勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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181 結局のところ全員ホモでは……?

 

【side フォルクルス】

 

 

 全身に満たした隠蔽系の魔法を解除し、魔族領の自室にあるデカい石造りの椅子に腰を下ろした。

 まったくひでェ息抜きになっちまったもんだ。

 逃走経路を悟られぬように何重にも罠を張った上で、ローティリッチの魔族専用の転移陣を使って戻ってきたが……もう二度と使えねェな、あの転移陣は。

 カリーナに任せた転移陣の再起動だが、アレでさえ逆探知されて魔族領へのルートが開通しちまってるんだ。

 それもいずれ潰さなきゃアならねェが、あっちはまだ魔王軍の本陣から遠い所に設置したからな。まだ急ぎじゃねェ。

 それよりも先に、ダイレクトに中心部に接続されてるローティリッチとの転移陣が万が一にも逆探知されないようにしとかねェとなァ。やれやれ。

 

「ふーゥ…………」

 

 深くため息をついて、先程のロックとの遭遇を反芻する。

 誰よりも渇望した、誰よりも出会いたくないクソ野郎との出会いを。

 

(あの野郎……以前よりもさらに厄介になってやがった。使える(手札)が増えてやがる。やりたいことをやってくれる面子が増えりゃあ増えるほど面倒くせェ……チッ。どうやって殺したるかなァ……)

 

 相変らずのクソ野郎だった。

 オイラとどこまでも気が合うクセに、くっだらねェエロ頭で日々を過ごしているくせに、ガチになったらあらゆる最適解を導いてきやがる。

 それが万能ではないことを確信することも出来たが、しかし殺す難易度は変わらずバカ高い事も同時に理解した。

 アイツを殺すなら……そうさなァ。あらゆる択にアイツの損がある様な……どんな択を取っても死が確約するような状況にするか……何をどう描いていくかなァ……。

 

「……フン」

 

 くっだらねェ。

 103通りほどの今ぱっと思いつく策を脳裏に走らせ、全部無駄だなと吐き捨てた。

 パっと思いつく案で殺せりゃあ苦労はしねェや。アイツ相手にするにゃじっくり考えねェと無駄だろう。

 面倒くせェヤツだぜまったく。

 

(────ま、今は一刻も早くヤらなきゃならねェ事があっからな。まずはそっちか)

 

 思考を切り替える。

 リゾートから戻ってきてすぐだが、オイラには急いでこなすタスクがあるのでそちらを優先した。

 ロックとの勝負の中で乱入して来たトゥレスとか言う男。

 まためんどくせェヤツが出て来たもんだ。

 アイツの察しが良すぎたせいで、ロックの最低限の指示でオイラの策の一つである人類領への転移陣の設置が潰された。

 アレが通ってりゃ随分と色んな策が描けたんだがなァ。クソ野郎が。

 

(いいさ……転移陣が潰れた分には構わねェ。またどっかでタイミング作りゃいいだけの話だし……オイラはオイラで得るもん得てきてっからなァ)

 

 転移陣の開通は手間ではあるが、いくらでも次の手は打てる。

 ローティリッチに行ったオイラの方が本命さ。

 結局探しに行ったアブソリュートは影も形もなかったし、ロックとの戦いで情報を軽く零しはしたが……得たものは大きかった。

 まずロック。コイツのヤバさを再認識して、その異端たる力の理解を深めることが出来た。

 そして、あの場では欠片も匂わせなかったオイラの()()()()も向こうに察されてねェ。

 隠し通した。嘘を嘘と見抜かれても、ホントの事だけ言ってたっつっても、隠し通せるもんはあらァな。

 ケケ。テメェの勘も万能じゃねェんだぜロックよォ。

 楽しみだな、その時がよ。

 

(でもやっぱカリーナは回収しなきゃだよなァ……あんなでも幹部だ。いるといねェとじゃオイラの作戦のやりやすさが違いすぎるしなァ……)

 

 さてしかし改めて思考は切り替えて、急ぎやらなきゃならねェことに取り掛かる。

 カリーナの件だ。

 アイツはトゥレスが『捕まえた』と言っていた。つまり殺されてねェ。

 生きてさえいれば……前にオイラがやったように、アイムがヴィネアをそうしたように、将軍格のみが使える回収魔法ですぐここに転移させることが出来る。

 

(────だがなァ)

 

 ()()()()()()()()()()()()()

 それがどのような意味を持つか、オイラは無い頭を使ってその先まで考えた。

 

「……メンドくせ」

 

 誰もいない自室にて、魔法を紡ぐ。

 

「────術式入力。シカト(アンチ)(ランダム)めんど(コンプリケーション)見えない(ステルス)探すな(サーチアンチ)一度っきり(ユニーク)……」

 

 通常の回収魔法に加えて、三重に探知妨害魔法を重ね、その上から一度きりのランダム術式を入力し、同調すら不可能な状態にして。

 ギリッギリ術式として稼働する複雑な式を作ってから、回収魔法としてそれを発動する。

 

「……やっぱなァ」

 

 オイラが編んだ術式を、探知魔法がガリガリと食い破らんと幾重にも術式浸潤浸食を果たしていた。

 なんも対策せずに回収魔法をしたら、何の違和感も持たせないままにこの術式が解明されて、さらに逆探知してオイラの位置まで判明されるような……そんな木馬に仕立て上げてやがったな、トゥレスとかいう野郎は。

 ロックは頭がおかしいヤツだが、トゥレスは頭がキレる奴と見た。

 カリーナが捕まってからそこまで時間が経ったわけでもねェのによ。

 人間の分際でここまで複雑な術式をこの短時間で組めるたァ……なるほどバケモンだ。

 ()()()()()()()()()()()()

 

「う…………はニャッ!? あれ、戻ってきてるにゃ!? フォルクルス様!?」

「おォ」

 

 予想通りに、意識を()()()()()カリーナがオイラの顔を見て目を白黒させている。

 意識を取り戻した。つまり捕まった時には気を失ってた、ってことだよなァ。

 じゃあもう推理は追いついたぜ。まったく度し難ェ野郎だ。

 ロックが知ったらキレんじゃねェのか、()()はよ。

 

「にゃ、ごめんなさいにゃーー!! 転移陣起動に失敗しましたにゃ!! 起動まで上手く言ったと思ったらなんか人類領から男と女が逆に転移して来てぇ……」

「おォ、分かってるぜェ。安心しなカリーナ、アレが失敗したからってそんな痛手でもねェしよ……」

 

 召喚陣の上で土下座し始めたカリーナにオイラは近づく。

 

 

「にゃ……そう言ってもらケぽっ──────え?」

 

 

 

 心臓を貫いた。

 

 

 

 一撃。

 胸の間に突き刺したオイラの太い腕が、カリーナの背中から突き出て、心臓を握っていた。

 ぬるったるくトクトクと動く心臓を掴む手にきゅっと力を籠めて、自爆魔法が起動する前にべちゃりとトマトのように握り潰す。

 

「……ま、こうなるよなァ」

「あ…………カ、ァ────」

 

 ずるりと血まみれの腕を引き抜くと、何が起きたか分からないという表情のまま赤色の大輪を咲かせて後ろに倒れるカリーナ。

 もう間もなく死ぬだろう。獣人系は人類魔族問わずタフだが、心臓を貫かれりゃ10秒も持たず死ぬ。

 血まみれの腕を振るって血を飛ばしながら……しかし、やはりオイラの読み通り、カリーナの全身から隠蔽された探知魔法がその機能を次々と停止し始めた。

 

「ケケ……()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。黙ってりゃよかったんだ。そうすりゃオイラも転移陣の開通が成功したモンと思ってもっと時間稼ぎできただろうし……そもそもカリーナを殺さない理由が無さ過ぎるだろ人類軍に。アイムがそっちで使われてんだからよ。聞き出す情報もねェ、魔王サマに生き返らしてもらう事も出来ねェ幹部のカリーナを生かして捕らえる理由があるか? ねェよな?」

「…………ご、ぼッ…………ハッ…………」

「つまり()ってことだ。トゥレスが抜け目のねェヤツならヴィネアがアイムに回収されたこともオイラが一度カリーナを回収したことも聞いてるだろうからよ。転移陣の逆探知が出来るようなヤツならやりかねねェと思ってた。だからこそ回収魔法も簡単には組まずに発動して……カリーナの体にも術式が組まれてると推察できた」

「────────」

「クク……しっかしよ。腐っても幹部のカリーナに悟られずにここまで術式を仕込むとはな。盗聴に盗視に……自爆系のそれもありやがる。倫理観とかねェのかコレ仕込んだ奴はよォ。体切り開かなきゃァ組めねェ術式ばっかりだァ。カリーナを切り刻んで……いや、流石に昏睡させられててもこんだけ切り刻まれちゃカリーナだって目覚めらァな。痛みもなく肉体を斬る技……ヒノクニにそンなんあったなァ。『()()()()』だったか。刀剣術にも精通してんのかよトゥレスとやらはよォ」

 

 死に向かうカリーナの体を見下ろせば、出るわ出るわ体に仕込まれた魔法の数々。

 他人にかける魔法はかけたヤツ自身の魔力で性能を保つ。

 だからこそカリーナのどてっ腹に風穴を開けてやり、一度魔力をゼロにしてやって、かけられた魔法を無効化させている。

 魔力切れのエフェクトがこんなに出るとは……マジで躊躇い無いなトゥレスとやらは。完全にカリーナを無自覚のスパイ兼爆弾に仕立て上げてるじゃねェか。

 全く面白いヤツが人類側につきやがったぜ。トゥレスってのはこういう事してくるヤツね。OKOK。

 

「……っと、そろそろ死ぬな。うし……『テオヒール』」

「────ックハッ!? カハッ、ゴボッ!? ゴホ、ぉげぇぇ……!!」

 

 カリーナの命が潰えようとして、その身の内にある魔力も完全に枯渇し、同時にトゥレスに仕込まれていた魔法も潰れていき……最後まで粘っていた自爆魔法が停止したのを確認して、オイラはカリーナに回復魔法を掛けた。

 将軍格が使える、最も回復量の高い治癒魔法。

 闇のマナを大量に消費するのだけが難点だが、ここでこれを使わねェとマジで死んじまうからな。死なせるために呼び出したワケじゃねェ。

 今は魔王軍は人手が足りねェ。闇のマナも足りねェし将軍も足りねェし、足りない祭り開催中だが……その中で最も大切なモンは人手だ。

 人手がねェとあらゆることがのっぴきならなくなっちまうからな。

 

「げっ、ごっ、ぎぎぃィィ……!! ごほぉっ!? ガッ……ゲハッ……!?」

「おー、心臓再生させてっから相当な痛みだよなァ。悪ィなァカリーナ、テメェの体に仕組まれた自爆魔法やらを解除するにはこれが一番手っ取り早くてよォ」

 

 胸に開いた大穴を塞がれ、心臓が再生し、肺に詰まった血塊を口から何度も嘔吐し、死にかけて弛緩した股からションベンを垂らし、激痛で血に塗れた床でよじれるカリーナを眺める。

 ……こういう状態の(メス)って()()よなァ。

 でっけェケツ揺らして、死に際でただ命を繋ぐためだけに全身を反射で動かして、外ヅラも気にすることなく悶える姿がよ。

 生命の神秘ってのを感じるわ。

 綺麗な女ってのは血塗れでも美しいモンだ。

 

 ……ムラムラしやがんな。

 ロックと舌戦繰り広げて、一仕事終えて、血の匂いを嗅いだからだろうか。

 いつの間にか随分とオイラの分身は怒張を果たしていて。

 

 ケケ。

 そんじゃカリーナには作戦失敗した罰ってことで、ちっとスッキリさせてもらうか。

 

「よっと」

「かはぁーー、かはぁー……んっ!?!?」

「────フンっ」

「に゛ゃああ゛あ゛ア゛ア゛ッッ!?!?」

 

 カリーナのデッケぇケツを掴んで折檻棒を叩き込み、そのまま遠慮なしに腰を動かす。

 いろんな液体が混ざり合ったねちゃつく水音を室内に響かせながら、雑にカリーナを使い始めた。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

【side バアル】

 

 

「失礼する────む」

 

 伝令のためにフォルクルスの部屋を訪れ、ドアを開けると……そこにはむせ返るほどの血の匂いと、石造りの椅子の上で情事を果たす二人の姿があった。

 

「……お。どしたバアル。なんかあったかァ?」

「ッ……!! ッ……~~~!!」

「いや…………邪魔したか」

「あー、かまねェかまねェ。用件いいなァ」

 

 己の姿を見ても動きを止めぬフォルクルスに、息も絶え絶えなカリーナが顔を伏せて堪えている。

 変わらぬ豪快さに内心でため息をついてから、簡素に用件だけを伝える。

 

「魔王様より伝令だ。ベルゼビュート様の訃報を受けて……また、アイムの未帰還を受けて、将軍の席に我とヴィネアが昇格することになった」

「ほォ」

「同時に、席が変動となる。ニーズヘッグが第一席、貴公が第二席、我が第三席に甘んじ、第四席がヴィネアだ。ベルベッドとアブソリュートは魔王軍への合流を果たしておらず繰り下がった」

「ほーん。昇格おめでとさん」

「受け取ろう。貴公も席の昇級、お喜び申し上げる」

「どーもォ」

「……話は以上だ。失礼する」

 

 将軍格への昇格。

 ベルゼビュート様の配下たる我と、アイムの配下たるヴィネアは、魔王様の判断により将軍格へ席を格上げされた。

 それに伴い、部下であった我らには元の将軍が使っていた権能の一部が継承されたが……それらについて打ち合わせるには、余りにもそぐわぬ状況であろう。

 堅苦しい話を望まないフォルクルスに、ここで無理に問答を求めても意味がない。

 そう判断し、背を向け足早に部屋を去ろうとしたところで。

 

「……()()()()()()()ぜェ」

「ッ!!!」

「ッケケ、そのツラ!! まったくお前マジでイカれちまったなァ……気になるか? ロックの事がよ」

 

 ロック=イーリーアウスの名がフォルクルスの口から零れ、思わず振り返りフォルクルスを見据えてしまった。

 我が宿敵。英雄と称するに相応しい、運命を覆すほどの力を持つ少年。

 アレだけは必ず己が殺すと誓った相手の名を、わざと我に向けて零したフォルクルスは、快楽からではない笑みをにやりと作った。

 

「アイツの力の秘密を多少は感じ取って来たぜェ……クク、教えてやろうか?」

「……無用だ。だが奴だけは我が殺す。それまで我は力を研ぎ澄ませるのみ」

「あっそ。ケケケ……アイツマジでタラシだよなァ。オイラもアイツぶっ殺したくてたまんなくてよォ……早い者勝ちだぜバアルよ……おっほ!」

「~~~~……!!」

 

 ロックの話を始めたフォルクルスに対し、我はそれを聞くことを拒んだ。

 事実、フォルクルスがロックと遭遇していたとしても、それを耳にすることすら妬ましい。

 あ奴だけは我がこの手で滅ぼしてやりたい。そのために、執念を己の内に溜めるためにも、我以外の口からロックの名を聞くことすら苦痛の一部となっていた。

 そしてフォルクルスもまた同様の心持であることをその後に続いた言葉で察した。

 ロックの事を想うがままにフォルクルスは動きを早め、昂りをカリーナに注いだようだ。

 随分と粘着質なことだ。

 いや、それは我も変わらぬか。

 

 どうしても己が手で殺したくなる。

 そんな男だ、ロックは。

 

「今後の伝令は部下に向かわせる。魔王様からの命令を果たすのだな」

「お前さんもなァ。ジリ貧だが頑張って力合わせて打開しようぜェ……ハハハハ!!」

 

 再び腰を打ち付ける破音が部屋に響き始めるのを後ろ手に、我はフォルクルスの部屋を後にした。

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