勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「よぉ、そこのでっけぇケツがプリティーなバニーのねーちゃん! ちィと頼みがあるんだがよォ!」
俺がゲームに了承の意を返したところで、フォルクルスが近くにいたバニーさんに声をかけて準備をさせたのは……1組のトランプ。
そのトランプを、お互いに不正が行われないようにとバニーさんの手で念入りにシャッフルをさせていた。
「……トランプで何のゲームするんだよ。言っとくが俺はポーカーのルールしっかり覚えてねぇからな」
「は? マジかよそんな人間いるのかよ。ガキの頃に一回くれェはやるモンだろ? 違ェのか?」
「普通に考えてルール複雑すぎるだろアレ。できればシンプルなゲームで頼むぜ。俺も理解できるようなヤツでな」
「ケケケ……仕ッ方ねェなぁ。バカに合わせてやるよ。バーカ」
「バカって言う方がバカなんじゃい」
しかし俺はトランプで遊ぶゲームはせいぜいババ抜きとブラックジャックくらいしかルールを把握できていない。
いやそりゃ異世界転生チートさんの本でギャンブルが主軸の物語とかは読んだけどさ。ルール知らなくてもなんかハッタリ効いてて面白っ! ってなっただけで結局ルールよくわかんなかったし。水中でやるポーカーって何だよ。
そもそもトランプはルールが複雑すぎると思うね。特にポーカーはよくわからん。
ワンペアとツーペアとスリーペアとフォーペアと……ストレートとなんだっけ。フラッシュだっけ。フラッシュとストレートってどっちが強いんだっけ……知らん!!
「ロックはルール曖昧なくせに強いからな」
「ババ抜きとか絶対お兄ちゃん負けないもんね……子どもたちも怒るよそりゃ」
後ろの幼馴染たちがなんか愚痴ってたけど、孤児院でトランプとかチェスとかでゲームするたびに毎回俺が悪役みたいになって俺が勝つとガキ共が機嫌悪くしちゃうから、そういう意味でもあんまり好きじゃないのだ。
例えば神経衰弱なんてやったら俺の順番が来たらゲーム終了しちゃうんだよね。全部俺が捲るから。んでガキ共がブチ切れるまでがワンセットだった。どうしろってんだよ。
やっぱ遊ぶなら外で体動かして遊んでナンボだわ。雨の日は読書すればええ!
ルーレットはエイシスさんが美人で楽しかったし、マリア様とやったチェスは無限のデカパイ感謝だったからドスケベデカパイとやるのは楽しいかもしれないけどさ。
少なくとも目の前のむっさいライオン頭とゲームしても楽しめないのは間違いない。
せめてルールくらいは万全に理解できるようなゲームで頼みたいところだ。
「……そうだなァ。あんまり長引く様なゲームってのも違ェしなぁ。10……は多いか。7セットくらいで行くかァ」
「ルール説明下手か?」
「そう慌てなさんなって。……バニーさんよ、そのトランプからジョーカーを抜いて、俺とこのガキに7枚ずつカードを配ってくれや。上から1枚ずつ引いて、裏に伏せる形でな。そしたら山札を中央に置いてって、あとはもう下がっていいぜェ。……あ、スパークリングオレンジのお代わりも頼まァ」
「俺もおかわりちょーだいおねーさん」
「畏まりました」
フォルクルスがバニーガールに指示をして、山札からジョーカーを排除してさらにシャッフルし、俺とフォルクルスにそれぞれ山札の上から7枚のカードを裏向きに配った。
その後、山札をテーブルの中央に置き、その隣にジョーカーを置いて、スパークリングオレンジのお代わりを持ってきてくれて、バニーガールが去っていった。
この配られた7枚でゲームをするということだろうか。
しかし俺の知識では、7枚を配って遊ぶゲームってのは聞いたことがない。
魔族領で流行ってるオリジナルのルールてんこ盛りのゲームとかやめろよ?
ルール把握しきれる自信がねぇからな? 隣にイレヴン呼ぶぞ?
「……さて。ルール説明だ。耳の穴かっぽじってよーく聞けよォ? お前さんに合わせて簡単なルールにしてやっからよォ」
「お前がイカサマできるようなルールじゃないといいけどな」
「ハハッ、安心しろよォ。シンプル故にこのゲームにイカサマはねェ。お前さんこそ後ろに女立たせてオイラのカード盗み見たりするんじゃねェぞ? 女どもはそのままロックの後ろに並んでなァ」
「そんなことするように見えるかよこの俺の顔が」
「随分な早口だことォ。釘刺さなきゃするだろテメェは。クク……ルールはシンプルだ。7枚の手札から1枚ずつカードを選び、順番に場に伏せる。お互い伏せたら合図で同時にオープン。数の多い方が勝ち。勝ったら相手に対して1つ質問できる。負けた側はその質問にキッチリ答える」
「……ふむ」
「簡単だろォ?」
フォルクルスの考えたゲームのルールは至ってシンプルなものだった。
カードをお互いに1枚出して、数の多い方が勝ち。勝ったら相手に質問できる。
それを7回繰り返す、と。
「引き分けは?」
「そんときゃ次のゲームに進むだけだ」
「数字の強弱は? たまにあるだろ……ほら、なんかAがKより強いとか2がAに勝つとか」
「そこはシンプルに行こうぜェ。最弱はAの1、最強はKの13だ。それ以上もそれ以下もねェ。多い数字が勝つ。変な逆転ルールもねェ」
「カードを場に伏せる順番は?」
「先攻後攻を1ゲームごとに交換していこうぜェ。最終ゲームは後先関係ねェし、それなら3回ずつで平等だろ」
「……質問に嘘をつかないって保証は?」
「ハッ、そんなもんはねェよ。オイラはオイラが答えるように答えるだけだし、お前さんだってオイラに伝える情報はお前さんがよく考えて答えりゃあいい。……忘れてるようだがロックよォ、オイラは別に今すぐはいサヨナラってしてもいいんだぜェ? わざわざゲームを持ちかけてやってる事に感謝してもらいてェくれェだな」
「それもそうか」
とりあえず気になってる点は聞けた。
先攻後攻を交換して場にカードを伏せて、純粋な数の大小で勝負。引き分けは質問なし。
質問への回答は、こっちはリンがいるから嘘をついてるかどうかは分かるが、嘘をつかれてそれを暴いたからって真実が分かるってわけじゃない。2択の質問でもしない限りは。
だがそれはこちらも同じ。俺が嘘をついたってフォルクルスは分かったもんじゃない。そもそも知らんこともあるし。
ただまぁ……コイツ、多分だけど質問の回答すらもなんか含んでそうなんだよな。
やだやだ頭キレるやつって。まぁ聞けるだけ聞けりゃいいだろ。
俺の目的はコイツに何が何でも真実を答えさせることじゃねぇしな。とりあえずいっぱい質問できりゃそれに越したことはないんだ。
「……とりあえず、受けたほうがいいって俺は思うんですけど。俺がこのままやってOKっすか?」
念のため振り返り、そこにいる頼れるみんなに意思確認を取る。
嫁さんたちは即答で頷いてくれてOK。ケンタウリスのみんなも、カトルもヒルデガルドさんも俺を信じて頷いてくれた。
厚い信頼助かる。ルーレットでバカ勝ちした俺の勘にみんなが信頼を置いてくれてるのマジで嬉しいな。
ならば応えよう、その期待!
「うっし、じゃあやるか。始めようぜ。お前に先行くれてやるよ」
「いや後攻のほうが有利だろどう考えても。まァいいけどよォ……どれどれ」
ゲームスタートだ。
お互いに配られた7枚のカードを捲って、その瞬間に俺は確信した。
「ッケケ……悪くねェ配牌だぜ。どうでェロック、お前さんの手札はよォ」
「全部キング」
「サマにもほどがあり過ぎるだろォ。ケケケ……まぁ最初だしな。この辺にしとくかァ」
「………………んじゃ俺はこれ」
フォルクルスがカードを1枚選び、場に伏せた。
それを見てから、しばらく悩んだ
一戦目。その結果は。
「そんじゃ、先行の掛け声で捲るとしようぜ。今回はオイラだ」
「おー」
「いくぜ────オープン」
合図に合わせてカードを捲る。
俺のカードは────2。
奴のカードは────
2対13。
俺の負けだ。
「え!? ロックアンタ何やってんの!?」
「ロック!? おいどうしたお前!?」
「お兄ちゃん!?」
後ろの全員が息を呑む音が聞こえて、アルトさんとカトルとティオから抗議の声が上がってきた。
やっかましいわねー!! 仕方ねぇんだよこの負けは!!
むしろ褒めろよ相手の13に2をぶつけた俺を!! ちゃんと分かってる人は分かってんぞこの偉さが!!
「……ケケ、なるほどなァ。最初だからってオイラが中途半端なカードを選ばねェでマックスかミニマムで来ると読んだかァ? んでアテが外れた……いや、違ェな。オイラのキングを
「うるせ。初っ端から一番強いの選んでんなよガキか」
「お前さんを
ま、当然フォルクルスも読んでくるよな。こっちの意図を。
このゲームは、単純に強い方から出していけば勝てる……ってもんでもない。
当然ながら相手が何を出してくるのかによって、美味しい負け方と美味しい勝ち方ってもんがある。強い数字に弱い数字で応じて負けるのはかなり美味しい負けパターンだ。
なぜなら俺の手札にある強いカードが温存できている。逆にフォルクルスは俺の最弱の札に最強の札を当てちまったので、差し引きマイナスまである。
いかに僅差で勝つか。弱いカードで引き分け以上に持ち込めるか。強いカードに弱いカードをぶつけられるか。そんな駆け引きがこのゲームにはある。
運否天賦の勝負じゃない。
「じゃあ質問するぜロック。できれば嘘偽りなく答えてほしいってのがオイラの曇りなき本音だぜェ」
「一応真面目に答える気はあるぜ? 俺が答えられる質問ならな」
「信じてェところだ。じゃあ聞くぜ……ロック、お前さんはよォ────」
さて、しかし負けは負けだ。
当然にして勝者の権利である質問タイムがあり、俺はそれに答えなきゃならない。
フォルクルスが俺にどんな質問をしてくるか。その質問からコイツの意図が読めるようなもので、なおかつ俺が上手く誤魔化して答えられるような何かならよかったのだが。
「────もしかして、デカケツ派じゃなくてデカチチ派か?」
「YESッ!!」
だが即答ッ!! 当然肯定ッ!!
何聞いてきてんだコイツはよォ!! クッソこいつ真面目にやってねぇなこの勝負!?
いいけどさぁ!! 人類軍の動きはどうなってるとか聞かれるより全然答えられるもんだったからさぁ!!
一勝目だからってどうでもいい質問から入ったのか? 分からねぇよ俺お前の考えてることがよ……!!
「まぁマスターはそうですよね」
「無論だがロック=イーリーアウスは嘘をついていないな」
「ロックくんデカパイ大好きだもんな~。夜とかすっごいもんな~」
「孤児という生まれ故に母性に飢えているのでござろうか……しかしミル殿も確かな母性をお持ちであるのだよなぁ。飢えるほどではないように思えるのでござるが」
「逆にシスターさんがそういうタイプの美人さんだから性癖刻まれちゃってたり?」
「いやでも別にロックのやつ10歳くらいまではそんな……その、胸がどう、って言ってなかったんですよね。多分あの変な本を読み始めたあたりから言動がおかしくなってって……」
「ン゛ン゛ーッ」
「お兄ちゃんおっきいお尻ダメかぁ……そっかぁ……」
「ダメとまでは言ってねぇよ!? 勿論おっきなお尻も魅力的だけどさ!! でもやっぱりどちらかといったらデカパイ感謝でェ……!!」
「ふふーん! ロックはえっち!」
「リンちゃんここぞとばかりに胸を張りますね? キレそう」
「…………ロックらしいというか、何というか」
「魔王軍の将軍格と相対しながらの会話か? これが……」
なんか後ろが五月蠅いんですけど!
仕方ないだろ嘘はつかないって言ったし!! 嘘ついてもどうしようもない質問だし!!
俺は永遠にデカパイハーレムを求めるだけの勘のいいガキなんだよ。
勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない。(タイトルコール)
「やっぱりそうだよなァ……おかしいと思ったんだよ。お前さァ、グランガッチでケツのでかいカリーナが好みとか言ってたのにさァ……このカジノで出会ってからというもの、お前さんのバニーガールやディーラーの女に向ける視線が全部胸じゃん? おかしいなって思ってよォ……せっかく同志見つけてあったけェって思ってたのによォ……」
「ガチ凹みするじゃん。なに……え、魔王軍に同志いねぇの?」
「こないだお前に殺されたベルゼビュートもその部下のバアルもとにかくカタブツでよォ……他は女所帯だしよォ。こう、アホでスケベな話で盛り上がれる奴が殆どいなくてよォ。唯一、オイラの直属の幹部のべリムが多少話が分かる奴だったんだけどなァ……アイツ偵察に廻してたらいつの間にか死んじまってよォ」
「あ、それ殺したのカトルだわ」
「今なんで俺の名前言った??」
なんかすっげぇガチで凹んでるわこのライオン頭。ウケるわー。
かわいそうなんで話聞いてやったらずいぶんな哀しみを抱えていた。
なるほど……性癖について語り合えない友がいねぇと辛いよな。分かるよ。
俺にはノインさんという心の友がいてくれたが、一人もいなかったらそれは辛かろう。同情はする。
しかしそんな話の中でフォルクルスの部下で、べリムとか言うやつ……前にヴァリスタさんとカトルが討伐したって言う幹部の名前が零れて来たので、思わず討伐者の名前を伝えちまった。
それを聞いたフォルクルスの目の色が変わって。
「あァん? ……てめェか、オイラの部下殺したのはァ…………まァ美人だから許すか」
「待って」
「よかったなカトル」
「いや待って? 俺今ちゃんと男性用の礼服着てるよね? 勘違いする要素ある?」
「勘違いする要素しかないと思うぞカトル少年」
「カトルはまぁね……」
「メス男子ですよね……」
「仕方ないわよね……」
「…………仕方ない」
「えっ待ってケンタウリスのみんなからもそんな目で見られてたの俺?」
「オイちょっと待てェ。えっ……男装俺っ子美少女じゃねぇのソイツ? えっマジ?」
「マジマジ。ちんちんついててお得の擬人化」
「マジかよすげェな人類軍……!!」
「待って!!!」
なんか……随分空気が軽くなったな……。
誰のせいかっつったら下らない質問を繰り出してきたフォルクルスのせいだと思いますね。俺は悪くない。
あえていうなら話が噛み合いすぎる俺の責任が……いやねぇわ。このライオン頭のせいだわ。
ンモー!! 締まらないわねー!!
次行くわよ次ー!!