勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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191 最近俺の妹の様子がおかしい

 

【side ティオ】

 

 

 悩んでいる。

 

「いくよーギガス兄ちゃん!!」

「ヤメロー!! ヤメロー!!」

「息合わせろよゼノ!! くらえーっロックにーちゃん!! トライアングルドリーマー!!」

「オゴーーーッッ!!」

「ロックお兄ちゃんがやられた」

「なんで孤児院の子達があの超人技を知ってるのか物凄く首をかしげるぞ~?」

「姫様……ああいうとんちきな技は、だいたいロックお兄ちゃんから教わるの……」

「面白いからみんな覚えちゃうんだー! サッカーのシュートとかも!!」

「そうなんだ~。なんか~……ごめんなさいね~なんだかね~?」

 

 子供たちと遊ぶお兄ちゃんを眺めながら、私の膝の上に座るミャウ……ベルベッドの体を手癖で撫でつつも、思い返すのは先ほどの事。

 聖堂でシスターがベルベッドに下した判決のこと。

 シスターは、ベルベッドの罪に対して、命を奪うのではなく、罪を清算するための償いを求めた。

 生きて善行を積むことが罪の清算になるのだと。

 

「待って!? 待って待ってロックお兄ちゃんの関節なんかすごい事になってるー!? なにこれー!?」

「やっわ!! 柔らかすぎてくにょくにょしてるぞロックにーちゃんの関節!? 極まってないぞー!?」

「テハハハー! 全身の関節を外せずしてシーフは名乗れん!! この俺に関節技をかけようなど片腹痛いわー!!」

「タコみたい……」

「わ~。視界に入れたくないな~今のロックくん」

「ロックお兄ちゃん、絞られてる雑巾みたい……」

 

 私はどうなんだろう。

 私は……隠してることもあるし、罪も抱えている。

 

 エルフであることを隠している。

 これはシスターの思い遣りによるものだし、隠すことで誰かが不利益を得ているわけではないけれど……私の本当の種族を、目の前の子供たちも、カトルも、王都の人たちも知らない。

 お兄ちゃんが成した、エルフの誤解の清算。

 それに対して、エルフの当事者である私は……何も出来ていない。シスターの思い遣りに守られ、お兄ちゃんの偉業に救われているだけで。

 守られてるだけなのかなって。私は育ての親のシスターに対して、何か返せるようなものは無いのかって……思ってた。

 

 罪を抱えている。

 お兄ちゃんを犯した。昏睡させて純潔を奪った。

 酒の勢いで、将来の結婚を約束してて……なんて言い訳にもならない。

 お兄ちゃんとの子どもが欲しすぎて、愛おしすぎて、失うのが怖くて、凶行に及んでいる。

 勿論今日の夜にでも誠心誠意謝るんだけど……きっと、お兄ちゃんは赦すだろう。

 私の罪を、罪とも思わず許してしまうんじゃないだろうか。お兄ちゃんだから。

 

 それでいいのかな、って思うようになった。

 守られて、赦されて……それでいいの?

 それで、本当の意味でお兄ちゃんの隣にいられるの?

 

『みゃ……』

 

 ベルベッドが私の顔を見て、心配そうな鳴き声を漏らした。

 ベルベッドはもう選んだ。己が罪と向き合うことを選んだ。

 お兄ちゃんに正体を明かしたくない、明かしたら守られてしまうから……という理由で猫の姿に戻り、またお兄ちゃんのフードの中にいる予定だが、有事には必ずお兄ちゃんを守るとシスターに約束した。

 魔王との戦いの中で、お兄ちゃんを守る最後の盾として働くことを誓い、そして生き延びた暁にはシスターの元で人を育てる事を誓った。

 裏切りは許さないことをイレヴンさんが重ねて伝えたし、ベルベッドにそのつもりがない事もリンちゃんが確認している。

 罪を償う場において、確かな償いを己に誓うことが出来ていた。

 

 私は?

 私は、このままでいいの?

 

 そんな、出口の見えない悩みを抱え始めたところで。

 

「────どした?」

 

 優しい声が聞こえた。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

【side ロック】

 

 

 なんか今日マジでコイツ様子がおかしい気がする。(真顔)

 

「どした?」

「いやお兄ちゃんちゃんと関節戻してから声かけてくれる? キモいの」

『みゃあ』

「悪口直球ドストレートか?」

 

 俺は先程までガキ共の体育の時間で、模擬戦という名のじゃれ合いに付き合ってやり、全身の関節を外しに外してトライアングルドリーマーから脱出して、後の相手はノインさんに任せて聖堂から戻って来たティオに声をかけた。

 先程までティオとイレヴンとリンとシスターでなんか話してたみたいだが……そこから戻ってきたところで、なんか今朝以上に様子がおかしくなってた我が妹。

 心配して声をかけたところで全身の関節が逆側に向いてて人の体のていを成していない状態の俺の体を見て怪訝な顔された。

 ティオの太ももの上にいるミャウも信じられないものを見る目でこちらを見ている。なんじゃい。

 

「ふん!」

「ふん、の一言で戻していい肉体の状況じゃなかったよね? 常人なら死を待つだけの状態だったよね今……?」

『みゃ』

 

 仕方ねぇので全身の関節を元通りに戻してやって改めて話を聞く。

 

「で……なんか、何? どした? 今朝からなんかお前調子おかしくね?」

「ん……どうだろ。悩みはちょっとあるかもね……」

『みゃ……みゃふ……』

「んー。前も言ったけどあれぞ。お前結構無意識にため込むタイプなんだからさ、自覚まであるならまず零せ? シスターには言わなかったん? さっきの……なんか……いや深くは聞かんけど……なんかなぁ」

「うん……」

 

 しかし聞けばやっぱりなんか悩みがありそうで、しかし今この場では零そうとしないようだ。

 なんじゃいンモー。俺だって流石に気遣いくらいはできるからさっきシスターと何話してたのかまでは聞かないけどさぁ!

 家族で妹なんですよティオは。心配もしちまうってもんなのだ。

 なので何か気を揉んでるなら相談してほしい所なんですわ。

 こりゃ強引にでも話を聞いてやらんといかんな。俺は決意した。

 

「……よし。お前今日はうちに泊まれ」

「え?」

「ここだとガキ共いるから詳しい話しづらいんだろ? 午後は流石に闘技場で訓練はしなきゃだから、夜に全部話聞いたるわお兄ちゃんが。んでついでに抱き枕くらいにはなってやるからさ。……零せよ、俺に」

「っ……う、ん。それじゃあ……いい?」

「遠慮なんて言葉は俺らの間にはないんじゃい! そんじゃそんな感じでな」

「うん。……ごめんね」

「感謝なら受け取ってやろう」

「う。……ありがと」

「うむ」

『みゃ』

 

 話を聞く時間を作ってやる。

 夕飯食べた後に俺の部屋でじっくり話を聞いてやろう。

 二人きりの時間ならこいつも喋りづらいってことはないはずだ。隠し事をするような仲ではないと思ってるし。

 嫁さんたちとのえっちえっちの時間はもしかすれば削れるかもだが、愛する妹が心配なんでちょっと添い寝してやると言ってNOという嫁はおらんやろ。許してくれるやろ多分。

 

「──みんな、お昼ご飯が出来たわよ。手を洗ってきなさい」

「わー!! おひるだー!!」

「今日のご飯はサザンカねーちゃんがつくったんだろ? ごちそうだぞー!!」

「拙者だけで作ってはござらぬよ。ミル殿は流石、普段より子供らの料理をなされているだけある。手際の良さには拙者も舌を巻き申した」

「いつもは子どもたちにも手伝ってもらいますけれどね。今日はとても助かったわ、サザンカさん」

「イレヴン……もうちょっとていねいにしょくざいをきるべき。なんであんなにざつなの」

「うるさいな」

「イレヴンおねーさん……料理にがてなの?」

「きっとロックにーちゃんとサザンカねーちゃんが全部やっちゃうから自分で料理作らないんだぜ」

「私だってやればできるんですよ? 本当ですよ?」

 

 そんな話をしてたら昼食を作ってくれてたみんながガキたちを呼びに来た。

 聖堂での話を終えたのち、シスターとサザンカさんがメインで、珍しくイレヴンとリンが料理を手伝っていたのだ。腕前はサザンカさん>シスター>リン>イレヴンか。

 イレヴンはとにかく包丁の扱いが雑なのよな。リンは食材に敬意を籠めるので結構丁寧。

 ノインさんは王族生まれだけど人並みに料理は出来るのでやはり我が家ではイレヴンが常に料理下手ランキング第一位だ。適材適所。

 

「……メシ出来たみたいだからさ、食おうぜ。たいていの悩みは腹いっぱいにして寝れば解決するからな。まずは腹いっぱいにしねーとな」

「うん」

『みゃ』

 

 言葉の通り、まずは腹を満たすために俺達も食堂に向かうことにした。

 フードの中にミャウを戻して、ティオが子供たちを前にカラ元気を作る様子を眺め、心配を深めちまうのだった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 さて、孤児院でちょっと早めの昼食を取り終えて、ガキ共とシスターに挨拶して孤児院を後にして。

 午後からはいつもの闘技場に集合して訓練があるのだが、しかしその前に立ち寄る所があった。

 

「おー……すごい!! かるくてうごきやすいのになんかじょうぶになってるきがする!!」

「使われている素材も実に上質なものになっているようですね。黒の艶が違います」

「見た目も実に好い。フリル等の装飾が増え、体へのフィット感が増しておられる。西洋人形のような深みのある美しさでござるな」

「鑑定スキルで見てますが~……性能もとてつもないですね~。攻撃性能、魔力循環性能がかなり底上げされるものです~。自動修復機能付きでこの性能とは流石は『リーゼ』です」

「似合ってるよリンちゃん! 御姫様みたい!!」

『みゃ!』

 

 呉服屋『リーゼ』でリンの新衣装を受け取りに来たのだ。

 二日くらい前に、話の流れでついでに依頼して……って感じのものだったのだが、支配人さんはバッチリと衣装を仕上げてくれていた。今日の夕方にでも渡しに来てくれる予定だったんだって。俺らが見に来ちゃったからそのまま受け取りしたけど。

 リンが依頼した通り、動きやすくて防御性能より攻撃性能を優先する性能で、かつ見た目にもかなり気を遣ってくれていた。

 具体的に言うと大変えっちになっていた。

 ドスケベと表現するには少々可愛さが強い。なのでえっち。

 リンの服……ゴスロリ風のドレスに寄せた漆黒の装いのイメージは変わらないが、以前のものよりも通気性を考慮したのか下乳部分に穴が開いて純白の南半球が見えている。

 あと布の質が良くなったからインモラルを感じさせる艶が増えた。

 総じて俺の性癖に直撃です。ティオが心配でちょっともやってた悩みが吹き飛びましたわコレは。

 

「ふふん! どう、ロック? かわいい?」

「可愛すぎて卒倒しそうなんだわ!! 可愛らしさとエロティックを超融合させた完璧な服すぎて色んな獣が俺の内で叫んでるんですわ!! リンちゃんカワイイヤッター!!」

「カワイイヤッタ~!」

「リン様とロック様に喜んでいただけたならば何よりでございます。以前にロック様が当店のカタログを見られていた際に、おおよその嗜好は把握させていただきましたので」

「俺の性癖が色んな所に流布され始めている」

「私達を侍らせている以上今更ではないですかマスター?」

「そうかも……」

 

 誇らしげに胸を張り、少女の肉体に携わる大いなる実りを強調するポーズをとるリンにデカパイ感謝で拝んでおいた。下乳穴が素晴らしい。

 しかしこの服は少々子供には刺激が強いかもしれない。一先ず今後は孤児院に行くときには前の服を着るように伝えておこう。日常遣いも遠慮した方がいいかもな。訓練と戦闘用にしといてもらうか。

 これで嫁さんたちの装備もおおむね更新されたかな。ノインさんだけは特に変化ないけど彼女は王族。欲しい装備は既に自分で整えているようなので武器装備として新たに整える者はなさそうだ。えっちな服ってだけならこないだめっちゃ買ったしなコスプレ服。

 

「ティオ様もよろしければ当店を御利用なさいませんか? お洋服からドレスから、勿論装備に至るまで……あらゆるニーズに応えることが出来ると思いますわ」

「え、私も? えっと、うーん……でも今は特に困ってないし……こないだ新しく軽装の防具買っちゃったばっかりだし……」

「左様でございましたか。しかし、重装備でなければ装備の強化なども当店では取り扱っております。お得意様であるロック様のご家族であるともお伺いしておりますので、割引券をお渡しさせていただきます。また気が向いた時にでも当店にお越しください。ケンタウリスの皆さまもぜひお誘いくださいませ。サービスさせていただきます」

「あ、どうも……って割引券こんなにぃ!?」

「ロック様には大変お世話になっておりますので」

 

 今日は服の引き取りだけだったのでそんなに長居することはせずに店を後にしようとしたところで、目ざとくティオを見つけた支配人さんが予想通りセールストークを繰り出していた。

 今日はちょっとテンション低めだからティオもあんまり乗ってこなかったけど落ち着いたらその割引券をもってケンタウリスの皆さんでショッピングでもして気晴らししてきなされ。いい店だからここ。

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