勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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2 彼女のドリル(隠語)が天を貫く

 

 

「ひとまず自己紹介からやり直しませんか?」

「その前に何か着てくれない? 君が裸でいる限り俺の中の獣が抑えられないの」

「チッ!」

「綺麗な舌打ち」

「これはマスターガチャ失敗ですね。やり直しましょうもう一回待機状態になるので50年くらい起こさないでください」

「ガラスの中に戻んないで!? いいから早く服着てェ!?」

 

 相変らず全裸から目を逸らせない俺は冷静な対話をするために早く服着て! とお願いする。

 すると女の子が目を閉じたと思うとぺかーっと光を放ち、それに目を細めてから開けばなんと全身に薄地のタイツのような服を纏っていた。

 むぅ……確かにこれでおちくびとか色々際どい所は隠れたのだが。

 

「全裸と全身タイツ比較してエロレベルたいして変わらないと思うのは俺だけ? 相変らずドスケベ判定だが??」

「私の正式装備になんてことを言うんですか。よこしまな欲望で体に触ろうとしたら抉りますからね」

「怖い」

『みゃあ』

「ふぅ……では改めて自己紹介を。私はイレヴン、対魔獣用決戦兵器汎用人型アンドロイドです」

「うん。イレヴン……最後の方なんて?」

「ですから対魔獣……いえ、分かりやすく言えば意志を持った人形のようなものです。人間ではありません」

「人形……え、マジ!? こんなにムッチムチでドスケベボディなのに人間じゃねーの!? とんだダッチワ」

「それ以上口に出したら殺すぞ」

「ごめん。……えー、んじゃ俺も自己紹介すっか。俺はロック、孤児院出身で15歳。冒険者やってて今は銅級、ちょうど銀級昇格試験中。そして永遠に彼女募集中」

「ロックですね。冒険者ランクは……銅級? ……銅級かぁ。はーーーーぁ」

「クソデカため息つくじゃん……あ、こっちの猫はミャウね、俺の家族」

『みゃあ』

「ミャウ……よろしくお願いします。……なぜダンジョンに猫を?」

「なんでやろな」

『みゃあ』

 

 とりまお互い自己紹介する。イレヴンちゃんというらしい。

 その後も簡単に事情を聴いたが……なんかこう、作られた生命体みたいな? 人工精霊みてーなもんかな。でもあの研究って50年以上前に潰れてなかったか?

 わからん。よくわからんけどとりあえず俺がイレヴンを目覚めさせたらしくて、仮のマスターとして登録されたって話だ。

 なんで『仮』なのか聞いたが教えてくれなかった。もっといい男がいたら乗り換えるつもりかコノー!

 

「俺よりも素晴らしい男なんてこの世界にはいないから真のマスターとして認めてくれてもええんやで!」

「なんでそんな自信満々なのか真剣に理解が及びません」

「ひん。でも俺がマスターってことはあれなん? なんかこう……お願いとかできる感じ!? えっちなのどこまでOK!?」

「私はマスターに対する拒否権と抵抗権を有しています。望まぬ命令をされた場合には……」

「……場合には?」

 

 俺がマスターになったということでえっちなお願いとかできるかなー! と聞いてみたところ、どうやらイレヴンは自己判断で俺の命令にNOと言えるらしい。

 望まぬ命令をされたらどうするのかと聞いてみた所、イレヴンが右手をすっと顔の前に手刀を作る様に出して、そして彼女の二の腕から先が急に高速回転を始めた。

 ぎゅるんぎゅるん鳴っとる。命を穿ち抉る音を立てておる。こっわ。

 

「こうします」

「OK完全に理解したわこれからよろしくイレヴンさん」

「敬称は不要です。よろしくマスター」

『みゃ……』

 

 ドスケベな女の子のマスターになれたと思ったらこれだよ。俺の周りの女子がみんな俺に優しくない件について。

 さて、しかしこうして奇妙な出会いを果たしたわけだがそう言えば俺は銀級昇格試験の最中であった。

 おせーなノックスさん。俺の後ろをついてくると言っても階段降りてくるだけだからすぐに入ってきてもおかしくないと思うんだけどな……と。

 そう思ってたところで、急にガンガンと鉄を叩く様な音が部屋に響き渡った。

 

「……ぃ! おいロック!! こん中にいるのか!? お前これどうやって開けた!? 中から開けられるか!?」

「あ、いつの間にか扉しまっとる」

「パスコード付きの自動扉ですからね……そういえばマスター、貴方はどうやって部屋の中に?」

「なんか扉の横にあるパネル適当に押したら開いたけど」

「ええ……」

 

 なんかイレヴンにドン引きされた。なんや。

 内側から扉を開けられるか聞いてみると、彼女なら扉を開けられるとのことで。

 早速開けてもらうと、何故か慌てた様子のノックスさんが扉の中に飛び込んできた。そして自動でまた扉が閉まって……そして直後に、再び扉を叩く様な音が響いた。しかも超乱打。

 

「うぉう!? ノックスさんこれどしたの!?」

「どうしたもこうしたもあるかよ……! お前を追って階段降りてたら急に通路の壁に穴が開いて魔獣がなだれ込んできやがったんだよ! 貧乏くじにもほどがあるぜ……このダンジョンにいねぇはずの強力な魔獣ばっかりでよぉ、まったくどうなって……って誰だその女!?」

「初めまして。私はイレヴン、対魔獣用……」

「俺の女です!! 俺が見つけたからノックスさんにはやりませんよ!!」

「誰が貴方の女ですか調子に乗るなよガキが」

「辛辣!!」

「あぁ……? 何が何だってんだ……とにかく簡単に状況説明してくれ、こっからどうするかも考えなきゃならねぇしよ」

 

 魔獣がどんどんと扉を叩く中で簡単に俺とイレヴンで状況を説明した。

 俺が部屋を開けてイレヴンを起動して彼女のマスターになって、んでその影響か知らんけどここに来るまでの階段に魔獣が解き放たれたっぽくて今俺たちは袋のネズミ。

 イレヴン曰く、この部屋にあの扉以外に出入り口はない。

 以上。

 

「もしかしてピンチです?」

「ああ、かなりヤバいぞ……外にいる魔獣にゃコカトリスやらキメラなんてのもいやがった。10匹やそこらなら俺を先頭に一気に突破も出来ただろうがそんな数じゃねぇしな……くっそ、マジでどこに隠れてたんだよアイツら。長い事ここに潜っちゃいるが最下層の五階層でもあんな魔獣見たことねぇぞ」

「よしんば私を目覚めさせたせいだとしても私を起動させたマスターに原因があると思われますね。私のせいではありませんのであしからず」

「物凄い責任転嫁を見た」

『みゃあ』

「特大の罠だったんじゃねぇのかこの女……しかしマジでどうする? この部屋になんかすげー武器とか隠し扉とかねぇのか……ここを脱出しねぇと転移陣の起動すらできねぇ。せめてさっきの通路に戻って最下層階段前のセーフエリアまで行けば転移陣起動してダンジョンの外に出られるんだが……おいイレヴンとやら、お前さんどこまで戦える?」

 

 外の魔獣を見てないからあれだが、ノックスさん曰く相当強い魔獣が集まっている様だ。

 ふざけんな起動前にそういう注意書きはしておけよ! おばか!

 多分注意書きがあっても起動しただろうけど俺は!!!!

 

 さてマジでヤバいかな……と思う反面、俺は何故かそこまでの危機感を味わっていなかった。

 能天気な性格もあるが、それ以上に……何とかなると俺の勘が叫んでいるのだ。

 それを証明するかのように、イレヴンがノックスさんの言葉に強く頷く。

 

「問題ありません。四階層最終通路に戻る階段の踏破。このイレヴンにかかればお茶の子さいさいです。なにせ私は高性能ですので」

「自信に満ち溢れてやがんな」

「早くもポンコツ臭がし始めた」

「失礼な。つまりはこの扉の先に在る魔獣を蹴散らして脱出すればよいのでしょう……私が先陣を切ります。マスター、ノックス、ミャウ、私の後ろをついてきてください。全速力で行きますのではぐれないように。壁の穴から追加の魔獣が来ないとも限らないので」

「って、おいイレヴン!?」

 

 何故か自信満々のイレヴンが扉の前に立ち、内部コンソールを弄って扉を開け始める。

 唐突なその動きに俺とノックスさんが身構えて、迫りくる魔獣の群れと相対する準備を……いや俺は全力で攻撃から逃れる準備をした、その時だ。

 

「エクスアームズ01『ドリルブラスター』、最大出力回転始動(マキシサイクロン)───!!」

 

 ついさっきぎゅるぎゅると回転させたイレヴンの右腕が、先程の比較にならないほどの回転を纏い空気を切り裂き始める。

 その甲高い破音に、扉を開けた先にいる高位の魔獣の群れが一瞬驚愕し、そして次の瞬間。

 

「───行きますッ!!」

 

 濃密な魔力の波動を身にまとい、イレヴンが回転する右手を前に出し、全てを貫きながら階段を一気に突貫した。

 

「ウワーッ!? すげえ!! カッコいい!!」

「なんつー火力だッ!? とんでもねぇモン見つけたなロックてめーこの野郎上手いことやりやがってっ! よっしゃついてくぞッ!!」

『みゃあー!?』

 

 その後ろを慌ててついていく俺たち。

 ノックスさんは流石にベテラン金級冒険者で、ドリルが穿ち漏らして息絶えていない魔獣を駆け抜けながら仕留めつつ、俺は置いてかれたら死にそうなので全力で階段を駆け上がる。

 フードに入ったミャウも落ちないように俺のフードをしっかりとつかんでいる様だ。首締まるわ。

 

 ギャリギャリギャリギャリとイレヴンの腕ドリルが魔獣の群れを貫き抜けて、全力で駆けのぼる事1分弱。

 俺たちは無事に第四層の通路まで復帰することができた。やったぜ。

 

「……ふふん。私にかかればこの程度の危機は危機にもなりません。余裕でしたね」

「いやマジですげぇよイレヴン!! ドリルカッコよかった!! えっヤバい超テンション上がったー! もっかい!! もっかい見たい!!」

「すみませんマスターさっきの技は一発撃つと内臓魔力炉の充填に一日かかるのでもう今日は何も出来ません」

「このポンコツがよぉ!!」

「ってかまだ油断すんな!! 五階層前のセーフエリアの方までさっきの魔獣が行ってる可能性もあるんだからそっち移動して転移陣起動してからだ落ち着くのは!! 階段まで走るぞ!!」

 

 イレヴンの一日一回の必殺スキルで難を逃れたはいいがノックスさんの言う通り、確かにまだ気を抜ける状況ではない。

 試験中ではあったのだがこれだけ妙な事態になっちまってれば試験は切り上げになるようで、俺もその判断には異を唱えなかった。

 まぁイレヴンと出会えたしな! 銀級になるのは後でもいいし今日はこの女で勘弁したろ!!

 

 

 そしてその後、数体の魔物をノックスさんとイレヴンが処理して通路を駆け抜け、無事にセーフエリアにたどり着いた俺たちは転移陣を起動してダンジョンを脱出したのだった。

 

 






~登場人物紹介~

■イレヴン
ダンジョンに眠っていた美少女アンドロイド。若干ポンコツ臭。
現在は全身タイツというフェチズムの塊。ドスケベがよ。
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