勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
帰ってきましたわよ王都!
「見慣れた闘技場だ……」
「丸一日ぶりですね~」
『みゃ』
俺ら一行は一先ずいつも訓練している闘技場の転移陣に戻ってきた。
遠方の街への旅行からの帰宅といってもワープで一瞬だから風情も何もあったもんじゃないなってちょっと思う所さん。
こうさ……ネレイスタウンからの帰り道とかグランガッチからホエール山脈に行ったときとかって、イレヴンバイクで走りながらたまに野営とかして道行く景色を眺めながらの旅路を取ったわけだけどさ。
旅してる時は大変な所も多かったんだけど、それが急になくなってから改めて自覚したけど俺ってああいう旅路って割と好きだったんだなって。
いきなり雨が降ったり、知らない山とか川とか眺めたりしながら広ーい道をのんびり走るの結構好きだったんだなぁ……そうして目的地に到着した時のやったぜ感とか王都に帰って来た時の安心感とかも含めた時に初めて旅って黄金色に染まるんやなって。
いやもちろん便利になったのは間違いないし普通に使うんだけどね転移陣は?
でもこの後魔王を倒して平和を取り戻しても転移陣が普通に残っていたとして、そればっかり使って移動するのはなんか……個人的には微妙に無しかな。
イレヴンに乗って走ってもいいしリンに乗って飛んでもいいんだけど、自分の目で景色を眺めながら移動したいわなんか。
ダブレスちゃん倒したら冒険者稼業も再開するやろしな。そしたら嫁さんみんなと相談してからだけどまた片道2日くらいかかる遠征とかやってみてーな。
「さて……それぞれ一度拠点に戻って整理などもあるだろう。今日の訓練は午後からとするか」
「承知した! カプチーノとカノンを自宅まで送り届けてから私は戻ってくるさ!」
「我々ケンタウリスも色々荷物をクランハウスに置いてきてからになる。配慮に感謝する、ヒルデガルド殿」
「なに、私もやることがあるからな。トゥレスが潰したカリーナの件がどうなったのかも確認したいし、こちら側のカジノでの動きも報告してこなければな」
そんなどうでもいいこと考えてたら、ヒルデガルドさんが訓練のリーダーらしく一旦解散して再度集合という事で指示を出していた。
俺らは……まぁ持ち物はアイテムボックスに全部仕舞えてるし、家に戻らなきゃならない理由はない。そもそも転移陣でこれも速攻で帰れるし。
となれば訓練開始までの時間をどうするかって話になる。どうしよ。
「荷物は別に置いてくる必要ないよね俺らは。どうする?」
「そうですね……今回の遠征で最も大きかった出来事はやはりフォルクルスとの遭遇です。あの時どんな会話をしていたかはトゥレスも聞いていたので
「やっぱそう思う?」
「一応、私の小型通信魔動機で何が起きたか報告だけはしたんですが~。当事者からも聞き取り確認されるかもですし……トゥレスさんのほうもどうなったか、っていうのはまだ私も聞いていないので~。同席したほうがいいかもです~」
「ですよね。んじゃ行くかぁ……めんどいけど」
「ご苦労なされるな主殿は」
「だれよりもてきとうなのにね」
『みゃ』
「適当は余計じゃい!」
嫁さんたちに意見を求めたところ、やっぱり俺も参加した方がよかろということで。
ヒルデガルドさんに声をかけて了解を取り、一緒に王城に転移した。
※ ※ ※
さてここは王城にあるでっかい会議室。
ロック一行とヒルデガルドさんの他、今朝の会議に参加するのはディストール王、第一王子ウィリアム様、第五王子アンドレ様、第六王女マリア様、そしてトゥレスおじさんとワンさんとアイムだ。
「おはよーロックくん!! みなさんも!! リラックスできましたー? カジノ爆勝ちしたー? 私も行きたかったなー!! なんで誘ってくれなかったんですかーンモー!!」
「おはようございますワンさん! 誘わなかったのはすんません!! 昨日の朝の時点でお顔見なかったのでェ……」
「昨日はいきなりだったからな。お前の勘が響いていると通信で聞いた時点で俺たちも魔族領の調査を切り上げて急ぎ王城に戻り、何があってもいいように備えていた」
「野営でマスターの朝ごはん作ってたところで急に王都に帰るとか言い出したからちょっと喧嘩になりましたよ喧嘩に!! 私のご飯が食えねーってのかオラーッ!! て叫んじゃいましたよー!! 前のマスターみたいなことしやがってこの説明不足旦那ァ!! アイムが手伝ってくれてたから今回は調味料間違えなかったはずなのに!!」
「……料理下手なんすかワンさん?」
「愛嬌だ」
「でも結局カジノの方もなんかいい感じになったらしくて? よかったですねぇ!! ロックくんも将軍格と出会ってたらしくて? お疲れさまでした!! フォルクルスでしたっけ? 前の戦争じゃ顔も見てねぇ奴だなぁー。どんな感じでしたー?」
「なんか俺に歪んだ性欲を向けてくるホモライオンですわ。狙われてんすよ俺の尻」
「えーやだぁ!? あはははは!! 大変ですねぇロックくん!! あはははははは!!」
「マスターのお話でそこまでウケますかワン」
ワンさんがいるといつも空気が明るくなるよなぁ。(真顔)
挨拶してくれて、ついでにちょっと世間話しただけでもうすっかり会議室の空気が軽くなった。ディストール王も王子たちも苦笑が零してるし、マリア様は呆れたようにため息ついてるし。
こういう雰囲気の方が俺も気楽だ。真剣に重苦しい雰囲気で打ち合わせなんてしたら肩が凝っちまうからな。
ワンさんは何て言うか、天然って言うか、感情の振れ幅がMAXっていうか……全力で喜んで全力で楽しんで、んで全力で嫉妬して全力で悲しむタイプって言うか……喜怒哀楽が常に100%というか。
とにかく話してて飽きない人だ。トゥレスおじさんが惚れるだけあるぜ。
「……こほん。……そろそろよいかな? 昨日の件の会議を始めたいと思う」
「あ、はーい! ごめんなさい王様! お口チャックでーす!!」
「悪いな、ディストール」
「よい。かつて魔王を討ち果たした英雄の相棒にして、今はお主の相棒であり奥方だ。無礼も何もないというもの……それに、ロックやワンのような奇抜な者たちは嫌いではない」
「俺のワンを奇抜と言ったか……?」
「怒るのかそこでお主」
「トゥレスおじさんがおもしれー男になりかけてる」
ディストール王の一声で一先ず挨拶も終えて、席について昨日の件の報告から会議は始まった。
ヒルデガルドさんが順を追って何が起きたかを説明していき、俺達が補足する形で色々とあったことを報告する。
「────そうして私の次に青天井台に座ったロック=イーリーアウスは、世界一のディーラーとルーレットの勝負を始めたわけだ。……さて、どうなったと思う?」
「ははは!! ロックの事だ!! まぁ並大抵の勝負にはならなかったろうな!! 少なくとも初戦で敗北なんてことにはならなかろう、こやつの勘のよさは!!!」
「トゥレス殿が万感の信頼を置いているロックくんの勘……1点読みで当てるくらいはしそうだな」
「ふふ。ウィリアムの言う通り、ロック=イーリーアウスは持ち金1000万Gから全ての勝負で
「ッ…………80京Gにもなるわよ!? 那由他の彼方の砂粒を拾い上げるほどの途方もない確率のそれを!? ……流石はロック=イーリーアウス、といったところかしら」
「うわーロックくんすごいねー!? めっちゃ儲けてるじゃん!! いいなーちょっと後でスイーツ奢ってくださいよー!!」
「数字当ててただけなんすけどね。大したことでもなくてェ……」
「……恐ろしいな、実に。それで、まさかそのまま勝ち抜けたのか? リゾート施設全てが買い取れるほどの金額のはずだ。国際問題になりかねない額だが……」
「えっそんなに勝ってたの俺」
「自覚なかったんですかマスター」
「安心しろディストール。ロック=イーリーアウスが勝ち続けた理由はただ一つ、ディーラーの女にいい所を見せたいというそれだった。最後には負けの目を狙って全額負ける予定だったのだろう。しかしそこで事件が起きた。7戦目の途中からだったかな……」
報告の中で俺がエイシスさんとルーレットで勝負してた時の話も詳細に語られて、そこで王族の皆さまやワンさんがなんかめっちゃテンション上げて聞いてたもんだから……なんかこそばゆいわ!!
ぶっちゃけ7連勝目は負けるつもりだったのに勝っちゃったわけだし。俺も当時は気付いてなかったけどそんなに勝ってたんだね俺。国際問題になる金額て。
そんなに勝てるゲームだったんだなルーレットって。エイシスさんがクビになっちゃまずいし次の勝負は回数考えようかな。
でもなんかエイシスさんのあの雰囲気だと手を抜いたら逆に怒られる気がしてきて……なんて脳内で考えてると、話はその先、フォルクルスとの遭遇戦の事になっていて。
「……おおよそ、フォルクルスから聞き出した話は以上だ。ヤツが嘘をついていないかどうかは私とリンで調べたから間違いはないだろう。ニーズヘッグの件も気になるが……しかし一つだけ、確実に分かったことがある。ヤツはロック=イーリーアウスに異常な執着を見せているという事だ」
「そうですね。マスターを殺したいと述べた時のフォルクルスの圧……あれは本気の殺意でした。あの場が戦闘禁止、スキル禁止でなければ間違いなく襲い掛かってきていたであろう程の圧……今後はマスターを殺すためにあらゆる策略を仕掛けてくるでしょうね、あの男は」
「面倒の極み」
俺が聞き出した話の共有と、その先の俺への殺意の件になって。
どう足掻いても俺が魔王軍に狙われてて、その上フォルクルスからは最優先殺害対象になっちまってるんだよな……ってのが改めてわかっちまって。
ンモー。どうせ殺しに来るなら美女でお願いしたい所なんよね!! バアルとフォルクルスはマジでノーサンキューなんよね!!
話を聞いた王族の人たちもトゥレスおじさんたちも色々と思案顔だ。マリア様はすごいこう……心配してくれてる感じの眼差しを向けてくれた。
申し訳なくなっちまいますわよ。やっぱりフォルクルスとバアルだけは早急に殺さねばならんな!!
「……結局のところ、ロックだけは殺されてはならないという俺達人類軍の大前提は変わらない。魔王軍、ひいてはフォルクルス及びバアルからの執着が強い事は重ねて今後の作戦立案には加えておこう。絶対にお前だけは失うわけにはいかないからな」
「ん。や、トゥレスおじさん……それはちょっと違くて。俺個人としては当然ながら誰も失いたくなくてェ……みんなが無事に生き延びて平和を取り戻すようなハッピーエンドにしたくてェ……」
「安心しろ、お前のその想いを皆も分かっている。だからこそ全員で尽力し、勝利を確実なものにしていきたい、という話だ」
「助かってェ……」
トゥレスおじさんがさらになんか恐縮の塊になりそうな話を続けて来たけど、俺的にはなんか……俺だけ特別扱い! とかってのはすっごくノーサンキューだったのでその辺りふわっと話したらトゥレスおじさんもわかってくれていた。
あれですよ。もし仮に俺なんかを護るためになんていって俺のまわりの誰かが命を落としたりしたらマジで俺ガチ凹みする自信あるからね。
まぁ戦争なんでそんな甘い考えが通じない時がいつか来ちまうのかもしれないけどね。そうさせたくないって想いは絶対に捨てられないから俺。
多分、勝利の為に何かを割り切るって事が出来ない。
そんな風に育てられてない。
なのでどうせ求めるなら完全勝利GGというわけですね。(GG)
「……報告としてはこんなものか。その後は皆で温泉を堪能し、夜はそれぞれ思い思いに過ごした。ロック=イーリーアウスは私の体を存分に堪能したがな」
「アピールして来ますねヒルデガルド」
「ロックのこときにいった? ヒルデも」
「うむ。過去に抱かれた男共とは比較にならぬくらいベッドの上の女の扱いが巧い。私も夢中になりそうだぞ、リンよ」
「王族の前で赤裸々に性事情を語られるとは思わないじゃん?」
『みゃ……』
「ヒルデガルド殿まで堕とすとはまこと面白い男であるな、ロック=イーリーアウスは」
「本当に奥様方は一夫多妻でも文句はないのね……ふぅん……ノルンに遠慮しなくてもいいのかしら……?」
「ん~? ……アンナ姉様なんて?」
「何でもないわ」
「最近の若者の性の乱れすげーな!! どしたのこれミルさんの教育どうなってんのぉ……?? ええー??」
「ロックだけは特別だからあまり深く考えるなワン」
俺のハーレムも着実に王家に認知され始めたみたいですね。(真顔)
どうしてヒルデガルドさんは夜の事まで話に出したのぉ……? ええ……?
俺よくわからないよドラゴニュートの貞操観念がさぁ……!!
いやまぁヒルデガルドさんが乙女ちっくな思考ではないことは分かるけど!! ここで夜這いの件まで報告しなくてもよかったよねぇ!?
マリア様は赤面されてるしワンさんは驚いてるし……義理の姉とおじさんの奥さんにそんな顔されるのなんか……すっごく針の筵だわ今!!
どうしてこうなった??