勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
翌日。
リンとイレヴンと自宅で過ごしてきっちり準備も整えた俺はケンタウリスのメンバーと正門前で合流した。
「ふわぁ~……!」
『んみゃあ……!』
「ふふ、リンちゃんもミャウちゃんもおおきなあくび。朝は弱いのかしら」
「リンはこの時間はまだ寝ていますからね。それでもご飯はいっぱい食べていましたが」
「おはようイレヴン。貴女は元気そうね。ロックだけ遅刻すればよかったのに」
「失礼な。俺は規則正しい生活マンですよアルトさん! 毎日早く起きてリンのご飯作ってるんで朝は強い方です!」
「ほう、意外だな。少年はもっとだらしがないものかと思っていたぞ」
「…………くぁ……」
「シミレさんも眠そう。大丈夫ですか? 水飲みます?」
「シミレは低血圧ですからね。そのうちしゃっきりとするでしょう、気配りは無用ですよティオ」
朝早い時間だったけど問題なく全員揃いましたね。
リンが普段起きる時間よりも早い集合時間だったから布団から引っぺがすのに苦労したよ。置いてくぞって言ったら跳ね起きたけど。朝食もきっちり10人前食べたけどさっきからめっちゃあくびしてんなこいつ。
「さて、では出発しようか。言われた通り幌馬車は一輛しか準備しなかったが……本当に大丈夫なのか?」
「大丈夫っすメルセデスさん! 俺とリンはイレヴンに乗っていきますんで!」
「響きが変態なのよね」
「イレヴンさん……嫌なことがあったらいつでも相談していいですからね?」
「思いやりは嬉しいのですが実際に私が乗り物になるのでなんとも言えないというか」
さて、そしてこれから長旅になるわけだが、勿論全員でえっこら徒歩で移動するわけではない。
移動用に幌馬車を準備しているのだ。これはケンタウリスが所有する幌馬車で、二輛あるうちの一つを用意した。
一輛あたり四人まで乗れるのだが、今回のパーティは9人。全然足りないやんけ……とはならないのが今回の遠征である。
まず説明不要と思うが、幌馬車を牽くのはメルセデスさんだ。
その辺の馬よりパワフルなメルセデスさんは二輛繋いでも余裕で引っ張れる。ケンタウリスが遠方への遠征を苦にしない理由だね。流石のセントールですわ。
で、さらにメルセデスさんの背中に一人乗れる。この時点でメルセデスさん+ケンタウリスの5人は幌馬車一輛で十分運べるというわけだ。
そして俺とイレヴンとリンだが、こちらもイレヴンがバイクになれば二人は余裕で乗れる。前にティオとカトルと俺で3人で無理矢理乗ったりもできたしな。
リンは尻尾が大きいから場所を取るが、それだって俺の後ろに乗ってもらえば問題なくゆったりと乗れるだろう。
そもそもリンは自分の竜翼で飛んでも幌馬車引っ張る速度には余裕で追いつけるけどね。ただ長時間飛ぶ練習してないから途中でへばるだろうしお腹も空いて燃費がさらに悪くなりそう。なのでバイクです。
「んじゃ出発しましょうか。正門出て少ししたらバイクに変形させて走り始めますんで」
「承知した。ではケンタウリス出発! ここに再び帰ることを第一に誓うぞ!」
「「「はい!」」」
遠征が始まった。
※ ※ ※
かたかたと幌馬車が走る音が鳴り響く傍で、まずイレヴンにバイクに変形してもらう。
「エクスアームズ02『トランスフォーム』─────!!」
「……わぁ!? 何よそれすっごい!? どうなってんのよソレ!?」
「まあ……! イレヴンさんが乗り物になっちゃいました! 名乗りもかっこいいですねぇ」
「おかしい……明らかにイレヴン様の体躯よりも変形後のサイズが大きい。どのような仕組みなのでしょうか?」
「…………不可思議」
「ほう……」
「私は一度乗せてもらったんですよねー。乗り心地よかったですよ!」
幌馬車からみんな首を伸ばしてめっちゃ見てくるやん。マルカートさんはメルセデスさんに直に乗ってるけど二人も見てくるやん。
分かるけどさ。かっこいいよねこの変形! 自慢の女ですわマジで。
さてそんじゃ乗りますか。リンは後ろね。
ミャウは俺のフードの中でもよかったけど女性陣に奪われたので今は幌馬車の中でみんなの太ももの上です。そこ代われ。
「魔力を通さないと走れないけどスピードは出ますよー。幌馬車引っ張ってるメルセデスさんを追い越さないように気を付けないと」
「ほう。言ってくれるな少年……」
『注ぎ込む魔力量は調節してくださいねマスター。本当にその辺がアレなのでホントに。振りじゃないですよ』
「わかってるわかってる。じゃあリン、しっかり腰掴んでてな」
「うん」
「よし行くぞー……」
イレヴンバイクに乗り込んだ俺は、リンが俺の腰をしっかりつかんだことを確認してから、ここ最近鍛えた魔力の放出を試みる。
ノインさんとの練習を思い出せ……そう、欲望を解き放つように!!
「──────性欲ッッ!!」
『カスがよ』
「最っ低!! ロックほんとサイテー!!」
「どんな掛け声なのよ」
「心の底からドン引きです」
「…………死んだほうがいい」
「ロック様は魔力を操作するたびにその掛け声を上げるのですか? 生きていて恥ずかしくありませんか??」
「何というか……うん、ロックだな少年は。二重の意味で」
「はずかしいロック……」
『みゃあ……』
俺独特の掛け声を上げてイレヴンに欲望という名の魔力を注ぎ込んだら女性陣から滅茶苦茶ドン引きされた。
しかたねーだろあの時の感覚を思い出すためにはむらむらを解き放つ必要があるんだから!!
ちゃんとイレヴンバイクもブルルン……ってエンジン起動したし魔力注ぎ込めてるんだから文句ねーだろ!
『というか最初に注ぎ込む魔力の量が本当にキモいくらい莫大でキモいんですよこのカス』
「ひどくない? いいじゃんいっぱい魔力籠めればその分長く走れるんでしょ」
『キツいんですよ……先日のカトルとティオがゆっくり注いでくれたくらいの量でいいのに。どんな体してるんですかホントにマスター』
「俺も知らんわ」
『みゃあ』
この性欲爆発魔力供給はイレヴン曰くなんかすっごい量らしいんだけど……知らん! 魔力操作できるようになっても相変らず魔法は何も使えねーし俺!
ノインさんとのアレで目覚めた後、ノインさんから「魔力を注ぐ感覚はやり慣れて覚えておいた方がいいですよ」って言われたから夜な夜な護りの指輪に魔力注いでみたりしてるけど何も変化ないし。
わからん……俺は雰囲気で魔力を扱っている……。
まぁええやろ。出発しよ。
俺はアクセルを回す手に力を込めてイレヴンバイクを発進させた。
なんだかんだ言ったけどバイクで走るのは気持ちいいから好きだ。リンも走り出してきゃっきゃと騒いでいる。
尻尾あんまり揺らさないでねバランス崩れるから。
「おお……軽快な音だな。そして速度も出る……これは負けていられんな」
そしてバイクで走り出したところで、メルセデスさんが速度を合わせてついてきた。
速度出しすぎたかな? と思い、じわりとアクセルを緩める。メルセデスさんと並走するようにしないとな。速度調整は未だに慣れないわ。
ティオたちが乗ってた時は安定して魔力供給してたからアクセルで速度調整出来たけど俺が魔力注いでる今はなんか波が荒い。これも覚えていかねーとな。
「……む」
「……っと」
と思ったら今度は減速しすぎたか? メルセデスさんが前に出過ぎるような形に。
置いてかれちゃあかん。アクセルをグイッと回して再加速、並走……したらまたメルセデスさんが先行した。
んー? イレヴン速度落ちてる? もうちょい加速っと……。
「むむ……」
「…………メルセデスさん?」
おかしい。俺の体感ではスピードが上がり続けている。
並走するだけですよね? もしかしてメルセデスさん負けず嫌いか? 絶対負けまいと加速してますよね??
いや俺はいいんすよ。イレヴンもまだまだ速度出るし。サスペンション効いてるから街道走るくらいなら揺れも全然余裕だし。リンも速度出て喜んでるし。
でもその。
「だっ……団長!? スピード出過ぎじゃないですか!? 団長!?」
「揺れるー!! すっごい揺れてます団長ー!! 速度落としてぇ!?」
「タイヤがギシギシ言ってるわね……大丈夫かしら?」
『みゃあ! みゃあみゃあ!!』
「…………酔う」
「どうどう……!! 手綱絞ってるのに加速なさろうとしないでください団長!!」
そちらの団員さんの乗る幌馬車がすっごい揺れてませんかねぇ!?
めっちゃガタガタ言ってるよ! しっかりした造りとはいえ幌馬車デカいもんね! タイヤもイレヴンみたいにゴム製じゃないからすごい衝撃だよ多分アレ!
負けず嫌いだこの人! 可愛い!! すき!!!
『メルセデスは幌馬車を牽いているのですから、今勝負してもケリはつかないでしょう。落ち着かれたときに距離を決めて競うのであれば私も応じますから、この場ではお互いに速度を合わせませんか』
「む……そうか、そうだな。すまん、中々の速度だったからつい、な……」
「だからと言って急激に速度を落とさないでください団長!」
「この人面白」
『みゃあ……』
イレヴンが諭してようやく速度を落としてくれました。メルセデスさん速度に自信があったんやろな……その辺は馬の本能的なものなのだろうか。
俺もそれに合わせてアクセルをようやく緩めることができた。速度計見ると80キロくらい出てませんでした? 幌馬車牽いてこの速度って馬が出せる速度なんか? セントールすげぇや。
「まぁでも団長とイレヴンさんだったら……イレヴンさんの方がちょっと速いかも……」
「ティオ!? アンタ今ここでそれ言う必要あった!? 前にイレヴンに乗ったことがあるからって!?」
「む……やはり負けんぞイレヴン! 王都最速は私だ!」
『拘りますね』
「あー! 団長がまた加速し始めちゃったじゃないですかー!」
「…………余りにも失言」
「どうどう! どうどう……!!」
ティオの失言でまたメルセデスさんが加速し始めてしまい、それを諭すのにまた一悶着あった。
ケンタウリスは楽しそうですね。平和な一幕。
※ ※ ※
ネレイスタウンに到着するのに10時間程度を見込んでおり今日中には到着する見込みではあるが、当然にして一気に走り抜くはずもない。
二時間に一回くらいのペースで休憩を取って、川の近くで水分補給したり野営したりする予定であった。
で、今はちょうどお昼ごろ。ご飯のお時間ですわよ。
「はむはむ! がつがつ……!!」
『みゃう……んみゃあ!』
「よく食べるわねリンは……竜人って食事量多いのね」
「んむ……ごく。なかなか美味いな……ロック少年は料理が得意なのか」
「必要に駆られて覚えたって所ですね。孤児院でも当時一番年長だったんで料理は手伝ってましたし」
本日はリンの他、同じくらいめっちゃよく食べるメルセデスさんが一緒なので腕を振るって野営食を作りましたよ。セントールは体が大きいからいっぱい食べるよね。ミャウも競うように食べてるけどお前そんな食えないだろ。
大鍋やら調理器具はアイテムボックスにちゃんと準備してきたし、火を起こしたりは慣れた物。新鮮な水はティオの魔法で供給出来たし……まぁ多人数の料理を作るのは得意中の得意ですわ。
今日のお昼は道中で狩ったワイルドボアの肉の丸焼きに、大鍋で作ったピリ辛のトマト鍋。パンは山ほどストックしてきたのを出してるのでそれぞれ取って食べてください。
「うん、今日もロックの料理おいしい!」
「アンタ料理できたのね……スケベなだけのガキだと思ってたわ」
「能ある鷹は爪を隠すってやつです」
「鷹と表現するにはちょっと欲望吐き出し過ぎじゃないですか?」
「…………お代わり」
「はいほい」
シミレさんに鍋のお代わりをよそいつつ、リンとメルセデスさんには常にお代わりスタンバイしながらも俺も腹を軽く満たす。
この後の運転もあるからあんまり満腹になってもな俺は。町について宿とってからでええやろいっぱい食べるのは。
「それにしても……今日はやけにロック様は大人しくありませんか? 普段はもっとこう……あらゆる瞬間に発情するサルの様な印象だったのですが」
「だいぶ刺してきますねマルカートさん? いやまぁ俺も大人になったんすよ……リンもいるし」
「いえ、それは私がマスターと『女性陣にセクハラせずに遠征を終えられたら私の胸を触っていい』と約束したからですね」
「何で言っちゃうの」
「イレヴンさん!? そんな……自分の体を大切にしよう!?」
「ダメよイレヴン!? こんな男に体を許すなんて! 今からでもロックを殺した方がいいかしら!?」
「私達の為を思ってのことかもしれませんが……イレヴンさんも体を大切にしてください!」
「イレヴン……いつでも我々ケンタウリスは君を迎え入れる準備はできているからな。辛いことがあったら相談してくれ」
「ひどい」
「でもロック様はその約定が無かったら気兼ねなくセクシャルハラスメントを働いてきましたよね?」
「愛情表現と言ってほしいですね。美しい皆様への愛が口から溢れてしまうだけなんすよね!」
「…………やはりカス」
「はぐはぐ……ロックはカス……」
『みゃあ……』
出発前に約束してた件をイレヴンがばらしてしまったものだからみんなから総スカンを食らってしまった。
俺だって流石に全力で口説いてないじゃんね今回はねー! 確かに前にパーティ組んだときは不屈の精神でアタックしまくってめっちゃ失敗したけど!! クランハウスで合流したあたりでもそんな直接的な事言ってないよねぇ!?
第一印象がダメだとやはり尾を引くのか。今回の遠征で俺という男の価値を改めて理解ってもらわないといかんな! 頼りがいのある男ロックを分からせてやるぜ! 分からせバトル開始!!
「うむ……少年はやはり…………だな……」
「ん……メルセデスさん何か言いました?」
「ん。いや、何でもない。私もお代わりを頼む」
「はいほい」
なんかメルセデスさんが呟いたような気がしたので気になって声かけたけど単純におかわりのご所望でした。
どんどん食べてくださいね。魔力で走るイレヴンと俺とは違ってメルセデスさんは体力で幌馬車牽いてますし。馬体の分いっぱい食べないとだと思いますし。
だからリンは張り合っていっぱい食べようとしなくていいからね。お前もしかして止めないと無限に食べられたりする? 食べた物どこ行ってんの? 背ぇ伸びてる??
「ごちそうさまでした。うむ……量も味もなかなかだった。野営は今後も少年に任せたいな」
「味は悪くなかったわ、ごちそうさまロック」
「ごちそうさまでした。やっぱり口を開かなければロックくんは優秀な冒険者なんですけどねぇ」
「…………ごちそうさま」
「ごちそうさまでした。洗い物はわたくし達で行いましょう」
「おそまつさんです!」
その後しばらくして食事はおしまい。洗い物はケンタウリスの皆さんがやってくれました。
こういうのいいよね……家事してくれる美人女性いい……。
いつか全員にメイド服着せて俺んちで家事やってもらいてぇなぁ! なんかの間違いでみんな俺に惚れねぇかなぁ!?
「マスター、鼻の下が伸びていますよ」
「するどい」
しかしそんな眼差しで見てたらイレヴンに諭された。こいつも最近俺の事よくわかってきてるよね。
イレヴンのおっぱいを好きにするために俺は改めてこの旅の道中はケンタウリスメンバー(ティオを除く)に不用意な発言・言動をしないように心がけるのであった。