勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「まず、始まりは姫様たちが作ったこの花輪だ」
急遽呼び戻されたトゥレスおじさんが解説を始めた。
一時間前にその姿を現したビッグ王城キャノンの前、更地になった地面の傍に王族のみんなや冒険者が集まってその話を聞いている。
なおビッグ王城キャノンの管理室である隠し部屋を見つけた俺もちゃんとそれを聞いています。
このままだと王城の賠償責任とか問われそうだったからね。俺は悪くない事を証明してくれると信じてるからねトゥレスおじさん。
「この花輪は、見た目にはただ精巧な作りの花輪の王冠のように見えるが……鑑定スキルで精査すると、魔力が込められており、装備品として扱える物になっている」
「ほえー。貰った時、確かに小さい子が作ったにしちゃあめっちゃ出来がいいなって思いましたけど」
「リリー様とアビー様、及び現王族の王女たちにも確認したが、どうやら王族の血を継いだ女性は、その母親や姉妹、親戚の王家の血を持つ女性から、この花輪の作り方を教わるという事だ」
「おお? そうだったんだ……ノインさんも作り方知ってるの?」
「ええ~……私も子供のころに姉様に教えてもらいました~。姉様方も父ディストールの直系の姉妹から教わったと聞いています。王族の女の子は中庭のお花で花輪を作って遊ぶのを一度は経験しているはずで……でもそれ自体に何か意味があるとは知りませんでしたが~」
さてそんなトゥレスおじさんの説明では、まず今回の事の始まりはリリーちゃんとアビーちゃんが作ってくれた花輪から。
これ、王家の血を継ぐ女の子はみんな作れるんだって。親から子へ、姉から妹へ、絶対に一度は作り方を教えて作るものらしい。
ノインさんも作れるんだ。ノインさんが花輪作ってるの見てみたいな。
「鑑定によると、心を落ち着ける簡単な付与効果を持つ、お守りのような装備品だが……しかし、王家の魔力が込められたこの花輪には、隠された効果があったようだ」
「……あー。俺が勘でなんか、噴水で滝行しなきゃって思ったアレの理由?」
「ああ。噴水から流れ出る水流をこの花輪に通す。すると花輪から王家由来の魔力が水に溶け、それを続けると噴水全体に魔力励起が起こる。その状態で四神の像を太陽の角度から推理される指定の位置に置いて、王家の血を継ぐ者が噴水の前に立ち、レンガを指定の順番で押すと、隠し部屋が現れる仕組みのようだな。俺の方でマニュアル化して、他の王女が作った花輪でも再度地下への通路が開くことを確認済みだ」
「さすトゥレ! ヤバいっすね読みが!」
「何のヒントも無く唐突にブチ開けたマスターの方がヤバいですよ」
そんでトゥレスおじさんが続ける解説で、俺がやってた行動にも理由がついて。
滝行する必要はなかったっぽいけど、俺がイレヴンに指示したりノインさんに指示したりしてやってた事が全部地下への通路を開く儀式になってたみたいだね。
読みをぶっ飛ばしてやった俺の行動を後からちゃんとマニュアル化してもらえるのめっちゃ助かるわー。
俺だけしか開けない、ってなるとそれはそれで困っちまうからな。
なぜなら、このビッグ王城キャノンは最終決戦で必ず使うであろう、人類側最大の武器なのだから。
「さて、ではこの王城が変形して組みあがった大砲だが……調べた結果、超威力の魔導砲が撃てることが判明した」
「おお……!」
「トゥレス殿、果たしていかほどの威力となるのだ!?」
「この国の守護結界……国民から僅かずつ集めた魔力で形成された甚大なる結界の魔力を全て砲撃に注ぎ込む仕組みのようだ。威力で言えば、先日の戦争で報告にあった、リンが放った10万体の魔族を塵へと変えた
「何という威力だ!! あの大爆撃のさらに5倍とは! もはや笑うしかないな!!」
「前の大戦の時に、是非にでも使いたかったものだったな……! もはや詮無きことだが」
「むー! ずるい!」
トゥレスおじさんの説明に、ディストール王、ウィリアム様が目を輝かせる。
威力の大きさにアンドレ様もテンション爆上げで、そんな王族男性陣のテンションにリンがむすーっと頬を膨らませている。
仕方ないね。超大型大砲が嫌いな男子なんていないしよ。王族みんななんだかんだ言ってメンタル男の子だし。
もちろん俺も内心でテンション爆上がりです。リンが拗ねそうだから口に出さないけど。
「照準などは高性能な計算ができる機器がついているため、地下の操作室からロックオンして撃てば必中、射程距離はおよそ100km……だが、デメリットも存在する」
「トゥレスおじさん、デメリットっつーとどんな?」
「放てるのは一撃のみ。この国を覆っている守護結界に使われている魔力を全てその一撃で消費してしまう。再度結界を張り直すまで、1ヶ月程度はかかるだろう。また、発射にも守護結界解除のシークエンスが入るので、射撃操作開始時点から砲撃までに1分ほどかかるようだ」
「むぅ……王都の守りが一ヶ月は失われてしまうという事か。かなり厳しい話だ、それは」
「王都の領土は広く、周辺には森も平野も山もある。守護結界に護られているからこそ住民への魔獣被害は少ないが、それが無くなってしまうとなると、王都を守るだけで冒険者と騎士団総出での仕事になってしまうな……」
しかし聞けばデメリットもあるとのことで。
操作室でトゥレスおじさんがピコピコやって調べた結果、発射シークエンスに1分くらい時間がかかって、撃てるのは一発まで。
一発撃ったら国の守護結界の魔力全部使い果たすから、再装填までに一ヶ月くらいかかるとのことで。
以前、グランガッチでノインさんが闇に染まった守護結界を一人で光の魔力に戻した事があるが……アレとは事情が違うようだ。
そもそもグランガッチは守護結界が解除されていたのではなく、光の属性が闇のマナに染められていただけで、結界に必要な魔力を消費していたわけでは無かった。
だからノインさんも魔素の性質を元に戻すための再起動プロセスをやっただけで、それだって常人の数十倍の魔力を持つノインさんが魔力不足で倒れてしまうほどの激務だったわけで。
王都よりも国土の小さいグランガッチでそれなわけだから、王都の守護結界の魔力全部使ったらそりゃあとんでもない砲撃になるし、再起動も相当時間かかるよなって話。
でもなぁ。
「絶対にこの大砲、最終決戦で使う事になると思うんすよねぇ……」
「……勘か?」
「まぁ、はい。そうでもないと急にこのタイミングで勘が響き出す理由がないじゃないっすか。王城に俺が初めて来たのが戦争前なんだから、そこで響かずに今響いたってのは、直近で使う理由がないと説明がつかないって言うかぁ……」
デメリット云々があっても結局使う事になると思うんよね俺はね!
勘が現時点で撃つよー撃つアルよーって言ってるわけじゃないんだけど、そもそも勘で見つけたこれがただ変形カッコイー! で決戦で使わないで終わりましたってオチにはならないと思うので。
多分使う。どのタイミングで撃つのかは分からんけど。
っていう推理を零したところ、トゥレスおじさんもなるほどと言った風に頷いた。
「俺も同様の推理だ。だからこそ俺も使用法を調べ上げて、ディストールほか、王族に操縦方法を教えておく。魔王城が近づき、王城からも位置を確認できたとして……撃つタイミングはお前が決めろ、ロック」
「ホエッ」
「魔王城の位置が分かった時点で撃つのか、それとも別のタイミングになるのか……魔王軍側も流石にこの大砲の存在は知らないとは思うが、ただただ何の対策も無く城を王城に近づけるとは思えん。撃っても特殊な防壁で弾いたり魔力を吸収したりされる可能性もある。迂闊には使えん最終兵器だからこそ、最適解で使いたい。だからこそ、トリガーを引くタイミングを決めるのはお前が適任だろう」
「責任がさらに重大に!!」
そして俺が撃つタイミングを決めることになった。
言ってることは分かるんですけどねェ!! ただの孤児上がりの一市民にはだいぶ重い責任ですねェそれはねェ!?
わかるけどさー……一分の発射のラグだって俺の勘なら関係なくベストタイミングで響いてくれるとは思うねんけどな。万が一の責任は負いかねるからね俺は。そういう注意書きとか作っといてね!
やるけどね! ンモー!!
まぁそんなこんなで大体ビッグ王城キャノンのあれこれについて理解を深めて、トゥレスおじさんの説明会も終わったところで。
現時点で俺が一番気になってることを確認しておく。
「ところでェ……この変形した王城って元に戻せるんですよねェ……? 王城破損の弁済責任とか俺には荷が重くてェ……トゥレスおじさんの叡智に頼るしかなくってェ……!!」
「安心しろ。大砲形態への変形機構はイレヴンやワンなどのアンドロイドの『
「……と言うと?」
「魔術的な要素をふんだんに使って変形しているという事だ。物理的に形は変えているが、元々の王城の内部にあった物に破損はなく、可逆的変形となる。イレヴンもワンも、バイクに変形させた後に、問題なく元の姿に戻れているだろう。それと同じだ。この後に俺の方で王城に直しておく。魔王城襲撃の4日後の朝に再度変形させればいいだろう」
「よかった!!!!!!」
ちゃんとお城元に戻るってよ!!
よかったよ王城の中にあるなんかお高い感じの調度品とかお部屋とか全壊してなくて!!
申し訳ないからな! アビーちゃんとかリリーちゃんとか自分のお部屋が壊れちゃったら泣いちゃいそうだしな!!
いつもいつもトゥレスおじさんにはホント助けられてますわよ。
この人が本格的に俺らの手伝いをし始めてくれてから俺の勘もなんか最低限動けばいいだろ……って感じで雑になって来たからな。前までの俺なら城を元に戻すところまで勘でやってたような気がする。まぁ楽できるならいい事ですね。
「では、この騒動に関しての報告は以上だ。この後は俺の方でさらに詳しく調査と、王城に戻すところまではやっておく。王族は付き合ってくれ。最終決戦に臨む冒険者たちは改めて闘技場に転移して、レベル上げに努めること。以上、解散」
全ての音頭を取ってくれたトゥレスおじさんの鶴の一声で、改めて俺ら冒険者はいつもの如く闘技場レベリングに戻るのだった。