勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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222 凄まじい量のフラグを積み重ねていこうねぇ

 

 無事に孤児院のみんなとカプチーノさん、カノンさんの宿泊受付も済んで、お別れの時間となった。

 再び俺たちが会うのは3日後……魔王ダブレスちゃんとの最終決戦に勝利した後になるだろう。

 短い別れである。それだってのにガキ共はまったく。

 

「ロック兄ちゃん……死ぬなよ」

「応援してるからね! ちゃんと帰ってきてね!」

「変な誤報とかもう流さないでね……?」

「誤報流したのはノックスさんに責任があると思われる」

「無事にかえってこないと、ゆるさないから!!」

「ミャウもちゃんと帰ってきてねー!」

『みゃ』

 

 どうにも別れを惜しむのをやめられないようだ。すぐに戻ってくるってのにね。

 涙ぐむゼノの顔をぐしぐししてやったり、年長として気丈に振舞おうとするギガスの胸をぽんっと拳で叩いたりして、長兄の務めを果たす。

 お前らに心配されるほどお兄ちゃんはヤワじゃないんですよ。

 どうやったって無事に帰ってくるからよ。そんな顔すんなって。笑え笑え。

 

「お前らこそ、せっかくの機会なんだから楽しめよ? シスターとエイシスさんの言う事ちゃんと聞いて、うまい飯食っていっぱい遊んで過ごしてたらすぐに俺帰ってくるからよ。ホテルに迷惑かけんなよな?」

「わかってるもーん!」

「ティオおねーちゃん、ロックにーちゃんをよろしくね……」

「守ってあげてね?」

「任せて! 絶対みんな無事に帰ってくるから!」

 

 そうしてティオと共にひとしきりガキ共との別れを済ませて、最後に改めてエイシスさんとシスターに向き直る。

 子供たちを任せますよ、と気持ちを籠めてエイシスさんに笑顔を見せれば、それで意を汲んでくれたエイシスさんがぴしりと芯の通ったお辞儀を返してきた。カッコいい大人の女。

 

「……ロック。ティオも……リンちゃんも、カトルも。本当に、気をつけなさいね。油断しないように」

「任せろー」

「はい! シスターに教えてもらった事をすべて使って、頑張ってきます!」

「みんなはちゃんとわたしがまもるからね」

「親父がアレだった時期、ホントに孤児院には世話になりました。俺も……みんなを泣かせるようなことは絶対にしない。無事に戻ってきますよ」

 

 最後、シスターが俺たちに近づいて、俺とティオ、そして最近孤児院の子になったリンと、ガキの頃からほぼ孤児院通いで世話になってたカトルにも声をかけてきた。

 その表情は、やはりどうしても心配の色が浮かんでしまうようだ。それを隠したくても隠し切れない、唇を強く結んだ表情を見せてきて。

 ……そんな顔はシスターには似合わねえんだけどな。

 

「……っ!」

「んむ」

「わ、シスター……」

「むぎゅー?」

「……シスター」

 

 言葉を交わすだけでは感極まる心の内を解けなかったようで、シスターが両腕を広げて俺たち四人をがばっと抱きしめてきた。

 それに抵抗せず、四人でシスターの腕の中に収まる。密着感凄い。

 小さく震えるシスターの背を、肩を、それぞれが腕で支える。

 

「……約束よ。絶対に、無事に戻ってきてね……っ!!」

「……うん。私、絶対帰ってくるっ……! ぐすっ……!」

「おかーさん……うん、やくそくする」

「俺も、みんなと一緒に帰ってきます」

 

 俺の左右からも、正面からも、ガキ共の方からも涙声が聞こえてき始めて。

 うん。俺こういうの苦手なのよね。

 

「帰ってきたらまたシスターがデカパイで抱きしめてくれるなら俺は無限に帰還を繰り返してしまうかもしれんな……!!」

「お兄ちゃん今そうじゃない」

「お前マジでさ」

「ロックはおろか……」

「冗談冗談」

 

 なんで冗談を入れたら左右から信じられないものを見る目で見られたがまぁそれはどうでもよくて。

 俺の母さん(シスター)が心配しないように、俺はいつだっていつも通りでいなきゃならないからさ。長男は辛いぜ。

 

「ま、心配しないでよシスター。俺ってば殺しても死なないって噂になってるくらいなんで。いつも通りひょっこり帰ってくるからさ」

「……貴方は……本当に、変わらないわね。ロック」

「俺だからね。帰って来た時に腹減ってると思うんで、シチューでも作って待っててよ。俺シスターの作るシチューが一番好きだし。リンとノワールさんの分までよろしくね」

「あら……うふふ。そうなると、いっぱい材料を準備しておかないといけないわね。王都へ帰ったら買い溜めしておくわ」

「頼んだぜ」

 

 こんくらいでいいんだよ最終決戦に挑む前の会話なんて。

 湿っぽくてドラマチックな別れなんて俺らの間にはないの! 家族なんて日常の象徴なんだから! 変にシリアスしたっていい事ないんだから!!

 大した仕事でもない魔王ダブレスちゃん即落ち2コマを達成して、無事に王都に帰ってきたら、シスターがシチューを作ってくれる。

 その約束だけで十分だ。俺が負けることはないだろう。

 俺は常に前向きだ! 怯えろ魔族!

 

「……お兄様。信じているわ」

「ああ。信じていてくれ、我が妹よ」

 

 隣を見れば、ヴァリスタさんとカプチーノさんも同様に別れを惜しんでいた。

 しかしあちらはビジュアルが良すぎて絵になり過ぎるな。兄妹ともに顔が良すぎる。

 羨ましいなんて思ってないんだからねっ! ヴァリスタさんも無事にカプチーノさんの元に返しちゃるわい!

 俺が大活躍すればまだカプチーノさんとカノンさん二枚抜きもワンチャンあると思っているからね。いつも心にポジティブシンキング。

 

「じゃあ行くか。お土産楽しみにしてろよなガキ共ー!」

「お土産買える所あるの? 魔王の城に」

「売店みたいなのがあるんだぜきっと」

「私おいしいお菓子がいいなー!」

 

 必勝の誓いを胸に、そうして俺たちはエーリュシオンを後にしたのだった。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 さて。

 これで俺の中の大きな懸念の一つが片付いて、あと決戦前に何をしておくべきか。

 考えを整理するためにも、一旦俺たちは闘技場に集まり、ケンタウリスのみんなとも合流して、相談をすることにした。

 

「避難民の転移は王都の正門前に設置された転移陣で行われてるから、闘技場はこれまで通り訓練で使えるという事らしいな」

「へー、そりゃ有難いっすね。さっき孤児院のみんなを連れてく時は俺んちの転移陣使っちゃったけど大丈夫かな」

「決戦に挑むメンバーの身内なら大丈夫でしょ。アタシも身内は先に避難させたわよ」

「え、アルトさんご両親いたんスか?」

「いるわよ! ……アンタにはちょっとアレな話でごめんだけど、普通に両親と妹が王都に住んでるわ。基本クランハウスで寝泊まりしてるから普段はあまり会わないけど、こんなことになったら流石にね。……ってか私の家族の話はどうでもいいのよ。ちゃんと打合せしなさいよ」

「どうでもよくないっすよ!? アルトさんの妹だったら絶対美人じゃないですか紹介してくださいよ俺に!! 結婚を前提で!!」

「アンタのその欲深さにたまに敬意すら抱きたくなるわ。紹介するわけないでしょ!」

「ちぇー」

 

 メルセデスさんからそんな情報を聞きつつアルトさんと話してたら話題が逸れ始めたがそこはご愛嬌というやつだ。

 昨日の件をケンタウリスも引きずってない様子。このお姉さま方とはいつでも気楽に何でも話せる関係でありたいからね。

 アルトさんの家族も無事避難できたという事で何よりだ。気楽な関係だからこそ話がすぐ逸れちゃうわけですね。

 

 まぁ話は戻して。

 この場にいるメンバーのリーダー格、俺とメルセデスさんとヴァリスタさんで相談を始めた。

 

「あと3日。今日の時点で既に食事処などは殆ど閉店して避難を始めている様だ。食事関係は少々気を付ける必要があるかもしれんな」

「んー。つっても俺たちは朝夜は自宅で作りますし、昼飯も弁当にするとか……あとは王族にお願いすれば準備はしてくれそうですけどね」

「確かに、最悪は国に頼れば食事は何とかなるか。あとは武器防具……だが、これは既に備え切っていると考えてもいいモノかな」

「ああ、我らクランは全員装備を更新したし、ロック少年のパーティもヴァリスタ殿もカトル少年も万全の装備にしてあるはずだ。今から新たな武具を、という事はないだろう。整備だけしっかりとしておこうか。王族御用達のドワーフ組合の面々が決戦前日まで王城にいてくれるらしいから、訓練で摩耗した分はそちらに依頼しよう」

「ほえー。そういやそっか、装備はきっちり整備しないとですよね。俺んち装備関係でその辺あんまり気にしてなかったな……」

「確か……サザンカ殿は自分で整備するし、他のメンバーの装備は自動補修機能が備わっているものだったかな。まったくロックくんの奥方は常識から外れすぎているな!」

「ロック少年が常識という単語から最も遠い所に位置するからな。やむなしだろう」

「まるで俺たちがバケモンみたいじゃん」

「的を射ているのではないか?」

 

 話の結果、わりかし現時点でやる事はやったのではないか? という結論になった。

 家族の避難は済んだ。

 食事関係は飯処で食べるのは難しくなったが、そもそも王族の庇護のもとで俺たちは動いてる。頼めばメシくらいは出してくれるだろう。ヴァリスタさんとカトルはそれで備えるようかな、ご飯作るカノンさんがいないし。

 装備関係は既に整え済み。

 あとはしいて言うなら魔王城で使うであろう回復薬関係……ポーションやら魔力回復薬やらだが、これこそ王城から最上品質のものを好きなだけ配給されている。

 前の戦争でだいぶ国全体の在庫を消費してしまったと聞いたが、そもそも前の戦争では戦闘要員である魔装具持ちの冒険者の絶対数が少なくて、後衛から回復魔法がバンバン飛ばされていたことや、本格的に冒険者たちに被害が出始める前に俺達が間に合ったことなどから、耐久戦をしてたにも関わらず回復薬関係の消耗は絶望的なほどではなかったのだ。

 今回の最終決戦も前線メンバーは15人前後。使いきれないほどには回復薬を支給されていた。

 

 さて、そうなると……もうあとは訓練するくらいしかやることがないな??

 それはそれで全然いい事なんだけど、俺が暇になるという最大の欠点があるのよな。

 暇つぶし……そうだ暇つぶしと言えば小説読んでねぇや。異世界転生チートさんの。

 図書館って避難が始まった今でも開いてるかな。今日はもう昼前だから、これから飯食べて午後の訓練になっちまうのであれだけど、明日ちょっと図書館にも向かってみるか。

 

 さてそんな風に相談とも言えない相談が終わり、昼飯どうしよ? って話でも切り出すかと思ったところで、転移陣が光って誰かが転移して来た。

 誰やろ、と目を向ければ、そこには赫赫の鱗を持つドラゴニュートが。

 

「……まずい事態になったぞ」

「え。どしたんすかヒルデガルドさん? 何かあったの!?」

 

 ヒルデガルドさんが、眉根を寄せて深刻そうな雰囲気を纏ってやって来た。

 続けて説明された内容に、俺たちは息を飲んだ。

 

「人類領にある各地のダンジョンで、唐突な活性化現象が観測された。含有魔素の量が急激に上昇している……このままではスタンピード(魔獣暴走)が発生する」

 

 

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