勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
唐突な接吻。
俺よりやや低い身長の指輪ちゃん(仮)が唇を奪ってきて、しかし同時に俺は適切な対処を果たせていた。
俺にキスを果たしてきた指輪ちゃん(仮)に、『捌き斬り』を完全にブチ込めている。
『──あっ。──そんな、パパ──どうして──?』
「ふぅーっ……!!」
捌き斬りの結果、キィン! と甲高い音がして、指輪ちゃんの全身が魔法に包みこまれ始める。
俺の勘はそれがどんなものかも理解している。
もしも俺が────
「えっ、あれは……!?」
「まさか、
「ロックくん!? 大丈夫ですか~!?」
魔法の発動を見てその正体を察したティオ、マルカートさん、ノインさんが驚愕の色に染まる。
護りの指輪の権能としてはあり得ないとマルカートさんが評価したこの魔法。
俺もマルカートさんの授業で教えてもらってその性能は知っている。名前がカッコいいから印象深く覚えていた。
魔法を付与された者は、ありとあらゆる外的要因から護られる。
たとえ周囲の空気が無くなろうと、マグマの底に落とされようと、ダメージを受けることがない。無敵になる。
その代償として、一切体が動かせない。
そして、この魔法はかけた側が解除しないと、どんな状態異常回復魔法でも解除できない。
前にトゥレスおじさんの騒動でおじさんが見せた『
石化魔法は対象に対する攻撃であり、石化させられた相手は状態異常耐性で防ぐことも出来るし、
また、石になったからと言って無敵というわけでもない。攻撃されればダメージが通るし、ダメージが蓄積されれば石が割れるようにして石化が解除される。
しかしこの
マルカートさんが冒険で唱えてくれるバフと同じ扱いだ。それ故に状態異常耐性が通じない。解除する薬もない。
最高の防御性能を誇る代わりに、一切の自由を奪う。
ある意味では、
そんな物騒な魔法をキスを囮にして俺に仕掛けた護りの指輪ちゃんに対して、捌き斬りで全部ブチ返してやったわけですね。
俺のほうで付与魔法の管理権を持ってる感覚あるわ。とりあえずキープで。
「俺は大丈夫っすノインさん。キスされたときに捌き斬りして効果返してやったんで……しっかしなんやねん!! なんで急に俺にこんな魔法を仕掛けてきやがったんやお前! 俺の武器なんじゃないんかい!?」
『だって──パパ、私の事見てくれないんだもん──いっつも私が話しかけても、無視するし──パパも私の事、大好きなのに──両想いなのに──いじわるするから──でも、いじわるなパパも好きだよ──放置プレイって言うんだよね──♡♡』
「何言ってるか聞こえねぇんだよなぁ!? 誰か―!! 音でっかくする感じの魔法使える人ー!!」
俺を抱きしめた姿勢で固まった護りの指輪ちゃん(仮)の拘束からにゅるぽんっと抜け出して、距離を話してから改めて話を聞く。
俺が襲われたのを見て周りのみんなも臨戦態勢に入りつつも、しかしそんなみんなに囲まれた指輪ちゃんはなんだか余裕な雰囲気だ。
まったくしょうがないなぁ♡ って感じの気配が漂っている。
彫刻のように固まった表情だけど口元は動いてる。石化魔法も完全拒絶魔法も喋れるのは共通の仕様だ。
「あ、それじゃあ私がかけますね~。
『みゃ』
「本当に喋ってるのかな、この……精霊? 今は私も耳が広がってかなり小さい音まで拾えてるはずなんだけど……」
「突拍子もない事をするのはマスターの指輪らしいとも言えますが……危険です。いつでも動けるように構えておきますので」
ノインさんが俺のお願いを聞いて、指輪ちゃんの周囲の音を大きくする魔法を掛けてくれる。
周りのみんなは流石に唐突に俺が襲われたことに対して警戒の色が強い。
イレヴンは全身の武装を装備の下でガコンガコンと開き始めたし、サザンカさんは納刀して腰を落として『隼断』をいつでも放てる構えだし、リンとノワールさんは息を吸ってブレスをいつでも撃てるようにしてくれていた。
まぁさっきの瞬間を凌いだんで俺の勘は今の所これ以上の何かはないって言ってるけど……さて、それじゃあ音量も調整したことで改めて話すか。
「もしもーし!? まずはお名前から教えてくれますかねぇ!! 何も聞こえてませんでしたからねぇ!!」
『そんな──とぼけるなんてひどいわ、パパ──♡』
「あっちょっとだけ声聞こえた! 可愛い声だねマジで小声なだけだったんかい!! もっと腹から声出してみません!?」
『あんなに私と愛を誓ったのに♡──ずっと──二人きりになれたらいいねって──パパも否定してなかったもん──愛してるわパパ──だから今すぐこれを外して──? 二人きりになりましょう──♡♡』
「人の話を聞かないタイプのスタンドかぁ」
意思疎通が困難なヤツだなこれな!(全知)
ようやく聞こえた指輪ちゃんの声はすっごい蠱惑的エッチドスケベ囁きASMRボイスだったからそれはいいんだけどさ! 人の話聞いてねぇなぁコイツなァ!!
ヤンデレの気配をひしひしと感じるよ。今までの俺の嫁(候補含む)にいなかったタイプの性格だぞコイツ。
個人的にヤンデレは好きなんだけど唐突に好意を向けられる当事者になるとどうしたらいいかわからないの。
とりあえずコミュニケーションを試みるか。せっかく声が聞こえたわけだしな。
「とりあえずお名前から教えてくれる? 今までユーが話しかけてくれてた声全部聞こえてなかったっぽいからさ」
『ひどい──でもパパがようやく私の声に答えてくれたの嬉しいから──いっぱい話そうねパパ──もう私とだけ話してればいいから──』
「ハーレム拡大を目指す俺の敵かお前は!? いいから色々まずはお話しようねお話!! 会話できるようになったのは嬉しいからちゃんとしたキャッチボールをねェ!?」
『うふ♡──うん、私の名前は──『ネェ』よ──さっき、名前を呼んでくれたじゃない、パパ自身が──それで存在がはっきりと定義されて、こうして顕現できたの──♡』
「記憶にございませんがねェ!?」
コイツの名前はどうやら『ネェ』と言うらしい。
ネェちゃんか。姉っぽいけど娘という自称。今後ナンパする時に「ちょっとそこのねえちゃーん!」って声を上げた瞬間に出てきそうで怖いなコイツ。
あと事前に名前を呼んだって話だけど全く心当たりがありませんが??
「……ああ、なるほど。先ほどロック様が顕現化の最中に『
『確かに私達インテリジェンスタイプの意識って名前と存在が定義されてないとちゃんと意識をキープできないものね』
『ロック=イーリーアウスに名前を呼ばれるのを待ち続けていた、ということでしょうね』
『しかしどうやら随分と歪んだ性格のようですね。流石はロックが生み出した精霊です』
「イルゼなんか俺に当たり強くなっとらんか??」
マルカートさんが解を示し、インテリ同盟がなるほどなーと同意する。
名前を呼ばないとダメな縛りとかがあったらしい。ネェちゃんは俺が適当にねぇって言ったせいでそんな名前になっちまったと言う事か。
なんか……ごめんな変な名前になっちまってな……?(素の謝意)
ゴッドファーザーになったことって一度もないから初めての名付け親が雑な事になったのにちょっと凹む俺。割と繊細なところあります。
でもネェちゃんってなんか呼びやすいからまぁいいか。(切り替えの天才)
「一先ず名前は分かった。ネェちゃんね……んで? なんで俺に変な魔法を掛けようとしたの? 俺なんも命令してなかったよね? ご主人様に逆らう系の魔装具か?」
『だって──パパ、いっつも危ない事ばっかりするし──私が護っても護ってもすぐに危ない所に飛び込むし──護ろうとしても、護れてなくて──護りの指輪の本懐を果たせなくて、悲しかったの──』
「ぐう」
「ぐうの音ちゃんと上げる人初めて見ましたよマスター」
『このままじゃ──私がいる意味がなくなっちゃう──私はパパに生み出してもらったの──パパを護らなきゃいけないの──護りの指輪なんだもん──』
「ここまでは割とマトモなこと言ってる」
『パパを護って──世界で二人きりになって──♡』
「隙あらばすぐ無理心中しようとしてくる」
『──だから、
「こいつヤバい」
いかん……!(ギュッ)
俺と永遠の時を過ごすことを求めるタイプのヤンデレだコイツ。
俺を行動不能にさせた上で自分がその主導権を握る事で誰にも手を出させないと画策したのか……ヤバいやつじゃん。勘が働いてくれてなかったら今頃完全に俺の生殺与奪をコイツに奪われていた説がある。
やっぱり呪いの装備じゃん。誰だよこんな装備を作った奴は。
俺かぁ。(涙)
「……どうします、ロックくん~? 見た目は大変に美少女ですけど、言ってることがヤバすぎるので、ここで何とかしておいた方がいいかもしれませんよ~? 装備の解呪を試してみて、指輪外せたら封印するとか~?」
「私もノインに同意します。ここまで異常な精神構造をしていたとは……いつマスターに歯向かうか分かったものではありません。壊しますか?」
「二人の言う事もわかるねんな……でもな……」
ノインさんもイレヴンもかなりの危機意識を持ち、周りのみんなもそれに同意するように頷いている。
危惧は分からんでもない……っていうか分かる。
俺という存在はただの勘のいいガキという価値以上のものになっちまってるのは流石の俺も分かってる。
そんな俺に対して躊躇い無く自由を奪って来ようとしたコイツがどれだけ危険な存在か。元が俺の装備だったとしてもここで討伐しておくべきだろう、というみんなの判断は分かるところだ。
しかし。
俺はそんなみんなの意向に反して、コイツを失うつもりは欠片もないのだ。
「勘がさ……コイツの、護りの指輪としての機能は失っちゃ駄目だって言ってるんだよね。実際これまでも俺の命の危機を何度も護ってもらってるしさ。俺の装備だし、責任は最後まで俺が取るべきだと思う」
『パパ──♡♡!!』
「マスター……」
「それに可愛いしデカパイだしさ!! 余りにも失うのが惜しすぎる!! デカパイ無罪を永遠に唱えていきたいのよ俺はッ!! 俺に惚れたデカパイの責任は全部取る覚悟ッ!! 故にネェちゃんも俺の嫁の一員にしたいというのが本心ッッ!!!」
「これだよ」
「ロックくんイズム全開だ~」
「主殿はいついかなる時も主殿でござるな」
「しってた」
「お兄ちゃんはさぁ」
『みゃ……?』
だってデカパイで可愛いんだもんコイツ!!(曇りなき感想)
デカパイ無罪。俺が万が一この国の王になったらデカパイ無罪を国の法に据えようと思います。だから絶対に王にするなよ。(圧)
ネェちゃんだって俺の事が好きすぎて二人きりになりたいって話で別に俺の事嫌いって話でもないわけだしさ。好意持たれてる女の子を邪険に扱うわけがないじゃんね俺がね。
ようはネェちゃんは心が幼いのだ。まだ生まれたばかりの子どもで、コミュニケーション不足が過ぎるために歪んだ愛欲を俺にぶつけてる。
じゃあもっとコミュニケーションを取って勉強して成長させればええやろ!
「よし。今からネェちゃんには色んな事を教えるので、それをしっかり覚えてもらおう」
『え──?』
「ネェちゃんは俺の事大好きだよな?」
『う、うん♡──それは勿論──♡』
「じゃあ俺の言う事聞けるよな?」
『もちろん──私、パパの言う事なら、なんでも聞くわ──♡』
「えらい。俺もネェちゃんが俺の言う事を守れるならいっぱい愛してやるからな。だから俺の言う事は絶対だぞ?」
『ッ♡♡──わかったわ、パパ♡──私にいっぱい命令してね──♡』
「端から聞くとかなり怪しい会話ですね」
「DV系彼氏か~?」
「親子関係ではござらぬか?」
ほら! ちゃんと話せば物分かりいいじゃんネェちゃん!
初回のコミュだけで相手の全てを判断するのが間違いなんだよなぁ。ケンタウリスの皆さんだって初見でおもっくそ嫌われたけど今はいい感じの関係になってるしさ。人はコミュニケーションして仲を深める生き物なのよ。
「じゃあ……なんか捌き斬りで返した付与魔法を解除するからな。解除したからってすぐに俺に魔法かけようとするの禁止ね。それしたら顕現化解除して二度と顕現させないからね」
『はーい♡──パパの言う事ちゃんと守れるわ──いい子になりまーす♡』
「可愛い奴め。えっと……んじゃ、こうか」
約束も取り付けたところで、俺が使役してる付与魔法を解除する。
流石にこれくらいはね、なんか魔法を編んでる感覚は掴めてるわけだし出来ますわよ。
護りの指輪であるネェちゃん関係なら魔法もちゃんと使えることが分かって俺も成長を実感できてうれしいです。
では付与魔法を解除してっと。
『あっ♡────……パパぁ♡!!』
「キスしようとしてくるんじゃありませんオラッ!!」
『いやーん♡』
再びキスしようとして来たのでデコピンによる捌き斬りで反撃したった。
捌き斬りが出来るってことは俺に何かしらの害があるってことだぞお前なーっ!?
クソッすぐには反省しねーなコイツ!! 今からパパがしっかり教育して分からせてやるわい!!
俺は孤児院育ちでガキの扱いと教育に慣れてるんだ!! 俺は詳しいんだ!!
~外見紹介~
ネェ 150cm 86 53 82 G