勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
王城の中庭に隠された謎を解き明かしたぜ!
「ろ、ロックくん!? ハルトに聞いて駆け付けたが、これは何が起きている!?」
「ぬぅ……国王である我も知らぬぞ、このような通路は……一体中に何があるというのだ……」
謎の効果音と共に開いた地下への通路。噴水が二つに割れて出て来たその階段を見て、騒ぎを聞きつけてやってきたウィリアム様とディストール王が狼狽しながら叫んだ。
そりゃビビるよね生まれてこのかたずっと暮らしてたお家で謎の地下通路が発見されたら。
だが俺の勘はまだ鳴りやまないぜ。鳴り響け俺の勘。
「国王様、ウィリアム様。勘で見つけたこの通路をこれから俺とイレヴンとノインさんで探索してくるんですけど。ちょっと確認しておきたいことがありまして」
「あ、ああ。我々も同行したいところなのだが……」
「あっいや突入に危険とかそういうのはないっす。王城にある隠し通路に魔獣とか魔族がいるわけでも無くて……戦いはないと思うんですけど。けどアレです、一応、万が一、念のため……王城にいる従業員とか王族の皆さまとか、いったん全員
「な!? まさか王城が崩れるのか!? 市街に被害は出ぬだろうな!?」
「たぶん。でもそういうの含めても、最終決戦前に調べておいた方がよさそうなんて。ちょっと30分くらい避難訓練しててもらっていいですか」
俺の勘はこの地下の先に在るものが、これからの決戦になんか有用な物だと察している。
最強の装備だったりするのか、禁呪とかの魔法だったりするのか、王家が隠していたモノが何なのかまでは分かってないけど、こんな王城の地下にあるようなモンが人類の力にならない事はないやろー!
しかしそれはそれとして、俺がこの地下に踏み込むと王城が大惨事になる未来を勘が読み取っててェ……。
俺はガキンチョたちを引き連れて会食会場から逃れて中庭でのんびりしてただけのはずなのに何でこんなことになってんだろうな??(素の疑問)
「承知した、すぐに避難を始めさせる。5分以内には場内から脱出させよう」
「助かります国王様。よし、そんじゃ探検と行くぞイレヴン! ノインさん!」
「了解です。リンとサザンカは避難誘導に混ざってもらいましょう」
「うわ~緊張してきたな~。主にサザンカさんが迷子になるんじゃねぇかなって心配でな~」
「リンがついててくれるやろから大丈夫やろ多分……迷子になったら最悪また俺が見つけるので……あ、ミャウはお留守番ねなんとなく。リンの所に行ってて」
『みゃ? ……みゃっ』
まぁとにかく突撃ですわよ!
王城の隠された地下通路を踏破せよ!!
※ ※ ※
はい。踏破しました。
「螺旋階段を下るだけで、道中に特に罠などは仕掛けられていませんでしたね~」
「地上の仕掛けだけが謎解きだったのでしょうか? しかし終着点のこの扉は……私のようなアンドロイドが隠されている部屋の扉に似ています。扉の横にコンソールもある……」
「何百年もほっとかれてもこういう仕組みって動くよね。すげーや」
ただ螺旋階段を下るだけだったよ!
しかも下った感じ5階建ての建物から降りるくらいの大したことない深さだったし! なんやめっちゃ注意して下がっていったのがアホらしくなるな!
罠も敵影も無し。フツーにひとりで入って行っても問題ない通路でございました。
しかし通路の終着点にある扉は話が別だ。
イレヴンが言う通り、この扉はかつてイレヴンを見つけたあの部屋のような無機質な機械感に溢れる自動扉に酷似している。
かつてイレヴンを見つけた時には扉の横にあるタッチパネル式のコンソールを適当にぽちぽち押したら開いたわけだけど、今回のコンソールはボタンのような物は見当たらない。艶のないつるつるした板が張ってあるだけだ。
だが甘いぜ。
俺はこういう感じの板も見たことがあるんだ。俺は詳しいんだ。
これはイレヴンを起動したときにミャウが見つけてくれて俺が触った奴!
つまり触れば起動する奴だぜー! ここにタッチ!
「オラッ開けゴマッ! まんじりともせず開けオラッ!」
「適切な単語のはずなのにマスターの口から零れると卑猥な意味が含まれる」
「わかる~。……でも、開きませんね~?」
「あれ。……あ、そっか血筋が必要か。ちょっとノインさん、俺がやったみたいに掌置いてくれません?」
「え~? 王家の血を継いだ者しか開けられないとかそういう~? それじゃあ……えいっ」
俺が触ってもすんともしなかった。
そしてその直後に勘が俺ではなくノインさんでやれと叫び始める。一度ミスらせてから答えを教えるのやめてくれない?
ノインさんが俺に乞われておずおずとコンソールに手を当てると、やはりドンピシャ。俺がイレヴンの機能解放する時のような光の線が壁と扉にシュンッと走って、自動扉の光の色が赤から緑になり、プシューっと煙を吐いてゆっくりと開き始めた。やったぜ。
この部屋もしかすると第三のアンドロイドが眠ってる可能性があるよなぁ!?
王城の地下に眠る特別製のアンドロイドとかいるかもしれませんし!? 突撃しかあるまい!!
「開きましたね。中に何があるかわかりません。マスター、ここは私が先行して……」
「扉が開き切る前ににゅるんって室内に入って行っちゃいましたよロックくん」
「これだから」
そんじゃ早速おっじゃまー!
隠し部屋に入る時ってなんかワクワクするよね! 罠の類なし! ヨシッ!
俺の後に続いて入ったイレヴンとノインさんも俺と同じように部屋の中を見渡す。
「……間違いなく、私達アンドロイドを作り上げた存在と同じモノたちがこの部屋を作ったのでしょうね。太い動力パイプに鋼鉄製の機器にモニターが並んで。失われた過去の文明によるものです」
「でも~……アンドロイドがいるわけではないようですね~? アンドロイドがいれば部屋の中央にカプセルが鎮座してるはずなので……私も全然知らね~ぞこの部屋~。何の部屋~? モニター多くない~?」
「なんやアンドロイドいないんかい! 全裸の美少女いないんじゃテンション下がったわ……はぁ……」
「最新型のアンドロイドを嫁にしておいて失礼ですねマスター。私だけでは不満ですか?」
「いやそれはないんだけどぉ! お前が望むなら俺は一生お前だけをアンドロイドの相棒にしたっていいくらいだけど!!」
「分かっているならよいのです」
「それはそれとして全裸デカパイ美少女がいたら嬉しかった……!!」
「分かっているので許します」
とりあえずイレヴンが眠っていた部屋に酷似していた。
でっかいパイプとかね。ぶっとい鉄製の管とか謎のモニターとかそういうのがいっぱいあってね。
でも肝心のアンドロイドがいないじゃんッ!! デカパイ全裸美少女を見に来たの!!
だからディストール王とかウィリアム様とかあえて避難誘導に廻したってのによ。がっかりだわ。
さて、とはいえ調査はちゃんとしないとな。
俺は勘に任せてその辺にあるボタンをぽちっと押す。なんか〇印に縦線がついてるような記号がついたボタン。
で、それ押したら薄暗かった室内に光がぽよよんと生まれて、色んな機械が起動し始めた。
「おっ当たりだ当たり。これでなんかー……なんだこれ」
「モニターに表示されたこの図は……王城の全体図でしょうか?」
「間違いないですね~。王城全体の管理部屋とかそんな感じ……?」
それに伴って壁の一面を覆うほどのでっかいモニターも起動して、そこにはどうやら王城の詳細な図面が表示されたようだ。
ほえー。この図が何を意味しているのかさっぱり分からん。
とりあえず弄るか。俺の勘はまだ響いているぜ。
適当にボタンをぽちぽちぽちのぽちっと。
「それどの順番でボタン押したか覚えてますかマスター?」
「覚えてない」
「だと思いましたよ。一応私が覚えておきますね」
「俺の相棒は優秀です」
どの順番でボタンを押したのかはイレヴンが覚えてくれて、そのまま十秒くらい適当にボタンを押しまくって、最後にカタカタ……ッターン! って勢いよくちょっとおっきなボタンを押した。
そしたら多分正解だったようで……モニターに表示された画面に文字が生まれる。
これは読めるぞ。えーと……。
「……『最終砲撃形態に移行?』」
「そう読めますね」
「やっちまったな??」
うんうん。
どうやら王城が超巨大大砲に変形するらしいですねコレねぇ!?
※ ※ ※
【side ディストール】
「避難は終わったか? ウィリアムよ」
「うむ、城内にいる者は全て城門前の広場に集めた。冒険者たちや王族も避難済みだ。急なことだったので流石に民にも少々動揺が走っているが……」
「それはやむを得ぬだろうな。現状、民を害する何かが起きてはおらぬ。ロックも民に危害が加わる可能性があるものならば見落としはしなかろう……後はロックが何を地下から見つけてくるか……」
唐突な避難誘導でも速やかに応じた王城駐在の騎士団や従士たちには感謝しなければなるまい。
誰も城内に残っていない事をアンナが魔法で再確認し、広場に集まってしまった王都の民たちには我が子らがそれぞれ避難訓練のため、と説得して回っている。
これでロックに依頼された避難は完了したが、果たして王城の地下に何が眠っているのか。
我がオーディン家が後世に託したであろう秘宝か、はたまた封印せざるを得なかった悪しき何者かなのか……今はまだ答えは出ぬが、それがこれから迎える最終決戦の為になる様な何かであることを切に願いたくなる。
国王という立場である我が出来る事と言えば、この国を、人類を守ろうとする英雄たちが出来る限り動きやすい環境を作る事くらいだ。
特にロックという男は我らの常識は一切通用しない。常識では測れない男がやろうとすることを、決して束縛してはならない。
彼の善性と異能を信じて、彼らの調査が終わるのを待つしかない。
そんなもどかしい時間を少々味わい……しかし、次に起きたことは流石の我もあんぐりと口を開けてしまうほどに驚いた。
始まりは、地鳴りのような深い響き。
国全体に響き渡る様な深く重い重低音が、王城から響き始めた。
「な……何だ!? 何が起きたというのだ!?」
「くっ、全員臨戦態勢!! 何が起きても動けるようにするんだ!!」
実際に、王城が震える様な振動に包まれている。
慌ててウィリアムがその場にいる全員に指示を飛ばして、冒険者も我が子らも、それぞれが有事に備えて身構えたところで……続いて、
我が城が。
王都オーディンが誇る王城が。
振動音と共に浮上し始め、各部位がバキバキと変形を果たし始めた。
「………………な………………」
もはや、言葉にならぬ。
我ら王族が生まれ育ち、王都の血筋を示す威厳に溢れた荘厳たる純白の王城が、その姿形を見る見るうちに変形していくのだから。
誰もが言葉に出来ない衝撃を覚えながら、ズン、と臓腑に深く響くほどの重低音が何度も鳴り響き、王城の最中央に存在する大鐘楼を中心に塔のような形に変形していく。
大鐘楼は、この国の守護結界を司る術式が込められている。
そんな塔を心臓部として、周囲を幾重にも補強するように組みあがった王城は、とうとう響きを止めて、我らが眼前に鎮座した。
それは、紛うことなき大砲であった。
「…………ウィリアムよ」
「はい、父上……」
「頬をつねってくれんか……」
「はい……」
息子に頬をつねられる痛みを味わいながら、茫然と目の前のそれの存在を受け止めるしかなかった。
王城の中に飾っていた美術品の損害はどれほどだろうか。
そんな、どうでもいい事がふと頭によぎった。