勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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155 あなたが絶対に知るべき唯一のものとは、図書館の場所である

 

 

 リンが昼飯を満足するまで食べて、その後も問題なく西側のデカい都市を回って転移陣起動と闇の魔素回収をバッチリ終えて、今はおおよそ14時近く。

 最後にたどり着いた最西端の島国イーランドで転移陣を起動して、今日の世界漫遊の旅は終わりとなった。

 ここからさらに西の海を飛ぶとぐるりと世界一周して王都から見た東端の国ヒノクニに繋がるわけだが、ヒノクニまでの距離もそれなりにある上に、だったら陸地で結ぶ最東端のアズマラクーンから飛んだ方が速いし、アズマラクーンは一昨日の時点で転移陣起動してるから急ぎの話ではない。

 サザンカさんにちょろっとヒノクニの転移陣開くか相談したら『あの国はいついかなる時も他国の来訪者を見つけては腕試しするような国なので魔族との諍いが落ち着くまでは放置が良いと思いまする。下手に開いたら王都に攻めてきまする』って言ってたので……まぁ転移陣を開けるかどうかは王族の皆さまに判断を任せましょ。

 

「ってなわけで帰ってきました」

「ただいまー!」

「おかえりなさいマスター」

「予定通りの時間と言ったくらいですね~。魔導通信機でどこまで転移陣開いたかはギルドに逐一報告していましたので、後は私の家族にお任せしましょ~」

「これほどの短時間で世界の端まで飛べてしまうのだからリン殿の飛翔力はまことに凄まじい物でござるな」

 

 イーランドから王都オーディンの闘技場まで転移して帰って来た。

 今更だけど直線距離3000kmくらいあるはずなんだけど一瞬でワープできるのってすげぇよな。

 今日でおおよそ全世界の転移陣を再起動できたわけで、いつでもどこでも一瞬で国と国を移動できるようになったというわけだ。

 これがどれほど人や物の行き来が楽になる事か、子供が考えてもわかる事で。

 遠方の特産を王都で売るにせよ長時間の輸送とか考えなくてよくなるし、海の幸とかも一瞬で輸送できるから新鮮なものが食べられるだろう。これまでだってアイテムボックスに収納できるという面はあっても、距離っていう物理的な限界があったわけで。すげー話だ。

 

 ……ん? あれ!?

 これ馬車貸の仕事とかワイバーン便とかそういう仕事してる人ヤバいんじゃないの!?

 

「ふと思ったんだけど」

「はい?」

「ロックくんどうしました~?」

 

 そんなわけで俺が今更にして思いついた懸念点をみんなに聞いてみる。

 俺らは確かに世界中の人類の力を終結させるために頑張ってるわけで、魔族を倒すためには必要なことであって王都の命令で動いてるわけだから責任がどうとかそういう話ではないのだけれど。

 でもなんか……俺らの頑張りが誰かの損になってるのはなんか……もにょる!!

 って思いを零したところ、わりかしさらっと答えが返って来た。

 

「都市同士を転移陣で繋いでも集団で遠征する機会は普通にありますよね? 例えば都市の近くにあるダンジョンに向かう時など。ダンジョンには内部と入り口を結ぶ転移陣は設置できますが、街の転移陣には繋がりませんし」

「ですね~。そういう所に行くにはこれまでと変わらず運搬業の方々に依頼しなきゃですし、それ専門になって近距離を行き来することが増える分、回転率も上がると思います~。金額も適宜調整すればいいんですよ~。街同士を移動するのに馬車を使わなくてよくなった分、ダンジョンとか近隣の所への移動代金が上がるのは経済学的に当然の動きですし~」

「拙者もヒノクニから王都まで旅した経験があるから言えますが、本来は国から国、都市から都市に移動するだけでも大変な手間でございまする。主殿にはイレヴン殿やリン殿がいるからいとも簡単に世界を飛び回っておりますが、本来は冒険者が遠征すること自体が大仕事に御座りますれば」

「んー? ……つまりわたしがせかいさいそく!!」

「なるほどなー」

 

 そうか……言われてみればそうやな。

 別に街同士への移動が簡単になってもダンジョンに行くには今まで通り馬車とかワイバーン便とかで移動する必要がある。

 イレヴンを見つけてすぐにダンジョンが出てきてカトルとティオと一緒に向かった時、俺がまだバイクによる移動手段が無くて馬車を求めて駄目だったのが思い出される。あん時は気合で走ったけど今更ながら俺めちゃくちゃ無茶なことしてたなぁ。

 ダンジョンに行くのだってそうだし、近くの採掘場とか薬草採取ゾーンとかに行くにしたって脚はあった方がいい。馬車貸の仕事は消えないって事か。

 そしてサザンカさんに指摘されて改めて思い出す。俺にはイレヴンとリンと言うトンデモ移動手段があるという事に。

 いや手段って表現はリンには適さないかもだけど。イレヴンバイクだけでもメルセデスさんの速度に比肩して走れてたし、リンがドラゴンパワーを継承してからは世界最速の空の旅ができているわけで。

 

 なんか……俺って随分と贅沢なやつだな。今更にして思いましたわ。

 いつも嫁さんたちに助けられているのだというのを忘れないように謙虚に生きよう。

 

「じゃあモヤっとisスッキリしたし……図書館行きますかァ!! 小説読んで心の栄養を満たして来ねぇとなァ!!」

「うふふ~。楽しみですね~」

 

 謙虚に書を嗜まなきゃあなァ!!

 今日は読書の日です。もう読みたくて読みたくてたまらないのよ新刊を。

 読めるとわかってる次回作が出版されてて読まないって択を選べる奴いないと思う。読書欲はすべてに優先されるのだ。

 さあレッツ読書!!

 

「またお兄ちゃんが変な本読みに行こうとしてるぅ……」

「昔っからあの……異世界なんちゃらって作者の本大好きだよなーロックは。正直俺には何が面白いのかよくわからねぇわアレ」

「ン゛ン゛ーー!!」

「ノインがきゅうにちをはいた」

「謝れ!! 俺の他にもファンがいるんやぞ異世界転生チートさんの本には!! この国の姫様であるノインさんもファンなんだぞ!! 俺とノインさんに謝れお前ら!!」

「……ごめん。実はアタシたちもアンタがそこまで言うなら読んでみようかってこないだみんなで図書館行って読んだんだけど……正直よくわかんなかったのよね」

「…………魔法がない世界を描くというのは、随分挑戦的な試みだと思ったが……そのせいでいまいち世界観にのめり込めなかった、な」

「成程ロック少年の情緒はこの書籍で育ったのだな、というのは実に味わえたがな。我々ケンタウリスは女性しかいないから感性が少々ズレていたかもしれない」

「ヴッ……!!」

「ノイン殿の心の臓の拍動が止まっておらぬか?」

「あ、でも『秘密×秘密のプリンセス×プリンセス』だけは面白かったわよ!」

「確かに! アレだけはすごい楽しく読めた!!」

「ああ…………アレは心情描写が良く出来ていた。どうにもロックと、そちらで倒れているノルン王女の馴れ初めに近いようなストーリーだったが……アレは読ませた」

「確かにアレだけは毛色が違ったな。経験談のように姫の視点で語られる物語の中でナナツ少年の奇想天外な活躍が随分と盛っていたが……すっと話が入ってきたな。ロック少年という存在を知っているからこそだろう」

「───────」

「ノルンが横になって微動だにしなくなってしまったぞ」

 

 したらみんな集まってきて異世界転生チートさんの作品読んだことあるメンバーから急にディスられたり『秘密×秘密のプリンセス×プリンセス』を褒めたりしてきて、その度に何故かノインさんが命の輝きを失っていった。

 しばらく頭をなでなでしてたら復活したけどなんだかすごい残留ダメージを抱えていた。

 大丈夫ですよノインさん。俺だけはいつでも異世界転生チートさんの作品を愛し続けますから安心してください。

 あの人の作品の世界観は唯一無二だと思ってますから。ファンですから。

 

「マスターの相棒たるアンドロイドとしては……そろそろ嗜んでおく時期でしょうか」

「拙者も絵巻のような本は殆ど読まずにこの歳まで過ごしてしまったからなぁ……今日は主殿の趣味に追従してみるでござるか」

「おいしいごはんがいっぱいでてくるようなおはなしある?」

「だったら『虜』オススメだぜリン。ご飯を食べまくるお話」

「おー! それならよみたい!」

「ウム! とにかくもう読みに行きます! そんじゃまた明日なみんな!!」

 

 少なくとも嫁さんたちは興味津々のようなので俺のお勧め作品を紹介してやらねばなるまい。

 読書欲を高めながらもみんなに挨拶して闘技場を後にした。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 つきましたわよ図書館!!

 

「おっじゃまー」

『みゃ!』

「あら、いらっしゃいロックくん。ミャウちゃんも皆さまも。……ノルン様は本日は身分を隠さずのご来訪ですね?」

「そうですね~。ノイン=イーリーアウスとしてお邪魔します~」

「えっ。ビブリオティックさんノインさんのこと知ってたの?」

「当然でしょ、この国の王女様なのよ? よく変装してお忍びでいらして、ルドルフさんが常に警護もされていたわ。勿論、姫様がロックくんとよくお話してるのも知ってたわよ?」

「そうだったんか……」

 

 いつもの如く受付で司書さんであるビブリオティックさんにみんなでご挨拶したところ、俺の後ろにいるノインさんを見てビブリオティックさんが述べた言葉にちょっと驚く。

 でも考えればそうか……王族がお忍びで本を読みに来てたらそりゃ図書館側は把握してるか。俺と一緒に異世界転生チートさんの作品を読んでたのもバレてたって事か。

 

「最近すっごい噂になってるわよ、ロックくんたちの事。闘技大会優勝の名に恥じぬ英雄、王都を救った勇者、御姫様の心を奪った逆玉の輿、世界最強ハーレムの主……なんてね」

「おわお……そういう風評を一般市民の方から聞くの何気に初めて。え、そんな噂になってんですか俺たち?」

「そりゃそうよ。アナウンスであれだけ活躍が語られて、グランガッチに避難した人にも第七王子のナッツ様が戦争の様子を語ったんでしょう? 当時戦場にいた冒険者が色々言って回ったり、吟遊詩人もトレンドだからって広場とかでいつも複数人で吟じられてるらしいわよ? ある事ない事、色々ね。……有名人は大変ね?」

「マジで大変ですわそりゃ……俺はともかく嫁さんたちのエロ素晴らしさが世界にバレてしまうなんてェ……!!」

「いやマスターだろ一番語られてるのは」

『みゃあ』

「ふふっ。私はロックくんの事よく知ってるから、吟遊詩人がものすごく装飾されすぎた英雄譚を謳ってるの聞いて笑いをこらえるのが大変だったけどね? ロックくんはどこにでもいる本好きでちょっとエッチなただの男の子なのに……こんなことになるなんてねぇ」

「ビブリオティックさんが俺の事分かってくれてるだけでどれだけ救いがある事か……!!」

「うふふ。力にはなれないけれど、応援してるわね、色々と。今日は落ち着いてゆったり読書していってね。図書館内は周りに迷惑になる私語厳禁だから言い寄ってくる人もいないでしょうから」

「あざます!!」

 

 続いて話は俺の噂がめちゃくちゃ王都で広まっているという情報が零れてきて。

 最近は自宅と闘技場を往復するのがメインになってたしギルドには行かなかったし……街中を買い物に出かけたりするときもそっと気配消してたり空飛んでたりしたので落ち着いて噂話などを聞いてはいなかったが、一般市民代表のビブリオティックさんの耳にもそんなに入るほど俺たちの噂は国中に広まっているということで。

 なんでや……俺らパーティがやったことと言えば魔王軍の将軍格3人倒して闇の魔素を根っこから止めて王都が攻められてる戦争を俺らパーティだけでほぼ鎮圧して死亡者ゼロにしただけなのに……。

 って羅列する前から確かに異常なことしてんなって思ったし話題になるのは避けられないとも思ったけれど!! 中身が追い付いてないんだよな!!

 いつだって俺はただの勘がいいだけのガキなのよ。英雄的な振る舞いとか求められても知らねーからな!! ドスケベデカパイしか求めてねぇからな俺は!!

 

 まぁいいや。ビブリオティックさんが優しくしてくれたから。

 その嬉しさで悩みなんて吹っ飛んだしこの後異世界転生チートさんの新刊を読みふける事で俺のメンタルは極めて安定する。

 俺は常に前向きだ! 怯えろ魔族!!

 

「さてはてほんじゃ新刊読みますかねェ……おおっ! 我見つけたり新刊二冊ッ……!」

「刊行ペース速いですよね~。どっちから読みますかロックくんは~」

「出来ればこっちのほうを先に読みたくてェ……あっでもノインさんも新刊読みますよね? 回し読みします?」

「あ~……実はですねロックくん。私、ルドルフに言って新刊最速で手に入れてて~……もう読んじゃってたんですよね~。今までも新刊読んだ後に図書館に来てロックくんと感想戦してたりして~……なんかごめんね? これまで言ってなくて」

「アッ成程……いやまぁ納得です。なら今後は一緒に家で読むのも……いや図書館という落ち着いた空間で読み耽った後のカフェでの感想戦も捨てがたい……! 落ち着いた時間が作れればなるべく図書館に来たいと言う俺のこの気持ちを理解ってほしくてェ……!!」

「もちろん理解(わかる)~! カフェでロックくんと過ごす時間は私にとっても宝物ですから~。それじゃあこれからも一緒に図書館来ましょうね~!」

「ぜひ! だが感想戦に臨む前に当然にして物語に没頭しなければならない……いざ文字の海へッ!!」

「どうぞどうぞ~。私はみんなにお勧めの作品紹介して来ますね~……プレッシャーすごいな~これな~」

『みゃふ……みゃふぁぁぁ……』

 

 図書館内なので小声で隣にいるノインさんに分かる程度の音量で話す。

 聞けばノインさんは新刊を購入して最速で読んでる勢だったようで。じゃあ俺にも読ませてくれればよかったやんって考えるのはトーシロだ。

 俺とノインさんにとって図書館で本を読み、その後カフェで感想戦をするという一連の流れはとても大きな意味を持つのだ。

 勿論忙しければノインさんに俺も貸してもらうだろうけど、まだ戦争とかヤベーって感じにもなってない今は出来れば図書館に来たい。ここで大好きな本を読んで物語に没頭して、その後カフェでデカパイ眺めて感想戦したい。

 これほど幸せな時間はないんだよ。性欲と愛情を満たす夜の営みもとても幸せなのだが、この時間だけはノインさんと結んだ絆の時間と言うか。何物にも代えがたい至福の時なのだ。

 

 なんで早速新刊二冊を手に取って座って読書を開始します。

 フードの中のミャウは爆睡開始したようだ。今日はみんなも異世界転生チートさんの本を読むからもふってくれる人もいないしな。

 ノインさんが紹介するオススメの短編をそれぞれ手に取ってトライしてくれるようだ。

 異世界転生チートさんの作品がすべて人を選ぶ作風であることは間違いないのだが……本当にいい話もめっちゃある。

 好きな話が一つでもあってくれたらうれしいなぁ、なんて新刊の表紙を眺めながら思いつつ。

 

「ふへへ……」

 

 ページをめくり、そこからは物語に文字通り没頭して時の流れを忘れていった。

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