勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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205 バタフライエフェクトというにはあまりにも風が吹きすぎて桶屋が儲かっている

 

「んーーーーーーんんんん…………!! ふぬぬぬぬ……!!」

 

 これは王城の会議室内で謎のポーズを取りながらぐるぐるその場でトリプルアクセルを決めつつ唸っている俺の鳴き声です。

 こんなにアホみたいなことしてるのに俺を見るみんなの表情が真剣そのものなのがね。なんか気恥ずかしいわね!!

 

「……厳しいようだな」

「マスターの勘……そのうち、自分から求めるタイプのそれでは感知できないという事でしょうか」

「唐突に叫び出すタイプに引っかかっていないなら、喫緊のそれではないのかもしれませんが~……」

 

 そんな俺を眺めるトゥレスおじさん、イレヴン、ノインさんからそれぞれコメントが送られるた。

 今俺が何をしているのかと言えば、この世界のどこかに浮かんでいるだろう魔王の居城を探そうとしているのだ。

 

 俺達ロック一行は、ルドルフさんの報告を受けて早速王城に向かい、トゥレスおじさんが魔族領を調査して判明した一大事情を聞いた。

 なんと、魔王ダブレスちゃんの居城が浮遊して無くなっていた、という事で。

 城の位置はそこについ先日まで住んでたアイムがいたわけだから当然間違えるはずもなく、魔族の本拠地に潜入調査するという大任を果たそうとしたトゥレスおじさんが目にしたのは、直径1kmを超える大穴で。

 穴の方を調査しても、周辺を調査しても、どう考えてもダブレス城そのものが浮遊して移動してしまったとしか考えられないと。

 なんとまぁとんでもねぇことが起きてるもんだよね。そんなの異世界転生チートさんの物語の中でしか見た事ねぇよ。

 

 城を浮かすための闇の魔力とか足りるんか? とかそもそもどんな魔法使ったらそんなこと出来るのか? とか色々な疑問は浮かぶのだが、しかし実際に事は起きてしまっている。

 であれば、人類側としては当然、それに対抗しなければならない。

 トゥレスおじさんが出来る限りで魔族領の上空を調べたが、ダブレス城は発見できず。

 そのため、俺の勘にお鉢が回って来たというわけだ。城を勘で見つけられないかと。

 

「ぬぉぉぉぉ…………できねぇーーーっ!!」

『みゃ』

 

 そしてダブレス城を勘で見つけることが出来なくて、手と膝を床についてorzりながら涙を零しているのが今の俺というわけですね。(涙)

 ごめんねぇ俺の勘がザコでさぁ……!! せめてダブレス城がある方角とかでもわかればそれだけでどんだけ調査が楽になるか想像に難くないけどさぁ!! なんでも出来る万能パワーではないんですよね勘なんてねェ!!

 何となく、っていうのも感じてない。多分なんだけど俺のこの、自分の方から求めるタイプの勘って距離が離れすぎてると駄目なのかもしれない。

 前にホエール山脈の頂上でダブレスちゃん相手にバリバリ裏をかいて色々頑張ったけど、その時に遠方にある王都の危機を察することは出来ていなかった。

 今回もそれと同じで、距離的な問題があるんじゃねぇかな……多分……。

 という言い訳をつらつらとトゥレスおじさんに伝えます。トゥレスおじさんは俺を叱る様な態度を一切見せずに言い訳をちゃんと聞いてくれました。優しい。

 

「…………ふむ……なるほど、な」

 

 俺の勘が不発に終わり、言い訳まで聞き終えたトゥレスおじさんが何だか物凄く思案した後、振り向いてイレヴンに声をかけた。

 

「……イレヴン」

「はい」

「俺とロックが、以前にカジノで話した後から今日に至るまで、ロックの行動がどのようなもので、どのような勘が働いていたか……出来る限り詳細に教えてくれ」

「了解です」

「他の奥方も、分かる範囲でいい。既に俺の知らない事をロックがしでかしているようだからな……そのドラゴニュートは、先代のブラックドラゴンの顕現化に成功した姿だな」

『ノワールと言います。人の子よ、なぜロック=イーリーアウスの行動をそんなに気にされるのか、聞いても?』

「……コイツの勘がこれほどの一大事に、一切響かないという事は考えられない。距離が離れていようが関係ないと俺は考えている。つまり……ロックの中で、()()()()()()()()()()()()()()()という事だ。ロック自身が出来ることは終わっており、後は俺達人類が適切に事を為せば拾える情報だと俺は推察する。だからこそ、ロックがやっていた事の全てを把握して、そこから結びつける情報を逆算する」

「もんのすごい過大評価っ!」

 

 トゥレスおじさんからの信頼が重い! 重いよ!!

 俺の勘が響かない事、それそのものが解決への道筋になるとか正直俺にしちゃ何言ってるねんってツッコみたくなるほどの極論だと思うのだけれども。

 でも周りの嫁さん達も王族の皆さんも『確かに……』みたいな雰囲気で頷いちゃってるしねぇ!

 そんな事ないすよー!! って言い出しにくい雰囲気が醸成されてしまっていますねぇ!!

 こうやってNOと言えないロックくんが生まれるわけだね。責任は取れないのでよろしくね……。

 

「既に本人が見せていますし、ここにいるのは関係者と王族のみなので話しますが……マスターと愛を確かめ合ったことで、ティオが己の種族をエルフと明かして耳の形を生来の物に戻して、マスターの嫁の一人になっています」

「そうか……ティオ嬢もようやくか。一歩踏み出せたんだな……」

「ええ。あとはマスターの護りの指輪が顕現化したり、ノワールが顕現化したりなどあって……それと、もう一つ。すみません、これはトゥレスにのみ伝えて判断していただきたい事項なので、少々別室をお借りします」

「了解した。……ディストール」

「ウム。近くの部屋を貸そう。遮音魔法を使ってくれ」

「助かります。では……」

「……わたしもいく」

「私も~……そうですね。あの件はトゥレスさんには伝えてもよいでしょう~」

 

 なんかこの時点で完全に俺が蚊帳の外になってる感あるよね。

 ねぇミャウ。どう思うこの俺の扱い?

 俺の勘が響かないってだけで、俺から聞き取る事も無くなって俺が何したって話も周囲から聞くようになって……俺の価値って勘だけなのかなぁ??

 いや勘だけやな。(気付き)

 

『みゃぁ……みゃっみゃっ』

「ミャウに慰められてると心がとても大らかになっていく」

『私も慰めてあげよっか、パパ♡』

「ネェちゃんに慰められるのはまだちょっと怖いかな……」

 

 勘だけマンの俺はこうして猫と指輪に慰められながら椅子の上でへにょってるからよ……なんかいい感じに会議が進んだら呼んでくれよな……。

 実際勘が響いてない俺がこんな人類の運命がかかっている会議で発言権とかあるはずもないしな。なるようになるやろ。

 危機感あんま覚えてないしなんとかするやろトゥレスおじさんが……。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

【side ケルク】

 

 

「────そんなことが今朝にあってな。全く驚いたよ」

「へぇ、ケルク補佐官の親父さんを、ロック様がねぇ」

「もしロック様が父の危機に間に合わず、父に大怪我や、命が……などという事になっていたと思うと恐ろしいな。この交易遠征も後日になっていたかもしれない」

「そりゃよかったですねぇ。ホントに英雄なんすねぇ、ロック様って」

「少なくとも、我が家にとっては間違いなくな」

 

 大量のアイテムボックスを積んだ馬車を走らせながら、行者と今朝の出来事を話す。

 年齢を考えず無茶をした父の命を颯爽と救ったロックという少年。

 彼への世間の風評は様々だ。冒険者たちは煩悩塗れの少年だという話もあるし、市政の者からは大会優勝者にして後夜祭を全て奢った太っ腹な少年という話もあるし、女性からは目線がいやらしいエロガキなどという話もある。

 しかし、事実として王都を一度救った実績がロックにはあった。彼を本気で悪く言う者は、少なくとも王都には多くはない。

 今日初めて言葉を交わしたが、人当たりも悪くなく、愉快な少年といった雰囲気の中に、優しさと慎ましさを抱えた芯の強い少年だという印象を持った。

 娘が見初めるのも分かるというものだ。一夫多妻で数多くの嫁を既に持っているとの話で、実際に様々な女性を引き連れながら歩く姿が王都で見られているが、果たしてうちの娘はその中の一人に含めて頂けるのだろうか。娘の恋路を応援する父親というのも珍しいのかもしれない。

 

 しかし、今朝方にそんなロック少年の助けにより、父に大事が無かったことが自分にとっては何よりも感謝を覚えるものであった。

 今日の業務は、転移陣が開かれない僻地へ資材を搬送する、大きな仕事だったからだ。

 王都領に属する、王都から北のほうにある小さな漁村『ヴォニート』。

 この村には、ここ数日で世界中に開かれた転移陣が設置されていない。交通の要所ではないからだ。

 守護結界も無く、村の周辺に魔獣除けの柵と御守石の設置がある程度の、人口100人に満たない漁村だが、ここで獲れる海産の魚介類は極めて脂の乗りがよく、王都でも人気の高級品となっている。

 その村と交易を交わす約束をしていたのが今日だったのだ。

 

 こんなに慌ただしい時勢だからこそ、普段からやっている業務を普段通りに。

 生活必需品を輸送して支援をしながら、漁村から海産品を買い付けて交易する。

 それが交易部門の大臣補佐官である自分の業務であった。

 人々の生活を支援するこの業務には誇りを持っている。人々が笑顔で生活できるように、今日も緩むことなく忠実に。

 

「……しかし、村への移動は格段に楽になったな。前までは片道3日はかかっていたが」

「そうですねぇ。近隣の町に転移して、そこからなら片道4時間でつけるんですから。日帰りでいけるようになるなんて考えてもなかったですよ」

「魔王軍との戦争が終わったら転移陣は順次使えなくなるという噂もあるが、どうか大きな町のものだけでも残らないか……と願うのは、行者の君にとっては不謹慎な話だったかな」

「行者組合でもみんなそう思ってますよ。移動が楽になって輸送の仕事が減るよりも、輸送の手間と危険が減る方が楽ですからね。輸送の仕事は絶対無くならないし」

「それはそうだな。もしも今後転移陣の影響で輸送の仕事が減り、職を失うような行者がいれば、交易部門で就職できるような窓口を作る事も考えてみるか……」

「ハハ、そりゃあいいや。あっしは旅が好きなんで行者やってるでしょうが、そういう斡旋があれば助かる人もいるでしょうや。組合と相談してみてくださいよ」

「そうしよう。戦争が終わったら大臣に相談してみるさ」

 

 行者と世間話をしながら、短くなった旅路を進む。

 話した通り、世界各国の転移陣が第九王女ノルン様の御力により復活したため、交易部門はてんやわんやの日々を過ごしている。

 大きな町が転移陣で結ばれたことで、輸送に全く苦労しなくなったため、関税や転移陣の利用に関する条例の制定などで大臣は日々大忙しだ。

 輸送を主にする部門の職員たちは業務が減ったと気楽なものもいるが、一時的なものであることは間違いない。混乱もあるだろうが、戦争中だ。やむを得ない事だろう。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 さて、そうして無事に輸送の行程を終え、昼過ぎにはヴォニートに到着した。

 海に面する小さな漁村。今日も海沿いには船が見える。漁をしているのだろう。

 積み荷から生活用品の入ったアイテムボックスを卸し、村長と打合せして、海産品もたっぷりと受け取って、無事に交易も完了した。

 あとは受け取った海産物を王都に無事持ち帰るのみであったのだが、しかし、村長の長話に捕まってしまった。

 

「魔王軍が王都に攻め込んで来たって話じゃろ? 大変だったのぉ」

「ええ、避難勧告なども出て、戦えない私のような一般市民はグランガッチに転移陣で避難しましたよ。結局王都は無事だったのですが……」

「おお、おお、それも聞いておるぞ。英雄ロック=イーリーアウスと黒い竜が王都を護ったという話じゃったのぉ」

「仰る通りです。吟遊詩人がどの町でも唄っていますね。実は今朝、そのロック様と私はお会いしましてね……」

「なんと? ケルク、お前さん英雄とお知り合いなのかい?」

「知り合いというほどの事でもなかったのですが……」

 

 話題にロック様が出てしまったのでこちらも得意げに今朝の出来事を話したのがまずかった。

 話に興が乗ってしまい、気付けば中々の時間を井戸端会議に使ってしまった。

 これ以上時間をかけては王都に戻るのが遅くなりすぎてしまう。そろそろ切り上げてお暇しようと考えたところ、しかし、そこで。

 

 村長が、ふと、海を見て首を傾げた。

 

「…………おかしいのぅ」

「ん……? どうされましたか?」

「いや……なに。この時間にしては、海の様子がちぃと、おかしい気がしてのぅ」

「海が?」

 

 村長の家の窓から眺めて見える海岸。

 そちらに目をやった村長が何かに気付いたようだ。

 自分が同じく窓の外に目を向けても、荒れたりしているわけでもなく、普段通りの海のように見えるのだが。

 この村で長年生きている村長だからこそ、その違和感に気付いたのか。

 

「海がな……()()()()()()()。この時間ならば、あそこまで波は来ないはずじゃ……風が強いわけでもないのに、奇妙じゃと思ってのぉ。ほんの僅かに、なんじゃがな」

「はぁ……」

 

 聞けば、海の満ち引きが普段と違う様子だと言う事で。

 村長でもわずかしか感じ取れない違和感を、自分が感じ取れるはずもなく。

 やはり首を傾げる。もしかすると村長の勘違いではないか、とも思ったところで、さらに大きな出来事が起きた。

 

「────詳しく聞きたい、その話」

「ほん?」

「あ……貴方は!?」

 

 唐突に現れた乱入者。

 その顔を、私は知っていた。

 つい最近の闘技大会でも、()()()()()()()()()でも目にしたことがある、王都最強と噂される元冒険者。

 トゥレスが、不思議な乗り物に乗って、何故かこの辺境の村にやってきていた。 

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