勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
挨拶周りも終えて、ガキンチョたちとも仲良くなって、ちょっと休憩。
会食の会場から出られる王城の中庭に移動して、食休み兼息抜きで芝生の上に大の字に横になっているのが今の俺です。
芝がしっかり刈られててちょうどいいクッション性。お金かけてそうだねこの中庭。
「ロック叔父様は……本当に、父上に聞いた話の通りの方ですね」
「おーん。ハルトくんはお父さんに俺の事なんて聞いてたん?」
「誰も出来ない事を、事も無げに為してしまうお方だと。ほんの少しだけ、その意味を理解できた気がします」
「過大評価やろー!」
俺の隣で大の字で横になっているハルトくん。育ちのよさそうな子だよね。
当たり屋みたいなあいさつ回りを終えて疲れェ……って芝生に横になった俺を見て驚いて、ちょっと逡巡して、でもなんだか楽しそうにして俺の隣にころんとして来たので可愛げのあるガキであった。ガキンチョからガキにランクアップ。
因みにアビーちゃんとリリーちゃんはお花畑のほうでお花を摘んで編んで王冠を作っていらっしゃる。その横にミャウがついてってる。
なんかお礼で俺にプレゼントしてくれるんだってさ。可愛いガキ共ですわ。
「……ロック叔父様は、怖くないのですか?」
そうしてのんびりと月が一つ浮かんだ青空を眺めていたところ、ハルトくんがちょっと声色を真剣なものにして問いかけて来た。
「……魔王ちゃんとの戦いの事?」
「はい。父上や、お爺様……国王様から私も話は伺っています。先日の急な襲撃では、避難民と共にグランガッチに避難していて……それでも、全てを喪ってしまうのではないかという、恐怖がありました。魔族の力は大きい。父上が、冒険者の皆様方が平和を勝ち取るために尽力しているとは分かっていても……私は、どうしても、怖くて。滅びを恐れる気持ちもそうですし、何も出来ない自分の無力さにも心が竦みます」
「……」
「第一王子の長兄が、こんな事を考えるのは王都の民に余りにも失礼だとも、分かっているのですが……でも、ロック様は、魔族を全く恐れていないように見えて、その……英雄と呼ばれる方は、やはりお心の強さも、違うのかなと……」
ほーん。なるほどなんとも子供らしい悩みですね。
ガキがそんな悩みを抱えているのは嫌いなんですよね俺。
ガキはガキらしく毎日遊んで腹いっぱい食って一杯勉強してぐっすり寝られるような生活してないと嘘だと思うので。
なんでちょっとお兄ちゃんが気を楽にしてやりますかね。
「ちなハルトくん今レベルいくつ?」
「え……っと、今は78です。15歳までには100に達するように王族の子女は教育されます」
「そっか。ちなみに俺はレベル12です」
「……え。……えっ!? じゅ、12!?」
「左様。ガキの頃からぜんぜんレベル上がってない才能ゼロの男なんよ。そんな俺が冒険者を目指したのはひとえにデカパイハーレムを夢見たからです」
「デカ……えっ? な、なんですか、それは?」
「大いなる胸を持った美しい女性たちと愛し合う関係になりたかったのだ……」
「それは私に聞かせていい話ですか??」
「がはは! 下らねーって思うやろ? でもなんか実際お嫁さんいっぱいできたし、綺麗な女性とのお付き合いが出来ててなぁ……アホな人生送ってるなコイツって思うじゃん。思ったろ?」
「えっと……歯に衣を着せなければ、はい」
「やろ? そんなヤツが魔王の決戦の舞台の最前線で戦うんやぞ? ありえんって思うじゃん?」
「はい」
「でも俺の勘がなんとかなるって叫んでるから。なんとかしてやるよ、ガキンチョたちが笑顔でいられるように」
「……!」
お兄ちゃんに任せろー!(バリバリ)
たとえレベルがこの城内にいる誰よりも低くとも! 魔王ダブレスちゃん他魔王軍のデカパイ美少女を全員俺の女にしたいと願う限り俺は無敵だ!
なので虚勢でも何でもなく、俺は胸を張ってやるのだ。
俺の勘がこの最終決戦をヤバいと感じていない。つまり勝つ。俺たちが。
「……その」
「はい」
「ロック叔父様のレベルが想像以上に低かった事と、冒険者をなさっている理由が余りに低俗だったことに人生でも上位を争う衝撃を受けているのですが」
「そうでしょうねー!」
「……でも、なぜでしょうか。なんとかなる、と言うロック叔父様の言葉には、不思議となんとかなってしまうのでは、と感じさせる力があります」
「なんとかなるからね! これまで俺が何回なんとかしてきたと思っとるんじゃい!」
「ふふ、そうですね……ああ、やはりロック叔父様は英雄であらせられる。私が呆れてしまうほどに、貴方は誰よりも前向きなのですね」
「前向いてないとデカパイが目に映らないからね」
「私も見習うようにいたします」
「後でウィリアム様に怒られるやつ」
説明下手な俺の言葉をいい感じに解釈してくれたハルトくん。お前気配りの達人だな。
むしろ俺の方が気を遣われた可能性がある。出来た子ですねハルトくんは。孤児院のガキ共に見習わせてやりたいわ。
でもまぁ最終的には苦笑を交えた笑顔になったからええやろー!
あとでウィリアム様怒らないでくださいね! 子供の教育によいお兄ちゃんを目指しているので!
「ロックおじ様! お花の王冠ができたわ!」
「おじ様~、私が被せてあげますね~。今日は遊んでくれてありがとうございましたぁ~」
『みゃ』
「お、王冠出来たんか……上手だなオイ! クオリティたっか! サンキューな!」
そんな話も区切りを終えたところで、リリーちゃんとアビーちゃんが駆け寄って来た。
リリーちゃんの腕の中にはミャウが捕まっており、アビーちゃんは完成した花輪の王冠を見せてくれた。
なんかすっごい……均整な御作りですねこの王冠! 孤児院でガキ共が作ってたのとレベルがダンチだぜ!? 王族は花輪作りも得意と見える。
大の字になっていたところから上半身を起こして、アビーちゃんに王冠を頭にかけてもらった。今日はこれずっとつけてよ。
「……ん?」
しかし頭に花輪の王冠をつけたところで。
唐突に。
「────ハルトくん」
「はい、なんでしょう? 似合っていますよ、ロック叔父様」
「ありがと。で……大至急君たちは親御さんの元に戻って」
「えっ?」
「ロックおじ様?」
「そんでイレヴンとノインさん……あ、ノルンさんね、俺の嫁の。中庭に呼んで。今すぐ」
『みゃっ!?』
「ど、どうされたのですか?」
「勘が急に叫び始めた。悪いけど、急いで」
「ッ……は、はい! 行くよリリー、アビーちゃん!」
「えっ、えっ?」
「どうしたのですかぁ~?」
ガキンチョ共に指示を出して、親御さんの元にすぐに戻らせる。
子どもたちに万が一があってはいけない。多分……大丈夫、だろうとは思うのだけれど。
今響いてる勘の感じ方は……敵襲ではない。俺たちを害する何かが、この場に迫っているという事では、ない。
でも、何が起きるのかわからないからな。
万が一が起きれば、
これは、イレヴンを見つけた時と同じような勘の響き方だ。
「…………」
会食会場に走って戻っていくガキンチョたちを見送ってから、改めて中庭を見渡す。
広々とした芝生と、純白の石畳の通路が通っており、正方形に広がる庭園の中央には噴水が流れている。
所々に石造りの柱がある。柱の高さは1mくらいか。柱の上にはこの国をかつて護ったと伝承にある幻想獣を模した像が設置されている。
噴水を中心に上下左右に点対称に作られている中庭。
何もおかしなところはない……はずなのだが。
しかし俺の勘は既に答えを導き終えている。
「えーっと……まずこの像か。配置を並べ替えて、っと……」
王城に秘められた謎を解き明かすべく、行動を開始した。
※ ※ ※
【side ノイン】
「え、ロックくんが……!?」
「はい! 中庭で、急に勘が響いて、イレヴン様とノルン叔母様をお呼びするように、と! 急いで向かわれてください!」
「りょ、了解です~!」
ハルトくんたちと中庭で遊んでいたはずのロックくんが、急に勘が響き出したという報告を受けて、私とイレヴンは急いで中庭に向かった。
ロックくんの勘が響いて、子どもたちにまで急ぎの指示を出している……という事は、何かしらの緊急の事態だ。
昨日に発揮された勘は、危険性が無かったためにロックくんも過剰に備えることはなかったが、今回は子どもたちを避難までさせている。
何が起きるのか。まさか、敵襲か……と、緊張感を伴ってイレヴンと共に中庭に駆けつけると、そこには。
「……何をしているんですか、マスター?」
「自分でもわからん」
中庭の噴水で滝行をしているロックくんがいた。
えっ。どうしたの急に。とうとうおかしくなっちゃったの……?
噴水からアーチを描く水流を頭頂部に当てて、じゃぶじゃぶと体を濡らすロックくん。
どうしよう。私の旦那がワケわからない。
「……ハルトくんから、ロックくんの勘が響いたと聞いて、急いで駆け付けましたが~……ええと、私たちは何をすれば~?」
「いやホントすみませんね変なコトしてて。えっと、とりま敵の襲撃とかそういうんじゃないです。けど……なんか、この中庭、なんか隠し部屋とか隠されてる気がして。ノインさんそういうの知ってまブホッ!? あっ鼻に水入ゲハッ! ズビッ!?」
「ええ……一先ず水から上がりませんかマスター……?」
「隠し通路とか隠し部屋とかは、確かに王城の各所に作られてはいますが……中庭から開く様な所はなかったと思いますが~?」
「マジで? でも絶対なんかありますよここ……あ、イレヴン。俺の言う通りに柱の上に幻想獣の像を移動させてくれる? 俺がやろうとしたけど重くて動かんかった」
「承知しました。他のメンバーも呼びますか?」
「ひとまず大丈夫。俺の方は……何だろ、この花輪を水につける必要が多分あってェ……ノインさんは噴水の正面に立っててもらっていいですか?」
「は、はい……?」
聞けば、ロックくんはこの中庭に何かしらの謎解き要素を見い出したという。
でも、私の知識では、この中庭で起きるイベントにそのような謎解き系の宝が隠されていたり通路が隠されていたり……というものは存在しない。
確かに王城の各所には王族専用の隠し通路とか、宝箱が隠されていたりなどもあって、プレイヤーがそれを見つけるのも一つのイベントだったりしたけれど、第一部から第三部までの全ての期間で、この中庭でそんなイベントが発生することはなかったはず。
オーディンの王城の中央寄りにあるこれみよがしといった広い庭園。数多のプレイヤーが何かあるんじゃないか、と隅から隅まで探して、何も見つからなかったのだ。
(でも、ロックくんの勘が働いたなら何かはあるはず)
しかし私は疑わない。
ロックくんが何かあるというのなら、何かあるのだ。
であれば、これは恐らく第四部の中で起きる予定だったイベントのどれかなのだろう。
王城の広場にそういったイベントが追加されていたのを、ロックくんが見つけたという事なのだろうか。
第三部の時間軸から150年が経過して、中庭も少々の増改築が発生している。ほぼ当時のままではあるが、柱の位置や幻想獣の像の形などは変わっている。
噴水も大きくなっているし、植えられている花も変わっているし……私も子供のころから知っている場所だけれど、何か謎解きが残されていたのか。
その秘密がどこかのイベントでフラグとして処理されるはずがロックくんがそれらの諸々を無視して動いているのか……疑問は尽きないけれど、けれど何かが起きるだろうという確信は受け止めた。
イレヴンも同じ思いに至り、ロックくんの指示の通りに柱を動かしたり柱の上の像を動かしたり。
ロックくんが頭の上に被ってる花輪の王冠に存分に噴水の水を浴びせてから、噴水の周りをぐるぐる回ったり。
ずぶぬれになりながら柱をむにゅむにゅ押したりぺちぺちしたり、何故か一部の石造りが押し込めるようになっててそれが五芒星を描いたり、なんだか色々していたのだけれども。
けど、やっぱり、結論として。
「────っしゃ!! 当ったりィ!!」
『みゃっ!? みゃっ!!』
「これは……! ノインが立っていたところから、噴水が割れるように開いて、その先に地下に続く階段が……!」
「空にそびえる
ロックくんは、誰も見つけられなかった王城の隠し通路を見つけてしまったらしい。