勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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221 もう駄目だ……(性癖は)おしまいだぁ……!

 

 やってきましたわよローティリッチ!

 

「……わぁー!! すっげー!! 建物でっけー!!」

「ふわぁ……王都とも、グランガッチとも全然違うね! 空気がなんかきれい!」

「建築様式が王都と全然違う……直線の建物が多いのかな?」

「おおー……道がすごい整備されてるー……」

 

 ガキ共とシスターを連れて転移陣でみんなでワープして来ました。

 俺とティオだけで案内してもよかったんだけどやっぱり俺に万が一があるといけないしノインさんも王族で顔が利くしリンもノワールさんも嘘が分かるしで……結局ロック一家はみんな揃ってみんないい。

 今日は孤児院のガキ共も一緒なのでこれが俺の家族ですと胸を張って言えます。いいやろ。

 

「そんじゃエーリュシオンに行くぞい。アポ取ってないけど多分顔パスで融通利かせられるやろ」

「間違いなくあの日一番目立ってた客でしょうからね~ロックくん。ギャンブルでもその後の騒動でも」

「……もしかして、またロックは何かしでかしたの? ローティリッチを買い取れるほどバカ勝ちした、とかいうホラ話は聞かされたけれども」

「それがホラ話じゃないんだよねぇ……」

「ええ……?」

 

 孤児院のガキ共を引き連れて早速エーリュシオンへ。

 既に王都からの避難民の姿が見えるが、慣れぬローティリッチの街並みで宿泊先を選定する所からのようだ。旅行代理店出張所のような屋台が転移陣の傍にいくつもあり、宿泊先を案内しているのだろう。人々がそこに並んでいるのが見えた。

 俺らは悩む必要がないからね。この街で一番高い宿に決めてるから。混みあう前にさっさと向かっちまおう。

 

 さて、そうしてエーリュシオンに向けて歩いていた時だ。

 

「……ん? あれ、あの後ろ姿……」

「おや。あれは……ヴァリスタですね」

「カトルに、カプチーノさんとカノンさんもいるね」

「なるほど~。考えることは皆同じですね~」

 

 俺らが歩く道の前に、俺らよりもゆっくりとした歩みで……カプチーノさんの歩行速度に合わせて歩いているヴァリスタさんたちがいた。

 それだけで察せてしまうというものだ。

 きっと俺たちと同じ理由だろう。

 早速声かけよ! と駆け足になろうとしたところで、カプチーノさんが音で察して脚を止めて、笑顔でこちらに振り向いた。耳が良すぎる。

 

「……こんにちは、ロックくん。子供たちがいっぱいね?」

「む? ……おお! ロックくん達ではないか! それに見ない顔も……」

「あー、ありゃ孤児院のみんなですね。修道服のがロック達や俺も世話になったシスター・ミルっすよ師匠」

「これはこれは。お互いに想う所は一緒のご様子ですね」

「どもっす!! ま、そう言う事っすよね」

 

 そのまま合流してお互いに挨拶を交わす。

 俺はヴァリスタさんににっかりと笑顔を見せて、ヴァリスタさんもウム! と頷いた。そして肩を竦めて苦笑を零す。

 これだけで完全に意思疎通(シンクロ)したよね。

 俺は孤児院のガキ共を、ヴァリスタさんはカプチーノさんを安心できる場所に避難させたくて、エーリュシオンを選んだというわけだ。

 そんな兄貴分特有の共感を得ながらも、ヴァリスタさん一家と初対面の孤児院勢はみんなそれぞれ挨拶を交わす。

 

「初めまして。ロックとティオと、カトルも大変にお世話になっております……育ての親の、ミルです」

「ヴァリスタと申します。ミル殿のお噂はかねがね……王都の英雄達を育て上げた聖母にして、かつて『四傑』と呼ばれた冒険者の御一人。ああ、なるほど噂に違わぬ気品と佇まいだ。子どもたちの目を見ればわかる……彼らの瞳は希望に溢れている」

「恐縮です。ほら、みんなもご挨拶なさい。でも……」

「はーい!! 俺、ギガ──」

「大声禁止ッ。カプチーノさん耳がよすぎなのだ」

「──んっ、こほん! ……俺、ギガスっていいます。一応、今の孤児院の最年長です」

「あら、そんなに気を遣わなくていいのに……優しいのね、ありがとう。私はカプチーノです」

「僕、ノッチ……」

「アイリです。ヴァリスタ様も、カプチーノ様も、お綺麗で素敵だわ……!」

「私はカシム! 猫さん大好き!」

『みゃ!』

「ゼノっていうの……」

 

 シスターとヴァリスタさんがまず挨拶を交わし、俺が事前に忠告することでギガスの大声を封じ、それぞれが落ち着いた声色でヴァリスタさんとカプチーノさんに挨拶をする。

 それでも元気なガキ共の様子にヴァリスタさんもカプチーノさんもニコニコだ。俺も思わずほっこり笑顔。

 自慢のガキ共なんすよ……他者を思い遣れるガキに育て上げたからね。シスターが。

 同じところに宿泊することになるだろうカプチーノさんとも仲良くやってくれるだろう。

 

 っていうか仲良くしてもらおう。

 カプチーノさんが傍にいてくれることでガキ共も落ち着いてくれるかもしれないし。

 カノンさんという大人が付き添う事になるし、カプチーノさんも盲目とはいえ十分子供の事を気にかけてくれるだろう。

 シスターだけでガキ共全員の面倒を見なくてもよくなりそうだ。

 

「……ってなわけで、そのぉ。カノンさんとカプチーノさんにはガキ共の事気にかけておいてほしいって言うかぁ……なんならシスターの御手伝いもお願いしたいって言うかァ……!」

「こら、ロック! そんな厚顔無恥なお話をヴァリスタさんに持ち掛けるなんて……」

「いやっ! ミル殿、是非にとこちらからお願いするようなお話だ、これは! 幾度私とカプチーノがロックくんやティオくん、カトルに助けられてきたか! カノン! 分かっているだろうな!」

「無論です。こんなに可愛い子供たちのお世話を焼けるという甘露まで頂けるとは思っていませんでした。全力で愛でます」

「カノンさんちょっと目がヤバい」

「危ういな! ……まぁ、こちらにとっても利がある話なのだ。カプチーノは見ての通り目が利かぬ……周りに気を配ってくれる子らがいれば、カプチーノ自身も安心できよう。そうだな、カプチーノ?」

「ええ。お兄様の言う通り……むしろ、私が助けていただくようだわ。お願いしてもよろしいかしら、シスター・ミル?」

「……そう、おっしゃっていただけるならば。子供たちの見識を広める機会にもなるでしょう……御恩情に感謝いたします」

「へへー。よろしくな、カプチーノねえちゃん!」

「いっぱいあそぼーね!」

「みんなの応援、しようね」

「うん……いっぱいしようね!」

 

 そうして俺から切り出したところ、シスターから遠慮の言葉が零れる前にヴァリスタさんが流石の男気と気配りを見せる。

 ヴァリスタさん基本的に人間が出来てるからな。完成系って言ってもいいよこの気高さは。

 俺の周りにいる大人の男性の中で一番なんていうか……マトモだと思うのよこの人。非の打ちどころ基本的にゼロっていうか。

 トゥレスおじさんやノックスさんやウォーレンさんや王様や各種王子様もいるけど、一番まっすぐ正義感に溢れてるのはヴァリスタさんだと思う。口には出さないけど結構尊敬してます。

 そんなヴァリスタさんの希望に沿う形で同意を示すカプチーノさんも優しい御方だ。この兄にしてこの妹ありである。

 カノンさんはちょっと性癖漏れてるけど。(不安)

 大丈夫やろ。パーフェクトなメイドは知人の家族に性犯罪を犯すことはないやろ……!!(祈願)

 

「そんじゃ行きますか。お部屋取りに行きましょ」

「そうだな。この(えにし)が紡がれた事を尊く思うよ」

 

 人数がすごい事になりつつも、改めてエーリュシオンに向けて出発した。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

「……これはこれは。大人数でご来訪いただき、誠にありがとうございます。ロック=イーリーアウス様」

 

 エーリュシオンの受付に到着すれば、以前にもお会いしたドスケベ受付嬢さんが恭しく頭を下げて応対してくれた。

 しかし受付の周囲には、こないだ来た時よりも多くの人数が配置されていた。

 今日から避難開始だから受付の数増やしてるのかね。まだ人はまばらといった具合だけどこの後どんどん人数増えそうだしね。

 流石エーリュシオンだぜ。既に完璧な接客の準備はOKってところか。

 

「どもっす! えっと、俺の懇意にしてる孤児院のガキたちとシスターの避難先としてエーリュシオンに宿泊させてやりたくてェ……」

「こちらは以前にも宿泊させてもらった妹のカプチーノとメイドのカノンの宿泊だ。魔族との決戦が終わるまでお借りしたい」

「承知いたしました。以前にもご説明しました通り、ここエーリュシオンは各種注意事項をお守りいただけるならば、たとえどんな人数でも、(わたくし)共は完璧なサービスをご提供いたします。ご料金は先払いでよろしいでしょうか?」

「うん。ノインさん、お勘定お願いしていい?」

「任せろ~国庫支出金だ~」

「こちらも無論先払いだ。妹たちの安心と安全を保障する費用としては破格が過ぎるさ」

 

 まずは人数割りの宿泊費をシスターに何か言われる前に払っちまおう。

 王族であるノインさんに支払いを任せることでシスターになんか言われるのもキャンセルだ。王女様のやる事にはシスターも強く出られまい! がはは!

 ヴァリスタさんもカプチーノさんとカノンさんの長期滞在費用として8桁Gの金額を受付に支払しつつ、受付業務は続く。

 

「お代を頂戴いたしました。では、宿泊者様の御名前をこちらに御記載願います。未成年の御方は親権者様、もしくは未成年後見人の方のサインも頂戴いたします」

「あ、はい。それでは私が責任者で……みんな、ここに名前を書くのよ」

「はーい!!」

「カプチーノ様、記入はこちらです」

「うん、ありがとう」

「お名前を頂戴しましたら、部屋割りを。……お子様方とシスター様の御泊りになられる大部屋を一つと、カプチーノ様とカノン様が御泊りになられるツインのお部屋で宜しいでしょうか?」

「それでOKっすー。隣り合ったお部屋に出来ます?」

「確認いたしますが、現状はお部屋に余裕がありますので問題ないかと」

「じゃあそれで……あともう一つ、こっそりとお願いなんすけど」

「はい、何でしょうかロック様」

「実は……」

 

 受付嬢さんが宿泊者のサインを取り、シスターがそれを子供たちに書かせて、カプチーノさんとカノンさんもそれぞれ書いてるところで、俺はこっそり受付嬢さんに耳打ちする。

 もう一つ考えていた相談があって、それを伝えようとしたところで……しかし、そこでまた新たな出会いが一つ。

 

「────……ロック様、ロック様っ!!」

「んお? このエッチな声……あ、エイシスさんじゃないすか! こないだぶりー!」

「ロック様、ああっ、お会いしとうございました……っ!」

「んむぎゅー?」

『みゃっ!?』

 

 受付の奥から俺の姿を確認して駆け寄って来た、ドスケベ褐色デカパイディーラーのエイシスさんだ。

 今日はカジノで見せる蠱惑的なディーラー衣装では無くて、受付業務のお手伝いをしていたのか、受付嬢さんと同じ衣装を着ていた。

 それでもドスケベが隠しきれてない。そんな魅力的な女性が俺に駆け寄ってきて……そのままむぎゅーと抱きしめて来た。身長差によるデカパイが俺の顔面を襲う。

 甘露ッッ!!(渾身)

 

「……ロック、あなたはまたそうして……」

「あれ、シスター? ねぇなんも見えないんだけど?」

「イレヴンねーちゃん、なんで目を隠すの?」

「リンおねえちゃん、おめめみえない……」

「ティオおねーちゃん? どーしたー? カプチーノさんごっこー?」

「カトルお兄ちゃん、なぁに? かくれんぼ?」

「姫様ー?」

 

 そして俺がそういうドスケベイベントに遭遇したとわかった瞬間に、孤児院のガキ共の目は俺の嫁さんやシスターやティオやカトルやノインさんの手で咄嗟に隠された。

 どうしてお兄様の姿を見せようとしないのか? 答えは俺の顔がデカパイに包まれているからだろう。

 家族の絆(確信)。

 

「ああ、ああ、再び会えるこの時を()はお待ちしておりました……! 毎夜の如く、夢に現れる貴方様のお顔を想い、幾度寂しく涙を濡らしたか……」

「だいぶ愛されててちょっとびっくりしてるところはある。でもまぁ今日は俺が泊まりに来たわけじゃないんすよ。ほら、このガキ共がね……」

「え……あ、っ、も、申し訳ございません!? 我を忘れてしまって……!!」

『みゃ!!』

 

 俺を見てだいぶ興奮されているエイシスさんの拘束からシュポンッと抜け出して、ついでに置き去りにしたミャウが地面にビターン! ってして、エイシスさんも子供たちが傍にいることにそこでようやく気付いたようで、赤面して咳払いして佇まいを正した。

 なんやもー可愛い人っ! 見た目すっごい大人の女なのにこういう可愛い面見せてくるんだからー! 好き!

 

 さて、落ち着いたところで折角なのでエイシスさんにお願いしちまおう。

 この人カジノでも偉い人の立場っぽいし。この人の口利きもあれば多分俺のお願いも通るだろう。

 

「…………ってわけで、俺らが決戦に向かう時に俺の家族たちが落ち着いて避難できる先にエーリュシオンを選ばせてもらったんすけど」

「成程。勿論、我らエーリュシオンはお客様の求めるサービスを完璧にご提供いたします。ロック様のご家族も、ご親友のカプチーノ様方も、どうかご安心してお預けいただきますよう」

「うんうん。そんでついでにこっそりお願いで……」

「……あっ♡ ロック様、そんな、()の耳元で(ささ)めかれては……っ♡」

「敏感耳。で、お願いっつーのはガキ共の面倒見るのがホテルに不慣れなシスターだけだと大変そうだし、カプチーノさんもいるから……ガキ共の面倒を見てくれる人を二人くらいつけられないかなって……」

 

 そう、お願いの内容とはシスターの負担を減らしてやりたいというそれであった。

 勝手知ったる孤児院ならともかく、ここはシスターも初見のホテルだ。付随する施設も豪華の極みで広々としており、迷子になってもおかしくない。

 そこをシスターひとりでずっと監督し続けるのも大変だ。ギガスやノッチやアイリも大人びてきているとはいえまだまだガキで、このリゾート施設にテンションが上がってしまうかもしれない。

 なのでホテル側で面倒を見てくれる人員を手配できないかとお願いしたかったのだ。

 

 そんなことを説明して耳元にひっそりとお願いすると、流石のエイシスさん。

 赤面しつつも蕩ける様な流し目を見せて、こくりと頷いてくれた。

 

「お任せくださいませ。ロック様の弟妹(ていまい)にはお嬢様が多いようですので、安心できるように女性の従業員を二名……いえ、()ともう一人をつけて、大事(だいじ)が無いように見守らせていただきます」

「おお、エイシスさんがついてくれるならありがてぇっす! ……カジノの方は大丈夫なの?」

「ご安心ください。エーリュシオンでは王都からの避難が続くここ数日は、カジノは低レートの遊技台しか稼働させない方針にいたしました。大負けされてもよろしくないので……それ故、()の出勤がないのです。なので受付業務のお手伝いをしていたのですが、それもロック様の便宜を図るためであればそちらを優先いたしますので」

「そんならよかった! そんじゃガキ共と遊んでてくれると助かります! トランプとかでエイシスさんの腕前見せてやってよ、コイツらトランプゲーム好きだからさ。施設とかもぜひ満喫させてやって。シスターが遠慮するかもだけど俺がそう言ってたって主張していいからさ。気兼ねなく楽しませてやってほしいんですよ」

「ロック様のご期待に、見事に応えて魅せましょう」

 

 アイシャドウの入った綺麗な瞳をにこりと微笑みの形に変えて、ふんす、と胸を張るエイシスさん。可愛いなこの人!!

 これで俺の懸念はすべて無くなった。

 エーリュシオンへの宿泊もゲットできて、ガキ共の面倒もシスターだけじゃなくてカプチーノさんとカノンさんも一緒に見てくれて、カジノ側でもエイシスさんら従業員が付き添ってくれる。

 きっと素敵な体験になるだろう。俺はそう願っている。

 

 過保護と言われようとも、ガキ共にはずっと笑顔でいてもらわねぇとな。

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