勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「ふわぁぁぁ……」
『ふみゃぁぁ……』
カポーン、と謎の擬音が生まれる大浴場にて、湯船に肩まで浸かって大いにリラックスを果たしているのが今の俺です。
近くには手桶に浮かべたミャウもいる。デカい手桶が準備されてて助かりますわ。
源泉かけ流しの温泉とのことで、大変まろやかな肌触りがする。
女性陣のお肌によさそう。ケンタウリスのみんな今頃喜んでるやろな。
「のんびりしてんなロック。隣、邪魔するぜ」
「おー」
「ほう、ミャウちゃんはこうしてお風呂に入っているのか。カトルから話は聞いていたが、本当に水を恐れぬ猫なのだな!」
『みゃ!』
そして俺よりも髪が長く洗うのに時間がかかっていた二人、カトルとヴァリスタさんも続いて湯船に入って来る。
カトルは相変らず周囲の視線を集めまくりだ。まぁ腰つきはメスだし髪をかき上げてまとめてうなじ晒してるしな。今日宿泊した男性客の性癖が破壊されていないといいですね。
カトルが俺の隣にちゃぷりと浸かり、さらにその向こう隣りにヴァリスタさんも入って、一先ずみんなで温かい湯を堪能して疲労感を伴った吐息をついた。
「……それにしても、まさかこんなところで再びフォルクルスと出会うことになるとは思わなかったな」
「本当ですね」
「っすねー。まぁ何も出来ずに帰りましたけどねあのバカ」
落ち着いてからヴァリスタさんが今日の出来事を零す。
カジノでみんな楽しんで遊んでいたところで、俺の勘に響いていた原因であるフォルクルスとの遭遇イベントが発生した。
まぁそれ自体はヴァリスタさんが言ったように、トゥレスおじさんの活躍で転移陣を人類領に繋がれることもなく、俺の勘の正体がバレたという手落ちはあれどもそれなりにこちらも聞けることを聞けて、負け犬のように逃げ帰らせたのでこちら側に被害は無かったわけだけど。
フォルクルスが俺とのゲームを終えてカジノから尻尾撒いて逃げ出していったあと。
すぐにイレヴンやノインさん、ヒルデガルドさんやメルセデスさんやマルカートさん……搦手も使えるみんなが後を追うようにカジノを出て。
カジノから出ても戦闘行動はできないが、スキルは使える。なのでスキルを色々使ってフォルクルスを探し出そうとしたのだけれど、結局見つからなかった。相当隠密に長けてやがるらしい。若しくはいつでも魔族領に戻れる様な転移の方法があったのか。
そんなわけでフォルクルスは逃がしちまったわけだけど、トゥレスおじさんとしてはそこは織り込み済みの事で。俺の勘でもここでアイツを逃がしたことで致命的な何かが生じる様な感じは受け取っていなかった。
遭遇は終わったのだ。俺の勘に響いていた王都の、人類の危機は一先ず
なのでトゥレスおじさんや王族の皆さんにも確認したうえで、俺らロック一行は引き続きエーリュシオンのホテルを堪能することにした。
一泊してゆっくりするくらいのお休みあってもええやんけ! と俺の方から強くお願いしたところ、特段王都のほうでもトゥレスおじさんも急ぎ人手が必要なことはなく、万が一の呼び出しには応じられるようにしておいてもらえればゆっくりしてええって許可もいただいたので、こうしてのんびり温泉に入っているわけである。
今夜ヒルデガルドさんをロイヤルなホテルで抱くんだからそれを果たすまでは帰るわけにはいかないんですよ。(曇りなき本音)
「ああ。ロックくんとトゥレス殿の活躍で一先ずの被害はなく撃退できたことは喜ばしい事であったが……」
「でもあいつ、前にグランガッチで会った時よりも強さを増してましたよね。レベル200超えてやがった」
「え、そうだったん?」
『みゃ……』
「間違いないだろうな。スキルも戦闘も出来ぬ場での遭遇、私もカプチーノとカノンを悟られずに避難させる前にちらりと一度見ただけではあったが……明らかに纏う気が強くなっていた。相当に実力を増しているだろう。少なくとも、今の私が
「えぇ……」
しかしそこでカトルが混ざって来て、ヴァリスタさんも補足するフォルクルスの強さ。
俺はそういう相手の強さを感じ取るのとか苦手なのでまったく気づいてなかったが、フォルクルスの野郎は前にグランガッチでフルボッコした時よりもだいぶ強さを増していたらしい。
前にグランガッチで戦った時はレベル200の上限だったんだろうけど、アイツらも俺らと同じように限界突破を果たしてるってわけか。
まぁ限界突破の条件である、限界の壁を超えている相手との戦いって意味ならアイツら魔族はいつでも魔王ダブレスちゃんと戦えるわけだもんな。
そう考えるとニーズヘッグの他、バアルやヴィネア、他の幹部も含めて限界突破してる可能性も高いな。
こっちが限界突破してるのにダブレスちゃんが備えたって事なのだろうな。
やだもーめんどくせー!!
「つっても……俺の所感ですけど、圧倒的な差が生まれてるって感じでも無かったですよ師匠。1対1でも負けたくねぇけど……複数で相対するようにして、隙さえ作らなきゃ押し切れる強さだと思います」
「ははは。それは君が御母堂より授かりし新たなる力に目覚めたからだよカトル。今や君の実力は私を軽く超えているのだ。だがそれがいい。だからこそ、私は君
「……はい。母さんから貰った魔力炉心と、親父から継いだ血と、イルゼと……ここまで強くしてくれたみんなの為に。俺、負けません。フォルクルスにも、魔王にも……絶対に勝ちたい。頑張って平和を掴み取ります!」
「ああ! そして平和を勝ち取った暁には……私が見たいと望む、倖せな光景が広がっているのを心より願っている。私もそのために全力を果たそう! ……とはいえずっと頑張り続けているというのも難しい話。メリハリを意識して今日はゆっくり休み、明日からまた精を出そうか」
「はい!」
「……二人が真面目な会話しすぎてこれからヒルデガルドさんの部屋にどう夜這いしようか考えてる俺が頑張ってないみたいじゃん」
「頑張れよロックも」
「メリハリの達人だなロックくんは」
『みゃあ』
ヴァリスタさんとカトルがなんだかとても真面目な話をしていて恐縮してしまう。
俺は今夜ヒルデガルドさんの部屋にお邪魔してナニをするためにどんな口説き文句から入ろうかずっと考えているというのに。
フォルクルスだってメンチ切られてちょっとビビった所はあるけどまぁどこまで言っても結局あのアホライオンはバカだからな。何とでもなるわあんな奴。イレヴンたちが何とかしてくれるわ。
俺は俺がやりたいことをするだけだ。その結果俺の魔力が満タンになり勘が最高潮になって魔王軍は滅びてバアルとフォルクルスは死にそれ以外のデカパイ魔族は俺のハーレムに堕ちて世界に平和がもたらされる。
俺は常に前向きだ! 怯えろ魔族!!
「ほんじゃ俺先に上がりますわ。ミャウも乾かさなきゃだし」
「はいよ。ヒルデガルドさんに殺されないようにな」
「はは……まったく、英雄色を好むというがロックくんはまさしく体現者だな。ほどほどにしておきたまえよ」
「どうかなぁ!」
『みゃ!』
たっぷり温泉も堪能して、俺はミャウを手桶ごと拾い上げて浴場を後にした。
ここから先は欲情タイムです。浴場を終えての欲情。巧い事言ったぜ俺。
※ ※ ※
【side 女湯】
女性の入浴は男と比べれば大変に手間が多い。
それぞれが丹念に体を洗う他、自慢の髪を整える時間もある。髪の手入れは女性のたしなみだ。
さらにケンタウリスの場合は団長の美しい白毛の馬体を洗う時間もあり、今回は盲目のカプチーノも共に洗い場にいて、さらに大人数。
随分と姦しくも騒がしい浴場内に、百合色が華々しく煌いていた。
「んしょ、んしょ……」
「ん……リン、髪を洗う時はこのシャンプーを使うといいぞ。ドラゴニュートの髪は人間種のそれと比べて魔力を蓄える性質があるため油分が多い。人間向けのそれだと中々泡立たぬだろう。私が愛用しているシャンプーだ。寝ぐせもつきにくくなるぞ」
「え!? そんなべんりなのあったの!? はやくおしえてほしかった……!!」
「確かに、リンは髪を洗う時に苦労していましたね」
「泡立ちにくいんだよな~リンちゃんの髪」
「大変でござったな。ヒノクニには黒髪に合う椿油もあり申す。風呂上がりに試してみるでござるか?」
「うん! おねがい!」
「……リンちゃんも随分女の子らしくなったわね」
「前にネレイスタウンで一緒した時はまだまだ子どもって感じでしたけどね。いや一部分は圧倒的でしたけど。キレそうですけど」
「…………ロックの嫁になったことで、女としての自覚が出た、ということか……」
「教育の為にってお兄ちゃんがリンちゃんの髪整えてたみたいですよ、出会った頃は。あんななのにお兄ちゃん髪整えるの得意なんですよね。孤児院でも私とか髪が長い子の髪をまとめるの得意だったんで。そのくせ髪の扱いが分かってないんだよなぁ……」
「ふふ。何だかロックくんらしいわ。手先が器用で、出来ることが多いのに、肝心なところが抜けてるって言うか……あ、カノン。もうちょっと耳の傍のところ……んっ、そうそこ……」
「他に痒い所はございませんか、カプチーノ様」
「ふむ。リンにはロック少年が、カプチーノにはカノンが、私にはマルカートがいて……なんだか随分と贅沢な洗体をしているな、私たちは」
「団長、遠慮なさらずに痒いところがあればおっしゃってくださいね」
話題は二転三転としながらも、これほどの高級感あふれる大型の温泉ともなれば浮ついた気持ちは出るというもの。
先程までのカジノの一幕……将軍格フォルクルスとの遭遇による一悶着でかなり気を揉んだことは事実だが、しかしその疲労を癒そうと切り替えて温泉を楽しむ女性陣の姿がそこにはあった。
「ふぅ……良いお湯です」
「ここの源泉かけ流しいいですよね~。気持ち
「あー……肌にいい感じするわねここのお風呂も。すべすべになりそう」
「ぶぇー……」
「ふふ。今夜に備えてよく肌を温めておかねばな……」
それぞれが身を清め終え、髪をまとめてうなじを晒しつつ、大人数用の広々とした浴槽に身を浸す。
いくつもの玉のような白い肌と、いくつもの大いなる実りが湯の上に浮かび、ティオとソプラノの目が曇った。カプチーノは特に気にしていなかった。
落ち着いた時間が流れて……しかし、ここにいるのは
当然にして話題に事欠くことはない。
まず声を上げたのは、ケンタウリスのアルトであった。
「……今日のカジノの事、なんだけど」
「ん…………どうした、アルト。大負けしたのを、まだ根に持ってるのか?」
「違うわよシミレ! 負けたのは確かに悔しいしいつかリベンジしたいけど! 違くて……ロックの事よ」
「ん。お兄ちゃん?」
「マスターが何か? ……いえ、何かと表現はできないほどに今日のマスターは色々しすぎていましたが」
彼女が提起した話題は、本日のカジノ内で目の当たりにしたロックの事。
ルーレット台でバカ勝ちして場内でも一躍の有名人になり、そしてその先……魔王軍の将軍格、獣皇フォルクルスと舌戦の一騎打ちを果たした少年の事を。
「アタシさ……そりゃ、魔族とは前の戦争の時でも戦ったし。幹部級のヴィネアも見たことがあった。レベルも200になって……王都でもかなり上澄みだって言うか、それなりにプライドがあったの。王都最強のガードナーとして、どんな敵からも守り抜いてみせる。そんなプライドがあったの。でも、アタシは……今日初めて、将軍格の魔族を見た」
「……確かに。我らケンタウリスは魔族との交戦経験は多かれども、将軍格との相対は初めての経験でございました」
「そうだな。ヴァリスタ殿やカトル少年などは一度グランガッチで相対しているし、ティオはトゥレス殿のご自宅でアイムと遭遇しているが……私も実際に目の当たりにしたのは今日が初めてだ」
「…………アタシ、
「アルト……」
「…………オレもだ。オレも、近い感情は覚えていた。オレもアルトも、ここ最近でかなり力を伸ばせていた。だからこそ感じた、フォルクルスとの格の違い、壁の高さ……ヤツは、恐ろしい。その実力も、知略も…………」
「……」
「……ふむ」
「んー?」
アルトは弱音を零した。
今日、ケンタウリスのティオを除いたメンバーは初めて将軍格の魔族と相対した。
圧倒的な猛者の気配。理性という名のヴェールに包んだ、むき出しの殺意。
ロックの後ろに立っていただけの、勝負を見守っていただけのそれだというのに……恐怖に呑まれそうになる心を、抑える事しかできなかった。
「────でも、そんな奴を相手に、ロックは一歩も譲らなかった」
そして、だからこそ。
そんな化物と相対して互角に渡り合ったロックが。
「……アタシ、怖いわ。ロックの事が」
心底、恐ろしいと。