勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない! 作:そとみち
翌朝。
夜に自室で日課を済ませてスッキリして気持ちよく眠りにつき、いつものルーチンで早い時間に目が覚めたので折角なので朝風呂を浴びて、そして朝食会場で女性メンバーと合流した。
「おはようございますマスター」
「おはよー、ロック」
「おはよーさん。……ん、みんなも朝風呂入って来たん?」
「うん、ここのお風呂すっごい広くて気持ちいいから! 昨日の旅の疲れもスッキリ取れた感じ!」
「この湖付近の源泉がとても効能のあるお湯なんだ。何より肌質によくてな、この街の温泉は女性人気が高い」
「お肌すべすべになっていいわねー。冒険者やってると中々お肌ケアできないもの」
「じっくり温泉に入れるのはいいですよねぇ」
「…………メシもうまい」
「この宿はサービスも満点です。私達以外にも金級冒険者でよく使っている方もいるのですよ、ロック様」
「へーぇ」
大円形のテーブルの席をとっておいて、全員でやって来た女性陣をそこに案内する。
イレヴン以外のメンバーがちょっと髪と肌の潤いがあったので聞いてみたらやっぱりお風呂入ってた。なんか甘い香りがする! 気がする! 甘露!
イレヴンも風呂は入ったんだと思うけどコイツいつでも艶があるしな。流石のアンドロイドである。
さて、朝食を食べながら今後の予定について改めて打ち合わせる。
「一週間程度滞在の予定だが……ティオの求める魔装具探索は前半に行う。帰る前に一仕事では疲れも抜けんからな」
「よろしくお願いします! ロックも期待してるからね!」
「おー」
「今日は街中でそれぞれ聞き込みと行こう。複数のグループに分かれてこの湖畔の町の精霊に関する情報やそれにかかわる魔装具に関する情報などを探し歩く。お昼と夕方にはそれぞれこの宿に戻ってきて情報交換だ。できれば今日には魔装具のある場所のとっかかりまでは掴みたいところだな」
「王都ほど広い街じゃないけど……魔装具についてもそんな簡単には情報出てこなさそうですよね」
「そんな情報があれば王都の冒険者の中でも噂が流れていそうですしね。求めて探してようやく見つけた手掛かりですから、もしかすると隠されてるかも」
「…………精霊に守護されているような装備であれば、戦いも考えられる」
「我らクランのエースの戦力が増して、魔族に対抗する手段を
とりま探すものがあればその情報を聞いて回って見つけるのが冒険者というものだ。
酒場で聞き込むか、はたまたこの土地の歴史書などもあればそれを読み解いてって感じかな。その間にリンも自分の求める情報を聞いたりしてもいいかもね。黒い竜の渓谷の話はケンタウリスの皆さまにもしてるようだし。
「ロック、わたしはどうすればいい?」
「ん。まず絶対に一人にはならないようにな。もしはぐれて迷子になったらこの宿に帰ってきて待ってること。帰巣本能全開でよろしく」
「む。わかった」
「建物も高い作りですしリンなら飛んで帰ってくればいいのでは」
「それもそうか。あとはまぁ、みんなについていく中でリンが知りたい話とかも聞いて回ってもいいよ。お父さんかお母さんの情報が出てくるといいな」
「うん! がんばる!」
山盛りのフレンチトーストをすごい勢いで消費していくリンに、俺はとにかく一人にならないように諭した。
リンにとっては初めての遠征で知らない土地である。迷子になってまた奴隷商人とか変なのに捕まったりしたら最悪だしな。
俺がずっとついていてやってもいいけど……逆に言えばこれはリンにとっては社会見学でもある。俺以外のメンバーと一緒に回ってもらってもいいだろう。ケンタウリスの皆さんなら面倒見てくれるやろ。
っていうかぶっちゃけ俺は身軽に回りたいんだよね。
みんなと一緒に回ってもそりゃ眼福だしおっぱいに包まれて俺の欲望は満たされるだろうが、多人数で一つの事を聞き込み調査してもマンパワーの無駄だしな。
勘に任せて単独かコンビくらいで回った方が絶対早い。とっとと情報集めて魔装具ゲットしてその後の観光を楽しむ時間を増やした方が最終的にお得なのは確定的に明らかである。
今日の午前中で終わらせるくらいのつもりでいますよ俺は。
「うむ、ごちそうさま。では準備して出ようか。組み分けだけは今決めてしまおう」
「……アタシ、ロックとペアにだけはなりたくないわ」
「不安ですよね。色々」
「失礼な。仕事になったらちゃんとやりますよ俺は! 信頼してくれていいんスよ!」
「…………前の冒険を思い出してもう一度言ってみろ」
「あん時は欲に目がくらんでたんで忘れてもろてシミレさん」
しかしペア分けの時になってケンタウリスの皆さまから冷たい目で見られてしまった。
前に一緒に冒険したときはシンプルなダンジョン探索だったんだよね。そうなるとシーフの俺は前線に出ないじゃん。みんなの後ろをついてく役割じゃん。アルトさんのケツがデカすぎて目を奪われすぎてしまってたんすよね。ドスケベなケツがわるいよーケツが。
その上で俺の勘による罠とか宝箱の位置とか方向とか示しても信頼も何もなかったから大体信じてもらえなくて。逆方向に進まれて罠にはまりかけて慌てて救出して……みたいな感じでぐっだぐだの冒険になっちまったのだ。
今回の遠征でその辺の汚名を返上する予定である。俺の有能さを理解してもらわねぇとなァ!!
「一先ず……マルカートは金級だからこの街のギルドで閲覧できる資料も多いだろう。そっちを当たってもらいたい。何があってもいいように、リンとイレヴンはマルカートに同行して同時にギルドで聞き込みを行ってくれるか」
「かしこまりました」
「リンは私が見ておりますので。よろしくお願いします、マルカート」
「よろしく!」
「そして残るメンバーだが……ティオはシミレと、アルトはソプラノと組んでそれぞれ酒場や図書館などを当たってもらいたい。調べきれなくても情報共有の為に時間で合流するのは忘れるな」
「りょーかいです! よろしくねシミレさん!」
「…………ああ」
「悪く無い組み合わせね! ……って、あれ。団長は?」
「え、団長もしかして……?」
「ああ。私はロック少年と組む」
「「「なんで!?」」」
「え、俺?」
メルセデスさんの采配でそれぞれグループが組まれるが、なんと俺はメルセデスさんとペアを組むことになったようだ。
なんでや。さっきも考えてたけど俺はフリーでもええんやで? もちろん誰かと組めたら嬉しいけどイレヴンやリンはいつもいるし社会勉強って意味では色んな所見てもらいたいのでマルカートさんは適任だけど。
残るメンバーの誰かと組んでペアで動く……つってもそうなると俺の勘を信じてくれるのがティオくらいなのでティオとペアになるものかと思ってたが。まさかのメルセデスさんとは。
「えっ……いいんスか? 俺メルセデスさんの言う事聞かずに勘任せで調べ回るかもしれないですよ?」
「君の勘を……ティオも認め、イレヴンを見つけ出し、魔族すら撃退したというその勘を改めて見極めてみたいと考えていたのだ。今日一日は私が付き添ってやろう。もし荒事になっても私がいれば心強いだろう?」
「いやそりゃ心強さの極みなんすけど。荒事になる前に逃げるのが俺でもあってェ……まぁでもいいか。組んでくれるってんならよろしくお願いしますね!」
「ああ。期待している」
「移動の時に背中に乗ってもいいですか!?」
「それは断る。男に背中は預けられんな」
「ンーンン」
勢いで背中に乗せてくれるかとお願いしてみたけど駄目でした。
ちぇー! もし乗れたら手綱引くついでに後ろからおっぱい触ってもバレないかと思ったのにー!
「既にロックの目から欲望が駄々洩れしててすごい不安」
「お願いですからメルセデスにご迷惑をおかけしないようにしてくださいねマスター」
「はじのうわぬり……」
「しないわい! そりゃメルセデスさん魅力的なおっぱいだけどそもそも手が届かんじゃろがい!」
「ハッ。アンタ身長低いものね、男のくせに」
「やめろアルトさんそれは俺に効く」
己から掘った墓穴にアルトさんが槍を突き刺してきて俺は血反吐を履いて倒れ伏した。
俺の身長は160cm。イレヴンより10cm以上低いしアルトさんは165cmくらいあるから俺より高いし、メルセデスさんは馬体も含めた身長が230cmくらいある。馬体がご立派過ぎて女性の上半身が遠すぎて手を伸ばしたくらいじゃおっぱいに届かないのだ。
これから成長期来るかもしれないだろまだ15歳なんだから……!! もし身長越したら見てろよこのデカケツドスケベランサーがよ!!
「では、良い情報が見つかることを祈っている。総員出発!」
そうして魔装具に関する調査が始まった。
※ ※ ※
【side メルセデス】
─────ワケが分からない。
「……さて少年、私たちはどこから向かおうか? 午前中は君の勘とやらに従うとするよ」
「ん────じゃあついてきてもらっていいすかね」
団員のみんなとイレヴン、リンを見送った後に、私もロック少年と共に調査に向かう事にする。
先程理由を説明した通り、私はロック少年の勘というものがどれほどのものか……それを見極めたかった。
以前にティオの紹介でケンタウリスのメンバーと冒険したときには私は同行しなかった。実際に己の目でロック少年のそれを見ていなかったのだ。
ティオ以外のメンバーはただのエロガキだと評する彼の、しかしその実績は輝かしい。ティオやカトル少年には負けるが、冒険を始めてわずか半年で銀級に昇格し、誰にも見つけられない隠し通路を見つけ、魔族との戦いにも銀級冒険者のみのパーティで生き延び、さらには魔装具なしで一撃を入れた……というティオの証言もある。
この少年には何かある。
そう思わざるを得ない彼の活躍に、私はクランを率いる団長として早めにその価値を見極める必要があると考えた。
ティオが魔装具を求める話からちょうどよくロック少年を呼ぼうとしたので、それに乗って今回の遠征に同行させたのだ。
謎の少年ロック、そしてその付き人イレヴン。ロック少年が身元引受人となっているリン。あと猫のミャウ。
彼らは果たしてどんな力を持ち、何を成そうとするのか。それは団にとって関係を作ることでメリットがあるのか。見極めたかった。
そして、今。
私はロックという少年の価値を計りかねている。
『みゃあ……みゃっみゃっ』
「背中の上であまり跳ね回らぬようになミャウ。……しかし少年、何故こちらに? この先は確か住宅街しかないぞ? 酒場や図書館などもない、ただの街の生活区のはず……情報は集まらないと思うが」
「
ミャウはどうやら私の背中を気に入ったらしくそこに乗って日向ぼっこをする中で、私はロック少年についていく形でネレイスタウンの街並みを歩く。
しかし彼の向かう先が余りにも調べものをするには向かない方向で、先程から疑問符が浮かんでいる。
話した通り、こちらはただの住宅街だ。あるのは町に住む人のご自宅と、せいぜいが食堂くらいのもの。ギルドや酒場、図書館で仕入れられる情報とその質も量も全く違うだろう。
冒険者が普通、捜索依頼などで調査するにせよこちらには来ない。しかしロック少年は殆ど躊躇い無く、真っすぐに進み続ける。
何の根拠があって彼はそちらに脚を向けるのか? 全く分からない。
「…………あー。ここかな? ここだな……あー。メルセデスさん、お願いがあります」
「む? なんだ?」
そしてしばらく歩いた先、ロック少年はとある建物の前で足を止めた。
私も街のこの辺りは歩いたことがない、見知らぬ店だ。随分年季が入っているようにも見える……看板を見る限りはカフェのようなところか。ここに何かあるというのか?
「中に入ったら、俺と同じものを注文してもらっていいですか?」
「……なぜだ? 言っておくがこれはデートではないのだぞ?」
「何となく。でも多分損はしないので……お願いしますよ」
そういうと、きぃ、とロック少年がその店の扉を開けて中に入る。
私の体のサイズでギリギリ何とか入れるその店の内装は、お世辞にも良い店、という感じではなかった。
所々に摩耗が見えるテーブルに椅子に……そして、老夫婦が店内におり、暇を持て余しているようなそんな店。
ほかに客は誰もいない。恐らくはこの近くに住む老人たちが時折集まって暇を潰すような、個人経営の静かな店なのだろう。
一見さんお断りと言われても仕方ないような店だ。果たしてここに何があるのか。
「おや……おやおやまぁ。セントールのお客様なんて初めて見ましたねぇおじいさん。背中に猫ちゃんが乗っていますよぉ」
「失礼する。重さは魔法で軽減しているし、椅子は不要だ」
「ほっほ……珍しい来客もあるものだねおばあさん。ぼうや、こちらの席にどうぞ」
「どもっす!」
店内に二つしかないテーブルの内の一つに案内され、ロック少年と共にそこに座る。
カフェ……だと思うのだが、卓上にはメニューすらない。角砂糖の瓶だけが置いてあり、選べるのは壁掛けのお品書きしかなさそうだ。
店の雰囲気は落ち着いていて悪くはないが……ロック少年は何を考えてこの店を選んだのか?
というよりも、ここに店がある事を知っていたのか?
「さて、何を頼まれるかね。大した品ぞろえもない店で悪いね」
「
「っ……」
「…………そちらのセントールのお嬢さんは」
「……私も、少年と同じものを」
ロック少年の言葉で一瞬、空気が凍った。
彼がすらすらと述べた注文は、確かに壁掛けのメニューを見ればそこにあるものだ。コーヒーとパンケーキ。
だが、たんぽぽコーヒーという具体的な品名はなかったし、パンケーキにも追加注文が出来ることなどどこにも記載はない。
それなのに、初めてこの店に来ただろうロック少年がすらすらとその注文……いや、呪文のようなそれを唱え、それを耳にした老夫婦の表情が凍った。
この瞬間に、私も推理がようやく追いついた。
情報を集め、その結果の最終工程として出てくるような物。
恐らくはこの老夫婦、この街に長く住む名士のような立場なのだろう。それに連なる関係者だと思われる。セントールである私を見た時の反応が薄かった。経験と気品がある言動。
そして彼らが湖の精霊に関する情報を持っているのだ、恐らくは。
しかし情報を安易に冒険者に教えるわけにはいかない。何かそのような事情があると見た。
精霊がそれを指示しているのか、街全体の意向なのか……まぁ魔装具に関連するようなそれだ。恐らくは簡単に魔装具が見つかってしまうとそれを求める冒険者が集まり過ぎて……というものかもしれない。
だからそれを探す冒険者には、情報を集める力が求められる。酒場や図書館などでさわりの情報を手に入れ、熱心に聞き込みをする中で、恐らくはこの店につながるような手がかりや、今ロック少年が述べたような注文による暗号がほのめかされ……そしてこの店でそれを実行することで、ようやく有益な情報が零れてくるのだろう。
まれにあるタイプの謎解きだ。手間も時間も十分以上にかけなければたどり着けない、一般的には極めて面倒な
だが、ロック少年は一発でその核心に至ってしまった。
なぜだ? 既にどこかでこの店の、この注文の情報を手に入れていたのか?
いや、それならば朝の時点で述べてくれてもよかったのではないか? どこからロック少年はこの情報を手に入れたのか?
「お待たせしました」
「どもっす! おお、パンケーキ美味そう!」
「……どうも」
しばらくして出て来たコーヒーとパンケーキ。意外と美味しそうなそれだったので少々拍子抜けし……しかし、それを運んできた老店主がロック少年の顔を見て、続けて口を開いた。
「なにか、探し物でもおありかな」
「そーなんす。色々聞き込んだんですが中々見つからなくて、疲れたんで甘いものでも食べようと思って!」
「ほっほ……ではぼうや、湖の精霊に聞いてみなさるといい。これを持って、街の東門からまっすぐ進んだところの湖畔の祭壇に向かいなされ。祭壇の中央でそれを掲げてみるのじゃ」
「いいんスか? あざっす! ……これ、女の人が彫られたレリーフですか」
「かつてこの湖にたどり着いた冒険者が精霊に助けられて、そのお礼でこの街が作られた……っていう昔話があってねぇ。その精霊様を模ったレリーフなんだよぉ」
「おお! じゃあ精霊ってかなり美人さんなんすね! うひょほほ! やる気出てくるなぁ!」
「ほっほっほ。若くていいのぅ。そのレリーフは差し上げるよ、使う事もそうそうないでな」
「あざます!」
「…………」
私は無言でそのやり取りを聞いていた。
余りにも突拍子のなさすぎる解決。答えを先に知っていて、それをなぞったかのような無機質な違和感。
空恐ろしさすら覚えて、目の前の少年を……ロックを見た。
老夫婦と話す時には性欲が湧かぬのだろう、普段よりも随分と年相応な笑顔を見せる、その少年の顔を。
「さっ! そんじゃ食べましょメルセデスさん! 折角のパンケーキが冷めちゃあ勿体ないっすからね!」
「……ああ、そうだな」
呑み込み切れぬ想いを抱えて、注文したパンケーキを食べる。
期待していたより、美味だった。