勘のいいガキはデカパイハーレムの夢をあきらめない!   作:そとみち

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227 おや? ロックのようすが……?

 

 

 道中で食いだおれツアーに向かったリンたちドラゴニュート組と別れて、やってきましたわよ図書館!

 

「図書館は今日まで開館しているのですね……少々意外でした。ライフラインに直結する施設ではないというのに」

「ギルドでも資料閲覧などで使いますからね~。冒険者も意外と利用してて……一応明日も資料閲覧は申請すれば出来るんですが、一般公開は今日までとなっているんですよ~」

「ほえー。でもそうなると隣のカフェはなんで? ここは昨日の時点で避難しててもおかしくないよね?」

「噂では王女から今日まで営業できないかって依頼があったらしくて~」

「当事者の口から真実が語られましたね」

 

 俺とノインさんとイレヴンで訪れた図書館、そしてその隣のカフェがきちんと経営していることを確認して、ちょっとした雑談に興じる。

 図書館って俺にとっては異世界転生チートさんの本を読みに来るところだったんだけど、でもそうか……よく考えればこの王都で調べものしないと、ってなったらこの図書館に来るしかないのか。

 一般的な趣味の本とかは市場に流通しているけど、専門書とかは図書館にしかないし。

 そしてここは国営の一番大きな図書館なわけで、そりゃギリギリまで調べものするために利用もするわな。

 

 入口に近づいて見れば、確かに冒険者や王城で働いてる感じの身なりのいい人が結構いて、本を借りたり調べものをしたりしている様だ。

 みんなの表情は真剣そのもの。

 そりゃそうか。まもなく国が無くなるかどうかっていう決戦が迫ってりゃ、調べものだって必死になるわね。

 

 なんか……ごめんなさいね当事者の俺がこんな気楽でねェ!?(謝意)

 

 ま、いいか。

 休みの日は休むのだ。

 しっかり休んで決戦に備えるのが俺に出来る事なんだからな。遠慮なく読書欲を満たすわい!

 ってなわけでおっじゃまー!!

 

「おっじゃまー!! 今日もお綺麗っすねビブリオティックさんっ!」

「あら、ロックくん! それにイレヴンさんも、ノイン様も……ようこそ、いらっしゃいませ」

「お邪魔しますビブリオティック。忙しそうですね」

「開館最終日ですもんね~。調べものする人も多いようで~」

「仰る通りです。ですが、ここにある本が少しでも戦う皆様の為になるならば、私たちはしっかりと書架の案内と貸出業務をしなければ」

 

 館内に入り、懇意にしているビブリオティックさんが受付をしていたのでご挨拶。

 俺の顔を見てビブリオティックさんもにこりと笑顔を見せてくれた。お美しい。

 美人の嫁さんがいっぱい増えても俺の女性審美眼は変わってないようだ。綺麗な人は綺麗だし、デカパイ美人は大好きなままである。

 まぁビブリオティックさんは人妻なのでコナかけるつもりは欠片もないけど。(信念)

 見て楽しむことが出来る。人間の素晴らしい所だと思いますね。

 

「てか……あれ? ビブリオティックさん……」

「ん? なぁに?」

 

 昔なじみの人との会話で心穏やかになっていた所で、しかし、唐突に響くのは俺の勘。

 今眼鏡クイッして落ち着いた大人の微笑みを見せるビブリオティックさんが対象で……むむ。ムムム。

 これは……マジか。

 

「もしかして、()()()()です?」

「────えっ?」

 

 うん。

 なんか……お子さんできましたかね?

 お腹周りが膨らんでるわけではない、いつも通りのゆったり制服に身を包んだデカパイ眼鏡のビブリオティックさんなのだが、孕んでる気がする。

 いや。まぁなんていうか……全妊婦に対して俺の勘が自動発動するわけでは無いし、セクハラになるから積極的に見つけて告げに行くとかそういうわけでは無いんだけど。

 けど顔見知りのお姉さんって気の緩みで、つい零してしまった。

 

 急に俺からそんなことを言われて、ビブリオティックさんの目が驚くほど丸くなる。

 あっ。(察し)

 これ本人もまだ心当たりなかったレベルのそれだね??

 やっちまったな! 怒らないでくださいねお腹の子によろしくないからね!!

 

「え~! ビブリオティックさんご懐妊されたんですか~!?」

「確か、旦那様がいらっしゃったと記憶しています。おめでとうございます、ビブリオティック」

「え、え、え? ちょ、ちょっと……ああいえ、()()()()は言われれば確かに、あるんですけど……まだ検査にも行ってなくて……えっ、その、本当、に……?」

「あっなんかネタバレみたいになってごめんなさいね!? でも多分……間違いないと思います。勘に響いたんで。病院に行って調べてみた方がいいかも」

「それなら私が妊娠検査魔法使えますよ~! 今すぐ調べてみましょう~!」

「あっ、いえっ、そんなノイン様の御手を煩わせるわけには……!」

「遠慮なさらず~! いつもお世話になってますし~! 私とビブリオティックさんの仲じゃないですか~! それじゃあちょっと個室へ……」

 

 なお女性がご懐妊された際には魔法による検査で妊娠してるかどうかを検査する。

 病院の産婦人科がそういう魔法を使えるほか、高名な魔法使いなら妊娠検査魔法を覚えているのだが、その辺は流石ノインさんだ。

 遠慮がちにビブリオティックさんがノインさんを連れて行って、従業員用の扉から多分個室に入って行って、暫くして戻ってきて。

 

「おめでた~!」

「嬉しいっ……!!」

「おめでとうございまぁす!!」

 

 バッチリOKサインを見せて笑顔で戻って来たノインさんと、感涙を零して口元を両手で抑えたビブリオティックさんの姿があった。

 めでてぇ! これはもう祝福するしかあるまい!

 俺もイレヴンも拍手を送り、俺たちの様子を見ていた周りの図書館利用者たちも話の流れは見ていたようで、図書館のアイドルだったビブリオティックさんのご懐妊を控えめに拍手で祝福し、ビブリオティックさんが何度もお辞儀を返して。

 そんなほっこりとしたグッドニュースから、俺の休日は始まったってわけだ。

 

 

 

※    ※    ※

 

 

 

 さて、その後。

 ビブリオティックさんは旦那さんにご懐妊をお伝えするため&妊婦は国の指示で避難先をローティリッチのホテルに出来る事から、それらの手続きの為に早退された。

 俺もまぁそれに付き添う程ではないので、改めて図書館で異世界転生チートさんの新刊を読みふける事にした。

 なんと4冊も出てましたわよ! 4冊ですよ新刊4冊!!

 これはありがたい……一つの作品は完結になってたこともあって、バッチリ読み耽りましたよ。最高だったよ。

 

 んで、じっくり時間かけて読んじゃって、小腹も空いたところで図書館を後にしていつもの如くカフェへ向かった。

 

「いつもの! ……に加えてランチも頼んじゃおうかな。お昼兼ねちゃっていいです?」

「私もそのつもりでした~。普段はあんまり頼みませんが、ここのランチメニューも美味しいんですよね~。私はチキンライス~!」

「ふむ……それなりにメニューがあるのですね。では私はパスタを」

「俺はミートドリアにキッシュなんて頼んじゃおっかな。カフェオレとデザートは食後でよろしくっす!」

「注文承りました」

 

 胸元が強調されたえっちな制服を着ている店員さんに注文を伝えて、料理が来るまで軽く雑談。

 

「しっかしビブリオティックさんは本当に喜ばしい事でしたね。おめでたとは」

「いきなりでびっくりしましたよ~。でも本当に、うん。妊娠一ヶ月でまだ予兆もなかったようですが、間違いなくご懐妊でした~。素敵な事ですね~」

「本当にマスターは行く先でイベントを起こしますね」

「今回は吉報だったしええやろがい!」

 

 やはりまず話題に上がるのはビブリオティックさんのご懐妊。

 びっくりしたよねそりゃ俺もね。自然と勘が響いて聞いてみたらまだ検査もしてなかったって言うからさぁ……まぁでも早く知れてよかった、ってことになるのかな?

 避難先もギリ間に合ってローティリッチのホテルになったし。懐妊と知らなければグランガッチに避難予定だったって聞いたし。

 それにしてもご懐妊かぁ……いいな。素直に祝福の気持ちがある。

 俺も今は他人事ではない。ティオが避妊魔法無しで俺の中出しを受けてるし、決戦が終われば計画的な子作りをする身だし。

 女が愛する男の種を受けて子を為し、育てる。

 とても尊い生の営みだと思いますね。ハーレムしててもちゃんとその辺は考えてますよ。

 

「……負けられない理由がまた一つ、できましたね~」

「そっすね。ビブリオティックさんが安心してお子さん産めるように、早く平和にしてやらないとっすね」

 

 ノインさんが述べた言葉に、俺もイレヴンも深く頷く。

 もとより敗北の許されない戦いではあるが、今回の件でさらに一つ負けられない理由を抱えた。

 俺達が負けたら王都が滅びる。人類が魔族に敗北してしまえば、明るい未来は訪れない。

 そうならないためにも俺たちは全力で魔族の侵攻を食い止めなければならない。

 負けられない大きな責任。勝利の為に必要な、前向きなそれを、ビブリオティックさんからも受け取ったのだ。

 

 負けないよ。いっぱい大切なモノ抱えてるからね。

 

「まぁ一先ずは飯食べてからガッツリ新刊について語り合いましょうかね! 最終章の流れが素晴らしく心に響いたから早く語り合いたいんすよね!」

「わかる~! あの作品の最後の方の怒濤の展開最高だもんな~! それじゃあいただきます~」

「いただきます。マスターとノインが楽しそうで何よりです」

 

 その後、運ばれてきた料理を美味しく平らげて、食休みにデザートとカフェオレが届き、優雅な午後の時間となった。

 この時間が最高なんよな……このカフェでカフェオレ飲みながらノインさんと好きな作品について語り合うこの時間がな……。

 

「それでさァ……これまでに主人公が辿って来た旅路が無駄ではなかったってことが示されるかのような全員集合がさァ……泣いちゃうよねぇあんな展開! 色々苦しみながらも主人公が歩んできた旅路が全肯定されてさァ!」

「わかりみ~! ホントにあのシーン最高ですよね~! 名シーンですよ本当に……でも、最終決戦の中で何人かが命を落としちゃうんですよね~」

「うん……やっぱ主人公の為に命を懸ける理由もしっかり描写されてたから納得はあるしめっちゃ大切なシーンだと思うし、ご都合主義じゃないよーってのもあれで補強されてるから話の軸を補強する展開ではありましたよね。賛否両論あるかもだけど……俺はちょっとお辛かったかなぁ」

「うん……ねぇ、ロックくん」

 

 そうして今回完結に至った超大作の熱いシーンの話でノインさんと盛り上がり、そんな様子を見守るイレヴンという平和な空間を作っていたところで、ノインさんが佇まいを正して俺に向き合い、問いかけて来た。

 

「……私達も、これから最終決戦じゃないですか」

「うん。そうすね」

「対策は、してる。レベルも将軍格にも負けないように上げて、王都への襲撃にも備えて、アイテムも準備して……それでも、魔王ダブレスの力は未知数です。どうなるかは、まだ誰も分からない」

「そうすね。マジでさっき読んだ話みたいな」

「もしも、犠牲なしに勝利を得ることができない……そうなったとき、ロックくんはどうするの? 主人公みたいに、嘆きながらでも平和を求めて、犠牲を呑み込みますか?」

「んー」

 

 むぅ。問いかけの内容が少々重い。

 みんなで頑張ればなんとかなるやろって気分で臨んでたけど、それは俺の気の持ちよう。

 ノインさんはノインさんなりの決戦への向き合い方があって、不安が大きくてさっきの作品を読んで感情移入しちゃったのかな。

 ノインさんの気持ちを否定はしない。色んな考えがあるのが人間だから。

 そして俺の答えもまた、俺の考えるものだから。

 

 イレヴンも神妙な表情で俺の回答を待っている。

 そんな二人に、俺は俺の答えを伝えることにした。

 

「まぁ……俺はあの作品の主人公ではないし、犠牲もこれまで特に……ああいやノワールさんがアレだけどアレは寿命とかもあったし今は無事に顕現化してるしでアレで……特に喪う経験をしていないわけで」

「そう、ですね。今のところは、ロックくんは……私たちは何も失っていない」

「マスターの活躍あっての事ですね」

「そんな俺が、仮に犠牲を呑み込まないと勝てないなんてシチュエーションになったら……まぁキレ散らかすし犠牲なんて絶対認めないと思うんですよね。もしも神様がそんな物語(シナリオ)を作ったとしても、()()()()()()

「……!」

 

 そう。

 俺が誰かの犠牲あっての勝利を、良しとするはずはないのだ。

 

 

「だから、まぁ────万が一そんなことになったら、神様にやめろや! ってお願いすることになりますね。なんて」

 

 

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