勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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166 頼むからTSしてデカパイケモになってくれ

 

【side ロック】

 

 

 なんでいっつも俺がゲームしてると横やり入るん??(真顔)

 

「……決まり、まし、た。プットオン……ドリー。あ、赤の32、です。……ロック様、ストレートアップにより、さ、36倍の配当となります……」

「オッフ……」

 

 違うじゃん……違うじゃんさぁ!!

 俺ここまでやるつもりなかったんだよねぇ!?

 

 ルーレットゲーム。

 俺にとっては必勝が確約されたゲームであることを1回目の勝利で確信し、その瞬間に俺の目的はただ一つに集約された。

 この目の前のデカパイ褐色ドスケベディーラーであるエイシスさんに『ロック様強い! すごい! 素敵! 抱いて!!』ってなってもらう事だ。

 なのでいい感じに勝ちを重ねて、ほどほどの所であんまりわざとらしくないように外して……『六勝一敗。残り5回の勝ちは後日のベッドインにオールベットしてオールインだぜ』(キリッ)みたいな感じでカッコつけた台詞でおさらばして、ヤダ素敵……!! ってさせようと考えてたのだ。

 

 なんで最後の7戦目、これ以上は負けられないって感じの雰囲気がエイシスさんからし始めたからそれこそさりげなく俺がミスったように見せかけて。

 でも貧乏性を発揮して思わず元手の1000万Gは手元に残しておこうとしちゃって……すぐに後悔してこれ全額賭けたままの方がカッコよかったんじゃねぇか!? ってなってたんだけどさ。

 

 そこで唐突に勘が響き出してさぁ。

 赤の32が当たるって叫び出しちゃってさぁ!!(絶望)

 

 そしたらリンが俺の名前を高らかに叫んで……その大声で球の落ちるところがズレたんかな。多分そうなんだろう。

 こないだの闘技場でやったマリア様とのチェスだって、良い感じに場が進んだところでアンドレ様の大声で邪魔されたし。いや邪魔したのはミャウだけど。

 なんだ? そういう星の元に生まれついてんのか??

 

 とにかく俺の弱気ビビリ1000万G保持とかリンの大声とかで周りも盛大にざわざわし始めて、結局赤の32にボールが落ちちまった。

 やだもー!! 俺こんなお金貰うつもりなかったですわよー!!

 なんで仕方なくもう一戦だ。

 次は確実にハズレに全額ブッこもう。

 

「ロック!! きをつけて!! あいつが……!!!」

「なんじゃいもう……」

 

 ため息をついて、椅子に座りながらも俺を呼んだリンに振り返る。

 そして。

 

 

「────ッ!?」

 

 

 唐突に。

 勘が。

 

 

「……────────────」

 

 

 咄嗟に。

 咄嗟に手を口元に当てて、音にならぬ声が漏れるのを防いだ。

 

 勘が、全身全霊で叫び始める。

 それはエイシスさんとのルーレット勝負に対してではない。

 ずっと前から響いていた、原因の分からない勘。

 その勘が、今この瞬間に脳内でオーケストラを響かせ始めて。

 

 振り返ったその先。

 俺の視線の、観客たちの一番最後方。

 背の高い一人の男が……否────()()が。

 

 (けもの)(おう)が。

 

 

「ククク……随分楽しそうにやってるじゃねェかよ。ええ? ロックよォ」

「フォル、クルス……ッ!!」

 

 

 かつて俺が仲間とともに討ち果たし、復活したと囁かれていた魔王軍の第五席、獣皇フォルクルスが。

 人波をゆっくりとかき分け、俺の方へ歩いてきていた。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 それに気付いたのは、観客席に混ざっていた俺の仲間たちも同時だったのだろう。

 リンだけは食事処でずっと食事をしていて、映写魔法投影板に映る俺を見ていたところで、フォルクルスを見つけて慌てて報告に来てくれた……ってところか。

 そんなみんなが、身構え始める。

 戦闘行為もスキル使用も許されていないこの場であっても、主である俺を護ろうとイレヴンとサザンカさんが、夫を護ろうとノインさんとリンが、他のみんなが、俺に近寄るフォルクルスをくい止めようと動き始めた()()

 

「────大丈夫」

 

 俺はそれを、手を広げてみんなに示すように伸ばすことで止めた。

 俺の声と動きを見て、一様にみんなが脚を止め、フォルクルスを止めないでいてくれる。

 そこに信頼を覚えつつも……不敵な笑みを零しながら近づいてくるフォルクルスを、全力の不機嫌顔で睨みつけた。

 

「ケケ。随分と貫禄が出て来たなァ……何だァ? もしや童貞捨てたか?」

「わかってんじゃねぇか。毎晩嫁さんに求められて渇く暇がねぇよ」

「ハハハ!! いいねェ、女を知ったかァ。最高だよなァ女ってのはよォ」

 

 そのまま、ゲームテーブルに近づいてくる。

 周囲の騒めきは止まらず……しかし、俺の勘だけはこの先の展開も既に読めている。

 

「……ロック様」

「ん」

 

 奇妙な雰囲気が広がり始めたそれを正そうと、エイシスさんが俺に声をかけてくれる。

 近づいてくるフォルクルスには、一度丁寧に掌を見せてそれ以上の接近を止めて。

 

「……ネクストゲーム。続けられますか、ロック様? そして、そちらのお客様は次回の遊戯に参加なされますか?」

「続けるよ」

「おォ、せっかくだしいっちょ噛みしてくかねェ。ミニマム1000万Gだろ? 問題ねェぜ。オイラはフォルクルスだ。今日の昼にホテルにチェックインしてるぜェ」

 

 次回ゲームの誘い。

 無論のこと俺は乗る。この余分にあふれた金をエイシスさんに返さなきゃならないし……それにフォルクルスも乗ってきたことで、続ける理由も出来た。

 しかし……『お客様』か。

 このエーリュシオンではフォルクルスも客扱い、ってことか。

 受付嬢さん言ってたもんな。

 『各種注意事項をお守りいただけるならば、たとえ()()()()でも、(わたくし)共は完璧なサービスをご提供いたします』って。

 

 金さえ払えば、ここは万人が平等の場だ。

 故に、俺もフォルクルスを殺せないし、フォルクルスも俺を殺せない。

 だからこそ、今の俺に求められることは、何のためにフォルクルスがここにいて、何を企んでいるか看過することだ。

 

「へっへへ……眺めてるだけってのも飽き飽きしてたんだ。一儲けさせてもらうぜェ」

「ほざいてろ。エイシスさんはお前なんかにゃ負けねぇよ」

「……プレイヤー、ロック様、フォルクルス様────プレイスユアベット」

 

 次のゲームが始まった。

 エイシスさんのベット開始の宣言が始まり、再び場が騒めき始める。

 俺の仲間以外で、この隣のライオン頭が魔王軍の将軍であると察する者は少ないだろう。

 なにせコイツの顔は人類側に知られてない。王族やギルド上層部、後は調べものをしていたイレヴンだからこそ察せたことで、何も知らぬ人が見ればただの獣人と思われるだろう。

 そんな、何故か俺の知り合いっぽい雰囲気を出している獣人が、唐突に勝負に参加を果たしたのだ。

 観客も混乱極まれり、といった所だろうか。

 

 ああ──────マジでクソだわッ!!(渾身)

 

 クソー!! コイツがいるってもっと事前に働けよ俺の勘!!

 コイツがいなければリンが叫び始めることもなかったし!!

 俺がいい感じに負けてエイシスさんのベッドインの予約ができてたかもしれねぇってのによ!! 全部ぶち壊しにしやがってよこのライオン頭!!

 もう許さん!! コイツの金はカジノに還元してやるわ!! どうせどっかから奪った金だろその1000万G!!

 

「────スピニングアップ」

 

 エイシスさんの綺麗な声が響いて、ルーレットに球が投げ入れられた。

 この瞬間からが俺のベットする瞬間。これまでの全てのゲームで数字を的中させている。

 もはや俺の持ちチップは台車を何台使っても運べなさそうなほど増えていて。

 なのでやることはオールインチップの全賭けで。それでこれまで勝利をしてきたわけだ。

 

「……()()()オールイン(全額賭け)

「ケケ……()の、()ねェ。なるほどなァ……そんじゃオイラもそこに1000万G、オールインだ」

 

 これまで通り、全てを賭ける。

 分かってるんだ。俺の勘はたとえ隣のバカにどれだけ乱されようと、1/37を当てられないほど耄碌はしない。

 この数字ならば──────フォルクルスに、()()()()()()()()()()

 

「────ノーモアベット」

 

 ベット打ち切りの合図がエイシスさんから示され、後はボールがルーレットに落ちるのを眺めるのみ。

 観客の騒めきもどんどん広がっていく中で……運命の輪(ホイール・オブ・フォーチュン)が、結果を示した。

 

「……決まりました。プットオン・ドリー。()()です。ノーウィナー」

「アァンっ!? 全然違う所じゃねェか!?」

「だっはははは!! ざまみろ!!!」

 

 黒の6。

 ()()()()、俺が賭けた所とは別の所に球が落ちた。

 観客の皆さまから、絶叫とため息とどよめきの波が広がるのを背中で感じながらも……俺は爆笑を堪え切れなかった。

 

 やーいバーカ!!

 どーせ俺が賭けたところに乗ってくると思ったよこのバカはよ!!

 赤と5でお前の好奇心を煽る数字に賭けたのになんも警戒してねぇしよ!!

 これでテメェは素寒貧だ!! バーカ!!

 まぁ俺も素寒貧なんだけど!! 元々その予定だったし全然ヨシッ!!

 

「……ネクストゲーム。続けられますか、ロック様、フォルクルス様」

「あ、俺もうベットするチップがないんで終わりっす!! 楽しかったっすよエイシスさん! 俺の1000万Gは次まで預けときますからね!!」

「オイラも終わるぜ。ったくよォ、なけなしのチップだったのによォ……はァ~あ」

 

 エイシスさんが次のゲームを打診してくるがもう手持ちのチップねーしな!!

 肩を竦めてゲーム終了を伝えて、せめて次回の心証をよくしておこうと最後ににっこりとエイシスさんに微笑みかけて、席を立った。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side エイシス】

 

 

 熱が冷めていた。

 

「……決まりました。プットオン・ドリー。黒の6です。ノーウィナー」

 

 前回のゲームを終えて、唐突な()()()も乱入し、続いた今回のゲーム……ロック様には、まったく勝つつもりがなかった。

 その程度は、ゲームスペースを挟んで向かい合う顔を見ればわかる。

 隣のフォルクルスとやらは、ロック様の知人なのだろうか。言葉の端々にトゲはあるが、しかし気安い雰囲気は見て取れて。

 このフォルクルスという男は、只者ではないと一目見て直感した。

 軽薄な言動の裏に、厚みのある気配。見る者が見れば理解する、危うい香り。

 恐らくは一角の人物なのだろう。そんな男がゲームに乱入して来て。

 

 だが。

 

(……つまらない)

 

 熱はもう冷めてしまっていた。

 

 先の、絶対に負けられないと決意して背水の陣でロック様に挑んだゲーム。

 あの勝負は、負けていた。実際にルーレットの数字も敗北を表していた。

 ただ……その勝負の中で、一瞬だけ、()は仮初の勝利を味わってしまった。

 

 こちらの予測と、ロック様の予測が一致しなかったあの瞬間。

 あの瞬間の、蕩け果ててしまいそうなほどの勝利の快感。下腹部にじわりと広がる熱。

 ディーラーという職に就いてから、己の技量を磨き、常勝を己が手に宿してからは、感じたことが無かった……はじめての感覚(きもちよさ)

 

 あの熱はもう、この勝負にはなかった。

 平常心を取り戻し、ただただ外れることが分かっているボールを投げたのみで。

 この先どれだけゲームを重ねても、今日はもう二度と()()を味わえないのだろう。

 一度たりとも、()はロック様に勝てなかった。

 

(……()は、もう)

 

 あのスリルを。

 どうやっても勝てないのではないかと思わされるほどの化物(ロック様)と、背水の真剣勝負を迎えた時の興奮を。

 そして、仮初だったとはいえども、あの絶頂(さいこう)の勝利の味を知ってしまっては。

 もう、まともなゲームプレイでは満足できない体にされてしまった。

 

(……()は、もう駄目です)

 

 だから。

 このカジノのディーラーに許される権利である、次回の予約(求愛行動)を果たさせてもらう。

 

「────ロック様」

「ん? 何すかエイシスさん」

 

 ネクストゲームへの参加を拒否し、席を立ったロック様を呼び止めた。

 そして、己の胸ポケットより一枚のカードを取り出して、テーブルに差し出す。

 

「……どうぞ、こちらを。()の名刺でございます」

「お? あ、こりゃどーも。……おお、写真可愛(かわよ)っ!!」

 

 これまで過去に誰にも渡したことが無かった、自分の名刺を差し出した。

 ディーラーがプレイヤーに名刺を差し出す行為。

 この行為には意味がある。

 

「そちらの名刺は、当カジノのメンバーズカードとして用いる事が出来ます。今後、当カジノをご利用いただく際には、入り口で名刺をお見せいただければ現金をチップへ換金する際の手数料が無料サービスとなりますので、どうぞご利用くださいませ」

「おお、そうなんすか? そりゃ有難いや! どもっす!!」

「なァーに鼻の下伸ばしてんだか。オイラは名刺よりもエッチなサービスが欲しかったぜェ」

「はーこのケダモノはなんてお下品なのかしらー! ……いいからついて来いや。休憩スペースで話そうぜ。てめえもそれ希望だろ?」

「シシシ。違ェねぇ」

 

 まずはカジノのハウスルールにも明文がある、表の意味合いを説明する。

 メンバーズカードとしても用いることができるこの名刺。ディーラーがプレイヤーに心底敗北したと感じた時に、その健闘を称えてお渡しする物。

 次回以降のサービスを受けられる、強者にのみ与えられるカード。

 そのように、表向きは意味を作っていた。

 

 だが、明文されていない裏の意味がこのカードには籠っている。

 名刺の裏に、ディーラーが手書きでサインを入れていた場合……そのカードは、()()()()を果たす意味を持つ。

 名刺に刻まれたディーラーナンバーは、ホテルの高層階の()の部屋番号と同じ数字だ。

 ホテルに併設されているエレベーターの読み取り部に名刺をかざすと、高層階へ運ぶボタンが押せるようになり……それで移動した先でガードマンに名刺を見せることで、部屋に案内されるという物。

 長く常連を続ける者のみが知り得ることができる、心の底から魅了された相手に捧げる、ワンナイトラブの誘い文句。

 

 勿論、今渡した名刺の裏には()のサインが書き込まれている。

 

(ロック様)

 

 きっと、察するだろう。

 これほどの神がかり的な洞察力を持つロック様なら、()の体を色欲を含んだ目で見てくれていたロック様なら、アイシャドウを褒めてくれたロック様なら。

 きっと察して、()の部屋に来てくれるだろう。

 

 そこで、次回のゲームの予約を果たす。

 体で誓い合い、いつかまた、濡れる様な真剣勝負を。

 

(1000万G、確かにお預かりいたしました。次こそは()は負けません)

 

 故に、渡した名刺に万感の想いを込めて。

 

 

「────またの遊戯をお待ちしております」

 

 

 去り行くロック様の背中に、恭しく頭を下げた。

 

 





~登場人物紹介~

■エイシス
褐色ムチムチアイシャドウぱっつんボブのドスケベディーラー。エジプト風味。
エーリュシオンでトップディーラーとして君臨しており、理不尽の塊と出会うまではルーレット勝負で精神的動揺を感じたことはない。
気持ちよく勝たせて気持ちよく負けさせて、客を楽しませるゲームを得意としている。
ロックとの勝負で膨大な脳内物質による性的絶頂を覚え、中毒になってしまった。
175cm 98 58 98 I
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