勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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220 孤児院の子達の性癖はおしまいになるのでは?

 

 

『──────…………失礼いたします。王都に住む皆さまへ、大切なご連絡があります』

 

 ロック一家(ティオ含)でいつもと変わらぬ朝食を食べていると、国全体に王都放送が流れ始めた。

 実を言うとこの王都放送、昨日から結構な頻度で流れている。聞き逃す人がいないように、という配慮なのだろう。

 

「んおー……そういや一般市民の避難って今日から始まるんだっけ」

「最終決戦に備えて、ですね~。今日は冒険業に係わらなくて、ライフラインに直結していない仕事をしている人から避難できて、後々になって混まないように避難できる人から順次グランガッチかローティリッチに避難してほしい……という感じでしたね~」

 

 放送の内容を聞けば王都民の避難に関するお話で。

 直接的に俺らに関係する話ではないが、ノインさんが補足として説明してくれる。

 それを受けて、イレヴンやティオも会話に混ざって来た。

 

「グランガッチは物価が安いので金銭的負担は少ない、ローティリッチは物価が非常に高いがサービス等を受けられる、どちらにしよう……と商店街の奥様方が噂していましたね」

「今回は前の時みたいな急いで身一つで、って感じじゃなくて少なくとも数日は避難しなきゃいけないから……宿泊先とかも色々問題になってるみたい」

「ふーん。グランガッチは前の戦争での避難先だったから慣れてる所もあるんだろうけど、ローティリッチってめっちゃホテルあったよな? ピンからキリまで……いや安い所でもグランガッチよりは高いんだろうけど」

「ローティリッチは観光業特化の国ですからね~。5万人くらいまでなら宿泊できる設備があるんじゃないかな~、それでも相当物流とかギリギリですけどね~。一応野営できるエリアも準備するとか~」

「ほえー。そんじゃ争奪戦だなローティリッチへのお泊りは……」

 

 なるほどなー。グランガッチは安いけどしっかりした宿に泊まれない可能性もある。殆どテント張っての野営かもな。土地は広いし。

 それに対してローティリッチは宿泊できるホテルは高級なものから安い所まで存在するが、そもそもバカ高い。でもサービスは受けられる。

 王都民は約20万人。そのうち最終戦争に直接関わる人数は、騎士団や冒険者まで含めても1万人も行かないだろう。つまり19万人以上が避難するわけで。

 ローティリッチの宿泊施設は先着順にしても相当な激戦が予想されるなー。

 まぁその辺は俺が直接かかわる話でもないのだが。

 

 しかし。

 そこまで話を聞いて、王都放送も終わって、俺の中に一つの閃きが生まれる。

 義務感と言ってもいいかもしれない。

 決戦まで残り三日を控え、その中でもなーんも決戦に関する戦闘関係に力になれない俺が、それでもやらなければならないと思う、()()としての義務。

 

「……孤児院行こうか」

「え? お兄ちゃん?」

 

 孤児院のガキ共の避難先を選定してやりたい。

 そう思い、俺の考えをみんなに伝える。

 

「いや……さ。最終決戦に直接関係なくてライフラインにも関係ない人たちが避難ってことは、孤児院のみんなは今日から避難じゃん。前ん時に俺の顔見れなくて泣いてたらしいガキ共も俺が避難前に顔出せば安心するかもしれないし……それに、どうせ避難生活させるなら身内くらいはいい所に宿泊させてやりたいじゃん」

「成程。主殿らしいお考えで」

「うん。なんでローティリッチで俺らが宿泊したエーリュシオン紹介してやろうかなって。なんか知らんが金も地位も手に入っちまったからな俺。こういう時に使わないのはもったいないし」

「おー。それならみんなよろこぶね!」

 

 そう、どうせなら孤児院のガキ共には辛い思いを極力してほしくない。

 ついでにシスターの負担も減らしてやりたい。

 なんでローティリッチに避難させて、さらに極上のサービスが確約されるエーリュシオンにガキ共を宿泊させるプランを思いついたのだ。

 あそこは従業員も多くてサービス満点だ。お金を包めば子供の世話くらいはしてくれるはず。実際に貴族の家族連れが子供向けサービスを利用していたのも見てきている。

 伝手が出来てるエイシスさんに声掛けしてお願いすればなんとかしてくれるんじゃないだろうか。希望的観測だけど。

 

「ってわけで朝食ごちそうさま! 今日はまず孤児院に向かいます! みんな身支度して来てくれな!」

「ごちそうさまでした。では急ぎ整えましょう。ミルが先に出発してしまってはまずいですからね」

「そうですね~。後片付けもパパっとやっちゃうぞ~」

「ごちそうさまでした! あ、お兄ちゃん! 孤児院の子達の宿泊費は私も折半で出すからね!」

「だが断る。どうせ俺の金は王都の税金と直結してるからこの戦争に絡む費用は全部国から出させてやるわ! ガキ共にお小遣い渡すくらいは許す!」

『みゃ』

 

 今日の予定を伝えて、嫁さんたちが身支度する間に洗い物などを終えて、全員揃ってからみんなで空を飛んで孤児院に向かうのだった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 だが俺は狡猾だぜ。

 どうせシスターにこの件を先に相談すれば、こう返してくるに決まってるんだ。

 

「────いけないわ、ロック。贅沢を子供のころから覚えてしまってはロクな大人になりません。一時的な事なのだし、他の市政の方々にも申し訳がよろしくありません。グランガッチでも、みんなで過ごせばきっと楽しいわ」

 

 などと申しており。

 そりゃあな。なんてったってここは孤児院なのだ。贅沢なんて発想は基本的に出てこない。

 神道に沿った清貧の教えを主の学びとするシスターならばそう言うと思っていた。

 言ってることは間違ってるとは思わないし、俺も最近は贅沢を覚えたけどそれはそれとして無駄にカネを使って遊んだるわ! 働かなくても遊び放題だわグヘヘ! ってなってないのはシスターの教えの賜物でもある。

 

 だから俺はこうしたのだ。

 

「えー!? シスター、俺ロックにーちゃんが言ってたプールっての入ってみたいよー!」

「すっごくご飯が美味しいんだって、ローティリッチ。たまには、そういうのも味わってみたーい!」

「私もふかふかのベッドでねむってみたーい!」

「お願いシスター!」

「お願いしまーす!」

『みゃ!』

「貴方たち……」

 

 先にガキ共にローティリッチに避難することを伝えてやったのさァ!!

 孤児院に来て、イレヴンとノインさんがシスターと挨拶を交わしながら避難の予定と行き先を聞き出してもらっているうちに、俺とティオでガキ共にローティリッチへの避難になる事とそこがとても良い所であることを吹き込みまくってやったのだ。

 ただでさえ戦争中という不安定な状況で、前回の避難にはトラウマがあるガキ共である。

 疲れや不安も溜まっている所に、リゾート施設への数日間の旅行のようなシチュエーション。行きたいと考えるのが当然というものだろう。

 そうしてシスターへの説得のための味方に回ってもらったガキ共を従えて、シスターを泣き落とししているのが今のシーンというわけである。

 

「……はぁぁ。諮ったわねロック、ティオも……」

「ちな主犯はティオだよ」

「違ぇよぉ!? しれっと責任転嫁しないでぇ!? 言い出しっぺはお兄ちゃんでしょー!? ……でもシスター、私もお兄ちゃんと想いは一緒だよ。もうみんなにつらい思いはしてほしくないの……お兄ちゃんは私が絶対に護るし、お兄ちゃんが絶対に魔王を倒すから。だからその時まで、安心できる所にみんないてほしい。グランガッチだって悪い所じゃないけど、治安って意味じゃローティリッチほど安全(セーフティ)な所はない。戦闘行動そのものが出来ないんだもの」

「言っていることも、二人の想いもわかるけれど……」

 

 それでも渋るシスターにティオが説得を重ねる。俺の想いも同様だ。

 別にガキ共に贅沢を味わわせるためにローティリッチを紹介しているわけでは無い。

 何よりも安全のためだ。

 グランガッチは獣人の国。勿論のこと王都と友好関係にある国なので人種差別のようなものは殆どないが、それは殆どであってゼロではない。

 闘争を好むグランガッチの国風もある。孤児院が直接の原因でなくとも、避難という非日常の事態でどんなトラブルが起きるか、考えるのは容易すぎる。

 勿論避難中の混乱というそれはローティリッチにも言える事だが、しかしローティリッチはそこにもう一つ要素が絡む。

 少なくとも身の安全は確約されるのだ。戦闘行動が出来ない国だから。

 金銭トラブルなどはあり得るかもだが、それも俺という存在が王都の国庫と直結していることから俺の名前を出せばスルー出来る。

 向こうでのみんなの滞在費は俺の名前で全部ツケてもらう予定である。ティオに払わせられる金額じゃねーしな。その分は最終決戦で働くことで国に還元するとしよう。

 

「頼むよシスター。これはお願いを超えて懇願なんだ。ガキ共が安心して俺らの勝利を祈ってくれてないと、俺も全力で戦えない。勘がそう叫んでるって言ってもいい。もしこれでガキ共に悪影響が出るようだったら責任は取るからさ」

「…………」

「最近さ、俺結構頑張ってるじゃん。そのお礼って言うか……御返しみたいな感じでさ。俺のワガママを一つくらい聞いてほしいよ、シスター」

「……その言い方は、ずるいわ」

 

 言葉で想いを尽くす。

 みんなの事を一番に想うシスターならば、俺の言う事も最終的には分かってくれると信じているから。

 

 そして、やはり俺たちのシスターは、俺達の母さんだった。

 

「……わかりました。ええ、私も意を決しました」

「やったぜ」

「シスター!」

「そうね、半年後に予定していた社会見学を前倒しにした事にします。避難先はローティリッチにしましょう」

「わっ!!」

「やったー!!」

「嬉しいー! ありがとうシスター!」

 

 とうとうシスターも折れて、無事にガキ共はローティリッチに避難することになった。

 やったぜ。これで俺が王都に残す懸念はほぼ解消された。

 あそこなら安心だ。早速エーリュシオンを紹介してやろう。

 

「よーし、そうと決まったら善は急げだ! おらガキ共! 準備しやがれ! 持ってくもんはお気に入りのおもちゃとお財布くらいでいいぞ!」

「えー? にーちゃん、下着とか服とかどうするんだよ」

「歯ブラシとかタオルとか……」

「全部ローティリッチ側で準備してくれるわい! メイドも執事も呼べば来るぞ! どうせなら一流の接客を味わって見識広めてこいよなー! プール最高やぞあの施設は! ほらほら準備!! ダッシュ!!」

「うおー! ホテルだー!!」

「えへへ、楽しみー!」

「……ティオ、貴方たちはそんな所に行っていたの……?」

「うん、お兄ちゃんの勘が響いてね。色々あったけど、でも本当に最高級のホテルだったから……シスターも少しは羽根を休めてきたら?」

 

 さっそくガキ共をまるで羊飼いの少年のように巧みに操り速攻で旅行の準備をさせて、ノインさん経由でなんかあった時のためのまとまったお金をシスターに預けて、準備万端。

 闘技場の転移陣を使うと避難民の皆さまが溢れかえっていて大変だろうと考えて、俺んちの転移陣までみんなで移動して、そこからローティリッチまでワープするのであった。

 

 

 

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