勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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174 最後の最後にそれを手にした者を勝者と呼ぶ

 

 最終戦が始まった。

 

「ケケ……つってもよォ。もうオイラ達はラストの一枚しかねェ。選択って行程はなくなるわな」

「そう言う事。俺の挑発に乗って付き合ってくれてありがとねフォルクルスくん。俺の出来る質問が一つ増えたね」

「ほたえなァ。テメェとはきっちりケリつけておこうって思ったまでだ」

 

 フォルクルスが述べた通り、この勝負はもう結果は決まっている。

 お互いの手に残った最後の一枚を場に伏せて捲るだけで。誰がやっても同じ結果になる。

 そして、その結果は俺の勝利に終わるのだ。

 俺の手の中にあるカードが、フォルクルスのカードより大きい事を俺の勘は捕えている。

 

 これも俺の作戦の一つである。

 さっきは結構マジな感じでなんつーか、ゲームを最後までコイツとはきっちりやりとげてやるぜー! って粋な考えもちょろっと、ほんのわずか、小指の爪くらいはあったけどね。

 でも実はこっちが本命です。

 俺の勝ちが決まってんだから、このクソライオン頭にもうひとつ質問が出来る。

 その機会をみすみす逃すわけにはいかないのよね。

 将軍格をここで討伐するという択はトゥレスおじさんの説明でも無理ってわかったわけで。命を取り逃しちまったんだからせめて僅かでも情報は引き抜いておきたいところだ。

 

 お互いに場にカードを伏せた。

 時間稼ぎも何もない。速やかに終わり、俺がコイツに質問するだけだ。

 

「やるか」

「あァ」

 

「「────オープン」」

 

 お互いの声はスパークリングオレンジを注文した時と同じように綺麗にハモり、同時に最後のカードが捲られた。

 

 俺のカードは────6。

 奴のカードは────5。

 

 6対5。

 俺の勝ちだ。

 

 ここまでに俺が出してきたカードは28KQ456。

 フォルクルスが出してきたカードはK6JJ235。

 

 総合戦績6勝1敗。

 俺の圧勝だったと言えるだろう。

 やーいバーカ!! ザーコ!!

 

「やーいバーカ!! ザーコ!!」

「テメェ常に思考と発言が一致してるよなァ。嘘のない性格で羨ましいぜェ」

「人をハメる事ばかり考えてる奴に羨ましがられてもなんも嬉しくないですねェ!!」

「テメェこそいつも女にハメる事ばかり考えてんじゃねェのか……ケッ! 負けだ負けだァ!! ハハハハハ!!」

 

 もはや呼吸と同じレベルまで自然に零れてしまった煽りをかまして、フォルクルスの負け犬ヅラを眺める。

 なーにが将軍格じゃい! なーにが策士じゃい!!

 俺とゲームするとなったらこんなもんよ!! 初手で最善の敗北を選んだ俺偉い!!

 満面のドヤ顔ですよ俺も。嫁さんたちもケンタウリスのみんなも俺の勝負強さに惚れ直したことだろう。

 今夜は全員でハーレムプレイもいいかもしれないですね。ドスケベデカパイハーレム。

 

「……で? オイラを呼び止めてまで聞きてェことがあったんだよなァ? 答えてやるよオラ。くだらねェ質問だったらキレるからなァオイラは」

「安心しろよ。最後の質問は決めてある。もう時間稼ぐ必要もなくなったからな」

「ほォー? そりゃあ手間がなくっていいや。さらに時間稼がれてここに愛妻家のオジさんが来たらもっと気分悪くなるところだったからなァ」

 

 フォルクルスの言葉に、俺は本心で返した。

 もう時間稼ぎの必要もなく、聞きたい質問ってのもさっきからの流れでぼんやりと頭に浮かんでいる。

 トゥレスおじさんがこの場に来るまで粘る……っていう択がフォルクルスの口から零れたが、しかしそれはあり得ないことはフォルクルスも俺も分かっているんだ。

 

 トゥレスおじさんは多分、今すぐこの街に転移できる状況にない。

 なぜなら、それが出来るならばここでノインさんを通してフォルクルスと話す必要が無いからだ。何も伝えずにカジノに合流すればいい。

 そうしていないということは、フォルクルスの企みを潰してカリーナを捕らえた上でフォルクルスのいるこの場に来なければならない……そういった状況にないのだと思う。

 

 考えられるのは、恐らくだがカリーナに看破魔法を使ったのがトゥレスおじさん本人であるという所か。

 看破魔法は術者が傍にいないと効果が薄れる。拘束や隷属の首輪などでの行動不能の引継ぎに時間がかかっているのかもしれない。

 もしくは、アイムと離れられないトゥレスおじさんがフォルクルスのいる場に同席しない方がいいと考えたか。

 将軍格が2名も同じ場にいれば何が起きてもおかしくはない。魔王のほうでも動きがあるかもしれないし、非戦闘区域であるここでもワンチャンあるかも。

 そもそもアイムが捕らえられてることだってフォルクルスは事実確認をしていないはずだしな。それがバレるのを良しとしなかったか。

 フォルクルスもアイムの件察してる気配あったのはさっきの会話の中でも零れてたけど。

 

 まぁそんなわけで、トゥレスおじさんはここには来ない。

 だから俺も変に時間稼ぎをする必要はない。

 イレヴンたちは口惜しく感じるかもしれないが、コイツはここでは逃がす。

 その見込みであって、そして、()()()()()()()()()()()()()()

 

「じゃあ最後の質問だぜフォルクルス。嘘をつかずに答えろよな」

「オー。信頼しろよ、ダチだろオイラ達は」

「むかつくゥー。……フォルクルスよぉ」

「ン」

 

 

「────お前さ。人類側に寝返るつもりはねぇか?」

 

「──────ハッ」

 

 

「マスター……?」

「……成程。確かに、フォルクルス側としては択の一つとして考えられるか」

「今の魔王軍ボッコボコですもんね~」

「部下のカリーナもトゥレス殿が再び捕えたとなれば……魔王軍に翻意を抱える理由も十分にござるな」

 

 最後の質問は、寝返りの打診。

 コイツは……フォルクルスは、頭がキレる。

 そしてまぁ、もう俺も認めちまうけど……相性がいいんだ、俺と。

 もし味方になれば、カトルとかノックスさんとかトゥレスおじさんとはまた別枠で、何も遠慮せず無茶振りできる便利な男が一人増える。

 魔王軍としても相当の戦力ダウンになるだろう。

 残る二人の将軍の内一人がこちらに寝返ればもう魔王がどれだけ強くても何とかなりそうな気がする。そもそも既にアイムがこっち側になったしな。

 コイツをこのままここで逃がしてまた面倒な策を練られるよりも、根っこから引っこ抜いてこっち側に着けさせた方がいい。

 

 そんな俺の質問を受けて、フォルクルスはしかし────不敵に(わら)った。

 

「…………オイラはよォ。テメェを探してこの街に来たわけじゃねェってのはマジだ」

「ん?」

「オイラがこの街に、カジノに来た理由は簡単でよォ……もう一人の将軍を探しに来てたんだよ。今は行方不明になってる、六大将軍の第六席アブソリュート。前にテメェが転生体じゃねェかって魔王サマが疑ってた野郎だがよ……コイツは150年前に()()()()()()()()()()過去がある。だからもしかすれば魔王軍に戻るつもりが無くてここで蜷局(とぐろ)巻いてるんじゃねェかってよ。引っ込み思案なヤツだったからなァ。魔王サマの元に戻るのがしんどくて帰るのを拒否して……ここにいるか、いなくてもちっとでも痕跡が残ってればって思ってよォ……」

「おい?」

 

 そしてフォルクルスから零れてきた答えは、まったく見当違いのそれで。

 いや、内容はなかなかに聞かせるものだった。

 俺がまだ出会っていない将軍格の二人、ベルベッドとアブソリュート。そのうちの一人。

 確か前に魔王ダブレスちゃんが俺を見てアブソリュートじゃないって言ってた記憶があるが……しかしアイムから聞き出した情報の通り、やはり魔王軍にまだこの二人は戻っていないようで。

 そんな将軍が150年前はまさかの人類領のこの街を拠点にしてたってのは驚いた。

 驚いた、が。

 

「おいおいフォルクルス……()()()()ぜ。俺の質問はちゃんと聞いたか? お前がこっちに寝返るつもりは……」

()()()()()()。真摯に、心の底から、嘘偽りなく答えてるぜェ。なぁ、ドラゴニュートの嬢ちゃん。オイラの言葉に、嘘はあるかい?」

「うそは…………ついてない」

「…………」

 

 答えた内容は俺が求めたものと違う。

 人類側につく気があるかどうか。それだけを聞きたくて質問を投げかけた俺だが、しかしフォルクルスは今なぜここにいるかから説明を始めた。

 なんだ……何を考えてる?

 今の話から、俺の質問への答えが繋がるってことか?

 

「クク、続けるぜ。まァそんな理由でここに来たんだけどよ、テメェ等と遭遇したのはマジでたまたまだよ。望まぬ遭遇だ。無論だが、オイラだって今オイラが人類領で動いてることを悟られたくねェ。カリーナに別の場所で同時に転移陣起動を指示してたのもあってよォ。ホントは撤退しようとしてた。だがな……オイラは見つけちまった」

「……何を見つけたってんだよ」

「ここに来た甲斐。魔王軍が……オイラが最も求めていたモノ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()────」

 

 言葉を区切り、フォルクルスが腰を上げた。

 テーブルを挟んで座る俺に、ずいっとデカい顔を被せるように寄せてきて。

 俺の目を、真正面から見据えて。

 全身から本気の殺気が迸って。

 

 

「──────()()()()

 

 

「オイラはテメェさえブチ殺せれば、あとは何だっていいんだ。テメェを殺してェ。テメェがやることなすこと全部ひっくり返して吠え面かいて悔し涙流して息を引き取ってもらいてェ。最後に何も出来なかったことを後悔しながら死んでもらいてェ。だからオイラは人類側に寝返る事はねェぜ。お前が魔王軍に寝返らねェ限りな」

「……っ!」

 

 突き刺すような圧を受けて……俺はぎゅっと眉根を強く寄せ、フォルクルスのツラを睨み返すことで堪えた。

 カジノ全域に広がる様な殺意が、隣のリンに、後ろのイレヴンや他のみんなに、離れた所のバニーガールや他の客にも伝播し……大いにカジノ内が騒めいて。

 

「だからよ、映写魔法投影板にテメェのツラが見えた瞬間に……オイラはプランを変更した。ここからバレずに逃げるというそれじゃなく、ここでテメェの()をできる限り観察することにした」

「なんだと?」

「テメェの力……かつてバアルの分体の一撃を捌き、ヴィネアの全力の魔力砲を堪え、闘技場にオイラが事前に送り込んでたゼパルが乗り移ったそこのヒノクニの女を御し、オイラとカチあったグランガッチでも策を台無しにして……魔王サマとニーズヘッグの襲撃すら乗り越え、恐らくはアイムもやられた……その謎の力。どういうモンなのかを観察することにした。そして、テメェはオイラのそんな策に気付くことなく乗ってきやがった」

「ちっ……」

 

 そういうことか。

 フォルクルスの言葉で、俺も遅れて推理が進んだ。

 コイツがわざわざルーレット台で大勝していた俺に近づいてきた理由。

 俺が時間稼ぎをしようとして呼びかけた一服に付き合ったのも、その後にした質問に答えるためにもゲームを持ち出してきたのも。

 すべては────俺が持つ力、勘という異能(イーリーアウス)の観察を果たすためか。

 

「やっちまったなァロックよ。今日のコレでオイラはだいぶテメェの力について推理が進んだぜ」

「俺が余りにも美女にモテすぎて無意識に嫉妬してた事にようやく気付いた?」

「ケケケ。ゲームは適当にやって、オイラの質問には雑に答えてりゃよかったのによォ。調子乗って勝ちまくっちまったもんなァテメェはなァ!!」

「お前が心理戦弱すぎて負けられなかっただけなんだけどな」

 

 しまったな。

 全然気づいてなかった。俺の勘は、そこに答えを出していなかった。

 俺が裏で為したいトゥレスおじさんの時間稼ぎ。そこに勘を全力で傾けていたから、フォルクルスの真の狙いである俺の能力の観察というそれを察せていなかったのだ。

 

 確かにそうだ……俺の勘は普段から公言してるし、最近は王族にも信じてもらえるくらいに実績も積んでるけど、俺の勘が異常だという事を魔王軍は知らないはず。

 なんで俺が生き残っているのか、色々ひっくり返してたのか……フォルクルスはその情報を引き出そうとしていやがったんだ。

 

「単純に運がいい……ってェわけじゃあねェよな。誰よりもツく様なそんな能力なら、そもそも配られたカードがオイラより全部多い数になるだろ。負けるはずもねェ……何もしなくても最高の結果に至る、そんなどうしようもない理不尽じゃあねェのはわかった。つまり付け入れる」

「語るじゃん」

「相手の思考を読むっていう能力がディーラーの姉ちゃんとのルーレット勝負で推察されたがこれも違ェなァ。なぜならテメェはオイラの真の目論見であった力の看破まで考えが及んでいなかった。そもそもそんなことが出来んならこんなゲームをやる事もなくオイラの裏の企みも全部看破して勝負に乗る理由もねェもんな。魔王サマとの遭遇戦で起こした奇跡にも合致してねェ。考えを読む系の異能じゃねェのははっきりしたな」

「想像逞しいわねお前」

「であればもうテメェの力は判断力しかねェよな? 今持つ情報っていうそれを超えて、最善手を導き出せる能力。ほぼこれで間違いねェ。だからこそオイラのKに2を繰り出して唯一の最適解となる6勝を果たしている。それにこのカジノ内でオイラのツラを見た瞬間に……テメェが口元を手で押さえてたのは見た。アん時だろ? 愛妻家のオジさんに連絡を打診した瞬間はよ。その場に無い情報でも関係ねェ、限られた範囲の最善手をテメェは理解(わか)るんだ。未来に起きうる事象を予言する程度のアブソリュートの権能なんかとは比較にもならねェ馬鹿げた力だぜ……バケモノがよォ」

「……よく見てやがんな」

「ケケケ!! ……だが()()はある。事実、オイラは今日、オイラの企みを果たした。持ち掛けたゲームは負けてカリーナに託した策も失敗に終わったがよォ……ロック=イーリーアウスというガキへの、魔王軍にとって最も厄介な存在になるであろう人間の能力に対し、理解を深めるという結果は果たした。十分すぎる戦果だ。わざわざ遠方まで出向いた甲斐があったってもんだぜェ!! ギャハハハハハ!!」

「笑い声キモ」

 

 やられた。

 コイツはやっぱりどこまでも俺と気が合いやがる。

 俺がゲームの裏で企んでいたように、コイツもゲームの裏に企みを含んでやがった。

 お互いが企んでいたものを、お互いに成功させた。

 俺は勘が導くままにここに来てフォルクルスの存在を把握して、トゥレスおじさんにそれを繋いだことで人類領に繋がる転移陣を迅速に潰すことができて。

 フォルクルスは、転移陣を潰されカリーナが再び囚われたことと引き換えに……俺の能力についての理解を深めた。

 

 まぁ俺の勝ちだな。(思考の転換)

 転移陣は繋がってりゃ近隣の街が襲撃されて人の命が奪われて人類軍にめちゃくちゃ不利益被ったかもしんないけどさ。それが止められたわけで。

 その代わりフォルクルスは俺の事を理解して喜ぶとか言う厄介ホモに変貌したわけだけどさ。

 我レベル12ぞ?(真顔)

 

 俺なんぞに執着してなんなんこいつ。バカ丸出しじゃん。

 有利なのは俺のほうですわ。

 俺とお前の関係は常に俺が上!! お前が下だ!!

 

 と、一度メンタルリセットすることで脳内で勝利しておいた。

 無駄な努力お疲れ様です。お帰りの際は足元ご注意くださいね。

 コイツが俺がいる限り人類軍に協力しないのも分かったし、アブソリュートが不在だっていう情報まで零れて来たしね。俺の勝ちです。

 

「くっだらねー。質問の答えは聞けたからもう帰っていいよフォルクルスくん。次会うことはないだろうね。うちのイレヴンが殺すから」

「ケケ……ホンットに最後までつれねァなァお前さんはよ。んじゃ勝負も終わったことだし帰るかァ────次は殺すぜ。アバヨ、ロック」

「ウっザ」

 

 カジノを去っていくフォルクルスの背を、鼻で笑って見送った。

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