勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
起きたぜ。
「ん……むにゅ……」
『すぅ……すぅ……』
ノワールさんとリンの親子丼を存分に味わい尽くした翌朝、バッチリといつもの早朝の時間に目が覚めた。
大の字で寝ている俺の両腕にはドラゴニュート親子が腕枕されて俺の体に抱き着く形でぐっすり眠っており、胸の上には大盛と特盛の山嶺がむにゅりと形を変えている。
並みのオスなら息苦しさを感じる所だろうがデカパイ相殺により俺の肺にはとてもすがすがしい空気が供給されてるぜ。ちょっと色んな匂い混ざってるけど。
「さて……どうやって脱出すんべ」
『すぅ……ん……?』
しかし両腕が封印されているこの状況、どのように脱出するか。
シュババッと腕を抜いて枕を差し込んで体を抜け出して脱出するか……そんな事を考えていると、ノワールさんの方から吐息が零れた。
どうやら俺の僅かな身じろぎで起こしてしまったらしい。
首をそちらに向ければ、長い睫毛をゆっくりと開いて、美しいお顔が至近距離にあって、バッチリ目と目が合った。好きだと気付くやつだこれ。
「おはよーさんですノワールさん」
『……おはようございます、
なおノワールさんは即落ちでした。(収益報告)
世間知らずママ(パパ)に気持ちいい事全部教えて上げたらそれはもう気に入ってしまって、最終的にお互いに愛してる連呼しながらリンも一緒にらぶらぶちゅっちゅデカパイ結婚セックスしてしまいました。
リンのつがいになった上でその親御さんともつがいになってしまったぜ。倫理観は投げ捨てた。
そういうわけでアナタって呼ばれるようになったわけ。
着実にハーレムの輪が広がってるね。よいことだ。
『……なんだか不思議と、頭が上手く回りません。これが睡眠欲というもの、なのですね……』
「あ、眠いようならまだ全然寝ててええですよ。まだ早朝だし、これから朝ごはんをサザンカさんが作ってくれて、みんなが起きてくるのももっと後だし。俺は起きるけど、なんならリンを抱きしめながら二度寝の快楽を味わってもろて」
『そう……ですか。では、そうさせていただきます……』
リンを起こさないように小声で話すと、どうやらノワールさんは睡眠もドラゴン形態ではしたことが無いらしく、ドラゴニュート形態による睡眠の素晴らしさを味わっているらしい。
眠る事に幸せを感じられるのは人間の素晴らしい所だと思ってるから俺。野生動物や魔獣と違って安心して眠れるのってすごい事だとちょっと思うね。
俺はノワールさんに二度寝を促して、今度こそシュババっと腕を抜いて体を抜いて、俺がしていた腕枕をノワールさんにバトンタッチ。勿論リンを起こさないように音も立てず衝撃も与えなかった。
デカパイ親子のダブル抱き枕がここに完成した。見てるだけでも最高だぜこの胸元の無限の柔らかゾーンは。
『……昨日より、食欲、性欲、睡眠欲をそれぞれ味わいましたが』
「うん?」
『そのどれもが、ぜひもう一度……と考えてしまうほどに甘美な欲望でした。人類が、時に奇跡すら起こすような可能性を持つ理由が分かった気がします。こんなにも甘美なモノがいくつもあるならば、それを求めるために強い意志で事を為す……それが人間の強さなのでしょう』
「あー……あー? なんとなく分かるかも?」
『人間の中でも、特に性欲の強いあなたなら、こうして女に囲まれるために己の可能性を全力で果たすだろう事を……納得できたのです。色々と教えてくれてありがとう、あなた』
「とりあえずどういたしまして?」
ノワールさんが欲望を知ったことで人類の可能性とかそういう方向に思考が飛躍したけど……まぁ何となく言ってることは分かった。
今日頑張って働いたらうまい飯が食べられてぐっすり眠れて、いずれ好きな女とセックスできるってなったら人間頑張るからな。
欲が強いからこそそれを満たすために張り切るぞい! ってのが人間の本質だって話ね。
深いな。嫁さんの中でも相当インテリ寄りだなノワールさんは。
『……そして、こうして娘を胸に抱くことの温かさも知れました。とても、幸せで……胸がいっぱいになります……』
「リンは体温高いからぎゅってしたくなりますよね。ええんすよ、もう少し休んでてもろて。ごはんが出来たら起こしに来ますから」
『はい。それでは、お言葉に甘えて…………』
しかしリンを抱きしめながらの会話だったので、ノワールさんはまだまだおねむの様子。
さっき話した通り娘を抱きしめて幸せな二度寝をしてもろて。ノワールさんにとって最高の一日を味わってもらう事を目的としてるからね。
この後の朝ごはんと昼ごはんまでバッチリ楽しんでもらわないと。
おやすみなさいの言葉の代わりにそっとノワールさんの頭を一撫でして、音を立てずに部屋を出て行った。
※ ※ ※
しかし今日はここからが本番であった。
「おはようございます、主殿」
「おはよーさんです────ん?」
一階に降りてきて、いつものように朝食の準備をしてくれているサザンカさんにご挨拶。
最近は肩コリを俺が解しているので素振りの習慣はなくなり、一緒に朝ごはんの準備に入るのが習慣になっていたわけだが、しかしここで急に
「あー……サザンカさん、ごめん」
「ふむ? どうなされた、主殿」
「なんかさ……じんわりと勘が響いて。ちょっとだけ散歩してきていい……?」
何とも言えない勘の響きであった。
なんか……わからん。とにかくなんか散歩しに行った方がよさそうな気がしてきた。
普段早朝の散歩なんて全然しないんだけどね。
急な危機が迫ってるって感じでもないんだけどな。なんだろこれ。
「はぁ。……いえ、無論拙者は構いませぬ、朝食はノワール殿の分も含め、問題なくお作りしておきまするが……しかし、勘が響いたとなれば危険があるのではござらぬか?」
「その辺も分からんのよ。ウチに被害が及ぶ……ような感じでもないんだけど。でもなんか散歩しないとダメな気がして」
「でしたら、早急に。拙者が必要ならば朝食の準備を止めて同行いたしますし、それでなくとも誰かを起こして従えて向かうようにした方がよいと思われまする。主殿の身が何よりも拙者は心配です。勘が響いたとなれば何が起きたかわかったものではありませぬ」
「だよねぇ」
サザンカさんも俺の勘が響いたとなれば緊迫した雰囲気で忠告をしてくれる。
仰る通りで、何が起きるかわからねぇからな。なんかどーでもいい響き方してたと思ったら事が起きる寸前でガンガン鳴り始める事も多いし俺の勘。
マジでよく分かんねぇよなこの辺。自分でも困りますわ。頼むよ俺。
まぁでもサザンカさんの言う通り、とりあえず何が起きても何とか出来る人と一緒に行った方がいいだろう。
つまり俺の相棒である。
(──おーい、イレヴン。起きてるー?)
(マスター? 起きていますよ、ベッドでミャウを抱いて横になってはいましたが……)
イレヴンにテレパシーで念話を飛ばして、起きていることを確認。
早速呼ぼう。
(なんか勘が響いて俺これから散歩に出かけるから一緒に来てくれない? なんかありそうなのよ)
(っ、かしこまりました。すぐに降ります)
用件を伝えれば、すぐにイレヴンが部屋から降りて来てくれた。
胸の下に無理矢理起こされたのか何だか不満げな顔のミャウも一緒である。
でもミャウは俺の顔を見たらぴょいーっとイレヴンの手から離れてよじよじと俺の体を登りフードに収まった。コイツも二度寝の構えのようだ。
「よし、そんじゃちょっと散歩して来ます。多分そんななんか、ヤバいぞなんかすごい事起きるぞ! って感じでも……ないと思うから、朝食までには戻ってくるね」
「そうなる事を心よりお祈り申し上げまする。朝食までに戻って来なければ全員で探しに向かいます故」
「もしそうなったとしてもサザンカさんは家で留守番してていいからね」
「迷子が一人増えるだけですからね」
『みゃ』
「何も言い返せぬ……」
サザンカさんには留守番をお願いして、朝食までに戻って来なければ探しに来てくれるって話にしておいてもらって、俺はイレヴンとミャウと一緒に朝の散歩に出かけるのであった。
※ ※ ※
「おや、ロック様。イレヴン様も。おはようございます」
「あ、おはよーさんですルドルフさん」
「おはようございます」
『みゃ!』
したらお隣さんのルドルフさんがちょうどお庭にいたのでご挨拶。
ルドルフさんも朝早いんだなー。知らなかった。
こじんまりとした一軒家だが、庭にはなんかいい感じの花壇があって整っており、その花壇に水やりをしているルドルフさんがすっごい雰囲気ある感じだ。老後楽しんでんなこの人。
「どうなされましたかな。こんな朝早くにロック様が出かけられるのは珍しい」
「うん。なんかね、ちょっと勘が響いて朝の散歩に行こうかと」
「ふむ? ロック様の勘が……それは、少々怖いお話ですな。
「そこまで大ごとじゃないんすよぉ! ただの散歩ってだけで! 多分大したことも起きないから! 多分!」
「そんな事言ってすぐ大事件に巻き込まれるじゃないですかマスター」
『みゃ』
「半分は当たっている、耳が痛い」
イレヴンの指摘によるダメージを半減しながらも、俺の勘への信頼と俺がトラブルに巻き込まれることの多さへの信頼になんだか涙ちょちょぎれちゃう。
でも確かになぁ……勘が響いてから起きてることが大きすぎるもんなぁ。俺のせいではないんだけど。心配されると遠慮の感情が零れちまうのですよ。
流石にルドルフさんにまでついてきてもらうのはお断りしておいた。なんだかんだイレヴンと落ち着いて穏やかに朝の散歩なんて珍しいからな。
嫁さんと穏やかな時間を過ごすのもお互いの心の栄養になる。イレヴンは特に並んで歩いてるとなんか……落ち着くんだよね。出会ってからずっと俺についてきてくれてるからなコイツ。
さてそんなわけで散歩を再開。
早朝の健やかな感じの風が穏やかに流れる王都を、イレヴンと共に歩く。
自然とイレヴンから手を組んできて。急ぐこともないので歩くのもゆっくりだ。
「マスターの家の近くはある程度地理も覚えていますが……こちらに来るのは初めてですね」
「こっちのほうも住宅街かな。大通りに近い方だからちょっと地価が高かったはず」
「なるほど。道理で、立派な一軒家が多い」
「ヴァリスタさんちがある高級住宅区はもっとすごいけどな」
『グゴゴ……ンピュピュピュミャー……』
勘に促されて出かけた散歩だけど、なんかこう言うのもいいわねー。
俺って今んところ家事をする以外は日中はのんびりして本飛んで訓練とかもしてないで、夜は嫁さんを抱くだけ……っていう生活ばっかりだからな。
落ち着いてると言えばそうなんだけど、ホントはこうして嫁さんたちと一緒に歩いたり、あとは冒険なんかもしてみたいんだよね。
早く魔王倒して日常に戻らないとな……などと、思っていたその時だった。
「────ッ!!」
勘が思いっきり唐突に叫び出した。
駄目だ。緊急だ。イレヴンに指示を出す暇すらない。
一刻の猶予もない。全力で────走れっ!!
「なっ、マスター!? ちょっ……!!」
『フゴゴ……んみゃっ!?』
「うおっしゃーーーい!!」
イレヴンの手を振りほどき、全力で住宅街を駆け抜ける。
一歩遅れてイレヴンがグランドスピナーを起動してついてくるが、並びかける前に勘が響いた原因の元に近づいた。
そこには。
「……っ、家の上に、人影……!?」
民家の上、屋根の上に人影があって。
そして、その人影が……
「むっ、おっ……とと……っ!!」
「人命救助ォーーーーっ!! ぐえーっ!!」
『んみゃーーっ!?』
「何故……?」
スライディングしながらその落下点に体を滑り込ませた俺は、シュポーンとフードの中からミャウを零しつつも、何とかその人影が地面に頭から落ちる前にギリギリでキャッチ。
力がないのでホントになんとか、って感じではあったが、悲劇が起きる前に何とか間に合った。
俺のお腹の上に落ちて来た……どうやら老爺のようだ。
名も知らぬ老爺の命を救出することに成功した。
誰このジジイ。