勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
呉服屋『リーゼ』を後にして、闘技場に出向いていつも通りレベリングを行った。
リンの服を女性陣が褒めてて、しかしその中でも下乳穴は攻め過ぎでは? と女性陣に心配され、それだけでなくこの服を普段着にすると特別感もないし、余計な注目も集めるし、孤児院のガキ共の性癖が歪んでしまうという様々な理由で、戦闘時または特別なときにのみ着用するとリンが決めたことなどもあったが、他には特段特筆することも起きずにいつも通りのレベリングをみんなが頑張った。
当然ながら俺は力になれないのでみんなのレベリングを眺めつつ、何だか息抜きという事で闘技場を眺めに来たマリア様にまたチェスに誘われて時間つぶしをしてた。
結局俺が負けたんだけど、俺が勘に任せて動かしたチェスの駒を眺めて『新しい戦術になり得る手筋だわ……革命的だわ……!!』とか頑張ってヨイショしてくれるマリア様になんか申し訳なくなった。
いいんすよドヘタクソって詰ってくれて。ガキ共にも笑われる腕前なんだから俺。
マリア様に詰ってもらったらそれはそれで俺嬉しいから。悪役令嬢感ある清楚お姫様ってかなり
さてそんな感じで日も暮れて。
ケンタウリスのみんなにはティオが今日俺んちに泊まる事を伝えて、何故か皆さん意味深な表情を浮かべつつも承知してくれて。
自宅に戻ってサザンカさんの作る香味風フルコース肉野菜料理を美味しく頂いて。
嫁さん達にもティオの様子おかしいから今日ちょっと添い寝するし話聞いてやりたいって言ったら了解貰えて。
ティオが風呂入って、俺が風呂入って。
んで夜。
俺の部屋の中で、ティオと並んでベッドに座っていた。
「……」
「……」
『みゃ……』
枕の上でごろにゃんしてるミャウが、無言の間に堪えきれぬと言った風に小さく鳴いた。
今朝から……いや、思い返してみれば戦争終わったあたりから妙に態度がおかしくなっていた気がする我が妹。
お兄ちゃん呼びに戻ったのもそうだし、なんだか俺に遠慮って言うか、これまでになかった距離感を感じることもたまにあったような気がする。
それが俺に対する忌避感とかそういった類のものではないことも分かってるんだけど。もしそうだったら俺の部屋に来てないと思うし。
つまり、俺のあずかり知らぬところで愛する妹が何かしら悩んでいる。ならばそれを零してもらい、受け止めるのがお兄ちゃんというものだろう。
孤児院のガキたちもたまに遊びに行ったときに日々の悩みとか相談されたりするしね。
シスターに教えを受けた俺は悩みを打ち明けられた時の対処法ってのも学んでるのだ。シスターの立ち振る舞いから学んだのだ。
共感して同意して、その上でどうしたいのかを聞けばよい。
自分の気持ちをはっきり自覚させたうえで、どうするかを自分で決めた時、人は自分の判断を自分で尊重するのだ。
すごい真面目な事考えてるけど割とマジで俺の行動理念いつもコレよ??(真顔)
「……お兄ちゃん」
「はい」
さて、暫くそうしてティオから零してくれるのを無言で待っていると、ようやく俺に零すべき言葉が決まったのか、ティオが俯いていた顔を上げ、俺の方を向いて呼びかけて来た。
それに応えるために俺もティオの方を向いて、お互いの体温を肩越しに感じ取るには拳二つ分遠い距離にいる妹の綺麗な顔を眺める。
風呂上がりだからちょっと髪の艶が増している。コイツいつも顔面偏差値振り切れてんな。
「……私の事。心配してくれて。いつもありがとね」
「うむ。常に周囲に心配と迷惑をかけ続けてる俺だからな。たまには人の心配もしないとバランス取れないってもんよ」
「自覚あったんだ。うん、心配かけちゃったこと……私がお兄ちゃんとしっかり話したいって言ってた事。色々あって、どうやって話せばいいかなってずっと思ってたけど。もう全部とにかく話しちゃおうって決めたの。まとまらない話になるけど、聞いてくれる?」
「モチのロンよ。まとまらない話なんて俺の得意技だろ、それを俺がNOというはずがねぇですわよ」
「ふふ。お兄ちゃんっていう先にあらゆるやらかししてる人がいると安心するなぁ」
「反面教師の鑑と呼んでくれ」
「胸張らないの。……でも、あんまり悩んだことはなさそうだよね、お兄ちゃんって」
「失礼な。毎日嫁さんの誰とハーレムプレイするかで悩み続けているぞ俺は」
「最低だよ」
『みゃ』
ティオの肩の力が抜けるように、言葉を選んで話を紡ぐ。
ここで俺もティオのシリアスに合わせてシリアス面しちまうと空気が重くなっちまうからな。
重要な話ってのは気楽に話せた方がいい。悩みを零す時、言いづらい事を言う時なんてのはまさしくそう。
俺の砕けた話に、ティオも多少は力が抜けたのか、呆れた風のいつもの顔を見せてくれた。お兄ちゃんカウンセリングの第一段階は成功のようだな。
さてそうしていつもの雰囲気になったところで、意を決したと言わんばかりにティオがベッドから腰を上げた。
なんや、と思ってそれを見てると、続けて俺の正面に向かい合うように正対して、真っすぐ正面から俺の目を見据えてきて。
そして、次の瞬間に。
「────本っ当にごめんなさーーーーーーーーーい!!!!」
見事な土下座を繰り出してきた。
ええ(真顔)。
「ええ……?」
「ごめん!! 謝って済む問題じゃないけど……謝らせて!! ごめんなさい!!」
「いや待ってぇ? ゴメンマジで謝られる理由に心当たりゼロなんだけど!!」
唐突なティオの土下座に俺は困惑を返した。
いやなんでそんな謝られてんの!? 俺何もしてないしティオからも変に恨む様な事されてないんだけど!?
理由の分からぬ謝罪なんて当然受け取れない。
だから何があったのかを聞き出さなきゃならない。
「えっと……まず何があったか言え? マジで理由が分からんと何も言えないし」
「うん、はい。ごめん……その、ね…………?」
故に理由を問いただしたところ、土下座の姿勢から頭だけ上げて俺の顔を見て来たティオが、しかし目と目が合うのを我慢できないと言わんばかりに視線をあらぬ方向に逸らしながら。
「ええと……その。お、お兄ちゃんを……お兄ちゃんの事が、好きすぎて……」
「好きすぎて?」
「こ、昏睡逆レイプ……しちゃって……」
「昏睡逆レ────は??? 誰が?? 誰を???」
「私が」
「ティオが!?」
「お兄ちゃんを」
「俺を!?」
「えっと、あの、私、お兄ちゃんの子どもがどうしても欲しくて……避妊しないで……ナマで……三回くらい……」
「ナマで!? 三回!?!?」
「………………その、ごめんなさい」
「謝罪のレベルが高過ぎだろちょっ待ッお前ぇぇ!?!?」
のうがりかいをこばんだ。(沈痛)
えっ…………えっ? ええ??
俺ティオにレイプされてたの……マジで? マジ……??
いつ??
なんでぇ???
どしてぇ?????
「……えっと、ね────」
その後、ティオが詳しい出来事の流れについて説明してくれたのを、まっしろになった頭で何とか聞き遂げた。
戦争が終わった日の夜。
俺は酒を飲んでしまって眠りに落ちていたわけだが、共に酒を飲み酔っ払っていたティオも同じベッドに運ばれて。
そこで眠りにつくはずだった時に、ふと俺という最愛の兄──俺が想っていた以上にティオが俺の事を愛していた──が、今日のようなふとした瞬間にいなくなってしまうのではないかという恐怖を覚えて。
俺が失われるのが怖すぎて。
それは戦いの中で失うという意味合いのほかに、寿命の差で間違いなく俺が先に逝くことへの恐れもあって。
どうしようもないその恐怖から逃れるためにどうすればいいのかと酔った頭で考えて。
俺との子どもが出来れば、永劫の寂しさから逃れられるのでは、と思いついて。
その閃きを原動力として、俺を魔法で深い眠りに落としたうえで催淫魔法でちんちんおっきっきさせて。
事に及んで。
何回か俺を搾り取り、満足して証拠を綺麗に消してから眠りについて。
起きてから完全にやらかしたことを察したが、しかし俺がその辺全く気付かなかったので言い出すタイミングが無くて、色々悩み抜いたけどまずはやっぱり謝らないと、という事で何度目か知らぬ土下座で床に頭を叩きつけた。
「ごめんなさい」
「ごめんでマジですまない事態にビビってるのは俺の方なんだよね」
少しだけ冷静さを取り戻した俺も、起きてしまった事態の重さを理解して天井を仰ぎ見るしかなかった。
なんてこった……いや色々とマジでなんてこった。
あんまりにも罪深すぎるだろ。
どうして……いや、これは甘えを許してはいけない場面だ。マジのガチで考えなければいけない。
この罪深さ。
余りにも罪が重い。
償えるものだろうか────この、
「……ごめんなぁ……!!」
「え!? ……いやなんでお兄ちゃんが謝ってくるの!? 悪いのは私で……」
「いや俺が悪いわ……マジでごめん……!! くっそ、ホントごめんなぁ……!!」
余りの不甲斐なさに涙を滝のように零してしまう。
涙できしめんが作れそうなほどに太幅の熱のこもる液体を垂れ流して、謝るのは俺の罪深さ。
最愛の妹が、なんて言って、いつも大切に想ってるなんて言っててよ。
ティオ自身の気持ちの大きさを俺は全然分かってやれてなかったじゃねぇかよ。
俺がティオの想いを本当に理解できていれば。知っていれば。分かってやれていれば。
愛してる妹だ。大切な女なんだ。
前に家族だって言ったし、結婚したっていいって言ったし、実際結婚したって構わなかった。
胸が小さいとか関係ねぇよ。大切な俺の嫁として愛し抜く自信さえあるよ。独占したいならそれに応じてやったってよかったよ。
それなのに、俺はその想いに全く気付いてなかった。
よく懐いてくれる可愛い妹だな、なんて思ってて。
俺とずっと一緒にいたかったって……自分がエルフだと知って寿命差に悩むコイツの想いを深さを、深刻さを、全然わかってやれてなかったじゃねぇか。
全ては俺の鈍感さが招いた事態だ。
分かってやれてれば。ティオを愛し、ティオの愛を受け止める覚悟があるって伝えてれば……妹にそんな凶行を果たさせることもなく、適切な手順で愛を育みあったことだろう。
それなのに俺がクソボケだったから、酒の勢いとはいえ強引な手段に出ちまって……俺が頼りないから……俺が甲斐性無しだから……俺が────。
「──お兄ちゃん!!」
「はっ。……あ、うん?」
そんな風に己の罪深さと向き合い、どうしようもなく涙を溢れさせていたところで、しかしティオから急な大声をかけられて俺は我を取り戻す。
「お兄ちゃん今、自分が悪いって思ってるでしょ!!」
「え、うん。そりゃそうだ……妹であるお前がそんなに俺の事想ってくれてたのに、俺が全然……」
「違うの!! 今回の件、お兄ちゃんは全然悪くないの!! 悪いのは私!!」
「いや……」
「いやじゃないの!! はいって言いなさい!!!」
「はい」
逆切れして来たけどキレた時の様子がシスターに似て来たなコイツ。
そのシスター譲りのキレ具合に思わずうんと返事をしてしまうが、しかし俺の想いは変わらない。
妹に罪を被せたくない。それを説明しようとして、しかし。
「私とか、他の女の子の想いに鈍感な所とか! それなのに女の子に優しくしちゃうところとか! エッチなことばっかり考えてて、それでも本気になった時はカッコいいところとか!! 今も私を責めないで自分の責任を感じちゃうところとか……そういうのも全部ひっくるめて、私はお兄ちゃんの事が好きなの!! 大好き!! 愛してる!!」
「え、お……おう」
「だから悪いのは私! 好きな気持ちを気付かれたくないな、なんて恥ずかしがって、大してアピールもしないで、子どもみたいに悪口言っちゃって、それでも甘やかしてくれちゃうお兄ちゃんに素直に甘えてた私が、急に思い立ってヤることまでヤっちゃったのが悪いの!! 冷静に考えれば翌朝好きだから結婚してって言えばいいだけだったのに、同意も得ないでレイプしちゃった私が悪いの!!」
「妹の口からその単語を聞きたくなかった」
「ごめん!! でも、この件でお兄ちゃんが自分を責めるのだけは納得できないの!! 私を許さないでほしいの……罪を、償いたいの。だから、お兄ちゃんが自分を責めるのはやめて。わがままな妹で本当にごめんだけど、わがまま言わせて。私の罪を償う機会を奪わないでください」
「…………」
ティオから想いを素直にぶつけられて、飾り気のない取り繕わない本気の言葉を受けて、俺も少し冷静さを取り戻す。
そう……か。ティオは、己の罪を自覚して、それを償いたいと考えてこの場に臨んだんだ。
俺に赦しを乞うているわけではない。
贖罪を果たしたいと思って謝って来た。
なのに、ここで俺が俺自身の罪に話をすり替えて、ティオは悪くない、なんて結論を出そうとしたら……それはティオの想いをないがしろにすることになる。
罰が必要なんだ。
罪には罰が。
罰を経て、贖罪を経て、その時に初めて罪とは許されるものなのだ。
シスターがそんなことを教えてくれた。
悪いことをしたら、謝って、償って、そして許されるものなのだと。
許すとは、そういうものなのだと。
「……わかった。ティオの罪を償ってもらおう」
「っ、お兄ちゃん……!!」
だから俺も、ティオの罪を認めよう。