勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
二回戦が始まった。
「ところでお前さ」
「んだァ」
「デカケツスキーだって話だけどさ。カリーナとはそういう関係なん?」
「アァ? ……ケケ、答えるまでもねェだろ? マジで聞きてェならこの勝負に勝って質問しろよ」
「それもそうか」
カードを眺めながら軽くフォルクルスに雑談を振るも、このゲームを始めた時点で魔族側の情報を零すような質問にはすっかり答えない構えのようだ。
ちぇっ。こういう所キッチリしてやがんな。
バカでお調子者のように見えてやっぱ頭常に廻してんなこのバカ。(回文)
じゃあ仕方ない。真面目にゲームやりますか。
今回は俺が先行だ。
俺がカードを場に出してからフォルクルスが選ぶ形になる。
「んー……まぁ二回戦だしな。この辺いっちゃおっかなー!! オラッ!!」
手札として持つカードの、一番右のカードを選んで場に伏せた。
それを受けてニヤリと笑うフォルクルス。何考えてんだか。
「クク……じゃ、オイラはこのあたりで行くぜェ」
少し悩んでからフォルクルスも場にカードを伏せた。
勝負。
「んじゃ開くぜ────オープン」
「ほッ。……とォ! クハ、マジか負けるかァ! そんなにバカじゃあねェよなやっぱりなァ!!」
「やーいバーカ!! 単純すぎんだよノータリンが!!」
お互いの手によってカードが開かれる。
俺のカードは────8。
奴のカードは────6。
8対6。
俺の勝ちだ。
「……お前さん、ゲーム前に配られたカードを手に取った後にカードを並べ変えてたからなァ。んで一回戦、一番右のカードを選んで、恐らく手持ちの中でも最小の数である2を出した。まさかとは思ったが数字順に並べ替えてんじゃねェか……したら次も一番右のカード選んだからよォ。2の次に小さい数字を出してきたって読んでオイラそこそこの数字で勝負したのによォ!」
「俺の策を全部説明してくれてご苦労さん。並べるわけねーだろバーカ!!」
「チッ……手札を確認させてからルールの説明するんだったぜェ。だったらてめェもアホみてぇに数字通り手札並べ変えてそれを読み取れたのによォ」
「フェアプレー精神ご立派ァ!!」
フォルクルスが述べたとおりだ。
俺は最初、配られた手札を何枚か己の手の中で並べ替えた。
しかしそれは数字の順番に並べ替えたのではなく、並べ替えた後もランダムな数字の大きさになるようにして、だ。
そこで罠が張れると思って最初は2を出したところもあるし……その次に俺が2回戦で出す数字も、8じゃなきゃいけなかった。
「チッ……ケケケ、負けは負けだァ。いいぜ、質問しなよロック。オイラ誠心誠意答えてやるぜェ?」
「嘘くせー。……リンに嘘かどうか確認するのはいいんだよな?」
「当たり前だろォ。
「そういう所さっぱりしてるよなお前。んじゃあ……」
さて、今度は俺の質問ターンになる。
コイツに聞くべきは何か。さっと答えちまえるような質問だとまずいんだ。
例えば二択の質問。これは嘘を見抜けるこちらにとっては非常に有利な質問とも言える。
なぜなら嘘をつかなければ答えが真実になり、嘘をついてるなら逆の答えが真実になるからだ。絶対に本音を聞き出せる。
しかし質問の幅はどうやっても狭くなる。ふんわりした回答は返ってこないだろうし、質問した内容の答えしか俺らは受け取れなくなる。問答も少なくなるだろう。
それに、二択の質問って実はそんなに今の場においては有意義な質問じゃない。情報を取る意味が少なすぎるのだ。
『魔王軍は人類軍に反旗を翻そうとしてますか?』なんて聞いてみろ。そんなの答えは一択だ。YES一択。
俺の頭で他に思いつくのは……『この街に何か仕掛けていますか』『王都に何か仕掛けようとしていますか』『俺の命を狙っていますか』『闇の魔素は魔族領でもうすぐ枯れそうですか』『カリーナは俺に惚れてましたか』『今すぐ自殺する気はありませんか』『TSケモ巨乳になれる可能性はありますか』……くらいか。ぱっと出るのは。
でも、これらすべての質問が……いや最後の方は半分くらい冗談だけど、こういう質問はそもそも、
なぜなら、俺たちは全ての質問に対する答えが最悪のそれであったことを想定して動くほかないからだ。
この街にも、王都にもどうせ何か仕掛けようとしてるだろうし、俺の命は当然狙ってるだろうし……闇の魔素はまだふんだんに余ってるだろう、と思って人類軍は策を練る。
仮にそうじゃなかったとしたら、備えたけど何もなくてよかったね、で終わる話だからだ。
今この場で聞くのはそういう話じゃない。
少なくともまだフォルクルスの狙いが、このゲームを誘ってきた理由が分からない今の段階じゃあ駄目だ。
だからこそ、俺はある程度広い範囲での問いかけを考える。
勘も併用しながら、だいぶシンキングタイムを取らせてもらってから投げかけた質問は。
「……お前さ。なんで
「……ほォーん」
これだ。
フォルクルスにとっては、嘘も真もどちらも言いやすい内容。
嘘だとわかっても真意は分からない。ならば嘘をつこうとするのか。
それともこのゲームに真摯に向き合い、らしくなく真実を零すのか。
それがこの質問で読み取れる、はず。
「……ケケ。そりゃあ答えは分かり切ってるだろロックさんよォ。お前ら人類を滅ぼすために色々仕掛けに来てんだよ。オイラが策を練るタイプだってのはお前さんも分かってんだろォ?」
「まぁそりゃそうなんだが……リン?」
「まだうそはついてないよ」
「ふむ。……どこに何を仕掛けようとしてやがる?」
「オイオイオイオイ! そりゃ二つ目と三つ目の質問ってやつだぜロックよォ!! 問いかける内容は一つ。その
「なんじゃい! 少しくらいサービスしたってええやろー! お前の質問にだって俺結構色々答えてやったやろがい!!」
「それとこれとはワケが違……いやちょっと待てェ! さっきのオイラの質問だってオイラが一方的に凹んでただけな上にそっちの性別不肖メス顔がオスだって判明してびっくらこいただけだろうが!! お前さんデカケツ派じゃねえって言っただけだろうが!!」
「待って」
「確かに俺はデカパイ派なんだが。それくらいのニュアンスで色々さ……ほら、俺とお前の仲だろフォルクルス。
「満面スマイルむかつくゥー。絶対ェこれ以上は答えてやんねェ」
「チッ……器ちっさ」
「うるせェな」
「ちんちんも比例してちっさいんだろうな」
「減らねェなァ口がなァ!! オイラのマグナム一度見せてやろうかエエッ!?」
話を広げて無理矢理会話を引き延ばしつつ、アホな会話を繰り広げつつ……しかし、それなりに収穫はあったな。
当然にして、広い質問に対して詳細に答える気はない。
そして、絶対に何が何でも嘘をつくっていうわけでもない。答えられる範囲なら答えるわけで。
で、当然だけど人類領に来てるのはなんか悪いことしようとして来てた、と。
このあたりから次の質問も広げられそうだな。ガンバロ。
※ ※ ※
その後ちんちんのデカさ談義で割と盛り上がってしまって、後ろのデカパイガールズたちが赤面したり驚愕したりして……話も途切れたところで、三戦目が始まった。
「んじゃ次はオイラが先行だな。……ここまでの流れからするとオイラ旗色悪ィんだよなァ。一戦目は大差で勝っちまったし、2戦目は僅差で負けちまったしよォ」
「自分から持ち掛けたゲームだってのにヘッタクソだなお前」
「やかまし。──────これ……にするかァ」
フォルクルスの先行で、だいぶ悩んでからカードを選択し、場に伏せた。
それを受けて……いやまぁ出すカードは決まってるんだけど。少し悩む素振りをする。
「……うーん……」
「……なァ、ロックよォ」
「なにさ」
「
「ししししてねぇですにょ!? その質問には答えねぇですにょゲームに勝ってから質問してほしいですわよ!?」
「ウソだろその反応でなんも分かんなくなったぞオイラ」
そしたらフォルクルスが急に鋭くツッコんできたもんだから全力で動揺しちまった。
「お前さん、バカなくせに妙に鋭い所あるからよ。前のグランガッチだってヘンに話に乗ってくると思ったら時間稼ぎされて、そっからひっくり返されてオイラ負けちまったからなァ……────何を狙ってやがる?」
「それこそ俺にゲームで勝って質問するべき内容では?」
「フン。……
「それはお前の腋臭だよ。よかったな自覚出来て」
「ちゃんと汗ケアはしてらァ!! 獣人全般に共通する悩みバカにすんなァスメハラで訴えられンぞてめェ!!」
「ガチギレするじゃん」
それで新たに話のタネも広がってまた時間は稼げたが……いやまぁ俺が魔族と相対して出来る事って何? って言ったら一番得意なのが時間稼ぎだしね。
今までの魔族との戦いでもバアルから始まりホエール山脈の頂上での戦いまで振り返っても、俺が何してたかっつったら常に時間稼ぎしてたようなもんだし。たまに捌き斬りしてたけど。
下らない話を広げて時間を稼ぐ。これだけで味方がどれだけ休めてどれだけ頭を廻せるかって話よ。俺偉い。
ま、それこそバレても全く問題ないそれだしな。
フォルクルスの言った通りだ。
このカジノではスキルが使えない。
だからこそ、
言っておくが、もうチェックメイトは済んでるんだぜフォルクルス。
お前は俺に負け続けろ。
「んじゃ俺はこのカードで勝負だ」
「チッ……コイツと話してっとどうしても盛り上がっちまうなァ。気が合うぜマジで……うし。んじゃいくぜェ────オープン」
「ほい」
三回戦目のカードを捲る。
俺のカードは────
奴のカードは────
13対11。
俺の勝ちだ。
「ッ……マジか。オイラの最強の手札で負けるかよォ!? ここでキング切ってくるかァ!?」
「ハハッ!! 分かりやすすぎるぜバーカ!! 流れ取り戻そうと足掻きやがってよォ!! やーいバーカ!!」
「クッ……ハハハハハ!! ックソがァ!!」
当然の勝利を果たした。
どんなにこのライオン頭が小さい脳味噌廻して考えても無駄なんだよな。無駄無駄。
さっき1/37を7回連続で当て続けた男だぞ俺は?
勘に従えばこんなもんよ。一回戦で既に布石は打ち終えたのだ。
「そんじゃ俺の質問タイムだな。どこに何を仕掛けようとしてるか聞いてもいいんだが……それじゃあつまらねぇよな」
「ケッ。好きに質問しやがれ」
「ふてくされんなよ。キッチリ答えてもらうからな……んじゃ質問だ」
先程の質問の答えを受けて、次に俺がかける質問は。
「フォルクルス、お前さ────
「──────ッ!!」
「ァん? ……アァッ? 今聞く内容かァ? それ」
「聞く内容だよ。俺にとっては少なくとも、な」
魔王軍の第三席、竜帝ニーズヘッグのことだ。
ヒルデガルドさんから息を呑む音が伝わるが……この質問をした理由は色々あって、至極真面目な理由だ。
まず、さっきの質問に対するフォルクルスの答え。
コイツは嘘だけ言うわけじゃないが、真摯に答えるつもりも欠片もないようだ。
少なくとも現状、己の不利になるようなことはまったく答えるつもりがない。それは勘でわかった。
どこの街に何を仕掛けてどうやって今の魔王軍の現状をひっくり返そうとしてるか……この辺は、のらりくらりと交わして確信に至らせないだろう。
故に、そういった質問をしても無駄だと俺は確信した。
しかし俺の主な目的である時間稼ぎを果たさなければならない。
そのための質問を……といっても、そのためにフォルクルスが乗ってきそうな質問をかけ過ぎるのも問題だ。
例えば下ネタ関係な。お互いの性癖論議を始めれば……まぁもしかすればめちゃくちゃ盛り上がるかもしれないし何なら今ちょっとそれでもよかったかもなって思い始めたけど……多分、フォルクルスがマジで俺が時間稼ぎしてることを確信し始める。
そうなればこいつは無駄なことを言わなくなるだろう。余りにも見え見えな時間稼ぎの意味がない質問は駄目だ。
だからこそ、ちょうどその中間。
魔王軍の、今フォルクルスが練っている策の主軸を穿つような質問ではなく、あまりにもボケに偏った質問でもなく……魔王軍とは関係があるが、フォルクルスの策に寄り過ぎないような質問で。
ここからフォルクルスの考えがぽろりとでも零れればよし。
零れなくても、俺が聞きたい内容が聞ければよし。
気になってはいたんだ。
サラマンダーさんがあのような伝言を願い、ヒルデガルドさんが目の敵にしているレッドドラゴン三姉妹の長女ニーズヘッグが、何故魔王軍に仕えているのか。
何をきっかけに、妹たちを裏切り魔族側についたのか。
それをフォルクルスが少しでも知ってれば……この話を聞いてるヒルデガルドさんにも聞かせてやりたいと思ったから。
それがどんな内容になっても、きっと知りたいだろうと俺の勘が察したから。
「……ふゥん。そういやァ……ニーズヘッグの妹だったか、そっちのドラゴニュートはよォ。ヒルデガルド……だったかァ? ケケ、いいケツしてんなァこっちも」
「下種な視線を私に向けるな」
「おおっほ、気が強ェ強ェ! 姉貴そっくりだぜェ!! ……クク、なるほどなァ。マジで乙だぜェロックさんよォ。メスの扱いがなってやがんなァ!」
「やかましいわねー!! いいから知ってること喋りなさいなー!!」
俺の後ろに佇むヒルデガルドさんにフォルクルスが目を向けて、ケツを見てにやけ顔を作った。
全く分かってないわねー! ヒルデガルドさんはデカパイなんだよデカパイ。種族的なものなのかデカパイの張りが素晴らしいのよこのお方は!! リンもすごいけどそれ以上にすごいの!!
今夜頂く予定の俺の女にクソ野郎の視線が向かったことでむきーっとキレつつ、しかし質問には答えてもらう。
「ケケ……面白くなってきやがった。いいぜ、オイラが知ってることかいつまんで話してやるよ。本人から聞いた話じゃねェけどな」
いやに楽しそうなフォルクルスが、俺の質問に対する答えを語り始めた。