勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
「では……4日後に挑む魔王軍との最終決戦で、誰も欠けずに勝利し帰還することを願って。乾杯!」
「かんぱーい!」
ケンタウリスのクランハウス内、広々とした来客用リビングでメルセデスさんの乾杯の音頭を取り、それぞれが手に取ったグラスを掲げて返事をした。
俺もスパークリングオレンジの入ったグラスを掲げて乾杯する。
今日は間近に迫る最終決戦前の壮行会というか、勝利を願う決起会というか……そんな感じの呑み会だ。
ケンタウリスクランでやるはずだったところに、俺達ロック一家がお邪魔している形だ。
「ヴァリスタさんもカトルも参加すりゃよかったのになー」
『みゃ』
「うむ。カプチーノやカノンも混ぜてうちにこないか、とも誘ったのだがな……彼はまだどうにも遠慮しがちな所がある。自宅でこじんまりとやるとのことだ」
「カプチーノ様の事を慮るのであれば、遠慮することはないのですけれどもね。お陰様でこの場にいる男女比が凄まじい事になってしまっております」
「お兄ちゃんだけだもんね男が」
そして男は俺一人だけである(重要)。
いやね、違うんすよ。別に俺が先に釘を刺してヴァリスタさんやカトルに来ないように言ったとかそういう事は一切ないんですよ。
流石にね? ヴァリスタさんだって死地を共に乗り越えた戦友じゃん? カトルはむしろ女子枠でカウントしても許される顔だしさ。
ヴァリスタさんが参加してくれればカプチーノさんとカノンさんも釣れるしさ。俺の目の保養という意味では全然参加してもらいたかったわけですよ。共に最終決戦に挑むメンバーなわけでね。
だけど誘ったメルセデスさん曰く遠慮されてしまったとのことで。誰に対してのどんな遠慮なのかはわかりませんけどほんのちょっと寂しくなったことは秘密です。
「最終決戦メンバーと言えば、ヒルデガルドさんは? ヒルデガルドさんも一緒の突入組っすよね?」
「勿論お誘いはしたのだがな。あの御仁は王族の食客にして、騎士団の顧問も務めておられる。明日から始まる王都民の避難誘導の打ち合わせがあるとのことだ」
「なるへそ。そういや騎士団に顔が明るかったもんなヒルデガルドさん」
そしてヒルデガルドさんも不参加である。
あの人もあの人で長く王城にお世話になってるから付き合いもあるやろしな。
ケンタウリスの身内呑みに参加することを優先できなかったか。やむなし。
しかしそれにしてもこの空間の女子率の高さですよ。
女子に囲まれて無限のパワーが俺の中に生まれつつあるから……無敵だから今の俺は……。
ソファをいくつか俺の家からもアイテムボックスを使って持ってきて配置して、今現在は大きなテーブルを囲ってみんなで楽しくお酒飲んだり食事をつまんでいる所だ。
俺以外のメンバーはいつもの嫁さんズに、ケンタウリスのみんな。
数えると……嫁さん5人にケンタウリスが6人で、俺含めて12人+ミャウ一匹。
12Pか……。(錯乱)
「鼻の下が伸びていますよマスター」
「するどい」
まぁ考えるだけだけどね! よそ様のクランハウスで急に女抱いたりしないよね!!
なんで最終決戦前に男女関係で万が一ギスりはじめなければならんねん。
ケンタウリスのみんなは勿論女性としてドスケベだしいつでもエッチOKなんだけどそれはそれとして信頼できるお姉さま方である。彼女たちとも絆が生まれていると胸を張って言える。
今日はみんなと呑み会で盛り上がれればいいのです。俺はお酒は呑まないけどね。みんなにいっぱい呑んでもらいましょう。
「……これ美味っ!? え、美味すぎるわねこの料理!? ツマミの方も……同じ調味料使ってるはずなのに味のキレやっば!」
「うわぁー……サザンカさんがお料理上手なのはティオとかから聞いていましたけど……これほどですか。すごいなぁ……」
「…………これを、ロック達は、毎日食べられるのか。死ぬほど羨ましいぞ」
「お粗末さまでござる。尤も、全て拙者が手掛けているわけでもなく。最近は主殿も腕前を上げられているので、仕込みの段は主殿も半分はやっていただいておるよ」
「料理が上手い男子はモテると古事記にも書かれている」
「いえ、これは高級店の味でも比べ物になりません。まことに美味でございます」
「戦争が終わったら私も料理特訓しないとだけど、サザンカさんに追いつける気がしない……っ! せめてお兄ちゃんには負けたくなーい!」
「手先の器用さで俺に勝てると思っているのかいこの通い妻は」
食事は無論の事サザンカさんと俺がメインで作っている。
買ってきたお菓子とかもあるけど、主食がないとリンとノワールさんとメルセデスさんが困るだろうからね。早めの時間からガッツリ仕込んでやりましたよ。
俺んちの台所で下拵えして、アイテムボックスで運んでクランハウスの台所を借りて仕上げをして、とりあえず80人前は作った。
多人数向けの料理が得意になったものですよ俺たちも。やっぱ落ち着いたら料理屋でも開いてみるか?
サザンカさんの料理初見勢のケンタウリスのみんな(ティオ除く)がその美味さに驚きまくっていた。
「食材の代金はケンタウリスで持たせてもらうさ。これほどの料理を準備してくれたのだ、感謝しなければな。リンも……ノワール殿も遠慮なさらず食べていってくれ。残しても勿体がない」
「いわれずとも! おかわりです!!」
『王城の会食で味わった料理もよかったですが……やはりサザンカの作る料理の味が一番舌に合いますね』
「恐縮でござる」
「俺らもいっぱい食べるとしますかねー。まずは食って吞んでしないとね。ノインさんは食べてます?」
「あっ、はい。いただいてますよ~お酒も飲んでるからちびちびですけどね~。……ちょっと大人数の呑み会だから緊張してて~」
「コミュ障な所が出てきてしまった。呑み会とか会食とかそういうのノインさん苦手だもんね……じゃあずっと俺の隣にいてくれてもいいっすよ。少しは安心できるかもだし」
「……えへへ。旦那様の気遣い助かる~」
そんな感じで呑み会もいい感じに飯も酒も入って、のんびりした時間が流れる。
決起会ではあるんだけど、最終決戦に向けてさらに打合せ……ってんでもなくて。
この場においては、そういうガチガチな話題はほとんど零れずに、気を許し合った女の子たちのガールズトークが思い思いに繰り広げられていた。
「そういえばリンちゃんは新しい装備、もう慣れた? あのフリルスカートが綺麗なやつ」
「うん! あれね、しっぽとはねがすごくうごかしやすいの! とくにはねは、まえのふくだとちょっとぬのがじゃましてたから。ひとのすがたでいるときにはうごきやすくなったかな」
「…………新装備に、体を馴染ませるのも、時間がかかるからな。しかし、なぜ高級な装備は、どの種類のそれでも、露出が高くなるのだろうな……」
「可愛いからいいじゃないですか? 術師のローブなんて低級だとホントに全身包むだけになりますもんね」
「この度貸与頂いた女神のローブは足元と胸元にスリットが入っていますから、排熱効率という意味でもとても着心地がよいのですよね。無論、ノイン様の御召し物とは比較にならないそれではございますが。ノイン様の装備は流石は王族と言ったところで、実に身麗しく髪色にも似合っております。あちらはオーダーメイドの品なのでございますか?」
「あっ、そ、そうですね~。王族は15歳で専用の装備を授与されるんですよ~。その力を持って、王都の民を守れるように、という感じで、性能には妥協しないモノをいただいてて~……」
「ノイン様の装備で言ったら一番すごいのはアレですよ! 特訓の中で貸してもらった腕輪とネックレス! アレすごいですよね! 経験効率が全然違ってすぐにレベルが上がるし!」
「ああ、確かにあの装備はすごかったな。性能もだが、それを何セットも準備してくださったノイン様にも驚いた……あれは王城で管理しているモノだったのですか?」
「ああ、いえ、アレは爛焰山脈で採れるファイヤメタルが原材料になってる装備でして~……この間リンちゃんとロックくんと一緒にサラマンダーさんに挨拶に行ったときに、そこの転移陣を開けたから、その後に大至急で準備させたものなんですよ~。今後は騎士団や王族の鍛錬で使ってもらう予定です~」
「ねぇイレヴン、アンタの装備にもファイヤメタル使われてるわよね? 留め金の部分とかそんな色してるし」
「ええ、アレは『リーゼ』で作ってもらった品ですが、最高級の素材を注ぎ込んで作ってもらっていますから、ファイヤメタルも混ざっています。レベリングの効率がいいのもその影響かもしれないですね」
「イレヴンさんの装備が一番すごいですよねー! 見た目もすごいし! 胸がデカいから許される装備ですよねあんなのね!!」
「ソプラノさんお酒が廻って来たなぁ」
「ウワバミなんだっけソプラノさん。俺もティオももう二度と酒飲まないからお酒でワイワイしてるテンションにちょっと混ざっていけないな」
お酒の入った女性陣の話が二転三転しながら盛り上がっているのを、俺とティオは静かな眼差しで眺めていた。
俺たちはもう二度と酒は飲まないからね。カトルも含めて我ら幼馴染組はお酒に弱いのだ。
うちの嫁さん達で行くとリンも当然まだ吞めなくて、イレヴンは呑んでるけどアンドロイドなので酔っ払ったりはせず。サザンカさんとノインさんは大人なので吞んでるけど割とお酒には強いようだ。うちでも晩酌とかたまにしてるしね。
ノワールさんは食事のほかにお酒の味も覚えたけど、ちょっと酒精の廻りが早いかな? 目元がとろんとしている。
ドラゴン殺しの逸話ってお酒飲ませて討伐した系の話多いもんね。リンもヒルデガルドさんもお酒あんまり強く無い説あります。
初飲酒になるはずのノワールさんがちょっと心配ですね。声をかけてあげよう。
「ノワールさん、ノワールさん。大丈夫っすか? だいぶ酔いが回ってるようですけど」
『ん……これが、お酒で酔う、という、感覚でしょうか……? ふわふわして、楽しい気持ちになって、思考力が……奪われるような……』
ノインさんもみんなの話の輪に混ざれているようなので、ちょっと移動してノワールさんの横に座る。
もくもくとご飯やおつまみを食べつつも、しかし喉を潤しているのは度数低めの酒である。飲む量も多いから徐々に酒が廻りだしている様だ。
途中でお水とかを挟むといいらしいよね。ピッチャーからお水を注いで差し出してやりつつ、様子を観察する。
『……幸せな、気持ちなのです。大きな戦いが、迫っているというのに……心が、奇妙に……』
「それこそお酒の効果ってやつだと思いますよ。気分が落ち込んだときとか、何かを祝う時とか……楽しくなりたいときに呑むものですからね。人類の活力の源って言ってもいいのかも。好きな人多いから」
『……あなた様は、呑まれないのですか……?』
「苦手な人もいるんですよ。味が、ってんじゃなくてお酒に含まれるアルコールが苦手、って意味でね。大丈夫、美女に囲まれて俺も無限に楽しんでますし! お酒は吞みたい人が呑めばええ!」
『そう、なのですね……あなた様と、一緒に呑んでみたかったのですが……んっ……あなた様……』
「んん」
『……あなた様……♡』
だいぶ酔っぱらってんなこのメスドラゴン。(確信)
俺が隣に座った時点で、さらに安心したのか目元がとろんとし始めて、しなだれかかってきて、物凄い色気を醸し出し始めた。
未亡人若奥様感あります。未亡人ではないし若奥様でもないけれど。
さらにすりすりと俺の体に身を摺り寄せてきて、尻尾がしゅるりと俺の胴に巻き付いて固定されました。脱出できねぇ。
いやまぁやろうと思えばできるけど……しかし今は駄目だ。
ノワールさんが快楽を素直に求めている。お酒が廻った頭で、俺という心のつがいを捕まえてしまった。
であれば、次にやる事は一つで。
『……あなた様……んっ……ちゅ♡』
「んむ」
まず唇を奪われて。
続いて舌を絡めて来た。
いやね? いいんだよ?
ノワールさんが俺に肉欲をぶつけてくるのは全然ね?
俺ノワールさんの事大好きだし。ドスケベだし。嫁さんの一人だし。
本気出せば30分でカエルアクメダウンさせることだってできますし。
でもね?
「……ロック、アンタねぇ……」
「うわ……うわぁー……すっご……♡」
「…………」
「……伝説のドラゴンが、このような表情を見せるなんて……信じられません」
「少年……一応、その、なんだ。風紀というものをな……?」
ここケンタウリスのクランハウスでみーんなこっち見てますからねぇ!?
ちょっと落ち着いてほしいんですよねノワールさんには切実にねぇ!?
見せつけプレイするにはだいぶアウェーだからねここね!? 落ち着こうねェ!?