勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
ノワールさんの話を聞いて、己の左手の薬指を思わず見てしまう。
そこにはトゥレスおじさんの査定で100Gの金額がつけられた護りの指輪がバッチリはまっている。
「え、これマジで魔装具なの? マジで……?」
『最初に会った頃に呪いの装備だ~、みたいな話をしたと思うんだけど、マジで魔装具よ。表出した意識でじっくり見てもやっぱり魔装具。私たちと同じで自意識あるわよ、その子』
『そうですね、ドラゴン体の時には感じ取れませんでしたが、魔装具として顕現したこの身であれば感じ取れます。護りの指輪を基盤として、異常な魔術鋳造がなされて魔装具までランクアップしているようです』
「へぇ……流石、インテリジェンス系装備はそういうのもわかるんだ。イルゼは気付いてたの?」
『私はあくまで剣ですから……ロックの指輪の性能がおかしなことになっているくらいしか察せていませんでしたね』
「意外とポンコツやなお前」
『今からでも私の顕現化を試しますかロック?』
「すまんて」
セントクレアちゃんもノワールさんもこの指輪がインテリジェンスな魔装具であることを疑っていないという。
そうはいっても100Gやぞ? トゥレスおじさんの鑑定が間違うとも思えないしなぁ……と考えたが、しかし思えばコイツから女の子の声が聞こえてきたことが過去に何度かあったような気がする。
闘技場とか、ホエール山脈の山頂でもなんか……俺に声かけてたような?
幻聴かなと思って返事してなかったけどもしかしてコイツ喋るんか? マジで?
「……もしもぉ~~~し!!! 指輪ちゃーーーん!! 女の子ですよねェ!? そういや声聞いたことがありましたねぇどうやってキミが産まれたんですかねェ!? 色々聞きたいことがあるから喋ってみてくれますかねェ!! オラッ!! シャイなメスがよ!! 照れてるんですかねェ!?」
「どうしてお兄ちゃんはどうでもいい時にクソみたいな口調なの」
「教育に悪いのだ主殿は」
「なれてきた」
『みゃ』
そんなわけで俺の方から指輪に声をかけて見て、左手を耳に近づけて澄ませてみても……うん。何も聞こえん。
コイツ呪われた装備で外せないんだけど、なんかコイツだけは魔力通すと魔力防壁張ってくれるんで俺が唯一使える装備ってことで重宝してたんだが。
だが俺に声をかけてきて……たっけ。わからん。喋ってた気もするけど覚えてない。
「……『護れ』」
「ん。よく見るヤツだ」
『いつも通りバリアーは張れるのですね』
『相変らず出力が異常よねー。ロックの魔力を完全に魔法として出力してないとこうはならないわ』
試しにいつものように魔力防壁を張ってみたが、ちゃんと使えた。
俺の正面に円状の風属性の魔法の魔力防壁が張られている。便利なんだよなコレ。
しかし喋らん。
なぜだ。喋れないけど意志だけ持ってるタイプの魔装具とか……あるんか?
「とりあえず試してみるかぁ!! おーい!! マルカートさーん!! イレヴンー!! ノインさーん!!」
まぁ試す分にはタダやろ!!
そんなわけで未知の魔装具の顕現を試すにあたり万が一が在ってはいけないので頼れる魔法の扱いぴか一メンバーをさらに呼び出す。
その声でみんなやってきてくれて、この場にいるのは俺の他、カトルにティオにリンにイレヴンにサザンカさんにノインさんにマルカートさん、魔装具としてセントクレアちゃんとノワールさんと、あとついでにミャウがいるというそこそこ大所帯になった。
来てくれたイレヴン、ノインさん、マルカートさんに事情を説明する。
「かくかくしかじかほにゃぴこららりるで」
「……成程、話は理解いたしました。ティオはとうとう顕現化に成功したのですね。おめでとうございます」
「ありがとう、マルカートさん! まぁお兄ちゃんに魔力で負けてるのショックだけどねー……エルフの耳になって魔力の扱いがさらにランクアップしてこれだもん」
「マスターは相変らずワケが分からないことをしていますね」
「ブラックドラゴンを顕現化させるとか人類やめ過ぎでは~?」
「なんじゃい! 俺がまともじゃないなんてもうみんなわかっとるやろがい!! 目の前にデカパイがあれば俺は何でもやりますよ!!」
「ホントに何でもやるからヤバいんだよお前は」
「これから指輪殿を顕現するに際して何が起こるか不安でござる」
「みぎにおなじ」
『みゃ』
だいたい事情を理解してくれて、指輪顕現に関する注意点をマルカートさんから教えてもらえることになった。
魔法関係は大体この人に聞けばええ。デカパイ眼鏡に教えてもらえることで俺の中の魔力がさらに活性化するしな!
「……イルゼ様という例外中の例外を除けば、顕現化に際して所有者に害を与えるという事はまずまずございません。ロック様が指輪に全霊で魔力を注ぎ込めば、流石にノワール様を顕現化させた時ほどの魔力は必要ないとは思いますので、顕現化自体は果たせるのではないかと」
「なるほど。でもマルカートさん、ほら、俺は魔力注げても魔法に結べないから……ノワールさんの時もノワールさん自身に顕現化魔法を唱えてもらって顕現化してもらったんでェ……」
「その危惧は
「え? ……あ、そっか! そうかもしれん! よっしゃやってみよ! マルカートさん顕現化の魔法の唱え方教えて!!」
「切り替えが早いのはロック様の美点でございますね。では……」
マルカートさんの特別レッスンで顕現化の魔法の唱え方を教えてもらう。
ティオがやってたのも見たけど、まず顕現化する時に詠唱が必要で。
んで詠唱の後に魔法として紡ぐ第二の工程があるらしくて、それはティオが魔力の流れとかを再現してくれて、マルカートさんやノインさんも丁寧に教えてくれて、何となく俺も出来る様な気がしてきた。
よし準備OK。
「ほんじゃやってみるわ!! 万が一はないと思うけどみんな備えてくれな! デカパイ美少女が出てきたら俺のモンやけどもし筋骨隆々なオッサンが出てきたら即討伐するんだぞ!!」
「自分が生み出した魔装具にここまで言う人います~?」
「そういえばノインがマスターに初めて魔力の操作方法を教えていた時に、マスターが指輪に魔力を注ぎ込みすぎていましたね。それでおかしなことになったのでしょうね」
『フツー、魔装具じゃない魔道具だったとしてもどんなに魔力注いでも壊れないんだけどねー。ロックってホント面白いわー』
万が一指輪から出てくるものがデカパイ美少女じゃなかったり周りに害を与える様なものだった場合に身を守るようにみんなに伝えて、改めて俺はふんがーっと指輪に魔力を注ぎ込む。
普段魔力防壁を使う時は溜めた魔力を小分けにしてぺぺぺって消費するイメージだったけど、今回はそういう出力せずにひたすら魔力を溜めていく。
「デカパイ美少女……シャイな女の子……できれば露出多め……俺にベタ惚れ……新たなる嫁の一人……ッ!!!」
「集中を高める手段が余りにもロック様らしすぎて」
「もうなれた」
『ロック=イーリーアウスは子孫繁栄に強い執着があるのですね』
『みゃ……』
性欲という名の魔力をどぷどぷ注ぎまくってたら、指輪が闇の虹色に輝き始めたあたりで、ノワールさんに注いでた時と同じような臨界点を感じ始めた。
なんかよさげだ。行けそう。
オラッ! イけオラッ!! 絶頂顕現しろ我が護りの指輪ーっ!!
「ふぅー……──
詠唱を間違えずに口にする。
その言葉で新たな魔力の励起を指輪から感じ取り、正しく魔法が行使されている感覚を覚える。
なので詠唱の締めである、その名を呼ぶ段になったのだが……あれ。
そういやコイツの名前俺知らんやん!!
これはあかん。誰か指輪の中のインテリジェンスデカパイの名前知ってる人いないかな?
「…………
「──ロック様、詠唱中に集中を切らさない! 下手すれば暴発しますよ!」
「へっ? お、────のわぁっ!?」
そう思って詠唱中に言葉を区切り、周りに助けを求めたのだが、マルカートさんからすごい剣幕で怒られた。
そういうのはやる前に言ってよぉ!! 俺魔法初心者なんだからさぁ!!
そんな慌ただしい事になってたら、急に指輪に注いでた光がぐわぴかーっと眩しくなって、思わず目を閉じてしまう。
まさか暴発!? と思ったけど特に衝撃とかはなくて。
そういえばノワールさんが顕現した時も光がドバーって放たれてたな。
ティオはそうなってなかったから俺がやるとそうなるのかも。
しかしどうやら、俺の指輪の顕現化は成功したらしい。
「…………お」
『────』
光が収まって開いた俺の目の前に。
その少女は存在した。
髪の色は、赤と青で左右きれいに分かれたツートンカラーに、銀色のメッシュが入っている。
俺の髪の色と、ノインさんの髪の色と、イレヴンの髪の色に似ていた。
顕現した彼女は、闘技場の床で俺に向けて跪くように首を垂れていた。
表情は見えないが推定美人。雰囲気からしてもう美人。
衣装は全身水ボディのセントクレアちゃんタイプでもなく、黒の竜鱗を身に纏うノワールさんのようでもなく、普通の人間のような体に、黒く薄いシルク感のあるドレスを身に纏っている。
そしてデカパイであった。(最重要)
跪いた姿勢でもわかる。左右に布を押し広げるように大いなる果実がそこに実っていた。
彼女は豊満であった。
「……もしもし? アーユー護りの指輪ちゃん?」
『────』
「もしもーし? しもしもー?」
しかし何もしゃべらずにうつむいたままである。
どうしたんやろ……害意みたいなのは感じられないけど、喋ってくれないとコミュニケーションも取れないし愛を深め合う事も出来ない。
もしかすれば今後いつでも俺が好きなときに呼び出せるデカパイが現れたというのに。
まずは話をしたい所さん。
一先ず会話に入ろうと、目線を合わせるように俺が体をかがめたところで……唐突にその子は動き出した。
ゆっくりと顔をあげる護りの指輪ちゃん。
持ち上げられた顔は、誰がどう見ても美女……っていうか、すっごい美女。
めちゃくちゃ俺の好みの顔だ。ヤダ一目惚れ。
瞳の中にハートマーク入ってるのが高評価です。
「……お……」
『──────パパ』
「ん? ……なんて?」
その美貌に思わず俺の声が詰まったところで、顔を上げた護りの指輪ちゃんが何か喋った。
……うん。
────聞こえねぇ!!!!!(渾身)
いやね! 口元が僅かに動いたから何か喋ったとは思うんですよ!!
思うんだけどねぇ!! シーフで耳を鍛えてる俺の耳にもマジで聞き取れなかったくらい声が小さいわよこの子!!!
周りをチラッと見てみても誰も声聞き取れてないし!! エルフ耳になって音に敏感になったティオですら首傾げてるし!!
シミレさんならアサシンで聞き取れるか? いや多分シミレさんでもムリだこれ!!
そんくらいめっちゃ小声ッ!!
「ごめん聞こえなかった。なんて?」
『パパ──パパ! ────会いたかった! ──愛してるわ、パパ──!!』
「パ……なに? うん? 大きな声でお話しなされ? うーん?」
喋ってる! めっちゃ口元動き始めたから喋りまくってるんだろうけど聞こえねぇんだよなぁ!
至近距離でこれってどういう声帯の使い方してんだ。
でも僅かに音の震えは感じるから、仕方ないなと俺は両耳に両手を広げて当てて、彼女の口元のすぐ傍まで耳を持って行った。
「なんじゃらほ────ッ!?」
『パパ────!!』
その瞬間、
────捌き斬りしないとヤバい。
「ッ!?」
『────♡♡♡』
そして、瞬く間に。
俺の唇は、その少女に奪われていた。