく俺の所有するインテリジェンスドールであることも説明し、銀級冒険者である俺の責任で入館させる許可を取る。
「人間じゃないの? あらまぁ、見た目には分からないわね。ロックくんは本当に不思議な縁をよく結ぶわねぇ」
「今後も何度か通わせていただくことになるかと思います。初めまして、ビブリオティック」
「図書館内は飲食禁止、周りに迷惑になる様な私語禁止な。どこにどんな本があるかはビブリオティックさんに聞いてな。ほんじゃしばらく自由行動で」
「かしこまりました。ではビブリオティック、早速ですがこの国の歴史書のようなものはありますか? 数百年前から今に至るまでをなぞれる様な物がよいのですが……」
「ああ、そういう本なら……」
俺はイレヴンの案内をビブリオティックさんに任せて、お目当ての書架に向かう。
王都発刊の文学小説が揃っている棚をチェックし、そこにお望みの新刊がなければ本来の目的である魔法の入門書でも探すかな……という見込みであった。
今の俺は迅速に魔法、魔力操作を覚える必要がある。
折角イレヴンの進化に乗り物を選んだのだ。あのバイク形態を俺一人でも使いこなせるようにならねば勿体ないの極み。
間違いなくあの機動力は今後の冒険に活きるだろう。移動のための馬車借りなくてもよくなるし、屋外の広いダンジョンならバイク形態で突っ切る事も出来るかもしれない。ライダーブレイク!
「さて新刊は…………むっ!!」
だが俺は見つけてしまったのだ。
『エロスキルで異世界学園無双!? チートスキルでクラスの美少女全員俺の嫁!』の新刊と、さらにもう一つ『親友♀が勇者スキルに目覚めたので俺はおこぼれでハーレム作ります ~どうしてエロスキルしか覚えないんですか?どうして……~』の新刊を。
なんてこっただよ。これを読むこと以上に優先される事情が何かあったっけ。いやない。
今夜のおかずをグレードアップするためにも、シュババっと無音で速やかに近づきその新刊を本棚から抜き取り落ち着いて読書に入った。
イレヴンが歴史書を紐解くのにどれくらい時間がかかるかはわからないが……この二冊を読み終えるのには十分な時間だ。本読むの得意だから俺。超早いから。
伊達に全196冊の『光と砂と風の精霊が描く夢の旅路』と全177冊の『ブドウから始まるお菓子のように甘く蕩ける物語』を10周してないから。どっちもハーレム風味がいい話だったんだよね。エロ描写はなかったけど。
全部の作品が同じ『異世界転生チート』さんが書いてるんだけど筆が速いよなぁ……ありがてぇこったですよ。どんな人なんやろな書いてる人。
「むふふ…………むほふふふ…………!!」
周りに迷惑かけない程度に鼻息を荒くしながら、俺は夢中で新刊を読みふける。
物語を読む時ってのは特別な時間だ。それだけに集中して、物語の世界を冒険しているようなもんだ。
だからこそ、俺の勘が働かなかったのもまぁ仕方ないと言えるだろう。
俺を見つけて近づいてくる人影に気付かぬままに、ページをめくる手を止められなかった。
※ ※ ※
【side イレヴン】
(……おかしい)
先程ビブリオティックに案内を受けて、この国や他国の歴史がつづられた歴史書が並べられている書架の前で、私は歴史書を紐解いた。
150年前に討伐されたという魔王の話。
『命在る者』────そう区分される、特殊な力を持つ冒険者たちにより、魔王は一度討伐されて。
しかしその数年後に魔王が復活した。
それに対抗するために、私……イレヴンが起動プロセスに設定され、冒険者たちに見つけられる時を待ち続けていた。
私の真の能力を解放することで、魔王に対する新たな刃になり、冒険者と共に魔王を討つ───そう、プログラムにはあったはずなのだ。
けれど。
(復活した魔王が再び討伐された……そこの記述が余りにも少ない。自壊か、それとも名もなき冒険者が討ったのか……? そんなはずはない……魔王はたった一人で討てるような存在ではない)
どの歴史書を読み込んでも、復活した後の魔王がもう一度討伐されたところの描写がはっきりとしない。
英雄譚の様な物語として語り継がれているものは置いておくにしても……一度目の魔王討伐の大戦の
明らかにおかしい。しかも、その後に冒険者の数は激減したと記載があるが、その理由もおかしい。
(……魔王が討伐され、魔族も姿を消し、魔獣もおとなしくなったことで冒険者の需要が減り、その数を約半分まで減らした……などと。あり得ない。半減する前にダンジョン等が攻略、制覇して消失しているような記録がなければおかしい)
魔王を倒し、魔王軍も滅び、魔獣も魔王から受ける魔力が失われたことで落ち着いた……そこまでは分かる。
けれど、その後にダンジョンの攻略や害獣となる魔獣の一掃などがあってもいいはず。当時は冒険者が飽和するほどに多かったのだから。
しかしその記述がどこにもない。
歴史書の中で、
恐らく、これは『命在る者』の知識を持っている私だから推察できることだが……この瞬間に、『命在る者』たちが消えてしまったのだ。それもじわじわとではなく、一瞬に。
その証拠のように、その後の歴史や魔獣討伐の戦果において、英雄と呼ばれるような活躍をしている人が極めて少ない。
冒険者飽和時代には、『命在る者』たちがそれこそ恐ろしい数の魔獣を、魔族を討伐していたというのに……魔王軍がいなくなっているからといって、ここまで世界が落ち着いてしまうことがあるのだろうか?
「……わかりません。150年前に何が……」
その後も歴史書をしばらく読み込んでみるが、その原因を推理できるような内容はなかった。
しかし、こうなってしまうと問題だ。
今のマスターであるロックは『命無き者』。彼はもう忘れているかもしれないが、マスター登録はあくまで仮の物。
私の真価を発揮するためには、『命在る者』とのマスター契約を交わし、レベルを上げ、限界突破してもらう必要がある。
それができないとなると……もし今の世の中に魔王が、バアルが言うように魔王軍が復活する兆しがあるのならば、それは極めて厳しい戦いが待っていると考えざるをえない。
私の様なアンドロイドも既に世界には現存していないようだ。トゥレスの言う通り、そういった存在が冒険者飽和時代にはいた、という記述のみで、今の世界には見られなくなったと。
つまり魔王を倒すためには、他の『命無き者』である現代の冒険者たちが、どれだけ魔装具を集めてレベルを上げて魔族と戦えるのか、という話になる。
厳しいのかもしれない。
私の記憶しているデータ上、『命無き者』が魔王軍幹部に勝てる実力を持てるはずがない。私だけが鍛えれば唯一……しかし、ううん。
「……ここで考えていても答えは出ませんね」
私がこれからどうすればいいのか。魔王を殺すために何を為すべきなのか。
今の時代の冒険者の実力は。命在る者はいるのか。魔王軍は本当に復活しているのか。魔王の目的は。
……分からない情報が多すぎる。アンドロイドはマスターに仕える存在であるゆえに、自分で答えを出すことが苦手だ。
今は取り入れた情報を整理するにとどめるべきか。いつかはマスター……ロックにも説明をする必要があるのかもしれない。
私が真の力を取り戻すためには今の仮マスター契約を破棄して、『命在る者』と契約を交わし直さなければならない。
『命無き者』と本契約が出来ないわけではないけれど……魔族との戦いにあたり、マスターの負担が大きすぎる。
レベルも伸びも『命在る者』と比べれば雲泥の差。成長上限が低い……故に、戦いの場ではたとえ魔装具を手に入れても極めて厳しい戦いになるだろう。
ロックに無理をしてほしくはない。
だからいずれは契約を破棄しなければならない。
しかしそんなことをロックに言えば、おんぎゃー、嫌じゃー、俺の女じゃー、と声を上げて号泣するかもしれない。
そんなマスターの顔が余りにも自然と脳裏に浮かび、思わず苦笑を浮かべてしまう。
面白い少年だとは私も感じている。
余りにも下品で性欲塗れの叶わぬ夢を見る哀れなクソガキで……でも、子供や動物にやさしい面もあって、友情に厚い面もあって。
私自身、今こうして共にいることを楽しいと感じている。
この感情まで否定したくはない。
でも、そんなロックを……カトルやティオを、リンやミャウを守るためにも、私はレベルを上げ、魔族を、魔王を殺さなければならない。
魔王が死なないということは、人間が滅ぼされることと同義なのだから。
「……っと、考察に時間をかけ過ぎました」
壁にかけられた時計を見れば、2時間近く歴史書を読み解いてしまったようだ。
いけない、夢中になりすぎた。マスターが暇を持て余しているかもしれない。
卑猥な本を読みふけったマスターが何をしでかすかわからないし、一度合流してこれからどうするか予定をすり合わせてもいいだろう。
そう考え、書架に本を戻して私はマスターを探して図書館内を歩き出す。
彼の外見は中々に特徴的だ。
くりっとした丸い頭にふわふわした赤い髪。
青く透き通る瞳に、よくよく動く表情豊かな顔。
ミャウがよくフードに入っている黒と赤のパーカーに、ラフにだぼつかせたチノパン。
その外見だけは……そう、口を開かずに黙っていれば、少なくとも見た目で女性に嫌がられるものではないと思う。
真剣なときの表情はまだ横顔を一度しか見ていないが、あれは味わい深かった。
ただまぁとにかく普段からアホみたいな顔をしているのと、女性を口説く時や宝を前にするとゲス笑いが出るのが余りにも欠点なのだが。
それ以外の時のマスターのあの赤髪と愛嬌のある笑顔、嫌いではない。
「……あ、マス───」
いくつかの大部屋を見渡して、そしてようやくマスターを見つけた。
机に座り、夢中で本を読んでいる姿。そこに私は声をかけようとして。
「───は?」
しかし。
しかしだ。
その隣の席に座る美しい女性がじっと読書中のマスターに熱い眼差しを向けているのを見つけて、私の思考は一瞬フリーズした。
マスター?
おいマスター?
ハーレム作りたいとか世迷い事をいつも吐いておりますが既に貴方のまわりに女性多くないです??
~登場人物紹介~
■ビブリオティック
王立図書館の司書。既婚者。子供はまだ。体つきはドスケベ。
モノクルかけてて知的な雰囲気。割とロックの事は文学少年として気に入っている。