勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
【side another】
「スヤァ( ˘ω˘ )」
『みゃあ……』
魔王との決戦にかかる重大な会議の途中で、ロック=イーリーアウスは睡眠してした。
鼻提灯を気持ちよく広げる爆睡であった。
真剣な会議を何よりも苦手とする少年のせめてもの抵抗か、顔よりも大きく膨らむ見事な鼻提灯を全員に見せつけていた。
「……一時間か。まぁ、保った方か」
「すみません。マスターがあまりにもマスターすぎて」
「お兄ちゃんはさぁ……」
「変わんねぇなコイツはマジで」
王都の、ひいては人類の命運を決める会議だというのに、堂々と胸を張って眠っているものだから、むしろその器の広さに、室内にいる皆が苦笑を零すほどであった。
会議を主導で進めているトゥレスは、嘆息を一つ零したうえで、しかし、続けて浮かべた表情は笑顔であった。
ロック=イーリーアウスという男は、こうでなければならない。
「コイツにとっては、魔王城の襲来なんてものは昼寝しても大丈夫な程度の、大した問題ではないのだろう。為すべき時には、為すべきことを必ず為す……そんなヤツだ」
「随分と信頼いただけていますね、マスターを」
「コイツ以外に俺のワンを復活させられたヤツがいれば、今のロックを咎めてもいい。だがそんな人間はいない以上、俺はロックの全てを信じ、全てを託し、それに至るまでの厄介な全てを抱え持つ覚悟だ。俺以外にも……大なり小なり、ロックに助けられた者しかこの場にはいないだろう」
「……そうであるな。王家は、王都はまさにこの少年に滅びの定めから救われておる」
「私達ケンタウリスも同じだな。ロック少年がいなければ、ネレイスタウンでも戦争でもどうなっていたか」
「フォルクルスの企みを二度も打ち破ったロックくんの活躍。未だに目に焼き付いているさ」
「カリーナにつかまってたわたしをたすけにきてくれたときのこと、きっとずっとわすれない」
『みゃあ……』
トゥレスが言葉にした通り、今この場に集結した王都の、人類の中でも上澄みの十数名は、全員が全員、ロックに何かしらの恩がある。
その恩義の全てが人知を超える様なロックの活躍であり、彼以外にはなしえないであろう偉業の数々。
それがあるからこそ、この場にいる全員が無事に集うことが出来ている。
英雄。
その二文字が余りにも似合わない言動を取っているこの少年が、しかし誰よりもその肩書を背負うに相応しい。
それは、異様なる勘を持つという意味でもあるが、しかしそれだけではない。
「……ロックの勘は、誰かを助ける時に最も力が働く。運命すらねじ伏せるほどの想い……それは勘から促されるのではなく、ロックがそうしたいと考えるからこそ勘が働いているのだと俺は信じて疑わない」
その力は、ロック=イーリーアウスが優しいからこそ、最大限に発揮されている。
誰かを助けなければ生きていけないこの少年は、だからこそ、人類軍の切り札たり得る。
「会議を続けよう。ロックには後で簡単にまとめてイレヴンから伝えてやれ」
「了解です」
「スヤァ( ˘ω˘ )……」
そんな少年の安眠を妨げぬように、声の大きさを配慮しながら、トゥレスが会議を再開させた。
※ ※ ※
【side ロック】
「……マスター。起きて下さい、マスター」
「スヤァ( ˘ω˘ )……ハッ! ……あっ昼寝してたね俺ね!? ごめ……あれ会議終わってる!?」
「ついさっき終わりましたよ~」
『みゃあ』
イレヴンに肩を揺さぶられ、鼻提灯をパーンと割られて目覚めた俺。グッドモーニング。
ヤッベ一時間くらい寝てたわ! 完全に会議終わっとるわ!
やっぱり会議とかそういうの俺駄目です。眠くなります!
俺の明確な弱点と言えるだろう。もしダブレスちゃんが俺に会議を持ちかけてきたら敗北してしまうかもしれない。
「えっと……会議どうなりました? 寝ててごめんね!?」
「大丈夫ですよ、マスターの意見が必要な場面は欠片もありませんでしたから」
「それはそれでなんかアレだけどね!? で……俺がやる事決まった? 簡潔にイレヴン教えてくれる?」
「ええ。とりあえずマスターは、四日後の朝にリンに乗ってみんなと一緒に魔王城に突撃して」
「突撃して」
「なんか勘でいい感じに城の位置を見つけて乗り込めるようにして」
「城に乗り込んで」
「城内にある迷宮を勘でなんとかして」
「なんとかして」
「将軍格や幹部級の魔族を勘でなんとかして」
「なんとかして」
「魔王を勘でなんとかすればOKです」
「きがるにいってくれるなぁ」
しっかり会議を聞いてくれていたであろうイレヴンに俺の役割を確認させてもらったが、どうやら俺はとりあえず魔王城に突入させてなんとかなれーっ! ってやってなんとかするのが仕事らしい。
え、もしかして面倒な所全部俺に任されてる奴!? なんかこう、会議に欠席したら面倒な役職全部押し付けられたみたいな状態になりましたかねェ!?
「付け加えるならば、勿論のこと私達もやることはやるといいますか。城内は魔王の意志で迷宮を変化させられるようですが、それでもアイムから情報は聞き出していますし、実際に戦闘するのは私達が中心の予定です」
「城に乗り込むのだけは主殿の勘に期待せざるをえませぬが……魔を鏖殺するは我らの役割なり」
「私達ロック一家と、ケンタウリスと、ヴァリスタ氏とカトルくんが突入メンバーですから~、みんなを上手くロックくんが使ってくださいね~」
「のりこむのはまかせろー」
『リンだけではなく、私も共に参加いたします。あと10日は問題なく顕現できていそうですから』
「みんないてくれるなら100人力よ」
更に詳しく聞けば、勿論の事俺以外も一緒に戦ってくれるとのことで。
俺に求められるのはいつもの通り、なんか勘でヤバいなってなったら伝える役割という事ですね。
よかったよ最前線に出て戦えなんて言われることが無くて。俺は非力なシーフなので。本来は戦闘なんてする人間ではないのです。
「あとは、王都の守りはトゥレスとルドルフ、それと王族の皆さまとギルドの冒険者が中心となって務めるという事でした」
「ん。……そっか、ダブレス城が近づくって事は王都に何があるかわからんもんね」
「トゥレス殿の読みでは、同時に魔族の軍勢が王都を襲撃してもおかしくないという事でござった」
「ありえるよな~。150年前も魔族領での決戦の時に大きな町に魔族の襲撃があったりしましたし~。同時侵攻が好きすぎるんだよな~魔族のやつらな~。王都にいるプレイヤーが暇にならないための措置とはいえ、今それやられるとちょっとキッツいんだよな~」
「ノインさん今なんて?」
「なんでも~。多分王都も襲われるだろうな~って話ですよ」
そして王都も同時に狙われる見込みだからそれを護る部隊も別に設置されると。
当然の配慮だろうね。そこをしっかりしておかないと足元救われるし。
迅速に魔王を滅ぼす必要がありそうですねこれは。
「ちな王都が狙われてるって分かってるわけで……都民の避難とかはどうなってんの? またグランガッチに転移させんのかな?」
「ああ、それは国王が既に避難先を手配済みのようですよ」
「グランガッチも避難先の一つですが~、今回はなんと私達が行ったローティリッチが避難先として手を挙げてくれています~。都民の半分以上は収容できるようにしてくれているようで~」
「おお、ローティリッチなら安心やな! ……でもあそこ中立地帯じゃなかったっけ? よく避難OK出しましたね」
「……実はそこには秘密があってね」
「あ、ウィリアム様」
しかし魔族が王都を狙っていると聞けば、避難はどうなるのか気になって。
そこも聞いてみたら既に避難先としてローティリッチが応じてくれていると。
あの街歓楽街なのによくOK出したな? って首をひねっていると、ウィリアム様が話に混ざって来た。
「国王と第三王子のエドワウでローティリッチの領主と交渉をしてね。最初はそこまでいい顔をされなかったのだが……少々世間話をしたのだよ。『もし無事に魔王を討伐できたならば、再び我らが家族であるロックがまたそちらに遊びに行くかもしれないな』と」
「えぇ……」
「『義父であり義兄である我らからなら、余り羽目を外しすぎないように忠告することもできるが、どうするか』……とな。ローティリッチの領主はぜひ避難先に、と述べてくれたよ。『やるにせよ1000億G以上は勘弁してくれ』、という謎の話も漏れた。そういうことでよろしく頼む」
「ダシにされてる! 知らない間に俺がダシに!!」
「すまないな。民を守るためには多少の無茶も必要だった。許してくれないか」
「全然いいんすけどね!」
ウィリアム様から話聞いたら俺がいつの間にか交渉の札に使われておりましたわよ!
まぁ全く以て構わない内容だけどさ。確かに世間話の延長でしかないし。
俺が本気出したらギャンブル全勝してローティリッチを潰せてしまうわけだけど、俺ももちろんそんなことするつもりは欠片も無くて。
でもその可能性を前回の訪問で如実に示してきちまったので、ローティリッチとしては俺は要注意人物になってしまっていたという事だね。
出禁って言う話になってたらエイシスさんと会えなくなるってことなのでムキー! ってなってた所だけど、あんまりバカ勝ちするなって話なら全然OKですわ。俺もそのつもりだったし。
もとより金には困らない身。魔王倒してまた遊びに行くときは節度を守って勝ちましょうね。
「まぁとりあえず諸々は分かりましたわ。で……今日、これからは?」
「まもなくお昼ですので、王城で簡単な会食が開かれるようです。そこで皆で食事をとり、改めて決起の集会として、その後はそれぞれ装備の更新やレベリングなどで備えて、決戦までを過ごすことになります」
「了解。んじゃまたお昼をご馳走になりますかね」
「ごはん!!」
だいたい今聞きたいところは聞けた。
メシ食べた後はまた嫁さんたちのレベリングに付き合いますかね。
装備の更新って話が出たけど、既にイレヴンとリンは装備を最高級の物に新調してるし、サザンカさんは元から最高の装備。
ノインさんは王女様なわけで今更より良い装備を整えるってこともないやろし。限界までレベルを上げることになるだろうね俺らは。
頑張りましょ。