勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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156 装備が更新され始めると終盤が近づいてきたなって感じる

 

 

「マジで過去読んだ作品の中で好きなシーンベスト3にはランクインしましたね今回のあのシーン……!! もう最ッ高!! 俺ってこう、なんていうかな? めっちゃ心にグッ!! っときたシーン初見で読んだ時ってなんか……全身が総毛立つっていうかァ……ぞくくぅっ! ってなるっていうかァ……そういうのがあるんですけど。今回の話読んだときはマジでそれになりましたね!! いやほんと……このワンシーンがあるだけで今刊行のシリーズ全肯定するわ俺……読みづらさとか突飛な設定とか全部ぶっ飛んだわ今回神作だわ……!!」

「かなりブッ刺さりましたね~ロックくん。あれですよね? 第二部から主人公の相棒ポジションになってた力を持たない一般キャラでもがきながら頑張ってたのに全てを失って絶望の淵に飲み込まれて、でも……」

「そう!! そっから!! 人の心案件で絶望に絶望を重ねて主人公もやられそうになってる中でそのキャラの死の淵で走馬灯過去回想始まってさァ!! 今は死んでて敵に操られちゃってる元相棒の女の子がさァ!! 残した眼鏡がさぁ!! 回想の中で余りにも残酷な平和で何でもないいつもの日常を描いてこのまま幸せな幻想(ユメ)の中で果てちまうのか……ってなってたところでさぁ!! 黒電話が鳴ってさァッ!!!」

理解(わか)る~~~~!! ホントに、もう死体を改造されて生き返るはずもない想い出の中の大切な女の子に微笑んで!! 『色々と、ありがとな』って言い残して背を向けて……電話を取って!!」

「そこで……ねぇ!! ズルいってぇ!! あのシーン!! 平和な幻想(ユメ)に浸らずに残酷な現実に向かい合う覚悟っていうかさァ……!! もう駄目だ語ってるだけでまた涙溢れてくるッ……!! いつ思い返しても泣けるシーンですよあそこ……ギリギリからのフラグ回収した覚醒逆転劇に弱すぎるのよ俺ッ……!!」

『みゃみゃ……』

 

 図書館での読書を終えてカフェテリアで熱い感想戦を繰り広げてるのが今の俺です。

 いやマジで今回の話ホンットよかったのよ……!! 何度読み返してもあそこのシーン絶対泣くわ俺。

 芯まで響く感動ってなかなか来ないんだけど今回はそれがドンピシャに来た。そういう作品と巡り合えるのってとても幸せなことだと思いますね。

 なんで思い出し涙を流してミャウに拭われながらもノインさんと熱く語りあってるところで、しかし他の嫁さんたちは何とも言えない顔をしてカフェオレを飲んでいた。

 なんや。ノインさんがおすすめした本が面白くなかったんか? 泣くぞ?

 

「……で。どうだったよみんなは読んでみて。それぞれの感想が欲しいです。まずイレヴンから」

「あ、はい。お勧めされた本を読んでみたのですが……マスター程の感激は得られなかったことは少々申し訳なく思います。ですが全体的には楽しめました。突飛な設定とキャラの言動に首をかしげることを除けばストーリーラインははっきりしていましたね。好かった点はそこで、しいて挙げるならば設定が少々勿体ないなと感じたところで……」

「……フゥ……フゥゥ……」

「あの突飛ながら練り込まれた設定が面白いんやろがい!! と少々反論も述べるけどまぁ楽しめたなら何より。サザンカさんはどうだった?」

「うむ。まずこういった挿絵も入った絵巻物を読みふけるという経験が浅かった故、なかなか読み進めるのも遅くすべては読み切れませんでしたが……続きは大変気になりました。夢の為に、色んな人から指導や想いを受け取り、それを背に乗せて覚悟と共に勝負に挑む少女の心情描写はとてもよくできていて楽しめました。ただ……周囲の人物からの少女の評価が不当に低かったのだけは少々解せませんでしたな。徒競走という競技に拙者の理解が浅いためかと思われまするが……やはりイレヴン殿と同様、設定や世界観の部分で物語への没頭が少々……と言った具合で。ですが素直に楽しめており申す。次に読む時には結末まで読み進めてみたいものでござる」

「ヴッ……クフッ……」

「確かにあのシリーズの作品は前提となる世界観への十分な理解がないと物語への没頭は厳しいかもしれない……それはなるほど。なんであの作品は逆に二周三周って読むとめちゃくちゃぐぐっっと物語に入り込める感じもあるんすよねー。また読んでもらいましょ。……リンは?」

「ごはんがおいしそうだった!! おなかへった!!!」

「スゥッ……ッフゥー……!!」

「リンはそれでええ」

『みゃあ』

 

 各々から感想を聞き取る。

 ふむ……物語のストーリーラインは好評だったがやはり設定が突飛なのが多いのが厳しいか……!!

 嫁さんたちが俺の大好きな話を心から楽しめなかったことに残念な気持ちもあるが、嗜好とは押し付けるものじゃないからな。

 つまらなかったという感想ではなかっただけよしとしよう。確かに異世界転生チートさんの作品のほとんどが魔法とかスキルとかない世界で火を起こしたりお湯沸かしたりってのも発展した科学という原理で説明されるものが多いからな。

 科学の結晶でもありそうなアンドロイドのイレヴンの感想がなんともだったのは俺にもよくわからんけど……まぁええ! その内設定にも慣れて楽しんでくれたら言う事ないし俺とノインさんが作品楽しむのをNOと言わなければええ!!

 

 それにしてもノインさんが胸を押さえて苦しそうだな。

 好きな作品が好きな相手から酷評されるかもって思うと心苦しくなるからな。分かるよ。

 

 

「まぁそれぞれが楽しめる所があったならよかったわ。じゃあノインさん引き続き感想戦と行きましょう! もう一つの作品の方は山場に向けてどんどんフラグ積みあがってってる感じあってすごいっすよねあっちも! 新たな登場人物……一体何者なんだ……!!」

「そうですね~、前の事件を解決してから次の事件に向かうまでの間に明らかにコイツ後で重要人物だろ~っていうキャラがさらっと出てきてますよね~。どうせコイツも過去にとんでもないことしてますよ絶対~!」

「さりげなくこれまでに出て来てたキャラが実は……っての多いですよねぇあっちの方は。既に先の先の先まで考えて書かれてる作品なんだろうなーって──────」

「全体の世界観がバッチリ出来上がってる作品なんでしょうね~。わかる~その驚き……私も同じ気持ちで作品読んでるから~──────」

 

 

「この店のチーズケーキは美味しいですよね。マスターに初めて連れてこられた時に私は食べましたが……どうですか? サザンカ」

「うむ、まこと美味なり。丹念に店で作られているのでござろうな。イレヴン殿のミルクレープはいかがでござるか?」

「こちらも美味しいですよ。一切れ食べてみます?」

「では遠慮なく……ふむ、こちらもよき舌触りにて。一度食べれば味の再現も可能でござるから、家でも材料があれば作ってみるでござる」

「あまいもの……おいひい……もぐもぐ……いえでもたべたい……」

『みゃみゃ!』

「……それにしてもサザンカが私服で外にいるのはまだ違和感ありますね」

「流石にカフェテリアなる場で赤備えはまずかろうよ。主殿に昨日購入いただいた真面(まとも)な洋服が早速役立ったでござるな。……服と言えば、イレヴン殿の新しい装備は今日の受け取りの予定でござったかな?」

「ええ、家に届けてくれるはずです。入れ違いになっていないとよいのですが」

「イチゴパフェおかわり!!」

『みゃ』

 

 その後、熱い感想戦をする俺とノインさん、珍しく女子会っぽい雰囲気で午後ティーを楽しむイレヴンたちに分かれ、のんびりとした時間をカフェで過ごしたのだった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 そして帰宅して、夕方を過ぎるころ。

 サザンカさんと一緒に夕飯としてウナギを捌いている。今夜はうな重にウナギの白焼きに肝吸いとウナギ祭りです。サザンカさんのチョイスである。

 捌くのはサザンカさんに任せて俺は他の食材に下味をつけていたところで、唐突に家のチャイムが鳴らされた。

 

「む。来たかな」

 

 その音で一度調理の手を止める。

 この時間の来訪者の心当たりは一人しかない。

 

「……御免くださいませ。呉服屋『リーゼ』の者でございます」

 

 予想通りであった。

 この声は支配人さんだな。直接届けに来てくれたみたい。厚遇されてんなぁ。

 

「はいはーい。今出ますよーっと。サザンカさんごめん、こっから先料理任せていい?」

「勿論でございます。主殿はどうぞお客人のご対応を」

 

 調理をサザンカさんに任せて、手を念入りに洗ってエプロンを外して玄関へ。

 扉を開ければそこにはやはり『リーゼ』の支配人さんがいて、その隣にはなにやら大きなスーツケースが鎮座していて。

 え、これイレヴンの新装備なんか? ガッチガチの鎧装備ってんでもないはずだからもっとこう……紙袋とかで持ってきてもらえるもんだと思ったわ!

 

「どもっす! すんませんね結構歩く所まで届けてもらっちゃいまして」

「今晩は、ロック様。責任をもってお客様の元まで求めるものをお届けするのがリーゼの使命でございますのでどうぞお気になさらないでください」

「スゴーイ。じゃあまあちょっとキッチンで夕飯作っててアレですけどとりあえず上がってもろて」

「失礼いたします」

 

 支配人さんを中に入れてリビングまで案内する。

 多人数が住むようになったので前に購入したいい感じのソファに支配人さんは座ってもらって、そばの椅子に俺が座った。

 イレヴンも来客が来たので部屋から降りてきて俺の隣の椅子に座る。

 そしてサザンカさんが料理の片手間にお茶を出してくれたところで、支配人さんがソファに置いたスーツケースを俺たちの前に開いて、装備の説明をしてくれた。

 

「ご注文いただきましたデザインの通り、イレヴン様の装備を仕立てさせていただきました。素材は全て最高級品を用いまして、リーゼだけではなく当グループが運営している全ての装飾店、防具店から最高の腕利きを呼び作り上げました。物理、魔法防御力を十分に備えつつも最も気にされておりました敏捷性にも極力影響がなく……そしてイレヴン様のスキルの使用にも影響を与えないように各部位の設計には気を配らせていただいております。装備品の付与効果にも最高級のスキルストーンを用いており、衝撃吸収や消費魔力半減などのほか、レア効果である自動修復機能もついております」

「聞いてるだけでヤバい装備だというのは分かった」

「鑑定スキルで見ていますが……よくぞ1日でこれほどの物を作り上げてくれたものです。総合的なバランスで言えばヴァリスタやメルセデスが装備している品を軽く上回る性能ですよ」

「そんなに。あの二人金級の中でも最高レベルの装備してたよな? すごいっすね支配人さん……」

「ほほほ……本来は恐縮するべき場面なのですが。この装備は我ら『リーゼ』グループの粋を尽くした至極の逸品。素材厳選のための人脈、かけがえない職人の育成、デザイナーのセンス……私共が長年にわたり培ってきた企業の誇り(プライド)を注ぎ込ませていただきました。この装備が歴代のリーゼが仕立てた装備の中でも至上の物だと断言いたします。胸を張って誇れる一品になったかと」

「やだカッコいい……」

『みゃ……』

 

 この装備にそれほどの自信があるようで、支配人さん(48歳・女性)が誇らしく胸を張った。やだこのおば様カッコいいわ!

 王都でも1,2を争う呉服屋の支配人がここまで言うのだ。なんかもうとんでもない装備なのだろう。

 それを世界最強のアンドロイドが装備して魔王軍と戦うことになるのだから、これほど正しい用途に使うこともない。装備や服は使ってこそだ。

 見た目がエッチな装備だったらそれ着て夜の運動でもしようかなグヘヘとかちょっと考えてたけどそんな思考も吹っ飛びましたよ。感謝して使おう。

 

「では、早速ご試着をいただけますでしょうか。お客様が身に纏われてご満足を頂くことで、初めて私共の仕事が完遂いたします」

「っすね。んじゃイレヴン」

「はい。部屋で着替えてきますね」

「各部位の装着方法と仕様説明書はこちらの羊皮紙(スクロール)に。ロック様にはこちらの鑑定証明を」

「どもっす!」

 

 イレヴンがスーツケースを受け取り、試着しに部屋にいったん戻っていった。

 俺は鑑定証明に目を通して……すげぇ。付与効果欄8枠が全部埋まってるの初めて見た。

 そうしてしばらく待っていると、階下でわっとノインさんの声が聞こえて、3人分の足音が聞こえてくる。イレヴンのほかにリンとノインさんも降りてきたかな?

 階段を下りてきて、サザンカさんも料理を一旦落ち着けたらしくて様子を見に来て、全員が集合したリビングで。

 

「───どうですか、マスター」

「おおッ……!! まず何よりエロい!! 胸元強調ヨシ!! エッチ確認ヨシッ!!」

「そこからかよ」

「最重要課題やろがい!! でもいいなー、うん、普通にカッコいいし……前に借りてたワンさんの装備よりも露出増えてヒラヒラしたところ増えたな? 重鎧装備じゃないけどこう……姫騎士感っていうか。パンツタイプだったのがミニスカートになってるのもすごくいいなこれ。スカートから広がる甲冑が良く動きそうだ。最高に似合ってるぜ!!」

「ふふ。有難うございます、マスター」

「スカート部分だけで見ればその日運命に出会いそうですね~、だいぶミニだけど。上半身はこれまた動きやすそうですね〜。胸元は強調されてて、肩も出てて、手首まで包むアームカバーのような所は一工程で肩まで捲れる仕様で……」

「うむ、似合っておるよイレヴン殿。いかにも軽さを感じさせる素材で通気性もよさそうに見えるが、これで拙者の赤備え程とは行かずとも十分な防御性能を有しているとは……製作者はよほどの御業でござるな」

「かわいいなー。いいなーそれ。わたしもそういうかわいいそうびならほしいかも」

「ちなみにスカートの下は脚部の可動域を考慮してハイレグタイプです」

「天才かよ」

 

 新たな装備を身に纏うイレヴンに、みんなで感想の言葉をかける。

 ウム! まずエッチだったのでヨシ!! おっぱい強調系装備が好きすぎるのよ俺。全女性冒険者がこういうタイプの装備を身に着けるべきだと思う。乞うムーブメント襲来。

 でも全体的なバランスも凛々しいというかカッコいいというか……うん。見てて嬉しくなるような装備でしたね。見た目がいい装備が強い装備とイコールなのはもはや常識。

 そんな評価を聞いて支配人さんもにっこりしていたが、リンの呟きを聞いてきらんと瞳が光り、目の前にある商機を逃さなかった。

 

「宜しければリン様にも新しい装備を御作り致しましょうか? 世界の闇を統べる伝説のドラゴンに『リーゼ』の装備を使っていただければ、これほど名誉なことはございません」

「お。じゃあリンもいい機会だし装備作ってもらうか?」

「んー……ロック、いい?」

「勿論。今後ドラゴニュート形態で戦う事もあるだろうしさ。どんなのが欲しい?」

「うん! じゃあこの、シスターにかってもらったおようふくとおなじいろがいい! ふんいきもちかいかんじで! それで、ドラゴニュートのうろこはとくしゅで、そうびのぼうぎょりょくをはんえいしないってヒルデがいってたから……ぼうぎょりょくはいらなくて、ふくのじょうぶさとびんしょうをとにかくじゅうしして……あとは、そうびのふよこうかはぜんぶこうげきりょくとまりょくがつよくなるかんじの……そんなかんじがいい!!」

「承知しました。リン様のお体のサイズは以前御計りいたしましたので、ご希望に沿った装備としても使えるお洋服を仕立てさせていただきましょう。流石に貴重な素材はイレヴン様の物に注ぎ込んでしまったので同クラスの物とは参りませんが、一線級で活躍されていらっしゃる金級冒険者様の装備には引けを取らぬ物を御仕立できるかと思います。それも完成しましたら後日お持ちいたしますね」

「助かります!」

 

 話の流れでリンの服も仕立て直すことになった。

 俺の私服と同じで、普段からも使える洋服にして、でも特殊効果を重視して攻撃力とかを上げられるような感じでね。

 イレヴンの物ほど質の高い物は厳しいという事だがそれだって十分だ。

 リンもこの服でこれまで大立ち回りしてたこともあってそれなりにほつれて来てたしな。いい機会だったと思いますね。

 伝説のドラゴンと伝説のアンドロイドが使う装備とドレスを仕立てているという事実でどれほど『リーゼ』の名前が売れることになるのかは想像に難くない。どこまでも商売人だね支配人さん。

 

「では、お代は後日王城へとご請求させていただきます。この度は大変有意義な商談を頂きまして有難う御座いました、ロック様」

「いえいえ、こちらこそいい装備作ってくれてありがとうございました! 今後も服関係でお世話になりますね!!」

「なにとぞ、よしなに」

 

 笑顔で返事をすると、支配人さんが丁寧にお辞儀を返してくれた。

 その後、お礼も込めてしっかりと俺とイレヴンで玄関先までお見送りして支配人さんは帰って行った。

 

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