勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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193 シスターの教え子全員突拍子もない事しかやらかさない説

 

「いったん整理します」

「え? ……あ、はい。うん」

 

 冷静になれたので、一先ずティオの状況を整理しよう。

 慌てたままで結論を出してもいい事ねぇからな。大切なことを決める時は状況を落ち着いて整理してから判断するに限る。

 

「まず……ティオが、俺の事を好きでいてくれたって話。一応聞くけど、どんくらい?」

「あ、えっと……うん、大好き。他のお兄ちゃんのお嫁さんに内心嫉妬してたくらいには、女として、お兄ちゃんっていう……ロック=イーリーアウスっていう男の子に恋してました」

「正面から聞くと気恥ずかしさすんごいな」

「こっちも恥ずかしいよ……でも、好き。もう言っちゃったから全部言うけど、結婚してお嫁さんになりたかったし、最近冒険で無茶ばっかりしてて守らなきゃって思ってたし、お兄ちゃんとの赤ちゃん欲しかったし……」

「俺の顔をさらに赤くして歌舞伎役者にでもするつもりか??」

 

 最初に聞き出したのは、ティオの想いから。

 今回のティオの罪……俺を襲っちまったのは、俺への愛による行動からなのは間違いない。

 聞き出して改めてそんなに想われていたことに気付くんだから、俺のクソボケ具合にはつける薬もない。

 そして、それを聞けたことで、肝心なことをティオに伝える。

 

「……ティオ」

「うん?」

「俺もティオの事は好きだ。大好きだ」

「えっ……」

「これまでもさらっとは伝えてたけどさ……愛してる、お前の事を。ただ、それは家族としての愛情が強かった。妹として共に育ったお前の事を、大切な女として想ってる。それはマジでさ……大好きだぜ、俺も。家族として」

「う、うん……ありがと……」

 

 そう。俺もティオの事を愛しているという事を。

 嫁さん4人もいてヒルデガルドさんとか他の女性も嫁さんにしたいわー! とか普段から言ってる俺が何言うとんねん……という所は全く否定できないが、しかし嘘でも何でもないからな。

 嫁さんたちも全員愛してるし、エッチなデカパイも大好きだし、ティオの事も愛している。

 

 だが、そんな俺の話を受けて、ティオの表情は何とも言えないそれであった。

 分かってる。お前がそんな顔をする理由も。

 ティオは俺の事を『男』として愛しているが、俺はティオの事を『家族』として愛していた。

 その想いのズレが、ティオにとっての悩みになってしまっていたのだ。

 

 だから俺の答えは簡単だ。

 

「っていうのは今までの話で」

「えっ?」

 

 男ってのは気持ちがコロコロ変わるもんなのさ。

 

「この俺がティオくらい可愛い女の子に子ども欲しがるくらい大好きなんて言われてNOなんていうわけあるかい!! これまでは妹だったけど今日から嫁さんの一人としてお前を愛する覚悟が俺にはある!! 子どもだって魔王倒したらいくらでも仕込んだるわ!! 幸せな家庭築いてやるわ!!」

「────っ!!」

 

 愛します!! 一生どこへでもついていきます!!(例の定型)

 ってな俺の決意を宣言した。

 

 冷静に考えてこんな絶世の美少女エルフから告白されとんのやぞ。NOという男がいてたまるか。

 ティオの告白断る様な男がいたら俺が出て行ったブン殴っちゃるわ。

 ティオが俺の妹からランクアップして俺の嫁になった。それでええ。

 両想いでハッピーエンドに至るための道筋は示しておかねぇとな!!

 俺の童貞を奪った責任、取ってもらうんだから。(例の定型)

 

「ってなわけで俺はティオの愛を受け止めます。嫁さんいっぱいいて平等に愛するのでそこはスマンだけど、そこOKなら俺はバッチコイだ」

「あ、うん……うん、大丈夫。お兄ちゃんがそこ譲れるはずないって知ってるし、イレヴンさんたちもみんな幸せそうだし……その輪の中で、お兄ちゃんが私の事も愛してくれるなら……私、嬉しい」

「ヨシ!! じゃあティオの想い関係の話はこれで完結!! ……ありがとな。俺の事を好きになってくれて」

「うん」

 

 これで一つ話は整理できた。

 お互いの想いを確認できた。

 

 ティオの愛。それは決して間違った感情じゃない。

 そこも含めて今回の問題を、贖罪を考えちまったら軸がブレちまうからな。

 俺は他人の愛のカタチを否定しない。そんなことは教わっていない。

 

 だから、ここから先はティオの罪の原因をはっきりさせて、それを償うターンだ。

 『愛から起きた行動であるならば、何があってもそれを許せるような広い心を持ちなさい』。

 シスターから教わったこの言葉の意味は、お互いが納得できる結末に持っていくことだと思うから。

 だから、次の話に進む。

 

「……さて。では次にティオの罪をどうするか検討します。ここスルーしたらティオが納得できないだろうしな」

「うん、お願い。私がやっちゃったこと……償わせてほしいの」

「分かってる」

 

 ティオが犯した罪について。

 愛の深さが暴走して、俺の同意なしに犯してしまった件。

 

 これについては色々と考えることがある。

 まずもって、今回のティオの罪は、他人を害するようなそれではない事をはっきりさせておく。

 今回の件は極論、俺とティオの間だけで完結する話なのだ。

 

「お前は俺を襲っちまった。つまり今回の件、被害者は俺であり、加害者はティオです。これは間違いないよな?」

「う……ん。その通りです。ごめんね」

「今だけは謝罪の言葉が零れるのは許す。まぁ……つまり言いたい事としては、お前を断罪する権利は俺にあるってことなんよ。他の誰かがこの話に絡んでも、被害を訴えるのは俺にだけ権利がある。他の誰にもそれを言う権利はないよな、どう考えても」

「そう……かな? そうかもしれないけど……お兄ちゃん、それは……」

「まぁとりま聞けって。俺も色々考えてる」

 

 まずはっきり述べるのは、今回のティオが犯した罪に対しては俺だけが被害を訴える権利があるという事。

 当然だ、俺が被害者なんだから。

 だから俺とティオの間で、しっかりとした意思決定の後に納得があれば、それはもう他の誰も介入する余地のない解決となるのだ。

 俺はこの話の解決について、他の誰も絡めるつもりがない。

 シスターだってカトルだって嫁さん達だって、そりゃ話を聞けば色々感想も零れてくるものとは思うが、ティオをどうするかは俺が決めるのだ。譲れん所よ。

 

 そこをはっきりして、次に進む。

 被害者である俺が、ティオをどう扱うか。

 

「で……じゃあ俺はティオが犯した罪について、何を求めるかって所なんだけどな」

「はい」

「まずはっきり言っちまおう。────俺からお前に対しては、()()()()()()()()()()()

「ッ……! お兄ちゃん!」

「気持ちは分かるがまだステイ。話は続きます」

 

 話はまだ終わりじゃない。

 何も求めないと言った俺の真意を伝える。

 

「ティオの気持ちを否定してるわけじゃねーのよ。今回の件をやらかしたことを悔いて、償いたいっていう気持ち……これはとっても大切なことだと思ってるし、良いと思うわ。むしろこうしてちゃんと俺に伝えられたのは偉い。雑な俺とは大違い。その気持ちは褒めます」

「そ、そんな事言われても……」

「まぁ被害者俺だからな……だから罪を訴える権利は俺にしかない。んだけどさ、俺からお前になんかこういうことして償え!! って言えねーのよ。だって俺さ……」

 

 俺から償いを求めないということ。

 それはティオに償わなくてもよいという意味を内包はしていない。

 単純に、これは俺のわがままだ。

 ティオのわがままも聞いてるんだから、俺のわがままを聞いてもらったっていいだろう。

 そもそも、俺は。

 

「──人の罪を咎めるのとか、好きじゃねぇんだ」

 

 

 

※    ※    ※

 

 

【side ティオ】

 

 

 お兄ちゃんが放った言葉は、奇しくも以前に私も想ったことだった。

 

「──人の罪を咎めるのとか、好きじゃねぇんだ」

 

 知っていた。

 罪を罪とは分かっているけど、罪を咎めるのをお兄ちゃんが好まないという事。

 私も、好きじゃない。

 ローティリッチのホテル、お兄ちゃんの部屋でベルベッドに話を聞いた後に、私は同じ感想を持った。

 それが正しいのかはわからないけれど、少なくとも私達は、そう育った。

 

「だからさ、ティオ。何をもって俺への償いとするのか……償いの為に自分が何をするのかってのは、自分で決めなよ。何でもいいさ、これから先俺に優しくするとかでもいいし、魔王討伐もっと頑張るってんでもいいし……自分が納得する何かを自分に課すんだ。それを俺が見ててやるからよ」

「…………」

 

 さらに続いたお兄ちゃんの言葉は、今日、まさしくシスターが述べたことだ。

 贖罪とは、罰を受けることで清算するものはなくて。

 自分が納得する何かを果たすことで為されるのだと。

 シスターみたいに、その先の道を導いてくれまではしなかったけれど……お兄ちゃんは間違いなく、シスターの教えをその身に築き上げていたんだなって、思う。

 どんなに普段から女の人にだらしなくても、お調子者でも、常識的には不義理であるハーレムなんて作ってても……根っこは優しいお兄ちゃんだから。

 だから、シスターと同じ結論に至れる。

 

 そのことに、どうしようもなく誇らしさを覚えてしまう。

 

 償いたい。

 この罪を。私の未熟さを。

 報いたい。

 シスターが育ててくれた恩に。お兄ちゃんが優しく見守ってくれた事に。

 

 どうすれば報いて償うことができるんだろう。

 その答えを、一つだけ、思いついていた。

 

「……どうしたい? 俺が鈍感だった面もあるし、害意があってやったって話でもないし……マジで思いつめる様な償いを課してほしくはねぇって気持ちもあるけどさ。でも、どんな些細なことだっていいさ。自分がそれをやり遂げられたら、きっと自分が許せるだろうな……って思えるような何か。それをやってくれれば俺はなーんも言わねぇよ」

「うん……」

「別に、今すぐ決めろってもんでもねぇしな。それを決める所も含めて償いって事にして……じっくり考えて、悩んで、それから決めたっていいんだ。でも、決めたら俺にまず伝えてもらいたいところだけど……」

「うん……うん。大丈夫。実は前から考えてた事があるの」

 

 お兄ちゃんの言葉に頷いて、真っすぐにこちらを見据える真剣な、優しい瞳を見つめ返して、私は首肯を返した。

 しっかり謝ろうって、本当に真剣に謝ろうって思ってから、これは思いついていた。

 ローティリッチのホテルの時の雑に謝ろうって思った程度のそれじゃない。

 ベルベッドの贖罪の姿を見て、私の罪の償いについて真剣に考えたからこそ思いついた、それ。

 私がエルフで、シスターもエルフで、お兄ちゃんがエルフの冤罪の歴史を正そうとしてくれて、国もそれを少しずつ進めてくれるようになった今だからこそ思いついた、それ。

 

「お兄ちゃん」

「おうよ」

 

 だから、それを兄に伝える。

 最愛の兄が優しい声色で聞いてくれて、私の考えを伝える。

 

「私ね。シスターがいつか、自分の種族を……耳を隠さずに生きられるように、エルフのことをもっとみんなに受け入れてもらえるように頑張りたいって考えてたの。私もエルフだからこそ、私にしかできないことがあるはずだって……」

「なるほど? ……いいじゃん。すげーいい。俺も出来る範囲でやったけど、ティオにしかできない事ってのもあると思うし。俺もそれめっちゃしてほしいわ。シスターが一日も早く笑顔になれるなら、俺にとっても十分な償いになるよ」

「うん。シスターにもこの件告白して心配させちゃったし……」

「待ってシスターに聞かせたんかこの話」

「うん……ごめん」

「シスターの心労があまりにも……!!」

 

 事件の翌日にシスターに相談したことをお兄ちゃんに伝えると、またしても滝のようにお兄ちゃんの目から涙が溢れてくる。

 本当に、私はみんなに心配かけてばかりだ。

 でも、そんな私でもできることはある。

 エルフである私が、エルフという種族への偏見をなくすために出来ること。

 

「……じゃあ、それを私の贖罪の、償いの方法として決めるね。シスターと、シスターに育てられたお兄ちゃんが安心できるように……私はエルフという種族の地位向上にこれから邁進します。誰もエルフを悪く言う人がいなくなるようにしたいの」

「おう! そんじゃそれで罪と罰関係の話解決な! 俺も応援するし見守るし手伝うからよ!」

「ありがと。────それじゃ、見ててね」

「ん?」

 

 心は決まった。

 お兄ちゃんにも了解を取れてから、私は()()()()()()()を遂行するために、準備をする。

 私の覚悟を見守ってくれるってお兄ちゃんが言ってくれたから。

 私が私であることをこの世界に証明しなくちゃ。

 

 近くに置いてあった私のアイテムボックスに手を伸ばす。

 お風呂上がりだからネグリジェに着替えた際に一度収納した、私の魔双剣『セントクレア』。

 精霊セントクレア様が宿られたこの二振りのダガーに用があった。

 

「おん? セントクレアちゃんに何かあるんか?」

『話は聞いてたわよー? 別に愛する人と結ばれるの私は全然反対しないし、私からは何も言う事ないわよ? ロックもちゃんと許したし、ティオはこれからも真っすぐ前向いてればいいんじゃない? シリアスは貴方達には似合わないわ』

『みゃ』

「…………」

 

 私は返事をせずに、鞘から二振りのダガーを抜き放つ。

 セントクレア様が私をエルフだと教えてくれて……その時はショックもあったけど、お兄ちゃんが優しくしてくれて、話を聞いてくれて。

 そこからシスターに話を聞きに行って。シスターの過去を知って……お兄ちゃんが果たした偉業に繋がっている。

 私の種族の事にも絡みのある精霊様。

 

 まぁ今はそこは全く関係なくて。

 私が求めたのは、ダガーの方。

 ()()()の切れ味の良い刃が、とてもちょうどよかったのだ。

 

 深呼吸を一つしてから。

 

「…………()()()()さん、今までありがとう!!」

「え!?」

 

 その名を。

 私の耳を形成手術してくれた、かつてのシスターとトゥレスおじさんの戦友の名を叫び、感謝を伝えてから。

 

 

 自分の両耳を、根っこから切り落とした。

 

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